SNCM220をそのまま海外規格に置き換えると、焼入れ深さが図面指示の30%以上ずれることがあります。
SNCM220はJIS G4053で規定されたニッケル・クロム・モリブデン(NiCrMo)系の合金鋼です。 「肌焼き鋼」として分類され、浸炭処理後に表面硬度と耐摩耗性を同時に高められる点が最大の特徴です。 jfs-steel(https://www.jfs-steel.com/en/product/SNCM220.html)
各国対応規格を下の表で整理しました。
| 国・地域 | 規格 | 鋼種記号 |
|---|---|---|
| 🇺🇸 米国(AISI/SAE) | ASTM A29 | 8620 |
| 🇩🇪 ドイツ(DIN/EN) | EN 10084 / DIN 1654 | 1.6523 / 20NiCrMo2-2 |
| 🇬🇧 英国(BS) | BS 970 | 805M20 |
| 🇨🇳 中国(GB) | GB/T | 20CrNiMo |
| 🌐 ISO | ISO 683/11 | 20NiCrMo2 |
| 🇫🇷 フランス(AFNOR) | NF | 20NCD2 |
| 🇮🇹 イタリア(UNI) | UNI | 20NiCrMo2 |
songshunsteel(https://songshunsteel.com/product/8620-sncm220-16523-steel/)
最も広く使われる対応材はAISI 8620です。 北米からの調達、または海外向け図面作成時には「8620」の表記が標準となります。 steelmax.co(https://steelmax.co.kr/2015/03/31/sncm-220-and-aisi-8620-comparison/)
ただし注意点があります。ASTMの8620はMo上限が0.25%なのに対し、JIS SNCM220のMo上限は0.30%まで許容されています。 このわずかな差が焼入れ性(ジョミニー値)に影響するケースがあるため、高精度部品では成分証明書(ミルシート)の確認が原則です。 steel-grades(https://www.steel-grades.com/metals/85/185767/CNS-SNCM220.html)
対応材を選ぶ際は、化学成分の「範囲」が一致しているかどうかの確認が第一歩です。
SNCM220の化学成分(JIS G4053準拠)は以下のとおりです。 toishi(https://www.toishi.info/sozai/sncm/sncm220.html)
AISI 8620と並べてみると、CとSiとMnはほぼ一致しています。 一方でCrの上限がJIS(0.65%)に対しAISI(0.60%)と異なります。Crが焼入れ性や浸炭層の硬度に直接影響する元素であることを考えると、この差は無視できません。 steelmax.co(https://steelmax.co.kr/2015/03/31/sncm-220-and-aisi-8620-comparison/)
機械的性質(焼きならし状態)の目安は次のとおりです。 thyssenkruppsteel.wordpress(https://thyssenkruppsteel.wordpress.com/2019/11/05/din-6523-aisi8620-sncm220/)
| 特性 | 数値 |
|---|---|
| 引張強さ | 530 MPa |
| 降伏強さ | 385 MPa |
| 弾性率 | 190〜210 GPa |
| ブリネル硬さ | HB 149 |
| シャルピー衝撃値 | 115 J |
| 被削性指数 | 65(AISI 1212を100として) |
被削性指数65という数字はどういう意味か? AISI 1212(快削鋼)を100としたとき、SNCM220は約65%の切削しやすさという意味です。 硬い・粘い合金鋼であることを数値が示しています。快削鋼に比べると工具寿命が約35%短くなることを工程設計で織り込む必要があります。これは工具コストに直結します。 thyssenkruppsteel.wordpress(https://thyssenkruppsteel.wordpress.com/2019/11/05/din-6523-aisi8620-sncm220/)
参考として、材料の詳細データシートを以下で確認できます。
