シールドガスの流量を増やせば増やすほど品質が上がるわけではありません。
ブローホールとは、JIS規格(溶接用語)において「溶着金属中に生じる球状又はほぼ球状の空洞」と定義されている溶接欠陥です。溶接時に発生または侵入したガスが、金属の凝固時に外部へ逃げ出せずそのまま内部に閉じ込められることで形成されます。
気孔の位置によって呼び名が変わります。内部に閉じ込められたものが「ブローホール」、ガスが溶接ビード表面まで抜けた際にできる穴が「ピット」、ピットの中でも針で刺したような極小サイズのものが「ピンホール」です。溶接現場ではこれらをまとめて「ポロシティ」とも呼びますが、実際の現場ではピットもブローホールと呼ぶケースが多く混在しています。
これは深刻な問題です。内部のブローホールは外観からは目視で確認できないため、放射線透過試験(RT)や超音波探傷試験(UT)を実施しないと見逃してしまうリスクがあります。
なお、欠陥率(平均深さと平均長さの積の総和と破断面積との比)が7%を超えない範囲のブローホールであれば引張強度や延性への影響は小さいといわれています。ただし、7%という数字は「影響がゼロ」ではなく「許容できる可能性がある」という判断基準です。外観検査では、JASS 6の規定でピットは溶接長さ300mm当たり2個以下という具体的な限界許容差が設けられており、これを超えると不合格欠陥になります。欠陥率7%以内だからといって安心できる話ではありません。
参考:溶接情報センター(日本溶接協会)によるブローホールの詳細解説
溶接情報センター|ブローホールはどうしてできるのですか
溶接金属内でガスが発生する原因の筆頭が、開先面とワイヤ表面に付着した不純物です。具体的には錆・油脂・水分・ごみ・ペンキ・粉塵・ガス切断時の酸化スケール・圧延スケール・過度の防錆剤・プライマ塗装などが挙げられます。これらは溶接熱によって気化し、溶融池内にガスを発生させます。
現場でよく見られるのが、鉄骨の角形鋼管(コラム)を使った現場溶接です。材料が雨や雪にさらされて開先部が濡れた状態のまま、あるいは切削油が残った状態で溶接を行うケースがあります。水分が加熱分解されると水素ガスが発生し、これがブローホールの直接的な原因となります。
対処法として最も有効なのは、溶接前にガス加熱器または加熱器で開先を十分に乾燥・焼き切ることです。水分が残留したままの状態で溶接を開始すると、どれだけ他の条件を整えても欠陥を防ぐことは難しくなります。乾燥が基本です。
ワイヤに錆や水分が付着していた場合は迷わず新品に交換しましょう。そのまま使い続けることは、コスト削減にならず品質リスクの上乗せにしかなりません。また、サブマージアーク溶接で使用するフラックスは吸湿しやすいため、保管状態と乾燥管理にも注意が必要です。フラックスはブローホール抑制のために用いるものですが、劣化すると逆に発生原因になるというのは現場でも意外と知られていない落とし穴です。
シールドガスはガスシールドアーク溶接において溶融池を大気から守るために不可欠な存在です。しかし見落とされがちなのは、シールドガスは「流量不足」だけでなく「流量過大」でもブローホールの原因になるという点です。
MAG・CO₂溶接における標準的なガス流量は20〜25L/minとされています。流量が不足すると溶融池のシールドが不完全となり、空気中の窒素が溶け込みます。一方、流量が過大になるとガス流が乱流となり、かえって大気を巻き込む結果につながります。多く流せば安全、というのは誤りです。
電流帯別の目安は以下の通りです。
| 電流域 | 電流値(目安) | CO₂流量の目安 |
|---|---|---|
| 低電流域 | 80〜130A程度 | 15 L/min |
| 中電流域 | 130〜250A程度 | 20 L/min |
| 大電流域 | 250A以上 | 25 L/min |
なお、この数値は風速2m/s以下の条件が前提です。風速がこれを超える環境では防風対策が不可欠で、状況によっては耐風型トーチや専用の圧力調整器を使い、100L/min相当まで流量を引き上げる対応が必要になることもあります。
シールドガス系統のチェックポイントも見落としがちな部分です。ガスホースの亀裂・ホースバンドの緩み・ライナーの破損・トーチノズルへのスパッタ詰まりなど、ガスが正常に届いていない状態のまま溶接を続けているケースは現場に多く存在します。流量計の数字が正常でも、実際に溶融池まで届いているガス量が不足している可能性があることを忘れてはいけません。
アーク長・溶接電流・溶接速度も連動しています。アーク長が短すぎると短絡移行でスパッタが増えて溶融池が乱れ、長すぎるとシールドガスが散乱してシールドが不完全になります。溶接速度が速すぎる場合もシールドガスが後方へ流されるため、前方から大気が流入してしまいます。これらの条件は単独ではなく複合的に影響し合っています。
