SUS405の磁性と加工現場での正しい活用法

SUS405はフェライト系ステンレス鋼として常に磁性を持つ素材です。現場での選定ミスや加工トラブルを防ぐために、磁性の仕組みと実務上の注意点を知っておくべきではないでしょうか?

SUS405の磁性を正しく理解して加工現場でのトラブルを防ぐ

SUS405を「どうせステンレスだから非磁性」と思い込んで選定すると、検査工程でNGが出て納期が丸ごと吹き飛びます。 steelprogroup(https://steelprogroup.com/ja/stainless-steel/grades/grade-405/)


SUS405の磁性 3つのポイント
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SUS405は常に磁性あり

フェライト系ステンレスであるSUS405は、室温から常時強磁性を示します。非磁性のSUS304とは根本的に異なります。

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加工・溶接でも磁性は変わらない

フェライト系は加工しても組織がフェライトのまま維持されるため、磁性が加工後も持続します。SUS304とは異なる挙動です。

選定ミスを防ぐ材料知識

磁性の有無は用途選定の重要基準。非磁性が必要な場合はSUS316、磁性が必要ならSUS405・SUS430が候補になります。


SUS405の磁性の正体:フェライト系ステンレスとは何か

SUS405はフェライト系ステンレス鋼に分類され、主成分は鉄とクロム(約12〜14%)、そして少量のアルミニウム(Al)です。 このアルミニウムの添加が、SUS405の最大の特徴を決定づけています。つまり磁性があります。 susjis(https://www.susjis.info/ferritic/sus405.html)


フェライト系ステンレスは、常温において「フェライト組織」を保持しています。 フェライト組織は強磁性体であり、外部磁場に引き寄せられる性質があります。同じ「ステンレス」でも、SUS304やSUS316といったオーステナイト系はニッケルを多量に含むため磁性を持ちません。 sus-shinshin.co(https://sus-shinshin.co.jp/column/about-ferritic-stainless-steel/)


ここで重要な区分を整理します。


| 種類 | 代表鋼種 | 磁性 | 主な特徴 |
|------|----------|------|----------|
| オーステナイト系 | SUS304、SUS316 | なし(非磁性) | 耐食性最高、ニッケル含有 |
| フェライト系 | SUS405、SUS430 | あり(強磁性) | コスト低め、溶接後の硬化抑制 |
| マルテンサイト系 | SUS410、SUS440C | あり(強磁性) | 硬度・強度が高い |


d-monoweb(https://d-monoweb.com/blog/characteristics-susmaterials/)


SUS405が他のフェライト系と異なる点は、高温から冷却した際に「著しく硬化しない」という性質です。 これはアルミニウム添加によって焼入れ感受性を抑えた設計であり、溶接後も脆化しにくいことを意味します。つまりフェライト系の中でも溶接用途向けに最適化された鋼種です。 susjis(https://www.susjis.info/ferritic/sus405.html)


SUS405の磁性が現場判断に与える影響:透磁率と実務への関係

「磁性がある」とひとことで言っても、どの程度磁石に引きつけられるのかは鋼種によって差があります。 SUS405の透磁率は公開データによると約55(相対値)程度とされており、これはSUS430の約50と同水準です。 tokkin.co(https://www.tokkin.co.jp/media/technicalcolumn/2501170)


意外ですね。


現場で磁石チェックを行う際、SUS405はしっかりと磁石に吸着します。これを「おかしい、ステンレスなのに」と思ってしまう加工者が実際に存在します。 非磁性前提で設計した装置や治具に使ってしまうと、検査段階でアウトになるリスクが生じます。 d-monoweb(https://d-monoweb.com/blog/characteristics-susmaterials/)


特に電気・電子部品の固定金具や、センサー周辺の取り付けブラケットなど、「非磁性が仕様に入っている」用途では要注意です。 発注図面に「非磁性材」と指定がある場合、SUS405を選定した時点でアウト。受注後の材料変更は追加コストと工期遅延の原因になります。これが条件です。 engineer-education(https://engineer-education.com/electromagnetic-stainless-steel/)


参考:フェライト系ステンレス鋼の特性全般についてまとめられた解説ページ(切削性・溶接性・磁性の比較表あり)


フェライト系ステンレスとは?|種類や特徴、用途について解説


SUS405の磁性と溶接後の組織変化:現場が見落としやすい注意点

フェライト系であるSUS405は、加工や溶接後も基本的にフェライト組織を維持します。 これはオーステナイト系(SUS304)が加工によってマルテンサイト化し、意図せず磁性を帯びるトラブルとは逆のパターンです。SUS405は最初から磁性があります。 tokkin.co(https://www.tokkin.co.jp/media/technicalcolumn/2501170)


