SUS302をSUS304の代わりに溶接に使うと、腐食で部品が割れることがあります。
SUS302とSUS304は、どちらもオーステナイト系ステンレス鋼に属する材料です。見た目や基本的な組成は非常に似ていますが、化学成分の中で特に「炭素(C)」の含有率に明確な差があります。
SUS302の炭素含有量はJIS規格で0.15%以下と定められており、SUS304の0.08%以下と比較すると、**約2倍近い炭素を含むことが許容されています**。クロム(Cr)の含有量はSUS302が17.00〜19.00%、SUS304が18.00〜20.00%とわずかにSUS304が高く、ニッケル(Ni)もSUS304の方がやや多い傾向にあります。
| 鋼種 | C(%) | Si(%) | Mn(%) | Ni(%) | Cr(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| SUS302 | 0.15以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 8.00〜10.00 | 17.00〜19.00 |
| SUS304 | 0.08以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 8.00〜10.50 | 18.00〜20.00 |
炭素は鋼の強度や硬さを高める元素ですが、同時に溶接時の粒界腐食リスクも引き上げます。つまり炭素量の違いが、この2材種の「使い分けの核心」になるということですね。
クロムとニッケルはどちらも耐食性に直結する元素であり、SUS304の方がわずかに含有量が多い点からも、耐食性の面ではSUS304がやや優位に立ちます。現場で材料証明書(ミルシート)を確認する際には、炭素量の欄を必ずチェックするのが基本です。
参考:SUS302の化学成分・機械的性質の詳細データ(JIS規格対応)
SUS302(ステンレス鋼)密度、比重、質量、機械的性質 – Mitsuri
SUS302の最大の特徴は、冷間加工によって強度が大幅に向上することです。これはJIS規格で規定された焼なまし状態の機械的性質(引張強さ520MPa以上、耐力205MPa以上)だけを見ても分かりにくい点であり、現場で誤解されやすいポイントでもあります。
焼なまし状態での機械的性質を比べると、SUS302とSUS304はほぼ同じ数値を示します。これが意外な事実です。しかし、冷間加工(圧延・引抜き・プレスなど)を加えていくにつれて、SUS302はSUS304よりも急激に硬さが上昇していきます。炭素含有量が多い分、**加工硬化が生じやすい**という性質が引き出されるからです。
つまり素材段階では同等でも、加工後の強度ではSUS302がSUS304を上回るということです。
この特性を活かした代表的な製品がネジやボルトです。冷間転造(材料をダイスで転がして形状を成形する方法)によって製造するネジは、加工自体が強度を生み出すため、SUS302の高加工硬化性が大きなメリットになります。ばね用途でも同様で、引抜き加工を経たSUS302線材は高いばね特性を発揮します。
一方で注意点もあります。SUS302は冷間加工によって微弱な磁性を持つことがあります。本来はオーステナイト系として非磁性ですが、加工によって一部が磁性を持つマルテンサイト組織に変化するためです。非磁性が必要な精密機器や医療機器の部品に使用する場合は、この点を事前に確認することが不可欠です。
磁性を消去するには溶体化処理(約1050〜1100℃に加熱後に急冷する処理)が必要ですが、それを行うと加工硬化による強度向上もリセットされてしまいます。強度と非磁性の両立が必要な場面には、SUS302は不向きと考えた方がよいでしょう。
参考:ステンレス各鋼種の磁性と冷間加工の関係について
ステンレス鋼の基礎知識(山陽特殊製鋼)PDF
SUS302を溶接に使うのはリスクが高い。これが現場で知られていそうでいない落とし穴です。
SUS302は炭素含有量が多いため、溶接や高温環境に晒されると「鋭敏化」と呼ばれる現象が発生しやすくなります。鋭敏化とは、600〜800℃の温度域(この範囲はステンレスの「危険温度帯」とも呼ばれます)に長時間さらされることで、結晶粒界にクロム炭化物(Cr₂₃C₆)が析出し、その周囲のクロム濃度が低下する現象です。クロムは耐食性の要なので、不足するとその部分が優先的に腐食します。これが粒界腐食です。