参考:MAGおよびCO₂溶接のシールドガス流量と欠陥の関係性についての詳細
溶接ご法度集|ガスシールドアーク溶接 シールドガス流量の注意点
亜鉛めっき鋼板の溶接でブローホールが発生しやすいことは知られていますが、そのメカニズムまで正確に把握している人は意外に少ないです。この理解が不足していると、対策をとっても再発を繰り返す事態になります。
亜鉛の沸点は906℃です。鉄の融点である1536℃と比較すると700℃近くも低く、溶接池内では亜鉛はほぼ確実に気化します。この亜鉛ガスが溶融池に残留したまま金属が凝固すると、ブローホールが形成されます。亜鉛ガスが溶接ビード表面まで抜けるとピットになります。
さらに、気化した亜鉛ガスはアークを乱し、スパッタを大量に発生させます。スパッタがシールドノズルに付着してノズルが閉塞すると、シールドガスの流れが乱れ、大気中の窒素が溶融池に侵入するという二次的なブローホール発生機序も働きます。亜鉛めっき鋼板では2つのメカニズムが同時に発生しうる、ということです。
対策として有効なのは以下の3点です。
ワイヤ選定は一度確認するだけで済む判断です。現在使用しているワイヤが亜鉛めっき鋼板用に適しているかどうか、今すぐメーカースペックシートで確認することをお勧めします。
参考:亜鉛めっき鋼板の溶接時のブローホール・ピット発生メカニズムと対策
神戸製鋼所 KOBEMAG|ブローホール・ピットとは?亜鉛めっき鋼板における発生原因や対策
多層盛り溶接では「後から重ねる溶接熱で下層の欠陥が消える」と思っている作業者が一定数います。これは誤った認識です。
溶接情報センターの技術情報によれば、多層盛り溶接においてルート部で発生したブローホールは「次層の溶接で分散または拡大し、上層部まで引きずり、積層中で消滅することはない」と明記されています。つまり、1層目に生じたブローホールは2層目・3層目を重ねても消えず、むしろ形が変化しながら上層まで残存し続けます。
この事実を知らずに多層盛りを続けると、最終的に溶接部全体にブローホールが分散した状態になり、補修の難易度が大幅に上がります。後から修正しようとすると全層除去が必要になるケースもあり、工数と時間のロスは甚大です。
また、銅製の裏当て板を用いたルート溶接も注意が必要です。銅の熱伝導率が高いため溶接金属の凝固速度が速まり、ガスが逃げる前に固まってしまうことからブローホールが発生しやすくなります。この場合も1層目の段階でしっかり対処するしかありません。最初の1層が勝負です。
この情報は検索上位の記事ではほとんど掘り下げられていない独自観点ですが、現場での再補修コスト削減に直結する重要な知識です。1層目の品質確認を怠ると、最終検査で全層やり直しという最悪のケースを招きます。検査は1層ごとが原則です。
ブローホールが発見された場合、放置は厳禁です。まず放射線透過試験(RT)や超音波探傷試験(UT)で欠陥位置を特定し、マーキングを行います。次にエアアークガウジングやグラインダーを使って欠陥を確実に除去し、補修溶接がしやすいよう船底型に整形します。最後に補修溶接を1層目から最終層まで丁寧に施工して完了です。
ここで知っておくべき重要な点があります。補修溶接は何度でもやり直せるものではありません。繰り返し補修溶接を行うと熱履歴が蓄積し、材質の劣化・靭性低下・残留応力の増大などのリスクが高まります。企業の施工基準では「補修は2回まで」と定めているケースが多く、球形貯槽基準(JLPA201)では「補修回数は3回を限度とし、それを超える場合は当該溶接部を完全に除去したのち再溶接する」と規定されています。厳しいところですね。
補修後の品質確認として、再度の非破壊検査を実施することが必須です。補修溶接後に欠陥が残っていた場合、また同じ作業をやり直すことになり、回数制限を消費してしまいます。1回の補修で確実に仕上げるためにも、除去範囲を十分に取り、清浄化を徹底したうえで施工に入ることが条件です。
| 補修ステップ | 使用工具・方法 | ポイント |
|---|---|---|
| ①欠陥位置特定 | RT(放射線透過試験)・UT(超音波探傷試験) | マーキングで位置を明確に |
| ②欠陥除去 | エアアークガウジング+グラインダー | 船底型に整形して補修しやすく |
| ③補修溶接 | 各種溶接法(WPS に準拠) | 1層目から丁寧に、最終層まで |
| ④再検査 | RT・UTなど非破壊検査 | 欠陥ゼロを確認してから完了 |
参考:ブローホール補修の具体的な手順と施工上の注意事項
溶接情報センター|セルフシールドアーク溶接でブローホールが発生した場合の補修要領
Now I have sufficient research. Let me compose the article.

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