成形の意味、塑性加工と鋳造・鍛造の種類と技術

成形の正確な意味や多様な加工方法をご存じですか?金属加工の基本である成形の意味から、塑性加工や鋳造、鍛造などの具体的な技術までを解説します。あなたの知らない成形の世界を深く探求してみませんか?

成形の意味

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この記事のポイント
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成形の基本

「成形」という言葉の正確な意味、そして「成型」「整形」との違いを理解できます。

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多様な加工法

塑性加工、鋳造、鍛造、プレス加工など、代表的な成形技術の特徴と違いがわかります。

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材料による違い

金属と樹脂、それぞれの材料に適した成形方法とその選び方を学べます。

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未来の技術

3Dプリンターや4Dプリンティングといった、最先端の成形技術の可能性に触れることができます。

成形の意味と塑性加工の基礎知識

 

金属加工の世界で頻繁に使われる「成形」という言葉ですが、その正確な意味を説明できる人は意外と少ないかもしれません 。「成形」とは、素材にある一定の力を加えて、目的の形に作り上げること全般を指す言葉です 。製品の形を作り出すための、いわば根幹をなす工程と言えるでしょう。
よく似た言葉に「成型」「整形」「形成」がありますが、それぞれニュアンスが異なります 。

  • 成形(せいけい)材料に力を加えて特定の形に作り上げること。本稿のテーマであり、最も広義な言葉です 。
  • 成型(せいけい):「型」を用いて製品を作る場合に特に使われることが多い言葉です 。射出成型やプレス成型などが該当します。
  • 整形(せいけい):形を整える、という意味合いが強く、美容整形や整形外科のように、すでにあるものの形を理想的な状態に整える際に使われます 。
  • 形成(けいせい):あるまとまりのあるもの、抽象的なものを作り上げる場合にも使われます 。人格形成や世論形成といった用例が挙げられます。

金属加工における成形の中でも、特に重要なのが「塑性加工(そせいかこう)」です 。塑性とは、物質に力を加えると変形し、力を取り除いても元の形に戻らない性質のことを指します 。この性質を利用して、金属を叩いたり、曲げたり、伸ばしたりして目的の形状に加工するのが塑性加工です 。
塑性加工は、加工する際の温度によって以下の3つに大別されます 。

  • 🔥 熱間加工: 材料の再結晶温度以上の高温で加工する方法です 。金属は高温になると柔らかくなり、変形しやすくなるため、小さな力で大きな変形が可能です 。ただし、寸法精度は出しにくく、表面が酸化しやすいというデメリットがあります。
  • 🌡️ 温間加工: 熱間加工と冷間加工の中間の温度域で行う加工です 。両者の長所を併せ持ち、複雑な形状の製品を作るのに適しています。
  • ❄️ 冷間加工: 材料を常温で加工する方法です 。寸法精度が高く、表面が滑らかに仕上がるのが特徴です 。一方で、加工には大きな力が必要で、加工硬化(加工によって材料が硬くなる現象)が起こりやすいという側面もあります。

このように、「成形」という一つの言葉にも、その背景には様々な意味や技術的な分類が存在するのです。

成形の種類:鋳造・鍛造・プレス加工の技術と比較

成形加工には非常に多くの種類がありますが、ここでは金属加工の代表格である「鋳造」「鍛造」「プレス加工」の3つの技術について、その原理や特徴を比較しながら詳しく解説します 。

鋳造(ちゅうぞう)

鋳造は、金属を融点よりも高い温度で溶かし、液体状にしたものを砂などで作った「鋳型(いがた)」に流し込み、冷やし固めて製品を作る加工方法です 。たい焼きをイメージすると分かりやすいかもしれません。複雑な形状の製品を一度に作れるのが最大のメリットで、大量生産に向いています。また、非常に大きな製品(例えば、船のスクリューや仏像など)の製造も可能です。一方で、内部に「鬆(す)」と呼ばれる微小な空洞ができやすく、強度や精度が他の加工方法に比べて劣ることがあります。

鍛造(たんぞう)

