タイミングベルト駆動のロールフィーダーは、高速運転で送りピッチが0.1mm以上ズレて不良品を量産することがあります。

ロールフィーダーとは、プレス加工においてコイル材や鉄板などのワークをプレス機械へ定量かつ定速で送り出すための「材料送り装置」です。プレス機械本体のボルスタ側面に取り付けて使用するのが一般的で、連続プレス加工を自動化するうえで欠かせない周辺機器のひとつです。
基本的な構造は非常にシンプルで、「上ロール」と「下ロール」の2本のロールがコイル材をサンドイッチ状に挟み、回転によって材料をプレス金型へ向けて送り出します。これをイメージするなら、麺棒2本で生地を送り出す製麺機のような感覚に近いですね。
上ロールはスプリングまたはハンドルで加圧力を調整できる可動式の構造になっています。下ロールはサーボモーターと連結した駆動側で、送り長さや速度はNC制御盤(タッチパネル)から数値で設定します。現在主流のNCロールフィーダーでは、プレス機のSPM(ストローク毎分)と完全に連動した制御が標準機能として備わっています。
ロール表面の仕上げ精度も重要な要素です。高精度機種では、S45C(炭素鋼)を高周波焼き入れしたあと、1/1000mm単位のミクロン研磨を施したロールを採用しています。この表面精度が、長期稼働でも送り誤差を蓄積させない根拠になっています。
材料幅・板厚の対応範囲は機種によって異なります。たとえばトスコムのORBIT-EX3シリーズでは材料幅10〜150mm、板厚0.01〜4.5mmという広い範囲をカバーしています。板厚0.01mmは髪の毛の直径(約0.07mm)よりも薄い世界です。精度が必要です。
トスコム株式会社|NCロールフィーダー ORBIT-EX3シリーズ(仕様・構造詳細)
送り方向はプレス機向かって左から右が基本ですが、出荷時オプション仕様変更で右から左への逆送りも設定可能なモデルがあります。引き抜き送り(プレス機から材料を引っ張り出す方向)にも対応する機種が増えており、送り方向を制御盤側で切り替えられるものも登場しています。
ロールフィーダーで最も見落とされやすい機構が「リリース機構(ローラリフタ機構)」です。これが何か理解しているかどうかで、加工精度のトラブル対応力が大きく変わります。
材料を送り出した後、プレス金型内のパイロットピンが材料の送り誤差を最終修正します。この修正動作を妨げないよう、ロールフィーダーは材料を一時的に「開放」する必要があります。この開放動作を「リリーシング」と呼びます。つまり送りながら掴み、修正のときは一瞬手を離す。その切り替え機構がリリース機構です。
リリース機構には大きく2種類あります。
| 方式 | 動作原理 | 特徴・適用場面 |
|---|---|---|
| ⚙️ メカリリース方式 | プレスのスライド(ラム)に取り付けたドライバ(タタキ棒)がリリーシングアームを押し下げて上ロールを持ち上げる | スライド降下と完全同期。高速回転域・精密金型・ショートストロークプレスに最適 |
| 💨 エアリリース方式 | エアコンプレッサーの空気圧でリリース動作を行う。クランク角度計からの信号でタイミングを制御 | タイミング調整が容易。600SPM以下の一般的なプレス加工に最適。タタキ棒の取り付けが困難なプレス機にも対応 |
メカリリース方式はプレスのスライドと物理的に連動しているため、タイミングのズレが原理的に発生しません。一方、エアリリース方式はコンプレッサーの応答速度に依存するため、エアコンプレッサーの性能次第では600SPM超の高速域で追従が難しくなります。これが条件です。
リリース幅(ロールの開放量)も精度に影響します。ORBIT-EX3では最大4.5mmまでリリース幅を設定でき、薄板材料の場合はストローク長さを短く設定することで単位時間あたりのリリース回数を増やし、より高速な送りを実現できます。
ミスミ技術情報には、リフトレバーが上ロールの両端をバランスよく持ち上げることの重要性が詳述されています。片側だけが持ち上がると材料が傾き、送り精度の低下に直結します。
ミスミ技術情報|ローラフィーダのリリース機構(ローラリフタ)の解説
ロールフィーダーの駆動方式は、「タイミングベルト式」と「歯車直結式(歯車構成)」の2種類に大別されます。どちらを選ぶかが、長期的な送り精度と保全コストを左右します。意外ですね。
タイミングベルト式は多くの廉価機種が採用しており、初期導入コストを抑えられる反面、以下のような弱点を持ちます。プレス加工時やコイル巻き戻し時に発生する大きなトルク変動でベルトに伸びが生じ、この伸びが送りピッチの乱れとなって品質問題に発展するケースがあります。とくに高速運転時・重量材送り時に顕著です。
