タック溶接でも溶加材を省略すると、あなたの溶接部は耐食性が大きく低下します。
二相ステンレス鋼(デュプレックスステンレス鋼)は、フェライト相とオーステナイト相がほぼ1:1で共存する複合組織を持つ材料です。溶接作業性はオーステナイト系ステンレス鋼とほぼ同等で、TIG溶接・被覆アーク溶接・MAG溶接・SAW(サブマージアーク溶接)など、一般的な溶融溶接法がほぼすべて適用できます。
ただし「作業性が同等」というのは、あくまで手元の感覚の話です。熱管理の面では、オーステナイト系よりも厳格なコントロールが求められます。二相鋼はCr(クロム)とMo(モリブデン)を多く含むため、過大な入熱を与えると700〜800℃の温度域でシグマ相(σ相)が析出し、靭性が急激に低下します。一方、入熱が小さすぎると冷却速度が速くなり、HAZ(溶接熱影響部)にCr窒化物が析出して耐食性が劣化するという「両方向リスク」を持っています。
つまり二相ステンレス鋼の溶接は「大入熱もNG、小入熱もNG」が基本です。
また、二相鋼はN(窒素)含有量がオーステナイト系より高いため、ブローホールやピット、ガス溝などの気孔欠陥が発生しやすい特性があります。さらに、オーステナイト系にはない「拡散性水素による遅れ割れ感受性」も存在するため、溶接材料の吸湿管理も重要な管理項目です。これらの特性を理解していないと、見た目は問題ないのに検査で不合格になる、あるいは施工後に腐食トラブルが起きるという事態につながります。
日本溶接技術情報センター:二相ステンレス鋼の溶接(溶接作業性・HAZ組織・溶接材料の詳細解説)
現場でよく聞かれる疑問のひとつが「どの程度の入熱で溶接すればいいのか」という点です。アメリカ石油協会(API)のガイドライン(API TR 938-C)では、二相ステンレス鋼の溶接入熱として**5〜25 kJ/cm**の範囲が推奨されています。これはA4用紙1枚の幅(約21 cm)を溶接する際の投入エネルギーに換算すると、おおむね105〜525 kJに相当します。数値で見ると幅があるように感じますが、実際の現場では板厚や鋼種グレードによってさらに上下限が絞られます。
特に注意が必要なのがスーパー二相鋼(S32750など)です。Crが25〜26%、Moが3〜4%と高合金であるため、シグマ相が生成するスピードが標準グレード(2205等)より速く、わずかな入熱オーバーでも析出が起きるリスクがあります。
パス間温度については、二相ステンレス鋼の場合は**250℃以下(多くの仕様では150℃以下)**が管理基準として定められているケースが多いです。一般のオーステナイト系ステンレス鋼のパス間温度(150℃以下が原則)と同水準か、それより厳しい制限が設けられています。
多層溶接を行う現場では、パス間温度が基準値以下に下がるまで次のパスを待つ必要があります。これは作業サイクルの延長を意味するため、納期管理の観点でも事前に工程計画に組み込んでおくことが大切です。冷却待ち時間を短縮したい場合は、空冷ファンや冷却治具の活用を検討するとよいでしょう。
ぼうだより技術がいど:二相ステンレス鋼とその溶接材料について(入熱・パス間温度管理の実務的解説)
溶接材料の選定は、二相ステンレス鋼の溶接において品質を左右する最重要ポイントのひとつです。まず基本として、**母材と同グレード、または上位グレードの溶接材料を使用する**のが原則です。
なぜ溶接材料はNi量を母材より高く設計するのでしょうか?その理由は、溶接時の急冷によってオーステナイト相の再析出が不十分になりやすいからです。溶接材料のNi量を母材より3〜4%高く設計することで、溶接金属中でもオーステナイト相が十分に析出し、フェライト過多になるリスクを抑えられます。これが条件です。
フェライト量の管理目標は、**溶接金属で30〜65 FN(フェライトナンバー)**が推奨されています。フェライト量が増えすぎると強度は上がりますが靭性は低下し、逆に少なすぎると耐食性が低下するトレードオフがあります。現場での測定にはフェライトスコープ(磁気測定器)が一般的に使用され、合否判定の指標として広く活用されています。
溶接材料の種類別では、以下のような対応が標準的です。
| 母材グレード | 代表的な母材鋼種 | 推奨溶接材料(AWS規格) |
|---|---|---|
| リーン二相鋼 | S32101、S32304 | E2307系(または2209系) |
| スタンダード二相鋼 | S31803、S32205 | E2209系 |
| スーパー二相鋼 | S32750、S32760 | E2594系 |
