ストリッパープレートと金型の役割・構造・選び方

ストリッパープレートは金型における「剥がし」だけの部品だと思っていませんか?実は精度・寿命・コストに直結する重要パーツです。選び方や注意点を解説します。

ストリッパープレートと金型の基本・構造・選び方

実は、ストリッパープレートの精度が±2μmズレると、パンチが1000ショット以内に折損するケースがあります。


この記事の3つのポイント
🔩
ストリッパープレートは「剥がすだけ」ではない

パンチのガイド・材料押さえ・バリ防止という3つの副次機能を持ち、金型全体の精度と寿命を左右する重要な部品です。

⚙️
固定式と可動式で用途が大きく異なる

固定ストリッパは構造がシンプルでコスト低め。可動ストリッパは精密加工・薄板加工に向いており、精度要求に応じた選定が必要です。

🛠️
材質選定ミスが不良品・短寿命の原因になる

かす取りだけならS50Cで十分ですが、パンチガイド機能を持たせる場合はSKD11などの工具鋼+焼入れが必須。材質を間違えるとミスパンチ時にプレートが変形します。


ストリッパープレートとは何か:金型における基本的な役割


ストリッパープレートは、プレス金型において「パンチに食いついた材料を引き剥がすためのプレート」として定義される部品です。プレス加工では、パンチが被加工材を打ち抜いた後に上昇する際、材料がパンチに密着したまま一緒に持ち上がってしまう現象が起きます。これをぐのがストリッパープレートの根本的な役割です。


しかし「剥がすだけ」と思っていると大きな見落としが生まれます。現場で実際に機能しているストリッパープレートは、以下の3つの機能を同時に担っています。


- かす取り(ストリッピング):パンチ上昇時に材料をパンチから引き離す
- 材料押さえ:加工中に被加工材が変形・ズレするのを防止する
- パンチガイド:パンチ先端を正確な位置に誘導し、先端の折損を防ぐ


特にパンチガイド機能は重要です。これが正しく機能しないと、パンチとダイのクリアランスが片寄り、バリの発生やパンチの異常摩耗・折損につながります。つまりストリッパープレートは、金型の精度と寿命を下から支えている縁の下の力持ちです。


また射出成形金型においても「ストリッパープレート」は登場します。この場合は、突出しピンの跡がつくことを嫌う製品や、薄肉の深物形状の成形品を型から押し出すための「取り出し板」として機能します。エジェクターピンの代わりに製品の外形全周を均等に押すことができるため、変形リスクが低く、外観品質が求められる部品に多用されます。


プレス金型と射出成形金型という異なる分野で同じ名称が使われていますが、「成形品や材料をパンチ・コアから引き離す(ストリップする)」という本質的な役割は共通しています。これが基本です。


南雲製作所「プレス金型用語集:ストリッパープレート」—プレス金型においてパンチに食いついた材料を引き剥がす機能と、材料押さえ・パンチガイドの副次機能について簡潔にまとめられた用語解説ページ


ストリッパープレートの固定式・可動式の違いと金型設計での選び方

ストリッパープレートには大きく「固定式(固定ストリッパ)」と「可動式(可動ストリッパ)」の2種類があり、その選択が金型全体の精度・コスト・加工適性に直結します。


固定ストリッパは、ストリッパープレートがダイホルダに直接ボルトで固定されている構造です。構造がシンプルで部品点数が少なく、製作コストを抑えられます。ただし材料を押さえながら加工する「押さえ力」が発揮できないため、薄板や精密加工には向きません。比較的板厚があり精度要求のゆるい製品の打ち抜きに使われます。


可動ストリッパは、ストリッパープレートをスプリングやガスクッションで上下に動かせる構造です。加工直前にストリッパープレートが被加工材をしっかり押さえてからパンチが打ち抜くため、材料のズレや変形が防止できます。精密加工用の金型構造としては可動ストリッパ付きが標準と言ってよい構造です。


可動式はさらに「ストリッパガイド」の有無によっても機能が変わります。ストリッパガイドピン(インナーガイド)が組み込まれた構造では、ストリッパープレート自体がパンチプレートに対して常に正確な位置を保ちながら動くため、パンチとダイの相対位置精度が格段に向上します。クリアランスが0.02mm以下の薄板打ち抜きや、高精度な順送型においては、このストリッパガイド付き可動ストリッパが不可欠です。


