センサーとアクチュエータの種類と原理、FAでの役割と制御の仕組み

工場の自動化に不可欠なセンサーとアクチュエータ。その基本的な関係性から、種類ごとの特徴、金属加工現場での具体的な活用法まで詳しく解説します。さらに、一歩進んだ故障予-知の技術まで、あなたの工場の生産性を向上させるヒントが見つかるかもしれませんよ?

センサーとアクチュエータの基本

この記事でわかること
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基本原理

センサーが「感知」し、アクチュエータが「動く」までの信号の流れを理解できます。

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種類と役割

金属加工の現場で活躍する具体的なセンサーとアクチュエータの種類、それぞれの得意な仕事がわかります。

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未来の技術

AIを活用した故障予知など、一歩先の保全技術と生産性向上のヒントを得られます。

センサーの基本原理とアクチュエータへの信号伝達の仕組み

 


金属加工の現場、特にファクトリーオートメーション(FA)において、センサーとアクチュエータは人間でいうところの「五感」と「筋肉」のような関係にあります 。この2つが連携することで、機械は自律的に判断し、精密な作業を行うことができるのです 。まずは、その基本的な仕組みから見ていきましょう。
全ての自動化プロセスは、センサーが何らかの「変化」を検知することから始まります 。この変化とは、ワーク(加工対象物)の有無、温度、圧力、距離、色など、物理的または化学的な量の変化です 。センサーの役割は、これらのアナログな物理量を「電気信号」という共通の言葉に翻訳することです 。例えば、物体が近づいたことを検知する近接センサーは、物体との距離の変化を電圧の変化という電気信号に変換します 。
センサーから発信された電気信号は、次に「コントローラ(PLCなど)」へと送られます 。コントローラは、人間でいう「脳」の役割を担い、受け取った信号を解釈し、あらかじめプログラムされた指示(ロジック)に基づいて、「次に何をすべきか」を判断します 。例えば、「ワークが所定の位置に到達した(センサー信号)→ドリルを下降させよ(次の指示)」といった判断を下します。
そして、コントローラからの指令を受けて実際に「動く」のがアクチュエータです 。アクチュエータは、コントローラからの電気信号を、物理的な動き(直線運動、回転運動など)に変換する駆動装置です 。モーターやシリンダーがその代表例です 。つまり、信号の流れをまとめると以下のようになります。

     

  1. センサー:物理的な変化(位置、温度、圧力など)を検知し、電気信号に変換する 。
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  3. コントローラ(ECU/PLC):センサーからの信号を受け取り、プログラムに基づいて判断し、アクチュエータへ指令信号を送る 。
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  5. アクチュエータ:コントローラからの指令信号を受け取り、機械を物理的に動かす(押す、引く、回すなど) 。

この一連の流れは非常に高速で行われ、人間の目や手では到底不可能な速度と精度で、複雑な加工作業を実現しています。近年では、MEMS(微小電気機械システム)技術の進歩により、センサー自体が極めて小型化・高機能化しており、より緻密な制御が可能になっています 。

センサーの種類と金属加工現場での具体的な役割


金属加工の現場では、目的や環境に応じて多種多様なセンサーが活躍しています 。ここでは、特に使用頻度の高い代表的なセンサーとその役割について、具体的な活用例を交えて解説します。

センサーの種類と役割

     

  • 光電センサー

    光の性質を利用して物体の有無や通過を検出します 。投光器から発射した光が、対象物によって遮られたり反射されたりするのを検出します。コンベアラインを流れる部品のカウントや、機械の危険範囲への侵入検知などに使われます 。透過型、反射型など様々な種類があります 。
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  • 近接センサー

    センサーの検出面に物体が近づいたことを非接触で検出します 。金属の検出に特化した「誘導型」と、金属・非金属を問わず検出できる「静電容量型」が代表的です 。シリンダのピストン位置の確認や、パレット上のワークの有無検知などに広く用いられます。
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  • 変位センサー

