ウレタンの材質と種類ごとの特徴比較!エーテルとエステルの違い

ウレタンという言葉はよく耳にしますが、その材質について深くご存知でしょうか?実はウレタンには多くの種類があり、それぞれに異なる特徴や用途が存在します。この記事では、ウレタンの基本的な材質から、エーテル系とエステル系の違い、さらには意外な弱点までを徹底解説します。あなたの業務に最適なウレタンを見つける一助となるはずですが、本当に知っておくべきことは何でしょうか?

ウレタンの材質とその特性

この記事のポイント
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材質の基本

ウレタンの主成分であるポリオールの違い(エーテル系/エステル系)が、耐水性や耐油性といった基本特性を決定づけます。

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機械的特性

ゴムのような柔らかさからプラスチックのような硬さまで調整可能で、特に耐摩耗性は他のゴム素材を圧倒します。

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弱点と注意点

優れた材質ですが、熱や水分(特に湿気)によって劣化する「加水分解」という弱点があり、使用環境には注意が必要です。

ウレタンの材質の基本:エーテル系とエステル系の違いと特徴の比較

 

ウレタン(ポリウレタン)は、イソシアネートとポリオールという二つの主原料を化学反応させて作られる高分子材料です 。このポリオールの種類によって、ウレタンの基本的な性質が大きく二つに分かれます。それが「エーテル系」と「エステル系」です 。


エーテル系ウレタンは、耐加水分解性に優れているのが最大の特徴です 。つまり、水や湿気による化学的な分解が起こりにくく、水中や高湿度の環境での使用に適しています 。カビや微生物への耐性も比較的高いため、屋外や水回りで使用される部品にも向いています 。一方で、機械的強度や耐油性ではエステル系に一歩劣る傾向があります 。


対照的に、エステル系ウレタンは機械的強度、特に引張強度や引裂き強度、耐摩耗性に非常に優れています 。また、鉱物油やグリスといった油類に対する耐性も高いため、油が付着するような工業機械の部品に多用されます 。しかし、その反面、水分や湿気に弱いという大きな弱点を抱えています 。高温多湿の環境では「加水分解」という現象を起こし、時間とともにボロボロに劣化してしまうのです 。


この二つの特性を理解せずに選定すると、期待した性能が得られなかったり、早期の劣化につながったりする可能性があります。使用環境に「水」や「湿気」が大きく関わるならエーテル系、「強度」や「耐油性」が最優先されるならエステル系、というのが基本的な選び方の指針となるでしょう。

 


エーテル系とエステル系の特性比較表

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特性 エーテル系ウレタン エステル系ウレタン
耐加水分解性 (耐水性) ◎ (優れる) △ (劣る)
機械的強度 〇 (良好) ◎ (優れる)
耐油性 〇 (良好) ◎ (優れる)
耐カビ性 ◎ (優れる) △ (劣る)
主な用途 クッション材、梱包材、水中利用部品 工業用ローラー、パッキン、ベルト

ウレタンの基本的な種類と特性については、以下のリンクで詳しく解説されています。

 

ウレタンゴムの種類と特徴|富士ゴム化成株式会社

ウレタンの材質の機械的強度と硬度:用途に応じた選び方

ウレタン材質の最も優れた特徴の一つが、その卓越した機械的強度と、幅広い硬度範囲にあります 。合成ゴムの中でもトップクラスの耐摩耗性を誇り、強い摩擦や圧力がかかる過酷な条件下で真価を発揮します 。その耐摩耗性は、なんと天然ゴムの数倍から、特殊な配合のものでは6倍以上にも達することが報告されています 。


また、ウレタンは「ゴムの弾性」と「プラスチックの剛性」を併せ持つと表現されるように、硬度を非常に広い範囲で調整できるのも大きなメリットです 。消しゴムのように柔らかいもの(ショアA硬度10程度)から、ゴルフボールのように硬いもの(ショアD硬度80以上、ショアA換算で100近く)まで、用途に応じて自由に設計できます 。


この硬度と機械的強度の関係性を理解することが、適切なウレタンを選定する鍵となります。

 

     

