割れが1mmでも溶接部に見つかったら、サイズに関係なく全部4類で一発不合格です。
放射線透過試験(Radiographic Testing、略称RT)は、X線やγ線を溶接部や鋳造品などの試験体に照射し、内部に存在するきずをフィルムや検出器に投影することで検出する非破壊検査の手法です。対象物をまったく壊さずに品質を調べられるため、溶接部の品質管理において欠かせない技術として金属加工の現場で広く使われています。
試験の原理はシンプルです。きずのない健全な部分より、ブローホール(空洞)のある部分のほうが放射線が透過しやすく、フィルム上でより強く感光して黒く映ります。逆に、タングステン巻込みのような高比重の異物は放射線を通しにくいため、フィルム上で白く映ります。つまり、白黒の濃淡パターンでキズの種類まで読み解ける、というわけです。これは使えそうです。
非破壊試験(NDT)には放射線透過試験(RT)のほかに、超音波探傷試験(UT)、磁気探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT)という4大技法があります。RTは内部の体積欠陥(空洞・介在物など)の検出と永久記録の保存に優れており、溶接後の品質保証として多くの法令・規格でその実施が義務付けられています。
ただし、試験の実施には有資格者が必要です。JIS Z 3104では「放射線透過試験を行う技術者は、JIS Z 3861に基づく試験に合格した者又はそれと同等以上の技量をもつ者とする」と明記されています。資格なしでの実施は認められません。
| 略号 | 試験名 | 得意な欠陥 |
|---|---|---|
| RT | 放射線透過試験 | ブローホール、スラグ巻込み、内部空洞 |
| UT | 超音波探傷試験 | 割れ、融合不良などの面状欠陥 |
| MT | 磁気探傷試験 | 磁性体の表面・表層近くのきず |
| PT | 浸透探傷試験 | 金属・非金属の表面開口きず |
放射線透過試験の規格として最も頻繁に使われるのは、JIS Z 3104「鋼溶接継手の放射線透過試験方法」です。アルミニウム溶接にはJIS Z 3105、ステンレス鋼溶接にはJIS Z 3106が対応しています。現場で扱う材質に応じて適用する規格が異なる点は基本中の基本です。
RTで透過写真を撮影し、きずの像が認められた場合、JIS Z 3104の附属書4「透過写真のきずの像の分類方法」に従って評価を行います。まず最初のステップは、きずを4つの「種別」に振り分けることです。
種別の分類は以下のとおりです。
第4種のタングステン巻込みは、フィルム上で白い丸として映ります。第1種のブローホール(黒い丸)と見た目の方向性が真逆なので、混同しないよう注意が必要です。また、第4種のきずは空洞でなく固体の異物であるため、危険性が低いとみなされ、きず点数の計算では第1種の1/2として扱われます。
重要なのは第3種です。第3種(割れ)については、JIS Z 3104において「長さのいかんに関わらず4類とする」と規定されています。0.1mmの割れでも4類です。これが一般的な感覚との最大のギャップで、「小さい割れだから多少は許容されるだろう」という現場の思い込みは通用しません。結論は「割れゼロが条件」です。
第2種のきずには注意が必要な「ただし書き」があります。細長いスラグ巻込み単体なら寸法に応じて1類〜3類に分類されますが、溶込み不良または融合不良が含まれていた場合、1類に分類されるサイズであっても強制的に2類に格上げされます。溶込み不良・融合不良は継手強度に直結するリスクが高いため、規格上で特別扱いされているのです。厳しいところですね。
種別が決まったら、次は1類〜4類の「分類」を決める計算を行います。第1種・第4種は「きず点数」、第2種は「きず長さ」によって評価します。
まず試験視野(評価する範囲)のサイズは母材の厚さによって決まります。
試験視野は「きず点数が最も大きくなる部位」に適用します。溶接線全体の中で、最もきずが密集している10mm幅の区間を選んで評価する、というイメージです。
きずの点数は長径のサイズで決まります。長径が1.0mm以下なら1点、1.0〜2.0mmなら2点、2.0〜3.0mmなら3点、3.0〜4.0mmなら6点、4.0〜6.0mmなら10点、6.0〜8.0mmなら15点、8.0mmを超えると25点になります。点数の跳ね上がり方が急激なのが特徴です。
ただし、非常に小さいきずは算定対象外になります。母材厚さ20mm以下では長径0.5mm以下、20〜50mmでは0.7mm以下、50mm超では母材厚さの1.4%以下のきずは点数計算に含めません。ただし、1類については試験視野内に10個以上あってはならないというルールが別途あります。これは数は多くても個々が小さければOKという誤解を防ぐための重要な補足です。
また、きずの長径が母材の厚さの1/2を超えた場合は、点数に関係なく自動的に4類になります。たとえば板厚20mmの溶接部に10mmを超えるブローホールが1個見つかった場合、点数計算を経ずに即4類です。つまり「大きさ」は点数以上に重くみられるということですね。
第2種のきずが「一直線上に並んでいて、間隔が大きいほうのきずの長さ以下」という条件を満たす場合は、個別の長さでなく群として連続したものとして合算して長さを測ります。間隔をあけて存在していても、実質的に一連のきずとして扱われる点は見落としやすい部分です。
種別ごとの分類が出そろったら、最終的に「総合分類」を決めます。きずの種別が1種類だけなら、その分類がそのまま総合分類になります。種別が2種類以上あれば、原則として番号が大きい(厳しい)ほうを採用します。
ただし、第1種・第4種のきずが存在する試験視野に第2種のきずが「混在」する場合は、ルールが少し厳しくなります。それぞれの分類が同じ番号だった場合、総合分類はその番号に1を加えたもの(1段階厳しいもの)を採用します。つまり、第1種も第2種も単独で2類だったとき、混在していれば総合分類は3類になります。これは盲点になりやすいです。
