亜鉛合金ダイカストは錆びやすい——それは多くの金属加工従事者が知っている事実です。しかし、「表面処理さえすれば大丈夫」と思い込んで対策が手薄になり、出荷後に品質クレームが発生するケースが後を絶ちません。
亜鉛合金ダイカストに発生する錆は、大きく「白錆」と「粒間腐食」の2種類に分けられます。この2つは見た目も発生メカニズムもまったく異なります。
白錆は、亜鉛が大気中の水分・酸素と反応して表面に形成される白色の粉状物質です。主成分は酸化亜鉛(ZnO)や水酸化亜鉛(Zn(OH)₂)で、鉄に発生する赤錆とは別物です。白錆は表面での腐食が中心のため、進行の初期段階では内部強度への影響は限定的です。しかし、外観部品や精密部品では「見た目のNG」として即クレームにつながります。
一方、粒間腐食は結晶粒界に沿って内部深く侵食が進む現象です。これが厄介なのは、製造後数年が経過してから発覚するケースが多いという点です。大阪産業技術研究所の報告によれば、粒間腐食が進行した製品の破断面は黒色に変色しており、外周部から内部に向けて腐食が広がっていることが確認されています。強度が著しく劣化しているにもかかわらず、外観では判断しにくい——これが現場での見落としを招く要因のひとつです。
白錆が「表面の問題」だとすれば、粒間腐食は「構造的な問題」と捉えてください。対策の方向性がそれぞれ異なるため、まず自分が扱う製品でどちらのリスクが高いかを把握することが基本です。
| 項目 | 白錆 | 粒間腐食 |
|---|---|---|
| 見た目 | 白色の粉・斑点 | 外観変化は少ない(内部進行) |
| 主な原因 | 水分・湿気・塩分 | Pb・Sn・Cdの不純物混入 |
| 発覚タイミング | 比較的早期(数日〜数ヶ月) | 製造後数年後に発覚することも |
| 強度への影響 | 初期は軽微 | 著しく劣化する |
| 主な対策 | 表面処理・保管環境の改善 | 不純物量の管理・インゴット品質の確認 |
白錆と粒間腐食、それぞれ別の対策が必要です。
参考:大阪産業技術研究所「ダイカストの不良事例」(粒間腐食のメカニズムと対策が詳細に解説されています)
大阪産業技術研究所 ダイカストの不良事例(PDF)
錆が発生する原因は、製品が完成した後の保管・使用環境だけにあるわけではありません。設計・材料管理・製造工程の各段階に、それぞれ錆のトリガーが潜んでいます。
まず材料起因のリスクとして、亜鉛合金中の不純物管理があります。JIS H5301では鉛(Pb)0.005%以下、カドミウム(Cd)0.004%以下、錫(Sn)0.003%以下という規格値が定められています。これらの値を超えた場合、結晶粒界が優先的に腐食し、強度が著しく劣化する粒間腐食が発生します。見逃しがちなポイントとして、工場内で発生したランナーやスプルーなどのリターン材(返り材)を再溶解する際、フラックスの投入などによってMg量が低下したり不純物濃度が上昇したりするリスクがあります。日本ダイカスト協会の資料でも、粒間腐食を起こした製品ではMgがJIS規格値を下回っている事例が目立つとされています。リターン材の配合比は40%以下に抑えることが望ましいとされています。
これは痛いですね。
次に、設計起因のリスクとして「異種金属接触腐食」があります。亜鉛ダイカスト部品を銅合金やステンレスのボルトで締結した場合、電解質(水分)が介在すると電位差によってガルバニック腐食が加速されます。亜鉛のイオン化傾向はステンレスや銅合金より高いため、亜鉛側が優先的に腐食される構造になります。設計段階で絶縁ワッシャや樹脂スペーサを使って電気的に分離するだけで、このリスクを大幅に下げられます。
製造工程では、鋳造欠陥(ポロシティ・充填不良・巣)の露出が表面処理不良の引き金になります。たとえば亜鉛ダイカストZDC2に電解ニッケルめっき3μmを施した部品では、5%塩水噴霧48時間試験でも腐食が発生したという実例が報告されています。ニッケルめっきで耐食性を確保するには、最低でも15μm以上、通常は20μm以上の膜厚が必要です。薄すぎるめっきはピンホールが皆無にできないため、素地の亜鉛が電位差によって急速に腐食されます。
保管・輸送環境も要注意です。密閉梱包の内部は湿気が溜まりやすく、結露が発生すると白錆が短時間で進行します。60℃前後の環境では腐食速度がさらに増加するため、夏場の輸送コンテナ内部の温度管理も軽視できません。