溶接時の注意点が一つあります。SUS405を溶接すると、熱影響部(HAZ)において粒界腐食が発生しやすくなる傾向があります。 これはフェライト系に共通の課題で、クロムが粒界近傍で炭化物を形成し、耐食性が局所的に低下するためです。 askk.co(https://www.askk.co.jp/contents/course/sus430.html)


SUS405のアルミニウム添加は、まさにこの問題を緩和するために設計された工夫です。 アルミを加えることでフェライト組織が安定し、溶接後の硬化・脆化を抑えます。これは使えそうです。 susjis(https://www.susjis.info/ferritic/sus405.html)


ただし、溶接後の耐食性を確保するには、設計段階から次の点を押さえておく必要があります。


- 入熱量を低く抑えた溶接条件を設定する(多層盛りを避ける)
- 溶接後に必要に応じてアニール処理(焼鈍)を行う
- 溶接箇所に過度の加工応力を加えない


SUS405の磁性を活かす用途と、誤選定で起きるクレームの実例

SUS405の磁性は、用途によっては「利点」になります。 電磁ステンレス鋼として、磁気的な応答が必要なセンサー部品、電磁弁のコア部品、ポンプのシャフトガイドなど、軟磁気特性が求められる用途に使用されます。 engineer-education(https://engineer-education.com/electromagnetic-stainless-steel/)


一方で、設計者が非磁性を前提に発注してしまい、加工側がSUS405で作り込んでしまうケースが現場では発生しています。 出荷前の磁性チェックで引っかかり、全数廃棄・作り直しになると、材料費・加工費・工数のすべてが無駄になります。痛いですね。 metal-speed(https://www.metal-speed.com/onepoint/stainless-type/)


誤選定をぐために有効なのは、図面・指示書の段階で「JIS記号+磁性条件」を明記するルールを設けることです。 例えば「SUS316L(非磁性)」「SUS405(強磁性)」と明示するだけで、加工者・調達者の誤認が大幅に減ります。社内標準として一行追加するだけで済む対策です。これだけ覚えておけばOKです。 steelprogroup(https://steelprogroup.com/ja/stainless-steel/grades/grade-405/)


参考:SUS材料の種類ごとの磁性と特徴をわかりやすくまとめた実務向け解説


磁石につくステンレスもある?よく使うSUS材料の種類や特徴を解説


SUS405の磁性を管理する独自視点:材料受け入れ検査での「磁性チェック」を標準化する

多くの加工現場では、材料受け入れ時に寸法検査や表面確認は行っても、「磁性確認」を標準工程に組み込んでいるケースは多くありません。 しかし、SUS材の混在(SUS304とSUS405の取り違え)は外観だけでは判別が非常に困難です。 metal-speed(https://www.metal-speed.com/onepoint/stainless-type/)


実はどちらも銀灰色で光沢があり、見た目で区別することはほぼ不可能です。 材料管理が甘い現場では、保管棚の材料が混在したまま加工に投入されるリスクがあります。そのまま出荷すると後工程でクレームに直結します。 d-monoweb(https://d-monoweb.com/blog/characteristics-susmaterials/)


対策として、材料受け入れ時に「フェライトスコープ」または「ネオジム磁石」を用いた簡易磁性チェックを実施することが有効です。 ネオジム磁石はホームセンターで数百円から入手できます。SUS405はしっかり吸着し、SUS304(無加工品)は吸着しないか非常に弱い反応を示します。 hokutohgiken.co(https://hokutohgiken.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%AC%E3%82%B9%E9%8B%BC%E3%81%AE%E7%A3%81%E6%80%A7%E3%82%92%E5%B8%AF%E3%81%B3%E3%82%8B%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E3%81%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96/)


以下のような受け入れ検査フローを取り入れると効果的です。


1. 材料ロットごとに規格書(ミルシート)を確認し、JIS記号を照合する
2. ネオジム磁石で磁性の有無をチェックし、記録に残す
3. 磁性あり=フェライト系またはマルテンサイト系として保管場所を分ける
4. 磁性なし=オーステナイト系として別棚管理し、ラベルを貼る
5. 判断に迷う素材は分光分析(PMI検査)で鋼種を確定させる


このフローを月に1度も使えば、材料取り違えによる加工損失をほぼゼロに抑えられます。 管理コストはほとんどかからず、クレーム1件分の損失を考えれば明らかに元が取れる投資です。いいことですね。 jp.meviy.misumi-ec(https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/54409/)


フェライトスコープの詳細や選び方については、計測機器メーカーの技術資料も参考になります。現場の実態に合わせた測定機器を選ぶと、精度と利便性のバランスが取りやすくなります。


参考:ステンレス鋼の磁性チェックの方法論と加工による変化の詳細解説


ステンレス(SUS304/SUS430)が磁石に付く理由|meviy ミスミ


参考:SUS405を含む強磁性ステンレス鋼の磁気特性に関する学術文献(J-GLOBAL)


強磁性ステンレス鋼 SUS403・SUS410J1・SUS405の磁気特性|J-GLOBAL