選定の目安は以下の通りです。


| 条件 | 推奨タイプ |
|---|---|
| 板厚が比較的厚く、精度要求が低い | 固定式ストリッパ |
| 薄板・精密打ち抜き・曲げ加工 | 可動式ストリッパ |
| 高精度・クリアランス0.05mm以下 | 可動式+ストリッパガイド付き |
| 多量生産・長寿命が必要 | 可動式+焼入れSKD11材 |


なお、可動ストリッパはストリッパボルトと呼ばれるボルトで上型から吊り下げる構造になっています。このストリッパボルトが緩んだり破損したりすると、ストリッパープレートが暴れて加工品の寸法不良や金型破損につながるため、定期的な点検が必要です。定期点検が基本です。


MISUMI技術情報「ストリッパガイド組立時の注意点」—ストリッパガイドピンの組立精度が芯ズレ・パンチ折損に与える影響と、5種類の対策方法が詳しく解説されているページ


ストリッパープレートの材質選定:S50CからSKD11まで何が変わるか

ストリッパープレートの材質選定は、現場で見落とされがちなポイントですが、金型の寿命・不良発生率・メンテナンスコストに直接影響します。代表的な材質はS50C・プリハードン鋼・SKS3・SKD11の4種類です。


S50C・プリハードン鋼は、主に「かす取り機能だけ」を求める場合に使われる材質です。熱処理が不要のため加工コストが低く、少量生産や試作金型に適しています。ただしパンチガイド機能や材料押さえ機能をこの材質で担わせてしまうと、ミスパンチが起きたときにプレート自体が変形してしまうリスクがあります。材質が柔らかすぎるということですね。


SKS3(合金工具鋼)は、熱処理(焼入れ)によりHRC56前後の硬度が得られる材質です。パンチガイドや材料押さえ機能を持たせる際の標準的な選択肢で、精度とコストのバランスが良い材質です。ただし、SKS3はワイヤー放電加工時に加工誤差が出やすい場合があります。


SKD11(冷間ダイス鋼)は、耐摩耗性靭性においてSKS3を大きく上回る材質です。1.5%程度の高炭素と12%のクロムを含む炭化物が硬度の源泉となっており、多量生産金型のストリッパープレートやダイプレートの標準材質として広く使われています。ワイヤー放電加工との相性も良く、現在では精密金型のストリッパーといえばSKD11が原則です。


ただし注意点があります。SKD11をワイヤー放電加工で仕上げる場合、一般的な低温焼き戻し(150〜200℃)ではなく、高温焼き戻し(500〜600℃)が推奨されています。これにより加工安定性が上がり、加工後の寸法変化が軽減されます。このひと手間を省略すると、後の組立調整に何時間もかかることがあるので要注意です。


材質選定の実務的なフローとして、①少量生産・かす取りのみ→S50Cまたはプリハードン鋼、②中量生産・材料押さえ+パンチガイドあり→SKS3(焼入れ)、③多量生産・高精度・長寿命→SKD11(焼入れ+高温焼き戻し)、という順番で考えると迷いにくいです。


MISUMI技術情報「金型主要部品の材質(1)」—ストリッパープレートを含む各プレートの材質選定基準と使い分けが、用途ごとに体系的にまとめられた専門解説ページ


ストリッパースプリングの破損対策:寿命を1000万から5000万ショットへ伸ばす方法

可動ストリッパを動かすスプリング(ストリッパースプリング)は、プレス金型の中で最も消耗しやすい部品のひとつです。多くの現場で「なぜかスプリングがよく折れる」という悩みを抱えていますが、その原因と対策は意外なほどシンプルです。


スプリング破損の典型的なパターンは、「スプリングの1巻目あたりから亀裂が入って折損する」というものです。これはプレス加工の高速繰り返し動作(たとえば小物電子部品では毎分2,000〜3,000ショット)により、スプリング全体に均等なたわみが分散されずに一点集中となり、その部分に熱が発生することが原因です。熱集中が折損の原因です。