鍛造は、金属をハンマーやプレス機で叩いたり、圧力をかけたりして形状を整える加工方法です 。刀鍛冶が熱した鉄を叩いて刀を作るのを想像すると良いでしょう。金属の内部組織(メタルフロー)を整え、結晶を微細化することで、強度や靭性(粘り強さ)を向上させることができます 。特に、大きな力がかかる部品(自動車のエンジン部品や航空機の部品など)の製造に不可欠な技術です 。ただし、複雑な形状の製造は難しく、加工に時間とコストがかかる傾向があります。

プレス加工

プレス加工は、対になった「金型(かながた)」の間に金属の板材を挟み、プレス機械で強い圧力をかけて金型の形に成形する加工方法です 。板金加工とも呼ばれます。自動車のボディや家電製品の筐体、鍋やフライパンなど、私たちの身の回りにある多くの製品がこの方法で作られています。主な加工法として、板材を打ち抜く「せん断加工」、曲げる「曲げ加工」、立体的に成形する「絞り加工」などがあります 。生産スピードが非常に速く、大量生産に適していますが、初期投資として高価な金型が必要になります。
これらの3つの技術をまとめると、以下のようになります。

加工方法 原理 長所 短所 主な製品例
鋳造 溶かした金属を型に流し込む 複雑な形状が可能
大型製品の製造が可能
大量生産向き
強度が比較的低い
内部欠陥(鬆)ができやすい
寸法精度が低い
マンホールの蓋、仏像、自動車のエンジンブロック
鍛造 金属を叩いて圧力を加え成形する 高い強度と靭性
内部欠陥が少ない
複雑な形状が困難
加工コストが高い
生産に時間がかかる
包丁、スパナなどの工具、自動車や航空機の重要部品
プレス加工 金型で板材に圧力をかけて成形する 生産スピードが速い
寸法精度が高い
大量生産向き
金型製作にコストがかかる
複雑な立体形状は難しい
加工できる板厚に制限がある
自動車のボディ、家電製品の筐体、食器、硬貨

どの加工方法を選ぶかは、製品に求められる形状、強度、精度、生産数、コストなどを総合的に考慮して決定されます。
以下のリンクは、塑性加工の種類について図解入りで分かりやすく解説しており、本項の理解を深める上で非常に有用です。
第1回 圧延や鍛造など塑性加工技術の種類について - 株式会社マコト精機

成形における樹脂と金属加工の違いと特徴

「成形」は金属だけでなく、プラスチックなどの樹脂材料の加工でも広く使われる言葉です 。しかし、材料が違えば、当然その加工方法や特徴も大きく異なります 。ここでは、樹脂加工と金属加工の代表的な成形方法を比較し、それぞれの違いと特徴を解説します。

樹脂(プラスチック)の成形加工

樹脂の成形加工は、熱を加えると柔らかくなる「熱可塑性樹脂」の性質を利用したものが主流です。代表적인なものに以下の方法があります。

  • 射出成形 (インジェクション成形): 溶かした樹脂を金型内に高圧で射出し、冷却・固化させて製品を作る方法です 。非常に複雑な形状の製品をハイサイクルで大量生産できるため、最も広く利用されている樹脂成形法です。ペットボトルのキャップやプラモデルの部品などがこの方法で作られています。
  • 押出成形: 溶かした樹脂を「ダイ」と呼ばれる金型からところてんのように連続的に押し出して成形する方法です 。パイプ、チューブ、シート、フィルムなど、断面が一定の形状の長尺製品の生産に適しています 。
  • ブロー成形 (中空成形): 射出成形や押出成形で作成した「パリソン」と呼ばれる筒状の樹脂を金型内で膨らませて成形する方法です 。ペットボトルや灯油タンクのような中空の容器を作るのに使われます。
  • 圧縮成形: 金型内に樹脂の粉末やシートを入れ、熱と圧力をかけて成形する方法です 。主に熱硬化性樹脂(一度固まると再加熱しても柔らかくならない樹脂)の成形に用いられ、食器や電気部品などが作られます。