  • 低硬度ウレタン (ショアA 10~50): 非常に柔らかく、弾力性に富みます。衝撃吸収性やクッション性が求められる用途、例えばクッション材、振ゴム、ゲル状の緩衝材などに使用されます。
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  • 中硬度ウレタン (ショアA 60~80): 最も一般的に使用される硬度帯です。十分な強度と柔軟性を兼ね備え、パッキン、ガスケット、ローラー、ベルトコンベアのスクレーパーなど、多岐にわたる用途で活躍します 。
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  • 高硬度ウレタン (ショアA 90以上): プラスチックに近い硬さを持ち、高い耐荷重性が求められる用途に適しています。重量物を支えるキャスターの車輪、金属加工用のダイパッド(プレス金型の緩衝材)、歯車(ギア)などに使われます。高い硬度を持ちながらも、金属のように相手材を傷つけにくいという利点があります。

例えば、引張強さ(MPa)は20~45MPa、伸び率は300~800%というデータがあり、これは他の多くの合成ゴムよりも優れた数値です 。この高い強度と弾性により、ウレタンは単なる緩衝材としてだけでなく、動力伝達や荷重支持といった構造部材としても使用可能なのです 。

ウレタンの材質の耐熱性と耐油性:過酷な環境での使用限界

金属加工の現場では、高温の環境や油分との接触は日常茶飯事です。そのため、使用する材質の耐熱性や耐油性は、部品の寿命や性能を左右する重要な要素となります。ウレタンゴムはこの点で優れた特性を持つ一方で、明確な使用限界も存在します 。


まず耐熱性についてですが、標準的なウレタンゴムの使用限界温度は、一般的に70℃から80℃程度とされています 。この温度を超えて連続的に使用すると、物性の低下や硬化が進行し、本来の性能を発揮できなくなります 。瞬間的にであれば100℃程度まで耐えることもありますが、これはあくまで短期的な話です。そのため、エンジン周辺や高温の液体が流れる配管のシール材など、常に高温に晒される場所での使用は避けるべきです。一方で、耐寒性は比較的高く、-30℃から-60℃といった低温環境でも弾性を保つことができます 。


次に耐油性ですが、これはウレタンの大きな強みの一つです 。特に前述のエステル系ウレタンは、鉱物油、グリス、脂肪族炭化水素系の燃料油などに対して非常に高い耐性を示します 。そのため、油圧シリンダーのパッキン、オイルシール、工作機械の摺動部(しゅうどうぶ)のワイパーなど、油環境で使われる多くの部品に採用されています。ただし、ここで注意すべきは、ウレタンが「万能の耐油性」を持つわけではないという点です。ケトンやエステル、芳香族炭化水素系の溶剤には膨潤(膨らんでしまうこと)したり、劣化したりする可能性があります。使用する油や薬品の種類を事前に確認することが不可欠です。


以下に、ウレタンゴムと他の主要なゴム材質の耐熱・耐油性を比較した表を示します。

 


主要ゴム材質との特性比較

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

材質 耐熱温度(目安) 耐油性(鉱物油) 特記事項
ウレタンゴム (U) 約80℃ ◎ (特にエステル系) 耐摩耗性が非常に高い 。
ニトリルゴム (NBR) 約120℃ ◎ (非常に優れる) 最も標準的な耐油性ゴム。
シリコーンゴム (Q) 約200℃ △ (劣る) 耐熱・耐寒性に優れるが、耐油性は低い。
フッ素ゴム (FKM) 約230℃ ◎ (非常に優れる) 耐熱・耐薬品性にも優れるが、高価 。

ウレタンの材質の意外な弱点と加工時の注意点

優れた機械的強度と耐油性を誇るウレタンですが、万能な材質ではありません。その「意外な弱点」を理解しておくことは、トラブルを未然に防ぐ上で極めて重要です。最大の弱点は、繰り返しになりますが「加水分解」です 。


特にエステル系のウレタンは、空気中のわずかな湿気と熱が組み合わさることで、分子レベルで分解が始まります 。これにより、材質がベタベタになったり、ひび割れが生じたり、最終的にはボロボロと崩壊してしまうことがあります 。長期間保管されていたウレタン製品が、未使用にもかかわらず劣化しているのは、この加水分解が原因であることが多いです。これを防ぐためには、高温多湿な環境での使用・保管を避ける、あるいは耐加水分解性に優れたエーテル系を選択する必要があります。