    対象物までの距離や位置の変化量を精密に測定します 。レーザー光を使うタイプや、磁界の変化を利用する「渦電流式」などがあります 。特に渦電流式変位センサーは、検出対象が金属に限られますが、油や汚れが付着した環境でも安定して検出できるため、切削加工機の刃物の摩耗検知や、プレス加工における金型の振れ監視などに適しています 。
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  • ファイバーセンサー

    光ファイバーを使い、光を狭い場所や過酷な環境へ導いて検出を行います 。アンプとファイバーユニットが分離しているため、ヘッド部が非常に小さく、電子部品のような微小な対象物の検出や、装置の狭い隙間での位置決めに威力を発揮します 。耐熱性や耐薬品性に優れたファイバーを選べば、特殊な環境でも使用可能です 。
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  • ロードセル(荷重センサー)

    物体にかかる力や重さ(荷重)を電気信号に変換するセンサーです 。プレス機の加圧力の管理や、ロボットハンドの把持力の制御、材料の重量計測などに使用されます 。これにより、加工品質の安定化や、製品へのダメージ止が可能になります。

これらのセンサーを適切に選択し組み合わせることで、生産ラインの自動化レベルと信頼性を大幅に向上させることができます 。

参考リンク:キーエンス社のウェブサイトでは、各種センサーの原理や用途が図解付きで分かりやすく解説されています。
センサの種類と用途 | センサとは.com | キーエンス

アクチュエータの種類(電動・油圧・空圧)と特徴の比較


アクチュエータは、FAシステムにおける「手足」であり、その動力源によって大きく「電動式」「油圧式」「空圧式」の3種類に分けられます 。それぞれに一長一短があり、用途に応じて最適なものを選ぶことが重要です。

アクチュエータの種類別 特徴比較表

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

種類 動力源 長所 短所 主な用途(金属加工)
電動式 電気 ・高精度な位置決め、速度制御、推力制御が可能
・多点位置決めが得意
・エネルギー効率が良い
・油圧式ほどの大きな力は出せない
・衝撃に弱い場合がある
・比較的高価
産業用ロボット、NC工作機械のテーブル送り、搬送装置
油圧式 作動油 ・非常に大きな力を出せる(小型でもハイパワー)
・応答性が高く、力の調整が容易
・耐久性が高く、衝撃に強い
・油漏れのリスクがある
・油温管理が必要
・付帯設備(油圧ユニット)が大型化しやすい
プレス機、射出成形機、大型工作機械、建設機械
空圧式 圧縮空気 ・構造がシンプルで安価
・高速動作が可能
・空気が動力源のためクリーン
・中間の位置決めが困難(基本的に2点間のみ)
・空気の圧縮性により、厳密な速度制御は苦手
・油圧式ほどの力は出せない
部品の搬送・クランプ、エアブロー、小型プレス機の駆動

例えば、ミクロン単位の位置決め精度が求められるNC旋盤の刃物台の移動には「電動式」のサーボモータが、数百トンの圧力をかける大型プレス機には「油圧式」のシリンダが、そして加工後の切り屑を吹き飛ばすエアブローには「空圧式」のバルブとノズルが使われる、といった具合です 。このように、機械に求められる「動きの質」によってアクチュエータを使い分けるのが設計の基本となります。

センサーとアクチュエータの連携によるFA・ロボット技術の進化


ファクトリーオートメーション(FA)やロボット技術の歴史は、センサーとアクチュエータの連携の進化の歴史と言っても過言ではありません 。初期の自動化は、単純なON/OFF制御が中心でした。例えば、「リミットスイッチ(センサー)がONになったら、シリンダ(アクチュエータ)を停止させる」といった具合です。これは確実な動作ですが、柔軟性に欠け、設定された単一の作業しかこなせません。
しかし、センサーが高機能化し、コントローラの処理能力が向上するにつれて、より高度な連携が可能になりました。例えば、以下のような進化が挙げられます。

     

