深絞り加工のしわ原因と対策を工程別に解説

深絞り加工で発生するしわの原因はフランジだけではありません。しわ押さえ力・クリアランス・材料選定まで工程ごとに対策を解説します。現場ですぐ使える知識とは?

深絞り加工のしわ対策を原因・工程・数値で徹底解説

しわ押さえ力を強くするほど、割れリスクが上がって不良品が増えます。


この記事でわかること
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しわの種類と発生メカニズム

フランジしわ・側壁しわ・ボデーしわの3種類を区別し、それぞれの原因を数値ベースで理解できます。

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しわ押さえ力の適正範囲と金型設計

材質ごとのしわ押さえ圧力の目安(軟鋼:1.57〜1.76 MPa など)やダイクリアランスの設定方法を解説します。

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材料選定・工程分割・量産管理

r値(ランクフォード値)による材料評価、絞り率の目安、量産時の金型摩耗管理まで網羅します。


深絞り加工のしわとは何か:3種類の発生パターンを理解する


深絞り加工でしわが発生する場所は、大きく「フランジしわ」「側壁しわ(ボデーしわ)」「口辺りしわ」の3つに分類されます。それぞれ発生メカニズムが異なるため、対策も変わります。この区別を最初に押さえておくことが、現場での迅速なトラブル対応につながります。


フランジしわは、絞り加工の初工程(初絞り)で最も多く発生するしわです。ブランク材がダイの内側に引き込まれる際、フランジ部に周方向の圧縮応力が集中します。これが板材の座屈抵抗を上回ると、材料が波打つように変形します。フランジ全周に均一にしわが発生している場合は、しわ押さえ力が全体的に不足しているサインです。一方、フランジの一部だけにしわが偏っている場合は、クッションピンの長さが揃っていない、またはダイとしわ押さえ面が平行になっていないことが疑われます。均一なしわかどうかを確認するのが最初のステップです。


側壁しわとボデーしわは、円筒部の壁面に発生します。側壁しわはダイR部の下から側壁にかけて発生し、主な原因は絞りクリアランスが大きすぎることです。ミスミのプレス金型設計資料によると、通常の絞りでは板厚増加を見込んで素材板厚より最大40%ほど大きくしますが、これを超えてクリアランスを取りすぎると側壁しわが顕著になります。ボデーしわは側壁の中間部に発生し、半球絞りやテーパ絞りで多く見られます。絞り加工途中でダイRとパンチRの間の材料が拘束なし(フリー)の状態になったときに発生するため、円筒絞り・テーパ絞り・半球絞りの順で加工難易度が上がります。


口辺りしわは、加工の終盤でブランクホルダーから材料が外れ、しわ押さえ力がゼロになることで発生します。ダイスRの設定が板厚の約4〜20倍という適正範囲を超えて大きくなりすぎた場合に起こります。つまり、同じ「しわ」でも原因が全く異なります。


▶ ミスミ技術情報:側壁しわとボデーしわの発生原因と対策(絞り加工の現象・原因・対策 その3)


深絞り加工のしわ押さえ力:適正範囲と材質ごとの数値目安

しわ押さえ力(ブランクホルダー圧力)は、深絞り加工のしわ対策において最重要パラメータです。弱すぎればしわ、強すぎれば割れ。この相反する問題を制御する必要があります。


しわ押さえ圧力の最小値の目安は、材質によって明確に異なります。ミスミの技術データによると、材質別のしわ押さえ圧力の下限は以下のとおりです。




























材質 しわ押さえ圧力(最小値)
軟鋼 1.57〜1.76 MPa(0.16〜0.18 kgf/mm²)
ステンレス鋼 1.76〜1.96 MPa(0.18〜0.20 kgf/mm²)
アルミニウム 0.29〜0.69 MPa(0.03〜0.07 kgf/mm²)
0.78〜1.18 MPa(0.08〜0.12 kgf/mm²)
黄銅 1.08〜1.57 MPa(0.11〜0.16 kgf/mm²)


この数値はあくまで最小値の目安です。実際の最適値は、ダイ面の面粗さや潤滑油の状態によって変動します。そのため絞り金型は「しわ押さえ圧力が調節可能な構造」にしておくことが原則です。


また、しわが発生するかどうかを事前に判断できる式として、相対板厚を使った判定式があります。


$$t / d \geq K \times [(D/d) - 1]$$


ここで t は板厚、d はダイ直径、D はブランク直径、K は0.09〜0.17の係数です。この式を満たす(t/dが十分大きい)場合は、しわ押さえなしでの加工も可能です。板厚が薄くなるほど t/d は小さくなり、わずかな押さえ力の変化がしわの発生に直結します。これが条件です。


