実は市中で「SK3」として売られている鋼材の多くは、SKS93に置き換わっています。
SK3(正式名称:SK105)は、JIS G4401に規定される炭素工具鋼です。合金元素をほとんど含まず、炭素含有量が1.00〜1.10%と高いことが特徴で、硬度と耐摩耗性に優れます。 一方、SKS93は JIS G4404に規定される冷間金型用合金工具鋼であり、SK3にクロム(Cr)やマンガン(Mn)を添加することで焼入れ性と靭性を改善した上位鋼種に位置づけられます。 hanshinmetalics.co(https://www.hanshinmetalics.co.jp/materials/73/)
つまり「SKS93 = 改良版SK3」という関係です。
名前が1文字違いのため現場でも混同されやすいのですが、鋼種グループ(炭素工具鋼 vs 合金工具鋼)が根本から異なります。 選定ミスが起きると、熱処理条件の違いから割れや変寸といった加工不良に直結するため注意が必要です。 ito-seimitsu(https://ito-seimitsu.com/faq/748/)
| 項目 | SK3(SK105) | SKS93 |
|---|---|---|
| 分類 | 炭素工具鋼 | 合金工具鋼(冷間金型用) |
| 主な添加元素 | 炭素のみ | Cr(クロム)、Mn(マンガン) |
| 焼入れ方法 | 水焼入れ | 油焼入れ |
| 焼入れ性(深焼き性) | 低い | 高い(安定) |
| 熱処理後の変形 | 大きい | 合金工具鋼のため小さい |
| 市場流通 | ほぼ流通なし | 現在の主流 |
ameblo(https://ameblo.jp/itoakirasangyo/entry-12629643950.html)
SKS93の熱処理は、油焼入れ(焼入れ温度:780〜820℃前後) が標準です。 焼戻しは180〜200℃程度の低温で行うことが多く、処理後の硬度はHRC58〜62、ビッカース硬さでHv697前後に達します。 これはカッターナイフの刃(HRC58〜60程度)と同等の硬さです。わかりやすい目安ですね。 toishi(https://www.toishi.info/sozai/sks-skd/sks93.html)
SK3(水焼入れ)と間違えて油で焼入れしても一応硬化しますが、SK3を水焼入れで処理しようとすると割れのリスクが跳ね上がります。これは危険です。
SKS93の場合、焼戻し温度を高くすると硬度は下がりますが靭性(粘り強さ)が上がります。 金型のパンチ類のように衝撃が繰り返しかかる部品では、あえてHRC55〜58程度に落として靭性を確保する選択肢もあります。硬度と靭性はトレードオフが基本です。 metal-master(https://www.metal-master.jp/glossary/what-is-sks93-special-tool-steel%3F)
参考:焼入れ・焼戻し温度の詳細データ(数値一覧)はこちら
SKS93(合金工具鋼鋼材)の用途・硬度・熱処理温度・機械的性質・成分の一覧 - 研削砥石の基礎知識
SKS93が活躍するのは、衝撃と摩耗が同時にかかる工具・金型部品です。 具体的にはシャー刃(板材の切断刃)、プレス型のダイ・パンチ、ゲージ類、冷間鍛造工具などが代表的な用途です。 これらの部品は繰り返し衝撃を受けながら摩耗もするため、靭性と耐摩耗性を同時に求められます。 e-metals(http://e-metals.net/product/201963)
現場で「SK3相当でいい」と思っている部品でも、今は実質SKS93を選ぶことになります。 図面にSK3と書いてある場合は、発注前に材料屋に確認するのが確実です。 ameblo(https://ameblo.jp/itoakirasangyo/entry-12629643950.html)
>🔧 シャー刃・切断刃 → SKS93が適合(耐摩耗+靭性)
>🔨 冷間鍛造パンチ → SKS93が適合(耐衝撃)
>📐 ゲージ・治具部品 → SKS93が適合(変形小)
>🔪 刃物・小型工具(少量生産) → SK3相当だがSKS93で代替
jp.misumi-ec(https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/press_mold_design/pr07/c0188.html)
焼なまし(アニール)状態のSKS93は比較的切削しやすく、SK3(炭素工具鋼)と大きく変わらない切削条件で加工できます。 ただし、炭素含有量が約0.85〜0.95%と高いため、工具の摩耗は一般構造用鋼(SS400など)より進みやすいです。これは注意が必要です。 metal-master(https://www.metal-master.jp/glossary/what-is-sks93-special-tool-steel%3F)
切削工具はコーティング超硬(TiAlN系など)が標準です。高速度工具鋼(HSS)でも加工できますが、工具寿命が短くなる傾向があります。
また、SKS93は熱処理後のワイヤーカット加工が多用される鋼種です。 ワイヤーカット後は白層(変質層)が表面に生じることがあるため、研削仕上げや酸洗いで除去するのが現場のセオリーです。白層を残したまま使うと表面から割れが進展するリスクがあります。 qa.mt-k(https://qa.mt-k.com/archives/case/difference_sks3_sk3)
参考:熱処理後の加工手順や注意点について
SK3とSKS3の違いと熱処理後加工の注意点 - 熱処理研究室
ミス①:「SK3指定だからSK3を発注する」
前述のとおり、SK3(SK105)は現在市場にほぼ流通していません。 材料屋に「SK3」と発注するとSKS93が届くか、在庫なしで納期遅延になるかのどちらかです。図面のSK3指定はSKS93で代替可能かどうか、設計者または上位者に確認しましょう。 ameblo(https://ameblo.jp/itoakirasangyo/entry-12629643950.html)
ミス②:「SKS93とSKS3を同じものだと思っている」
SKS93とSKS3は全くの別鋼種です。 SKS3はCr(クロム)とW(タングステン)を添加した耐摩耗重視の鋼種で、SKS93よりも耐摩耗性に優れます。SKS93の方が低コストで入手しやすいですが、高摩耗環境ではSKS3やSKD11の方が寿命が長い場合があります。 ito-seimitsu(https://ito-seimitsu.com/faq/748/)
ミス③:「硬ければ割れにくいはず」という思い込み
高硬度 = 耐衝撃性が高い、は誤りです。 HRC62以上に硬化させると靭性が急激に落ちてチッピング(欠け)が起きやすくなります。欠けにくさが求められる用途では、あえて硬度を抑えた焼戻し条件を選ぶことが正解です。結論は「硬さより用途に合った靭性バランス」が基本です。 metal-master(https://www.metal-master.jp/glossary/what-is-sks93-special-tool-steel%3F)
>SKS93の硬度をHRC62超に設定 → 衝撃で欠けるリスク上昇
>SKD11との比較でSKS93を選ぶ基準 → コスト重視、靭性重視の場面
>SKS3との使い分け → 耐摩耗性が最優先ならSKS3、コストと靭性のバランスならSKS93
lunar-creation(https://lunar-creation.com/sks93/)
参考:SKS93とSKD11・SKS3の鋼種比較データ
【合金工具鋼】SKS93とは?冷間金型に使われる金属の性質や特徴 - lunar-creation