しごき加工の原理と絞り加工との違いを徹底解説

しごき加工の原理を知っているつもりで、実は誤解したまま金型設計をしていませんか?板厚減少の仕組みからDI缶への応用まで、現場で役立つ知識を深掘りします。

しごき加工の原理と塑性変形のメカニズムを深掘り解説

板厚を薄くするつもりが、実は側壁強度が元より上がっているケースがあります。


🔩 この記事でわかること
📐
しごき加工の基本原理

パンチとダイのクリアランスを素材板厚より小さく設定し、側壁を圧縮しながら引き伸ばす塑性変形のメカニズムを解説します。

⚙️
絞り加工との違いと役割分担

絞り加工後に生じる板厚不均一(リングマーク)の問題と、それを解消するしごき加工の位置づけを整理します。

🏭
DI缶・実製品への応用と現場の注意点

アルミDI缶で側壁が約0.1mmまで薄肉化される工程や、潤滑・クリアランス管理での失敗を防ぐポイントを紹介します。


しごき加工の原理:パンチとダイのクリアランスが生む塑性変形


しごき加工(アイオニング加工)の核心は、パンチとダイの隙間(クリアランス)を、素材の板厚より意図的に小さく設定する点にあります。絞り加工でカップ状に成形された容器をこの狭いクリアランスの金型に通すと、側壁部分が圧縮されながら引き延ばされます。これが「しごき」という名の由来であり、加工の本質的な仕組みです。


具体的に見てみましょう。たとえば元の板厚が1.0mmの素材に対して、パンチとダイのクリアランスを0.7mmに設定したとします。材料がクリアランスを通過する際、側壁は0.3mm分だけ圧縮されます。体積は一定なので(体積保存則)、板厚が減少した分だけ側壁の高さが伸びる、という原理です。つまり「板厚を薄くする」と「容器の深さを増す」が同時に起きます。


この減少量の割合を「しごき率」と呼びます。計算式は以下のとおりです。


しごき率(%)=(加工前板厚 − 加工後板厚)÷ 加工前板厚 × 100


たとえば1.0mmの板を0.7mmに仕上げた場合、しごき率は30%です。一般的な1回あたりのしごき率は15〜40%程度が目安とされており、これを超えると破断リスクが急上昇します。


加工の大枠はシンプルです。ただし現場では「しごき率さえ守れば安全」とはいえず、後述するように潤滑と摩擦管理が品質を左右します。




参考:しごき率や板厚変化の基礎を含むプレス加工油剤の技術解説(日本潤滑油学会)
プレス加工油剤の基礎知識 - 日本潤滑油学会


しごき加工の原理を支える加工硬化と強度向上のメカニズム

「板厚を薄くするのに、なぜ強くなるのか?」——これは現場でも誤解されがちなポイントです。


しごき加工によって側壁の板厚が薄くなる一方で、材料内部では**加工硬化**が発生しています。加工硬化とは、金属に塑性変形(元に戻らない変形)を与えると、内部の結晶構造に転位(原子配列のずれ)が密集し、その後の変形に対する抵抗力が増す現象です。ハンマーで叩いた金属が硬くなるのと同じ原理です。


しごき加工では側壁が狭いクリアランスをくぐり抜けながら強い塑性ひずみを受けます。その結果、側壁材料の引張強さが加工前より高くなります。板厚は薄くなっているにもかかわらず、単位面積あたりの強度は上がっているわけです。これが冒頭の「板厚を薄くするつもりが側壁強度が元より上がっている」という驚きの事実の正体です。


強さが増すということですね。ただし加工硬化が進みすぎると、材料の延性(伸びる能力)が低下して割れやすくなります。したがって、しごき率の設定は「強度を上げすぎない」という観点でも重要になります。


また、加工後の側壁は表面粗さも改善されます。パンチとダイの高精度な面に押しつけられながら滑ることで、仕上げ面が平滑化されるためです。真円度・同軸度・内外径の寸法精度もこのプロセスで向上します。つまりしごき加工は、「薄肉化」「深さの増加」「強度向上」「寸法精度向上」「表面平滑化」を一工程で実現できる、非常に効率のいい加工法です。




参考:加工硬化のメカニズムと塑性変形の詳細解説(monoto.co.jp)
加工硬化とは?塑性変形のメカニズムと切削時の対策 - monoto


しごき加工の原理から見た絞り加工との根本的な違い

しごき加工と絞り加工は混同されやすいため、原理レベルで整理しておきましょう。


**絞り加工(ドローイング)**は、平板をカップ状に成形する工程です。このとき、パンチとダイのクリアランスは板厚より大きく設定されます。材料はクリアランスを流れるように変形し、基本的に板厚はほとんど変わりません。ただし実際には、パンチ底部では板厚がわずかに薄くなり、フランジ部(まだダイとシワ押さえに挟まれている部分)では圧縮応力を受けて板厚がむしろ増加します。結果として円筒側壁には**板厚の不均一**が生じます。


一方、**しごき加工(アイオニング)**は、このクリアランスを板厚より小さく設定することで、意図的に板厚を減少させます。ここが根本的な違いです。


| 比較項目 | 絞り加工 | しごき加工 |
|---|---|---|
| クリアランス | 板厚より大きい | 板厚より小さい |
| 板厚変化 | ほぼ変わらない | 積極的に薄くする |
| 主な目的 | 形状成形(カップ化) | 板厚均一化・深さ増加 |
| 加工硬化 | 比較的少ない | 顕著に発生 |
| 寸法精度 | 普通 | 高精度 |


実際の製造現場では、この2つは組み合わせて使うことがほとんどです。まず絞り加工でおおまかなカップ形状を作り、続いてしごき加工で板厚・深さ・精度を整える、という流れが基本です。


