金属の腐食は単なる表面的な現象ではなく、化学的なプロセスによって金属の性質や機能が根本的に損なわれる現象です。腐食のメカニズムを理解することは、効果的な対策を講じるための第一歩となります。
腐食は基本的に金属が環境中の酸素や水分と反応する酸化反応です。特に鉄の場合、水分が付着すると、鉄の原子から自由電子が奪われ、プラスの鉄イオンに変化します。この鉄イオンが酸素原子や水素原子と結合し、やがて水が乾くと酸化鉄、いわゆる「錆」として表面に残ります。
金属の種類によって腐食の進行速度や形態は大きく異なります。例えば。
金属加工の現場で特に注意すべき点として、加工時に生じる内部応力や表面傷が腐食を促進することが挙げられます。金属を加工する際、内部に傷などが入ると、原子の結合が弱まり腐食が始まりやすくなります。また、表面に存在する傷からも水や酸が侵入し、腐食が進行するケースが多く見られます。
銅の腐食メカニズムについての詳細情報
腐食を促進する環境要因としては、以下のものが挙げられます。
腐食性の高い環境における金属材料の選定は、製品寿命に直接影響するため慎重な検討が必要です。特に日本の高温多湿な気候条件は、金属の腐食を加速させる要因となっています。
金属材料の腐食対策技術は日々進化しています。従来の方法から最新技術まで、防食技術を体系的に整理すると以下のようになります。
1. 防食被膜による保護
最も一般的な防食方法は、金属表面に保護膜を形成して環境との接触を遮断することです。
特にステンレスの場合、パシベート処理(不動態化処理)が重要です。これは硝酸に浸漬して酸化クロムの膜(不動態被膜)を生成させ、耐食性を向上させる処理です。製造工程で付着した油脂類や鉄分などの不純物を除去した後に行われ、ステンレスの本来の耐食性を引き出します。
ステンレスの表面処理についての詳細
2. 材料設計による対策
金属そのものの組成を工夫することで、耐食性を向上させる方法も重要です。
3. 電気化学的防食法
物理的な保護に加え、電気化学的な手法も腐食防止に効果的です。
4. 設計上の配慮
製品設計の段階から腐食防止を考慮することも重要です。
近年注目されている技術として、ナノレベルでの表面処理があります。従来のコーティングよりも薄膜で高い防食性を実現する技術が開発されており、製品の寸法精度を維持しながら耐食性を向上させることができます。
腐食環境下で使用される金属部品には、高い耐食性を持つ特殊合金の採用が不可欠です。ここでは、注目すべき特殊合金とその加工のポイントについて解説します。
Terravantium(テラバンチウム)- 革新的な非鉄合金
Terrain365というブランドが開発した特殊コバルト合金「Terravantium」は、鉄を一切含まない組成により、従来の金属材料が抱える「錆び」の問題を根本的に解決しています。この合金の特徴は。
Terravantiumは過酷な環境下での使用を想定した実用性と信頼性を兼ね備えた素材であり、「どんな地形でも365日使えるナイフ」というコンセプトを実現しています。
Terravantium合金についての詳細情報
ステンレス鋼の種類と特性
ステンレス鋼の中でも、SUS316とSUS316Lは高い耐食性で知られています。
特にSUS316Lは、炭素量を0.03%以下に抑えることで、熱処理や溶接時に生じるクロム炭化物の析出を防止し、耐粒界腐食性を向上させています。溶接構造物や厳しい腐食環境下での使用に適しています。
SUS316とSUS316Lの違いについて詳細情報
銅合金の活用
純銅は熱や電気を通しやすい特性を持ちますが、構造材料としては強度不足の面があります。これを補うためには、様々な元素を添加した銅合金の活用が有効です。