なお、1類については混在の扱いに「第1種・第4種の許容点数の1/2、かつ第2種の許容長さの1/2をそれぞれ超えた場合にのみ2類とする」という緩和条件があります。両方が許容値の半分以下に収まっていれば混在していても1類を維持できる、というわけです。
重要なのは、「きずの像が認められなかった場合は1類ではなく『きずなし』と記載するのが正しい」という点です。現場の報告書で「きずなし」なのに誤って1類と記載しているケースがあるため、報告書の確認時には注意が必要です。きずなしが基本です。
合否判定のラインは規格(JIS Z 3104)の本文には規定されておらず、各種法令・設計基準・顧客仕様に委ねられています。一般的によく使われる基準は以下のとおりです。
工事ごとに合否ラインが異なるため、試験の前に「何類まで合格か」を発注仕様書や適用規格で必ず確認することが原則です。
参考:日本溶接協会 溶接Q&A(きずの分類と合否基準の考え方について詳しく解説されています)
https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0030040190
RTの判定基準の中で、資格保有者ですら判断に迷うのが「ただし書き」です。基本ルールだけを覚えていると、現場での誤判定につながる可能性があります。ここでは特に重要な落とし穴を整理します。
**落とし穴①:溶込み不良・融合不良は1類でも2類になる**
第2種のきずにおいて、細長いスラグ巻込みの長さが1類の許容値内に収まっていても、そのきずが「溶込み不良または融合不良」であれば2類に格上げされます。理由は、これらのきずは継手の引張強度や疲労強度に直結するリスクが高いためです。「長さが短いから1類」という判断だけでは不十分ということですね。
**落とし穴②:1類でも視野内に10個以上のきずがあれば昇格**
算定対象外の微小きず(長径0.5mm以下など)でも、試験視野内に10個以上確認された場合は1類にできません。ルール上は日本非破壊検査協会のテキストに「2類とする」と説明されています。点数の合計は基準内でも、個数が多すぎると昇格するというのは見落とされやすいです。
**落とし穴③:フィルム上での位置と実際のきずの位置は一致しない**
RTは二次元の投影なので、フィルム上で「上部に大きく映っているきず」が実際には「検体下部にある小さいきずが上に投影されたもの」である可能性があります。上部にある小さいきずが下部にある大きいきずより大きく写ることもあるのです。これはRTが2D記録である以上、避けられない制約です。フィルムの読み解きには経験と慎重な判断が必要です。
**落とし穴④:密着した割れはRTでは見逃す可能性がある**
密着した面状欠陥(割れなど)が放射線の照射方向と並行に近い角度で存在している場合、透過距離に差が出ないためフィルムに像が映らないことがあります。これはRTの構造的な弱点です。このリスクを補うために、超音波探傷試験(UT)との併用が効果的とされています。特に重要な継手や構造物では、RTとUTを組み合わせて評価する方法が推奨されます。
参考:日本溶接協会 Q&A「放射線透過試験が苦手とする欠陥の種類」
https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0030040110
溶接担当者や現場監督が実際にRTを依頼し、試験報告書を受け取った際に「どう読むべきか」を知っていると、品質トラブルの早期発見につながります。ここでは報告書の見方と、見落とされがちな現場視点の実務ポイントを解説します。
**報告書で確認すべき5つの項目**
「総合分類が2類とあるが1類ではないのか?」と思った場合、溶込み不良・融合不良の混在、またはきずの混在による総合分類の引き上げが適用されている可能性があります。報告書を単純に「数字だけ」で判断せず、きずの種別とただし書きの適用有無まで確認するのが正しい読み方です。
**独自視点:「デジタルRT」への切り替えが現場に与える影響**
近年、フィルムを使う従来型のRTに代わり、「デジタル放射線透過試験(DRT)」の普及が進んでいます。フィルムの代わりに「イメージングプレート(IP)」に記録し、デジタル画像として処理する方法で、消防庁は2022年頃から屋外貯蔵タンクへのDRT導入に向けた調査を進めています。DRTはフィルム現像が不要なため作業時間が短縮でき、画像の電子保管・共有も容易という利点があります。
一方で判定基準の適用については、DRTの画質がJIS Z 3104のフィルム方式の条件を「同等以上」に満たすことが前提となります。単純にデジタル化すれば同じ判定が適用されるわけではなく、デジタル用の像質要件を別途確認する必要があります。この点を押さえておかないと、現場での検査方法の変更時に判定基準の運用誤りが発生するリスクがあります。
RTの判定基準をきちんと理解することは、自社製品の品質保証に直結します。試験の発注側の立場であっても、「報告書を受け取ったら総合分類と種別ごとの分類・ただし書き適用の有無を確認する」というアクションを1つ習慣化するだけで、見落としリスクを大幅に減らすことができます。
参考:ぼうだより技術がいど「非破壊試験(第1回)放射線透過試験(RT)」(JIS Z 3104の分類方法をわかりやすく解説)
https://www.boudayori-gijutsugaido.com/magazine/vol524/exam.html
参考:kikakurui.com「JISZ3104:1995 鋼溶接継手の放射線透過試験方法」(JIS規格原文の無料閲覧・附属書4の分類表が確認できます)
https://kikakurui.com/z3/Z3104-1995-01.html
十分な情報が集まりました。記事を作成します。

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