粒界腐食が発生すると、外観上では問題ないように見えても内部の粒界が腐食されており、ある日突然亀裂や割れが生じることがあります。溶接部の近傍で割れが入ると、製品不良だけでなく重大な設備トラブルに発展するリスクもあります。痛いですね。
炭素含有量が多いほど粒界腐食は生じやすいため、SUS302(C:0.15%以下)はSUS304(C:0.08%以下)よりもはるかにそのリスクが高くなります。溶接が必要な用途には、炭素量を抑えたSUS304、またはさらに低炭素のSUS304L(C:0.03%以下)を選ぶのが現場の鉄則です。
溶接性に注意すれば大丈夫です。SUS302とSUS304を見た目で判断せず、ミルシートで炭素含有量を確認する習慣を現場に定着させることが、品質トラブルを未然に防ぐ最短ルートです。
参考:ステンレス鋼の溶接における鋭敏化・粒界腐食の解説
ステンレス鋼の溶接にあたって注意すべき点(アロイ)
耐食性についての基本認識として、SUS302はSUS304に比べてやや劣ることを押さえておく必要があります。ニッケルとクロムの含有率がSUS304の方がわずかに高く、これが耐食性の差に直結しています。とはいえ日常的な湿潤環境や弱酸性の環境では、SUS302もSUS304と遜色ない耐食性を示すため、屋外での軽度な腐食環境であればSUS302で問題ないケースも多いです。
耐熱性に関しては、どちらも連続使用温度として800〜900℃程度まで耐えられるオーステナイト系ステンレスですが、ここでも溶接時の「危険温度帯(600〜800℃)」との絡みが問題になります。高温環境で継続使用する際は、SUS302よりもSUS304の方が安心です。
実際の用途別選定を整理すると、以下のようになります。
いいことですね。材料の特性を正確に把握すれば、過剰品質(SUS304が必要ない場所にSUS304を使う)や品質不良(SUS302を溶接に使って腐食トラブル)の両方を防ぐことができます。
なお、SUS302の亜種としてSUS302Bがあります。SUS302BはSUS302にシリコン(Si)を2〜3%添加した材料で、耐熱性・耐酸化性がSUS302よりもさらに優れています。高温環境での使用を前提にした場合、SUS302BはSUS310Sと並んで選択肢に入ります。これは選択肢として覚えておくと得です。
参考:ステンレス各鋼種の成分・用途・機械的性質の一覧
ステンレス鋼の種類と特徴(NBK 鍋屋バイテック会社)
現場で最も起きやすいミスが、SUS302とSUS304の取り違えです。外観・色・重さ・磁性(未加工状態)は全く同じであり、目視で区別することは事実上不可能です。これが問題の出発点です。
取り違えが起きた場合に最もリスクが高いのが、前述の通り「溶接用途でSUS302を使ってしまう」ケースです。溶接後はしばらく問題ないように見えても、使用中の温度上昇や腐食環境への暴露によって粒界腐食が進行し、数ヶ月〜数年後に割れや穴あきといった形でトラブルが表面化します。問題が発覚するまでのタイムラグが長いため、原因究明が難しく、品質クレームや損害賠償問題に発展するリスクもゼロではありません。
正しい見分け方として、最も確実な方法は**ミルシート(材料証明書)の炭素量欄を確認する**ことです。現場に入ってきた材料が本当にSUS304か、それともSUS302やその他の鋼種かは、ミルシートの数値で判断します。
小規模な加工現場や試作段階では、「とりあえずSUSと書いてあるから同じだろう」という判断が取り違えを招く原因になります。特に外注先から納品された材料を受け入れる際、ミルシートを照合するチェックフローを整備することが重要です。結論は、目視だけでは判別不能ということです。
また、JIS規格上の位置付けとして、SUS304はSUS302の改良版として開発された経緯があります。NBKの技術資料によれば、「SUS303・SUS304はいずれもSUS302に改良を加えたもの」と明示されており、SUS304はSUS302の炭素を低減して耐食性・溶接性を高めた後継材料と言えます。歴史的な流れを知ることで、「なぜ炭素量が違うのか」という根拠が理解しやすくなります。
SUS302とSUS304の違いを一言でまとめるなら「炭素量が用途を決める」ということですね。高強度の冷間加工部品にはSUS302、溶接・高耐食用途にはSUS304、という使い分けを現場に定着させることが、材料起因のトラブルを防ぐ第一歩です。
参考:ステンレス各鋼種の成分と機械的性質(オーステナイト系詳細)
SUS302の成分・磁性・硬度・耐食性等の特性(susjis.info)
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