さらに、しわ押さえには「固定式」と「可動式」の2タイプがあります。固定式は構造がシンプルですが圧力調整の自由度が低く、可動式はスプリングやダイクッションで圧力をかけながら加工するため、より精密なコントロールが可能です。精密深絞りや薄板加工では、可動式のブランクホルダーが不可欠です。


▶ ミスミ技術情報:絞り型のしわ押さえ・材質別しわ押さえ圧力の目安表


深絞り加工のしわを引き起こすダイクリアランスとダイRの設定ミス

しわの原因を「しわ押さえ力だけ」と思い込んでいると、金型設計段階での見落としが生まれます。ダイクリアランスとダイR(肩半径)の設定は、しわ発生に直接関わる金型設計上の重要ポイントです。


ダイクリアランスとは、パンチとダイの間の隙間のことです。このクリアランスが大きすぎると、材料が通過する際に十分な拘束が得られず、側壁に波状のしわが生じます。池田製作所の技術資料によると、精密深絞りプレス加工では「ダイのクリアランスを製品径の約1.1倍にする」ことがフランジ部のしわ(面歪み)対策として有効とされています。また各絞り工程での絞り率(m値)の目安は、初絞りで0.5〜0.6、2絞りで0.75〜0.8、3絞りで0.8〜0.9です。初絞りはクリアランスを大きめにとり、工程が進むにつれて徐々に小さくし、しごき加工を加えながら板厚を均一に仕上げていくのが基本的な工程設計です。


ダイR(ダイ肩半径)の設定も重要です。ダイRが大きすぎると、加工終盤でブランクホルダーから材料が外れるタイミングが早まり、口辺りしわが発生します。一般的な設定範囲は板厚の約4〜20倍とされており、この上限に近い、または超えた設定の場合にしわが起きやすいです。対策としてはダイRを小さく調整するのが有効です。一方でダイRが小さすぎると、材料の流れが急になって割れが発生しやすくなります。しわと割れはトレードオフの関係です。


この兼ね合いを整理するために有効なのが、金型製作前の成形シミュレーション(CAE解析)です。AutoFormやPAM-STAMPなどのソフトウェアを使うことで、クリアランスやダイRの変更がしわ・割れに与える影響を仮想空間で確認でき、試作コストと手戻り工数を大幅に削減できます。これは使えそうです。


深絞り加工のしわ対策としての材料選定:r値とn値を活用する

現場の技術者の中には、加工条件の調整だけでしわを克服しようとする場合があります。しかし、材料選定の段階でのミスは、どれだけ金型や加工条件を調整しても完全には補えません。材料特性の理解が、しわ対策の上流工程に当たります。


深絞り加工において重要な材料指標は「r値(ランクフォード値)」と「n値(加工硬化係数)」の2つです。r値は、板を引き延ばしたときに板厚方向ではなく板幅方向に縮む性質の強さを示す指標です。r値が大きいほど板厚が維持されやすく、深絞り性に優れています。r値が大きい材料は、絞り加工中に板厚を維持しながら変形するため、フランジ部の圧縮応力が均等に分散しやすく、しわが発生しにくくなります。


一般的な材料のr値の目安は次のとおりです。



  • SPCE(深絞り用冷間圧延鋼板):r値 ≒ 1.8〜2.2と高く、深絞り性が最も優れた鋼板

  • SPCC(一般用冷間圧延鋼板):r値 ≒ 1.3〜1.8で、SPCEより若干劣るが実用的

  • SUS304(オーステナイト系ステンレス):r値は1を下回ることが多く、絞り性が低い

  • アルミニウム合金:伸び率が24〜30%程度で、鋼材(40〜45%)より低く成形範囲が狭い


ステンレスやアルミニウムなどの非鉄材は、SPC材に比べてn値(加工硬化係数)が大きいため加工中に硬化しやすく、焼き付きや割れが発生しやすい点も注意が必要です。つまり、非鉄材で深絞りを行う場合は、より細かなしわ押さえ力の管理・工程分割・潤滑管理が必要になります。


もう一つ知っておくべきが「限界絞り比(LDR)」です。限界絞り比は、1回の絞りで割れを起こさずに加工できる限界のブランク径をパンチ径で割った値で、一般的に約2前後が目安とされています。この値を超えた絞り設計をすると、加工中に材料が破断します。しわ対策として絞り率を緩めると、工程数が増えますが加工の安定性は大きく向上します。


