金属加工の世界は奥深く、目的の部品形状や性能を実現するためには、適切な加工方法の選定が不可欠です。 特に、ミスミが提供するサービスの中でも中核をなすのが「切削加工」と「板金加工」です。 これらは金属を加工するという点では共通していますが、その原理と得意な形状は大きく異なります。
切削加工とは? ⚙️
切削加工は、ドリルやエンドミルといった刃物(切削工具)を使い、金属の塊から不要な部分を削り取って目的の形状を作り出す加工方法です。 まるで彫刻のように、材料を少しずつ除去していくイメージです。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/25192/
切削加工の最大のメリットは、高い精度を実現できる点です。 金型などを必要としないため、1つからの試作品製作や多品種少量生産にも柔軟に対応できます。 ミスミでは、鉄鋼、ステンレス、アルミニウム、銅、さらには樹脂やセラミックスまで、多岐にわたる材料の切削加工サービスを提供しています。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/tips/fa_tips/29768/
板金加工とは? 🔨
板金加工は、その名の通り、薄い金属の板(シートメタル)を主な材料として、曲げたり、切断したり、溶接したりして立体的な形状を作り出す加工方法です。 切削加工が「引く」加工であるのに対し、板金加工は材料を「変形させる」または「組み立てる」加工と言えます。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/25609/
板金加工は、カバーやブラケット、ケースといった箱物形状の製作に非常に適しています。 一般的に、切削加工に比べてコストを抑えやすく、納期も短い傾向にあるため、価格とスピードを優先する場合に選ばれることが多いです。
以下の表は、両者の違いをまとめたものです。
| 項目 | 切削加工 | 板金加工 |
|---|---|---|
| 主な材料 | 金属の塊(ブロック材、丸棒) | 金属の板(シートメタル) |
| 加工原理 | 削り取る(除去加工) | 曲げる、切る、繋ぐ(塑性加工、溶接) |
| 得意な形状 | ブロック部品、精密部品、複雑な三次元形状 | カバー、ブラケット、ケース、筐体 |
| 精度 | 高い (μm単位の精度も可能) | 中程度 (一般的に0.1mm単位) |
| コスト | 高くなる傾向 | 比較的安価 |
| 納期 | 長くなる傾向 | 比較的短い |
部品の用途、必要な精度、コスト、数量などを総合的に考慮し、最適な加工方法を選択することが、高品質かつ経済的な部品調達の鍵となります。
参考情報:ミスミが提供する切削加工と板金加工のサービス概要や違いについて、公式サイトでさらに詳しく解説されています。
板金と切削の違いとは?成形方法、加工特性から使い分けまで | meviy
従来の部品調達では、設計者が作成した2D図面をもとに、複数の加工会社に見積もりを依頼し、納期や価格を比較検討するというプロセスが一般的でした。 この方法は、多くの時間と手間を要し、設計者の大きな負担となっていました。 この常識を覆したのが、ミスミが提供するAI搭載の革新的な部品調達プラットフォーム「meviy(メビー)」です。
meviyの核心機能:3Dデータをアップロードするだけ 💡
meviyの最大の特長は、設計者が作成した3D CADデータをウェブサイトにアップロードするだけで、AIが即座に形状を解析し、見積もり金額と最短納期を提示してくれる点です。 2D図面を作成する必要は一切ありません。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/help/ja/operation_manual/first/5029/
このプロセスにより、従来数週間かかっていた部品調達のリードタイムが劇的に短縮され、設計者は本来の業務である設計開発に、より多くの時間を割くことが可能になります。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/help/ja/wp-content/uploads/2025/03/meviy_operation_manual.pdf
meviyがもたらすメリット 📈
meviyは単なるオンラインストアではありません。AIと長年培われた製造業の知見を融合させ、設計から調達までのプロセス全体を革新する「製造業のプラットフォーム」なのです。
参考)https://meviy.misumi-ec.com/ja-jp/
参考情報:meviyの具体的な操作手順や対応ファイル形式については、以下の公式マニュアルで詳細に確認できます。