参考:日本鉱業協会 鉛亜鉛開発需要センター「亜鉛合金ダイカストの品質証明制度」
亜鉛合金ダイカストの品質証明制度(日本鉱業協会)
亜鉛合金ダイカストの防錆において、表面処理は最も重要な手段のひとつです。ただし、用途・コスト・外観要求によって最適な処理は変わります。
まず確認しておきたいのは、亜鉛ダイカストにはアルマイト(陽極酸化処理)は施せないという点です。アルマイトはアルミニウム専用の処理であり、ZDC1・ZDC2に対しては対応不可となっています。現場でアルミ部品と亜鉛ダイカスト部品を混在して扱う場合、この点を混同しないよう注意が必要です。
代表的な表面処理方法を以下に整理します。
これが基本です。
表面処理を選ぶ際の実務的な手順として、まず「製品の使用環境(屋内/屋外/海浜/薬品環境)」と「要求耐久年数」を数値で定義することが先決です。それを塩水噴霧試験の要求時間(例:240時間以上)として仕様書に明記し、処理業者に伝えることで、適切な工程設計が可能になります。
参考:めっき加工.com「母材と各種表面処理の相性」(亜鉛ダイカストへの各種処理の可否と耐食性実績が一覧で確認できます)
めっき加工.com:母材と各種表面処理の相性
表面処理の品質は、処理そのものの精度よりも「前処理の精度」に依存すると言っても過言ではありません。どれだけ高品質なめっきや塗装を施しても、下地の脱脂・洗浄が不十分であれば密着不良やピンホールが発生し、そこが錆の起点となります。
前処理の標準的な工程は「脱脂(アルカリ/溶剤)→水洗→酸活性化→水洗→乾燥」です。この各ステップで、液濃度・温度・時間を記録管理することが品質安定化の基本です。亜鉛は酸にもアルカリにも弱い両性金属であるため、酸活性化の時間が長すぎると素地が荒れ、短すぎると活性化不足で密着不良を招きます。
鋳造工程では、溶湯温度・金型温度・射出条件を安定化させてポロシティ(巣)や空気の巻き込みを低減することが防錆対策の根本です。表面に露出した鋳造欠陥はめっき浴の液体が入り込む経路となり、めっき膨れや剥離の原因になります。これは使えそうです。
また、水洗後の乾燥が不十分な場合も残留水分が白錆を引き起こします。乾燥炉の温度・時間を工程標準に明記し、ロット単位で確認することが重要です。現場での手作業による指紋付着も早期腐食の起点になります。素手での取り扱いを避け、手袋着用と拭き上げを標準化するだけで腐食リスクが下がります。
品質確認の手段として、JIS等に準拠したクロスカット試験やテープ試験による密着性確認をロット単位で実施することを推奨します。塩水噴霧試験(中性)では白錆発生時間・赤錆到達時間を指標化し、処理条件の変動を早期にキャッチする仕組みを設けると、クレームの未然防止につながります。
参考:一般社団法人日本ダイカスト協会「亜鉛合金ダイカスト品質証明制度」(昭和36年より運用されている業界の品質管理制度の詳細)
日本ダイカスト協会:亜鉛合金ダイカスト依頼分析
現場でよく見られる錆トラブルと、その見落とされがちな原因を整理します。
ここで、多くの現場が見落としている視点を一つ挙げます。それは「防錆対策にかけるコスト」と「クレームが発生した後の対応コスト」の非対称性です。
表面処理の変更や前処理の強化は、1ロットあたりで見るとコストアップに感じられます。しかし、出荷後に粒間腐食が発覚した場合、全数回収・分析費用・補修または再製造・得意先への対応工数が一度に発生します。JIS規格対応の品質インゴットへの切り替えや、リターン材比率の管理強化は、こうした後発コストと天秤にかけると十分にペイする投資です。
防錆コストは「予防への支出」ではなく「クレームを未然に回避するための費用」と位置づけることで、現場での対策優先度が変わります。この考え方が、長期的な品質コスト管理の核心です。
参考:曽余産業「亜鉛ダイカストのサビ(錆)にお困りの方必見『原因と防錆対策』」(フェーズ別の原因と対策が実務目線でまとめられています)
曽余産業:亜鉛ダイカストのサビ(錆)の原因と防錆対策
十分な情報が集まりました。記事を作成します。

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