また、生産中にスプリングが折れても加工機は止まらないケースがほとんどで、定期メンテナンス時に初めて発見されることが多い点も問題です。折れた状態で加工が続くと、ストリッパープレートの押さえ力が不均一になり、曲げ寸法のバラつきや打ち抜き不良が発生します。


効果が実証された対策は「スプリング周辺をプレス加工油のプールにする」方法です。スプリングが設置されているエリアに油溜まりを設けることで、発熱を油が吸収・冷却し、スプリングの折損を劇的に抑制できます。実際の報告では、この対策を施したことで従来1,000万ショットだったスプリング寿命が、5,000万ショット超でも破損しない状態になったことが確認されています。これは使えそうです。


この際使用する油はプレス加工で被加工材に塗布している加工油を推奨します。万が一油が被加工材に漏れた場合でも製品への影響を最小化できるためです。また、油漏れ防止のためにパッキンを使用することも重要なポイントです。


スプリングの種類・配置設計も破損率に影響します。スプリングがストリッパープレートの荷重中心から偏った位置に配置されていると、プレートに傾きが生じ、特定のスプリングに負荷が集中します。スプリング配置の見直しと油冷却対策を組み合わせることで、スプリング交換にかかるメンテナンスコストと停機時間を大幅に削減できます。


ユーロテクノ「ストリッパ・スプリングの破損と対策」—スプリング折損のメカニズムから、油冷却による寿命5倍超の実証データまでを写真・図解つきで解説している技術情報ページ


ストリッパープレートの精度管理とプレート加工手順:現場で見落とされやすい工程

ストリッパープレートの精度が確保できていないと、金型トラブルが連鎖的に発生します。その内容は大きく3つに分類できます。


①パンチ・ダイの短寿命化です。ストリッパープレートの穴位置精度が低いと、パンチガイドとしての機能が正しく働かず、パンチとダイのクリアランスが不均一になります。クリアランスが偏ると、パンチが毎ショットわずかに傾いて下降し続けることになり、パンチ外周の片側だけが集中的に摩耗・欠損します。最悪の場合、数百ショットという短期間でパンチ折損に至ることもあります。


②バリの発生と製品不良です。クリアランスの不均一はバリの発生を誘発するだけでなく、バリの大きさや形状に偏りを生じさせます。製品の一方向だけにバリが大きい場合は、ストリッパープレートの精度を疑う必要があります。痛いですね。


③長時間の組立調整です。プレートの精度が出ていない状態で金型を組み立てようとすると、シム(調整板)を何枚も挟んで位置を微調整する「シム調整」に多大な時間を取られます。熟練技能者であっても数時間〜半日以上かかるケースもあります。


高精度なストリッパープレートを製作するための加工工程は次の通りです。①マシニング加工(粗加工・穴あけ)→②焼入れ→③平面研削1(基準面仕上げ)→④ワイヤー放電加工(精密穴・形状加工)→⑤ジグ研削加工(高精度丸穴仕上げ)→⑥平面研削2(上下面の面粗度・平坦度確保)→⑦仕上げ(バリ除去・ミガキ)→⑧検査、という8工程を経ます。


特に重要なのは⑤のジグ研削工程です。ガイドポスト穴やブシュ穴などの基準穴を、ジグ研削盤でミクロン単位の精度に仕上げることで、金型全体の位置精度の基準が確立されます。この工程を省略すると、後工程でいくら調整しても精度が出にくくなります。精度確保が最優先です。


南雲製作所のような精密金型メーカーでは、±2μm(±0.002mm)の精度のプレート加工にも対応できる体制を整えているところもあります。バリの発生が多い・パンチが頻繁に摩耗するといった悩みがある場合は、ストリッパープレート自体の精度を見直すことが解決の近道になることがあります。


南雲製作所「精密プレス金型 高精度プレートの役割や重要性とは?」—プレート加工の8工程と、精度不足で起きる3つの問題(パンチ短寿命・バリ・組立時間超過)について丁寧に解説しているコラム




ホーザン(HOZAN) VVFストリッパー 第二種電気工事士試験対応 機械式ワイヤーストリッパー 1.6/2.0mmエコ電線にも対応 P-929