  • フィードバック制御の高度化

    電動アクチュエータ(サーボモータ)に内蔵されたエンコーダ(位置センサー)からの情報を常にコントローラにフィードバックすることで、極めて高精度な位置決めや速度制御が実現しました。ロボットアームが寸分たがわぬ軌道で動けるのは、この技術のおかげです。アクチュエータの動きをリアルタイムで監視し、目標値とのズレを即座に補正するクローズドループ制御がFAの精度を飛躍的に向上させました 。
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  • 力覚センサーとの連携

    ロボットの手首などに「力覚センサー」を取り付けることで、ロボットは「どのくらいの力で物に触れているか」を感知できるようになります。これにより、従来は難しかった「バリ取り」のような繊細な力加減が求められる作業や、部品を傷つけずに優しく嵌め込む「挿入作業」などが自動化できるようになりました。

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  • 画像センサー(ビジョンセンサー)との連携

    カメラ(画像センサー)でワークの位置や向き、種類を認識し、その情報を元にロボット(アクチュエータ)がピッキング作業を行う「ビジョン&ピッキング」は、今や珍しくない光景です。これにより、コンベア上にランダムに流れてくる多品種のワークを自動で仕分けるといった、柔軟性の高い自動化ラインを構築できます 。

このように、多種多様なセンサーからの情報を統合的に処理し、アクチュエータの動きをリアルタイムで最適化することで、ロボットや自動機はより「賢く」、そして「器用」になっていきます。ハードウェアとソフトウェアの連携が、生産現場の可能性を大きく広げているのです 。

【独自視点】センサーデータを活用したアクチュエータの故障予知と寿命診断の最前線


これまでセンサーは、主に機械の「制御」のために使われてきました。しかし近年、もう一つの重要な役割として「状態監視」と「故障予知」への活用が急速に進んでいます 。これは、機械が壊れてから修理する「事後保全」や、定期的に部品を交換する「予防保全」から一歩進んだ、「予知保全(CBM:Condition Based Maintenance)」と呼ばれる考え方です 。
その主役となるのが、アクチュエータやその周辺に取り付けられた様々なIoTセンサーです 。

     

  • 振動センサー:モーターや減速機の異常な振動を検知します。ベアリングの摩耗や潤滑不良、ギアの歯の欠けなど、回転体の異常は振動の変化として現れやすいです。
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  • 温度センサー:モーターのコイルや油圧ユニットの作動油の温度を監視します 。過負荷による異常発熱や、冷却ファンの故障などを早期に捉えることができます。
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  • 電流センサー:モーターの駆動電流を監視します 。機械的な負荷の増大や、電気系統の異常を電流値の変化から読み取ります。
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  • 圧力センサー:油圧・空圧システムの圧力を監視します。圧力の異常な低下や脈動は、ポンプの劣化や配管からのリークを示唆します。

これらのセンサーからリアルタイムで収集される膨大な時系列データを、AI(人工知能)や機械学習の技術を用いて分析します 。AIは、正常時のデータパターンを学習し、そこから外れる「いつもと違う」挙動、すなわち「異常の予兆」を検知します 。人間が気づかないような微細な変化を捉え、「このモーターはあと3週間でベアリングの寿命を迎える可能性が高い」といった具体的な寿命予測まで可能にしつつあります 。
さらに進んだ技術として「デジタルツイン」も注目されています 。これは、現実の機械と全く同じ状態をコンピュータ上の仮想空間に再現する技術です。現実の機械から送られてくるセンサーデータを使って仮想空間上のモデルを常に更新し続けることで、もしこのまま稼働を続けたらどうなるか、といった未来のシミュレーションを高精度で行うことができます 。これにより、最適なメンテナンス時期の特定や、トラブルの根本原因の究明が容易になります。
このような予知保全技術は、突然のライン停止による生産ロスを防ぎ、メンテナンスコストを最適化し、製品の品質向上にも繋がる、非常に価値の高い取り組みです。センサーはもはや単なる「スイッチ」ではなく、工場の安定稼働と生産性を支える「インテリジェントな目」へと進化しているのです。

参考リンク:AIによる予知保全の仕組みや事例について、こちらのサイトで詳しく解説されています。
AIによる予知保全の活用事例8選!IoTセンサーとの連携で故障検知 - AI Market

 

 


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