対応材を使っても、熱処理条件が合わなければ設計強度は出ません。これが基本です。
SNCM220(AISI 8620相当)の代表的な熱処理条件は次のとおりです。 japanese.stainlesssteel-sheetmetal(https://japanese.stainlesssteel-sheetmetal.com/sale-10241831-alloy-aisi-sae-8620-steel-1-6523-21nicrmo2-sncm220-round-bar.html)
DIN 1.6523(ドイツ規格)との比較で注意が必要なのが、EN 10084に基づく浸炭温度の管理幅です。JIS準拠の国内熱処理条件をそのまま適用しても問題ない場合がほとんどですが、ロット変動によるNi・Cr含有量の差が焼入れ深さに±0.1mm程度の影響を与えることがあります。
歯車やドライブシャフトなど有効硬化層深さ(EHD)に厳しい公差が設けられている部品では、試作段階でミルシートと照合したうえで熱処理仕様を確定することが条件です。これは手を抜けません。
実際のJIS対比規格データは、OSGの材料規格比較表(PDF)でも確認できます。
SNCM220(=AISI 8620相当材)が使われる部品は、衝撃と摩耗の両方を受ける箇所に集中しています。 jfs-steel(https://www.jfs-steel.com/en/product/SNCM220.html)
代表的な用途は以下のとおりです。
この鋼種が選ばれる理由は「表面は硬く、芯部は粘い」という二層特性にあります。 浸炭処理後の表面硬度はHRC58〜62程度に達し、接触疲労強度が要求される軸受け面に最適です。一方で芯部は浸炭の影響を受けず、HRC30〜38程度の靭性が維持されます。 toishi(https://www.toishi.info/sozai/sncm/sncm220.html)
たとえばトランスミッション歯車で考えると、表面の浸炭硬化層が歯面摩耗を防ぎ、芯部の靭性が繰り返し衝撃による割れを防ぐという役割分担がなされています。これが使えそうです。
輸出向け部品でAISI 8620指定の図面を受け取った場合、基本的にはSNCM220で対応可能です。ただし、調達先の材料証明書でCr・Mo成分範囲を確認してから発注するのが安全な手順です。
現場でよく起きるのが、「肌焼き鋼ならどれも同じ」という誤解です。厳しいところですね。
SNCM220・SCM420・SCr420はいずれも浸炭焼入れ用の肌焼き鋼ですが、合金元素の組み合わせが違うため焼入れ性と靭性に明確な差があります。
| 鋼種 | Ni含有 | Mo含有 | 焼入れ性 | 芯部靭性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| SNCM220 | ✅ あり(0.4〜0.7%) | ✅ あり(0.15〜0.30%) | 高い | ◎ 高い | 高負荷歯車・シャフト |
| SCM420 | ❌ なし | ✅ あり(0.15〜0.30%) | 中〜高 | ○ 中程度 | 中負荷歯車・軸類 |
| SCr420 | ❌ なし | ❌ なし | 中程度 | △ やや低 | 小〜中型部品 |
Niが入っているかどうかが靭性の分かれ目です。 SNCM220はNiによって低温衝撃特性が向上しており、寒冷地向け車両部品や衝撃荷重が大きいパワートレイン部品に適しています。SCM420で代替した場合、常温での引張強さは近い値でも、衝撃値(シャルピー値)で20〜30%の低下が生じることがあります。 toishi(https://www.toishi.info/sozai/sncm/sncm220.html)
また、equivalent materialとしてAISI 8620を調達した際に「8617」や「8615」が混入するケースがあります。 8617はC上限が0.20%、8615はC上限が0.18%であり、SNCM220(C:0.17〜0.23%)に比べて炭素量が若干低い。つまり浸炭後の芯部強度が設計値を下回るリスクがあります。 jfs-steel(https://www.jfs-steel.com/en/product/SNCM220.html)
材料受入れ時にはミルシートのC・Cr・Mo・Niを1点ずつ照合する。それだけ覚えておけばOKです。
三菱カーバイドが公開している材料クロスリファレンスリストも、現場での照合に役立ちます。