金属の加工

一方、金属加工は、前述の鋳造・鍛造・プレス加工といった塑性加工のほかにも、材料を除去していくことで形状を作り出す「除去加工」も一般的です。

  • 切削加工: ドリルやエンドミルといった刃物(切削工具)を高速回転させ、金属の塊から不要な部分を削り取って製品を作る方法です 。フライス加工旋盤加工がこれに当たります 。非常に高い寸法精度が要求される部品や、少量多品種の製品、複雑な形状の部品の製作に適しています。
  • 研削加工: 高速で回転する砥石(といし)を使って、金属の表面をわずかに削り、精度を高めたり、表面を滑らかに仕上げたりする加工です 。切削加工後の仕上げ工程として行われることが多いです。
  • 放電加工: 電極と金属材料との間に発生させる放電現象(火花)を利用して、金属を溶かしながら加工する方法です 。非常に硬い金属でも加工でき、切削では不可能な微細で複雑な形状の加工を得意とします。 주로 금형 제작에 사용됩니다.

樹脂加工と金属加工の比較

樹脂と金属では、材料の特性が大きく異なるため、加工方法や製品の特性にも違いが生まれます。

項目 樹脂加工 金属加工
材料 軽量、電気絶縁性、着色容易 高強度、高硬度、導電性、熱伝導性
加工温度 比較的低温(~300℃程度) 高温(鋳造、熱間鍛造)から常温まで幅広い
得意な形状 複雑で薄肉な形状、一体成形 強度や精度が求められる形状
生産性 大量生産に向いている(特に射出成形) 加工法によるが、一般に樹脂より時間はかかる
コスト 材料費は比較的安価だが、金型費が高い 材料費が高く、加工コストも高め
主な用途 雑貨、容器、家電筐体、自動車内装部品 構造部品、機械部品、工具、インフラ設備

成形技術の未来と3Dプリンターがもたらす革新

近年、製造業の世界では、従来の成形技術の常識を覆す「積層造形(Additive Manufacturing)」、通称「3Dプリンティング」が急速に普及しています 。これは、3次元の設計データをもとに、材料を一層ずつ積み重ねていくことで立体物を造形する技術です 。
従来の加工法が、材料の塊から不要な部分を削り取っていく「引き算」の加工(除去加工)や、金型に押し込む「押し込み」の加工(塑性加工)であったのに対し、3Dプリンティングは材料を足していく「足し算」の加工であるという点で画期的です。これにより、以下のような従来の工法では実現不可能、あるいは非常に困難だったことが可能になります。

  • 超複雑形状の実現: 内部に空洞があったり、複雑な格子構造(ラティス構造)を持っていたりと、金型では成形できない一体型の部品を造形できます。これにより、部品点数の削減や、軽量でありながら高い強度を持つ製品の設計が可能になります。
  • 金型不要: 3Dデータさえあれば直接製品を造形できるため、高額な金型を製作する必要がありません。これにより、試作品製作や、一点ものの特注品、少量多品種生産にかかる時間とコストを劇的に削減できます。
  • マスカスタマイゼーション: 個々の顧客のニーズに合わせて細部をカスタマイズした製品を、大量生産に近いコストで提供することが可能になります。例えば、個人の体型に完全にフィットする医療用のインプラントや、オーダーメイドの治具などが実用化されています。

金属3Dプリンターには、主に2つの方式があります 。

  1. パウダーベッド方式 (PBF): 金属粉末を薄く敷き詰め、レーザーや電子ビームで溶かして固める工程を繰り返す方法です。高い精度で複雑な形状の部品を造形できますが、比較的大掛かりな装置が必要です。
  2. 指向性エネルギー堆積方式 (DED): ノズルから金属粉末やワイヤーを供給しながら、レーザーやアーク放電で溶かして肉盛りしていく方法です。大型部品の造形や、既存部品の補修などに適しています。

さらに近年では、3Dプリンティング技術を応用した「4Dプリンティング」という概念も登場しています 。これは、3Dプリンターで造形された物体が、時間経過や外部からの刺激(熱、水分、光など)によって、プログラムされた通りに形状を変化させる技術です 。例えば、最初は平らなシート状のものが、水に浸すと自動的に立体的な箱に組み上がるといったことが可能になります。自己修復材料や、医療分野での体内埋め込みデバイスなどへの応用が期待されています
3D/4Dプリンティングは、既存の成形技術をすべて置き換えるものではありません。大量生産においては、依然として射出成形やプレス加工に分があります。しかし、製品開発のスピードアップ、高付加価値製品の創出、サプライチェーンの変革といった側面で、製造業に大きな革新をもたらすポテンシャルを秘めていることは間違いないでしょう。