▶ 砥石情報サイト:鋼板におけるr値とは何か・深絞り加工性の判断基準として詳しく解説


深絞り加工のしわ対策で見落としがちな潤滑管理と量産時の金型摩耗

初期トライアルでは問題なく成形できていたのに、量産が進むにつれてしわが出始める――こうした現象は現場でしばしば起こります。量産時のしわ再発の多くは、金型摩耗と潤滑管理の劣化が原因です。この視点は意外に見落とされがちです。


潤滑油(絞り加工油)の役割は、しわ押さえ面やダイRでの材料流動を適切にコントロールすることです。潤滑が不足すると摩擦が増大し、材料が引っかかって割れが発生しやすくなります。一方、潤滑が過多になると摩擦が減りすぎて材料が滑り込みすぎ、しわの原因になります。潤滑は多すぎても少なすぎてもNGです。適切な潤滑油の種類・量・塗布方法の管理が安定生産の条件です。


量産時のしわ再発で特に多いのが、ブランクホルダーの摩耗によるしわ押さえ力の低下です。ブランクホルダーに焼き入れが施されていても、長期間の使用でブランク材との接触部が凹んでいき、均一な押さえが維持できなくなります。また、クッションピンの長さが複数種ある場合、誤ったサイズのピンをセットするだけで部分的にしわが発生します。クッションピンの管理も重要です。


さらに、ブランクホルダー自体の板厚が薄い場合、わずかな歪みで均一な押さえができなくなります。こうした場合は、まずブランクホルダーの摩耗・変形状況を確認し、必要に応じて再研削または交換します。量産に入る前に「ブランクホルダーの板厚と平面度」「クッションピン全本数の長さが揃っているか」を点検項目として定期化することが、しわ再発止の実践的な対策です。


プログレッシブ金型の設計マニュアルでも指摘されているとおり、潤滑性が良すぎる絞り油はしわ発生原因の一つとして明確に挙げられています。現場での油種変更や塗布量調整は、大きな設備投資なしに改善できるポイントであり、まず試す価値があります。


▶ 髙橋金属 技術コラム:絞り金型と絞り加工のトラブル事例(フランジしわ・口辺りしわ・量産時しわ再発の事例を詳解)


深絞り加工のしわ対策における独自視点:「しわを意図的に許容する」設計という発想

深絞り加工のしわ対策というと、「いかにしわをゼロにするか」が第一の目的と考えられがちです。しかし実際の現場では、「しわを完全になくすことより、しわと割れのバランスをどこに置くか」が重要な設計判断になります。


ミスミの技術資料では、フランジ全周に均一にしわが発生している状態を「よい状態のしわ」と表現しています。これはフランジ全体の押さえが均一であることを示すサインであり、工程の安定性を確認するための情報として使える現象です。つまりしわの「有無」だけでなく、「形状・分布・均一性」を観察することが現場判断の精度を上げます。


また、半球絞りやテーパ絞りの深絞りでは、ボデーしわを完全に消そうとすると加工難易度が跳ね上がります。実際には円筒絞りで階段状に近似した形状をつくり、最終工程でテーパーに仕上げるという手法がとられます。これは「しわが出やすい形状に一気に近づけない」という設計思想に基づいたものです。1工程で仕上げようとしないことが重要です。


さらに最近注目されているのが、サーボプレスを活用した「可変しわ押さえ力」の制御です。従来のメカニカルプレスやスプリング式クッションでは、加工中のしわ押さえ力は基本的に固定されていました。しかしサーボプレスでは、プレスのストローク位置に応じてしわ押さえ力をリアルタイムで変化させることができます。加工初期には強め、終盤の口辺りしわが起きやすい段階では弱めるなど、加工フェーズに合わせた最適制御が可能になります。AIを活用したリアルタイム適応制御もすでに実用段階に入っており、従来は属人的なノウハウに頼っていた「圧力の勘所」をデータで管理できる時代になっています。


品質管理の面でも、超音波センサーや画像センサーをプレス機に組み込んでフランジしわをリアルタイム検知する技術が研究されており、インライン検査による不良流出防止も現実的な選択肢になっています。これらのスマートファクトリー技術の活用が、今後の深絞り加工品質の安定化における差別化ポイントになっていくでしょう。


▶ ミスミ技術情報:絞り加工の現象・原因・対策(その1)フランジしわの発生原因と「よい状態のしわ」の解説


十分な情報が集まりました。記事を作成します。




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