また、しごき加工には「絞りの後に単独で行うタイプ」と「絞りと同時に行う同時加工タイプ」の2種類があります。同時加工は工程短縮につながりますが、金型設計の難易度が上がります。現場での用途と生産量に応じて使い分けるのが原則です。




参考:絞り加工の種類としごき加工の位置づけを図解で解説(アイアール技術者教育研究所)
初心者でもわかる絞り加工の基本 - アイアール技術者教育研究所


しごき加工の原理が活きるDI缶:側壁0.1mmを実現する多段工程

しごき加工の原理を最も鮮明に体現している製品が、毎日目にする**アルミ飲料缶(DI缶)**です。DI缶のDIとは "Drawing and Ironing"、すなわち「絞りとしごき」の略称です。日本では1971年から広く普及しており、現在も主流の製缶方式です。


DI缶の製造工程では、まずアルミコイル材を打ち抜いてカップ状に絞り加工します。その後、ボディメーカーと呼ばれる専用機械で再絞りを1回、さらにしごき加工を**3段階**行います。この3段階のしごき工程によって、側壁の板厚は段階的に薄肉化されていきます。


驚くべきことに、最終的な缶胴側壁の板厚は約**0.1mm**程度まで薄くなります。これはコピー用紙(約0.09mm)とほぼ同じ厚さです。それほど薄いにもかかわらず缶として成立しているのは、加工硬化によって強度が確保されているからにほかなりません。


| DI缶製造ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① カッピング | 平板をカップ状に絞り加工 |
| ② 再絞り | カップをボディメーカーで再絞り |
| ③ しごき(3段) | 側壁を3回のしごきで薄肉化 |
| ④ ドーム成形 | 缶底のドーム形状を成形 |
| ⑤ トリミング | 缶上端の余肉を切り落とす |


また、しごき加工を活用することで3ピース缶と比べて缶体を大幅に軽量化できます。これが飲料メーカーにとってコスト削減につながり、DI缶が市場で支持される大きな理由のひとつです。現場の加工技術者にとっては、「しごきで薄くした材料が実使用に耐える」という事実が、この加工の価値を端的に示しています。




参考:DI缶の製造工程(絞りとしごきの多段工程)の詳細(東洋製罐株式会社)
DI缶の製造工程 - 東洋製罐株式会社


しごき加工の原理に基づく現場での失敗を防ぐ:潤滑・クリアランス・しごき率の管理

しごき加工の原理を理解したうえで、現場で最も問題になるのが「破断・割れ」「焼き付き」「寸法精度の悪化」の3つです。それぞれの原因と対策を整理しておきましょう。


**① 破断・割れ**


しごき加工中に材料が破断する最大の要因は、しごき率の過大設定と潤滑不足です。しごき率が高すぎると、パンチ底部付近に応力が集中して引張破断が起きます。1回あたりのしごき率は材質に応じた限界値を超えないよう設計し、複数回に分けて段階的にしごくのが安全な方法です。これが基本です。


また、J-STAGEに掲載された板材成形の研究では「ダイス側の摩擦を小さく、パンチ側の摩擦を大きくすることが破断止に有効」とされています。ダイス側に十分な潤滑剤を供給し、摩擦係数を下げることが、成形限界を引き上げる現実的なアプローチです。


**② 焼き付き**


しごき加工は、材料が高面圧でパンチ・ダイと摺動する工程です。潤滑が不足すると金型と材料が直接接触し、表面に焼き付きが発生します。焼き付きが起きると製品表面が荒れ、金型も損傷します。損失は大きいですね。


アルミ材料のDI缶製造では、専用のDI加工油剤(水溶性)を原液から2.5〜5%に希釈して使用するのが標準的です。材質・加工条件に合った潤滑剤を選定するのが条件です。


**③ 寸法精度の悪化**


クリアランスの設定が均一でない場合、製品の真円度や同軸度が狂います。金型の摩耗・偏芯・取り付け精度のどれか一つでも崩れると、品質が一気に不安定になります。定期的な金型メンテナンスと芯出し確認を欠かさないことが、品質を維持する要です。


以下にポイントをまとめます。



  • しごき率の設計:1回あたり15〜40%を目安に、材質に応じた上限値を守る

  • 潤滑剤の選定と管理:ダイス面への十分な供給と、材質・温度に合った油剤を使用する

  • クリアランスの精度管理:金型の偏芯・摩耗を定期チェックし、均一なクリアランスを維持する

  • 多段しごきの活用:大きなしごき率が必要な場合は、複数段階に分けて実施する


「しごきさえすれば均一になる」という思い込みは危険です。加工原理の理解と管理の徹底が、安定生産の両輪となります。


なお、金型表面処理の改善(例:バナジウム炭化物コーティングなど)による耐焼付き性の向上も、近年の現場で注目されている対策のひとつです。摩擦係数の低減が成形品質と金型寿命の双方に直結するため、金型材料・表面処理の選定も加工設計の重要な要素として捉えると、現場の対応力が一段上がります。




参考:しごき加工における焼き付き挙動と潤滑の関係(京都大学学術情報リポジトリ)
塑性加工における工具材料の焼き付き挙動に関する研究 - 京都大学


参考:両端面しごき加工の実例と切削レス化によるコスト削減効果(旭精機工業)
両端面しごき加工 - 旭精機工業株式会社


十分な情報が集まりました。記事を生成します。




[あめてまり] 帯揚げ 振袖 成人式 浴衣 フリル キラキラ ドレープ 帯飾り 飾り帯 しごき ギャザー シャーリング ラメ 卒業式 袴 着物 飾り襟 振袖用 ブラウン ピンク 水色 ブルー 白 ホワイト おしゃれ アレンジ (3.ロゼピンク)