高品質な金属加工部品を製作するためには、形状の設計だけでなく、その部品が使用される環境や目的に応じた「材料選定」と、性能を最大限に引き出すための「表面処理・熱処理」が極めて重要です。 ミスミでは、多種多様な金属材料と処理方法が用意されており、これらを適切に組み合わせることで、部品の価値を飛躍的に高めることができます。
主要な金属材料とその特徴 🔩
ミスミのmeviyなどで選択可能な代表的な金属材料には、以下のようなものがあります。
参考)切削加工サービス
| 材料カテゴリ | 代表的な材料記号 | 特徴と主な用途 |
|---|---|---|
| 鉄 (鋼) | SS400, S45C, SCM435 | 最も一般的で安価な金属材料。強度、硬度、靭性のバランスが良い。機械構造部品、治具、プレートなどに広く使用される。 |
| ステンレス鋼 | SUS304, SUS316, SUS440C | 錆びにくさ(耐食性)が最大の特徴。SUS304は最も汎用的。SUS316はさらに耐食性が高く、沿岸部や薬品を扱う環境で使用される。SUS440Cは焼入れにより非常に高い硬度が得られる。 |
| アルミニウム合金 | A2017, A5052, A7075 | 軽量であることが最大の特徴。比重は鉄の約1/3。加工しやすく、熱伝導性も良い。軽量化が求められる装置部品、放熱部品(ヒートシンク)などに使われる。A7075は「超々ジュラルミン」とも呼ばれ、アルミ合金の中で最高の強度を誇る。 |
| 銅・銅合金 | C1020 (無酸素銅), C3604 (快削黄銅) | 電気伝導性と熱伝導性に非常に優れる。C1020は導電部品や電極に、真鍮の一種であるC3604は加工しやすいため、コネクタや精密部品に用いられる。 |
性能を向上させる表面処理・熱処理 🔥
加工したままの部品(生材)でも使用できますが、多くの場合、さらなる性能向上のために表面処理や熱処理が施されます。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/d0064.html
例えば、S45Cという安価な炭素鋼でも、適切に焼入れ・焼戻しを行えば、高価な工具鋼に匹敵する硬度を得ることができます。また、アルミニウム部品に硬質アルマイト処理を施せば、鉄に劣らない表面硬度と優れた耐摩耗性を両立させることも可能です。材料と処理の知識は、コストを抑えつつ要求仕様を満たす「賢い設計」に直結するのです。
参考情報:ミスミのサイトでは、取り扱い材料や表面処理について、さらに詳しい技術情報が公開されています。
よく使われる金属材料(工業材料と表面処理の基礎) - ミスミ
ミスミのmeviyのような高精度な加工サービスを利用しても、設計段階での配慮がなければ、そのポテンシャルを最大限に引き出すことはできません。 部品の性能を保証し、かつ無駄なコストをかけないためには、「精度の勘所」を押さえた設計が重要になります。
公差を制するものがコストを制す 💰
「公差」とは、設計寸法に対して許容される誤差の範囲のことです。例えば、「10mm ±0.01」と図面に指示があれば、完成した部品の寸法が9.99mmから10.01mmの範囲に収まっていなければなりません。
加工方法を意識した設計(DFM: Design for Manufacturability)
優れた設計者は、常に「この形状はどうやって加工するのか?」を頭の中でシミュレーションしています。
高精度な部品を安定して得るためには、やみくもに厳しい公差を指示するのではなく、「なぜその精度が必要なのか」を常に自問し、加工の原理原則に基づいた設計を行うことが、真のプロフェッショナルへの道と言えるでしょう。
参考情報:切削加工の基礎知識や設計のポイントについて、以下のページで分かりやすく解説されています。
切削加工の基礎知識:種類、特徴、加工のポイントを解説! - ミスミ
ミスミやmeviyは、主に企業の設計者や開発者が利用するプロ向けのサービスというイメージが強いかもしれません。 しかし、実はこれらのサービスは、個人の趣味やDIYプロジェクトにおいても、非常に強力な武器となり得ます。法人でなければ利用できないという制約はなく、個人でもアカウントを登録すれば、プロと同じ高品質な加工サービスを1点から利用できるのです。
趣味の世界を広げるカスタムパーツ製作 🏍️
3Dプリンターの普及により、個人でも複雑な形状の樹脂パーツが作れるようになりました。しかし、「もっと強度や剛性が欲しい」「金属ならではの質感が欲しい」と感じる場面は少なくありません。
meviyを個人で使うメリットとコツ ✨
ミスミのサービスは、もはや企業だけのものではありません。あなたの創造力と3D CADスキル、そしてmeviyを組み合わせれば、趣味やDIYの可能性は無限に広がります。これまで諦めていた「金属でしか実現できないアイデア」を、今こそ形にしてみてはいかがでしょうか。
参考情報:個人ユーザーによるmeviyの活用事例として、ロボットのカスタマイズに関するブログ記事があります。
CuGoを自分流にカスタマイズ!MISUMI meviy活用術