溶接材料は吸湿による遅れ割れリスクにも直結するため、開封後は速やかに使用し、保管環境の湿度管理も怠らないようにしましょう。低水素系溶接棒と同様の取り扱いが基本です。
神戸製鋼所:二相ステンレス鋼用溶接材料カタログ(各グレード対応溶接材料と化学成分データ)
ここは多くの現場で見落とされている盲点です。TIG溶接(GTAW)でパイプの初層(ルートパス)を溶接する際、一般的なステンレス鋼では100% Arガスがよく使われます。ところが二相ステンレス鋼の場合、100% Arガスのみでティグ溶接を行うと、溶融プールから窒素(N)がN₂ガスとして大気中に逃げてしまいます。
このN逃散の結果、溶接金属のN量が溶加材の規定値より低下します。歩留まりは溶接条件によっておおよそ50〜70%程度です。N量が低下すると何が起きるのでしょうか?PRE値(耐孔食指数)が低下するとともに、フェライト量が過多になり、じん性と耐孔食性の両方が劣化するというリスクです。
対策としては、**シールドガスに2%程度のN₂を混合する**方法が効果的です。これにより溶接金属のN量が溶加材の設計値に近づき、フェライト過多を防止できることが確認されています。これは使えそうです。
また、TIG溶接用の溶加材(ソリッドワイヤ)のJISやAWS規格では、被覆アーク溶接棒やフラックス入りワイヤとは異なり、溶加材そのものの化学成分で規定されています。ミルシートの数値は溶加材の分析値であり、溶接金属の実際の化学成分とは異なる点に注意が必要です。特にN量は溶接中に変動するため、施工条件ごとに溶接金属の組成を確認する習慣を持つことが重要です。
多パス溶接においても、後続パスの熱影響を受けた領域が増えると、耐食性はトータルで母材より若干劣る傾向があります。このため母材より耐食性のグレードが高い溶接材料(例:SUS329J3Lに対して329J4L相当の溶接材料)を意図的に選択するケースも実務ではよく見られます。
溶接を終えた後の処理は、二相ステンレス鋼の耐食性を維持するうえで非常に重要な工程です。ここを軽視すると、施工後の腐食トラブルに直結します。
まず「溶接焼け(Heat tint)」について説明します。溶接熱が加わると、金属表面に変色した酸化スケールが形成されます。このスケールが残存すると、不動態皮膜の耐食性が著しく低下し、孔食が発生しやすくなります。厳しいですね。
ASTM G48(孔食腐食試験)による評価でも、酸洗処理や機械的なスケール除去をしたサンプルに比べ、溶接ままのサンプルは35〜40℃の腐食試験温度で明らかな孔食が発生することが報告されています。適切な後処理が条件です。
現場でやりがちなNG行為は以下の通りです。
より確実な耐食性を確保するには、機械的なスケール除去後に**酸洗処理または不動態化処理(パッシベーション処理)**を行い、不動態皮膜を再形成するとともに表面の遊離鉄(Free Iron)を除去することが推奨されます。酸洗には硝酸・フッ酸の混合液が一般的に使われますが、薬液の濃度管理と安全対策も合わせて確認しておきましょう。
IMOA(国際モリブデン協会):二相ステンレス鋼加工マニュアル第二版(溶接後処理・清浄化の詳細手順)
二相ステンレス鋼は「高性能だが高価」というイメージを持たれることが多いです。しかし実際のトータルコストで見ると、オーステナイト系ステンレス鋼と比べてコスト競争力がある場面が多く存在します。これは意外ですね。
その理由は二点あります。まず、二相鋼の引張強さはオーステナイト系の約2倍に達するため、同じ強度要件を満たすために必要な板厚を薄くできます。板厚が半分になれば、素材コストも相応に下がります。次に、二相鋼はNi含有量が1.5〜7%程度(オーステナイト系は8〜12%以上)と少ないため、Niの市況価格変動による調達コストの乱高下を受けにくいという特性があります。Niは価格変動が大きい金属であり、SUS304やSUS316Lは市場価格が数ヶ月で10〜20%変動することも珍しくありません。二相鋼なら調達コストが安定しやすいわけです。
用途面では、以下のような環境で二相鋼の特性が最大限に活かされています。
二相ステンレス鋼の溶接施工は、適切な入熱管理・溶接材料選定・後処理を守れば、オーステナイト系ステンレス鋼と比べても遜色のない高品質な継手を安定して得られます。その結果が、長期にわたる設備の信頼性とライフサイクルコストの低減につながります。溶接品質の管理を徹底することが、最終的な経済メリットに直結するということですね。
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