歯車直結式(歯車構成)はサーボモーターとロールを歯車で直結する構造で、バックラッシュ(歯車の遊び)が問題視されますが、独自機構でバックラッシュをゼロに抑えることに成功した機種も登場しています。トスコムのORBIT-EX3が採用する「独自歯車機構」はその代表例で、パイロットピンが使用できない極薄材料の高精度ピッチ送りにも対応しています(特許出願中)。
| 駆動方式 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ⚙️ タイミングベルト式 | 初期コストが低い・入手しやすい | トルク変動でベルトが伸び、ピッチ乱れが発生。消耗品交換コストが発生する |
| 🔩 歯車直結式 | トルク変動に強く長期間高精度を維持。消耗品が少ない | 初期導入コストが高め。設計・製造技術に依存する |
現場でよく見かける誤解として「ロールフィーダーは構造がシンプルだからどれも同じ」という思い込みがあります。しかし駆動方式の違いによる送り精度差は、製品の寸法不良率に直接影響します。とくに自動車部品など厳しい公差管理が求められる加工では、駆動方式を起点に機種選定することが現場損失を防ぐ最短ルートです。
三共製作所のサーボフィーダ「バリアックス」シリーズは、サーボモーターとロールを一体構造にした高剛性設計を採用しており、繰り返し送り精度±0.1mm以下を謳っています。加工ロットが大きい現場では、この精度差が年間の不良コストで数十万円単位の差になることもあります。
三共製作所|サーボフィーダ バリアックスVRシリーズ(駆動構造・仕様)
ロールフィーダーを選定するとき、「上下ロールの材質」まで気にしている現場は多くありません。しかし、これを見落とすと加工後の製品表面に「ロールマーク(ロール傷)」が入り、品質クレームや手直しコストに直結します。
標準的なロールはS45C(炭素鋼)の高周波焼き入れ仕上げが主流ですが、軟鋼材・アルミ・ステンレス・真鍮などの傷つきやすい素材を送る場合はウレタン製ロールへの交換が有効です。ウレタンの硬度は材質ごとに選択できるため、軟質素材に合わせた面圧コントロールが可能になります。
伊達機械のNCロールフィーダーは、カムリリース機構によりリリース時のロールマークが付きにくい構造を持ち、アルミ・ステンレス・真鍮などの加工に特に適しています。リリース時は上ロールが一瞬材料から離れますが、このとき上ロールが完全にまっすぐ持ち上がらないと材料との接触部に擦り傷が残ることがあります。カムリリース機構はこの持ち上がりの軌跡を最適化する構造です。
ロール表面の追加処理も選択肢のひとつです。
ロール交換のしやすさも選定時に確認すべきポイントです。ORBIT-EX3では汎用ベアリングホルダーを採用しており、専用工具なしで現場担当者がロール交換でき、その日中に稼働再開できる設計になっています。段取り替えの頻度が高い現場では、この「交換時間」が生産効率を左右します。これは使えそうです。
伊達機械株式会社|NCロールフィーダー カムリリース機構の特徴
「ロールフィーダーを入れれば材料送りは完結する」という考え方は、実は現場トラブルの温床になりやすいです。ロールフィーダーにはコイル材の「巻き癖(カール)を直す機能」がない、という事実は意外と見落とされています。
コイル材はリール(コイルスタンド)に巻かれた状態で保管されます。巻き径が小さいほど曲率が大きく、巻き癖が強く残ります。このカール状態のまま金型に入ると、金型内での材料位置がばらつき、打ち抜き精度の低下・パイロットピンへの過負荷・最悪の場合は金型破損につながります。
ポイントは「送り精度を最優先するか」「矯正能力を優先するか」です。高精度なNCロールフィーダーはサーボモーターで送り量を精密制御しますが、材料に巻き癖があると送り量が正確でも金型内で材料が暴れます。送り精度と材料状態管理は別の問題です。つまり別々に対策が必要です。
現場でよくある損失パターンは「ロールフィーダーだけ高精度機を入れたのに、寸法精度が安定しない」という状況です。調べてみると材料のカールが原因だった、というケースは少なくありません。機器選定の前に材料状態のチェックから始めることが条件です。
アイダエンジニアリングのNCロールフィーダーラインナップや、生田産機工業のカスタムメイドのレベラーラインなど、加工内容に合わせた組み合わせ提案を行っているメーカーに相談することが、現場トラブルを未然に防ぐ近道になります。
金属プレス加工ガイド|フィーダーの種類と選び方(ロールフィーダー・レベラーフィーダー・グリッパーフィーダー)

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