【独自視点】成形不良の原因と対策、品質向上の秘訣

高品質な製品を安定して作り出すためには、成形工程で発生しうる様々な「不良」を理解し、その対策を講じることが不可欠です。どんなに優れた設備や金型を使っても、材料の特性や成形条件を正しく理解していなければ、不良の発生をゼロにすることはできません。ここでは、代表的な成形不良とその対策について、現場で役立つ視点から解説します。

代表的な成形不良とその原因

成形方法によって発生しやすい不良は異なりますが、共通してみられる代表的なものには以下のようなものがあります。

  • バリ: 金型の合わせ面や隙間から、溶けた材料がはみ出して固まったもの。射出成形やプレス加工(せん断時)でよく見られます。金型の摩耗や締め付け圧力の不足、材料の流動性が高すぎることなどが原因です。
  • ヒケ(Sink Mark): 製品の表面に生じる凹み。特に肉厚の部分で発生しやすい不良です。成形品が冷えて収縮する際に、材料の補充が追いつかないことが主な原因で、射出成形や鋳造で見られます。
  • ソリ・変形: 製品が設計通りの形状にならず、反ったり歪んだりしてしまう現象。金型から製品を取り出す際の温度や、製品内部の残留応力(収縮のばらつき)が原因です。
  • ショートショット(充填不足): 金型の隅々まで材料が行き渡らず、製品の一部が欠けてしまう不良。射出圧力や保圧の不足、材料の流動性不足、ガスの抜け不良などが考えられます。
  • ウェルドライン: 金型内で複数の溶融材料の流れが合流する部分にできる、細い線の様な模様。合流部分で材料が完全に一体化していないため、外観不良となるだけでなく、その部分の強度が低下する原因にもなります。
  • クラック(割れ): 製品にひび割れが入る現象。成形時の無理な力や、冷却速度が速すぎることによる内部応力が原因となります。

不良対策の基本アプローチ

成形不良の対策は、「なぜその不良が起きたのか」というメカニズムを正確に突き止めることから始まります。そのためには、以下の4つのMの観点から複合的に原因を分析することが重要です。

  1. Machine(機械): 成形機の設定(温度、圧力、速度など)は適切か?機械の老朽化や精度低下はないか?
  2. Material(材料): 材料のロットによるばらつきはないか?乾燥などの予備乾燥は十分か?
  3. Method(方法): 成形条件の基準は明確か?作業手順は標準化され、遵守されているか?
  4. Man(人): 作業者のスキルや経験に依存しすぎていないか?ポカミスをぐ仕組みはあるか?

これらの要因に加えて、不良に最も大きく影響するのが**Mold(金型)**です。ゲートの位置や大きさ、冷却回路の設計、ガス抜きの配置など、金型の設計が不適切だと、どんなに成形条件を調整しても不良を根本的に解決することは困難です。

品質向上への道:CAE解析と現場ノウハウの融合

近年では、コンピュータ上で成形工程をシミュレーションする「CAE(Computer Aided Engineering)解析」の活用が進んでいます。これにより、実際に金型を製作する前に、樹脂の流れや圧力、温度分布を予測し、ヒケやソリ、ウェルドラインといった不良の発生箇所を特定することが可能になりました。CAE解析を導入することで、金型修正の手間やコストを大幅に削減し、開発期間の短縮にも繋がります。
しかし、CAEはあくまでツールであり、万能ではありません。解析結果を正しく解釈し、それを現実の成形条件や金型設計に反映させるには、長年培われてきた現場の知見や経験、いわゆる「職人の勘」が不可欠です。

  • 「この材料は、少し高めの温度で流した方がウェルドが目立たなくなる」
  • 「この形状だと、金型のこの部分が冷えにくいから、冷却水路を追加しよう」
  • 「バリが出始めたら、金型のこの部分が摩耗しているサインだ」

こうした現場でしか得られないノウハウと、CAEのようなデジタル技術をうまく融合させること。それこそが、これからの製造業における品質向上の秘訣であり、他社との差別化を図る上での強力な武器となるでしょう。

 

 


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