その他にも、以下のような弱点が知られています。

 

     

  • 紫外線への弱さ: 直射日光(紫外線)に長時間晒されると、変色(特に黄変)したり、表面から劣化が進行したりします。屋外で使用する場合は、UVカット剤が配合された耐候性グレードのウレタンを選ぶか、塗装などで表面を保護する対策が必要です。
  • - 火災時のリスク: ウレタンは可燃性の物質であり、燃焼時に有毒なシアン化水素ガスなどを発生する危険性があります 。建築用の断熱材などでは難燃処理が施されていますが、工業用部品として使用する場合も、火気の近くでの使用には注意が必要です。

     

  • 施工・加工の難しさ: 発泡ウレタンを現場で吹き付ける場合、均一な厚みに仕上げるには熟練の技術が必要です 。また、切削加工時には、その弾性の高さから寸法を正確に出すのが難しかったり、バリが発生しやすかったりします。加工業者には、ウレタンの特性を熟知した上でのノウハウが求められます。

さらに、意外と知られていないのが、電線との相性です 。発泡ウレタン断熱材が電線(塩化ビニル被覆)を長期間覆ってしまうと、ウレタンに含まれる可塑剤が電線の被覆に移行し、被覆を硬化・劣化させてしまう問題が指摘されています。これは主に建築分野での話ですが、工業製品の内部でウレタンと配線が接触する場合も、同様のリスクを考慮する必要があります。


これらの弱点を理解し、設計段階から適切な材質選定と使用環境への配慮を行うことが、ウレタンという優れた材質を最大限に活用するための鍵となります。

 

ウレタン材質の価格動向と今後の展望:サプライチェーンと市況の影響

ウレタン製品の価格は、その原料であるイソシアネート(MDI, TDI)やポリオール(PPG, PO)の市況に大きく左右されます 。これらの化学原料は、原油価格の変動、世界的な需給バランス、そして製造プラントの定期修繕やトラブルといったサプライチェーンの状況によって、常に価格が変動しています 。


近年、特に中国市場の動向がウレタン原料の価格に大きな影響を与えています 。中国は世界最大のウレタン生産・消費国であり、同国の経済状況や環境規制、在庫水準が、アジア全体の市況を左右するからです 。例えば、2025年に入ってからのクルードMDI(ウレタンの主原料)価格は、中国国内の需要低迷や春節(旧正月)休暇の影響を受け、小刻みな値動きを繰り返しています 。2025年3月には需要低迷から価格が下落しましたが、メーカーの定修計画など供給側の要因で再び上昇に転じる可能性も指摘されています 。


軟質ウレタンフォームの国内出荷販売単価を見ると、2023年には前年比で11.3%上昇し、過去最高水準を記録しました 。これは原料価格の高騰が製品価格に転嫁された結果と考えられます。金属加工業に従事する者として、ウレタン部品の調達コストを管理する上では、こうしたマクロな価格動向を注視することが不可欠です。


今後の展望としては、以下の二つの流れが注目されます。

 

     

  1. バイオベースポリウレタンの台頭: 環境意識の高まりから、従来の石油由来原料ではなく、植物油など再生可能な資源から作られる「バイオベースポリウレタン」の研究開発が進んでいます 。まだコストや性能面での課題はありますが、将来的には持続可能な材料として普及が進む可能性があります。
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  3. 高機能・特殊用途品の開発: 単なる汎用品としてだけでなく、フッ素を導入して耐薬品性や撥水性を高めた「フッ素化ポリウレタン」や、優れた導電性を持つタイプ、特定の形状を記憶するシェイプメモリータイプなど、高付加価値な特殊ウレタンの開発が活発化しています 。これらの新素材は、航空宇宙や医療といった最先端分野での新たな応用が期待されています。

ウレタン材質の技術的な特性だけでなく、こうした経済的な側面や将来の技術動向を把握することで、より戦略的な材料選定やコスト管理が可能になるでしょう。

 


ウレタン原料の市況については、以下の専門情報サイトが参考になります。

 

ウレタン総合サイト|PU Portal 市況レポート|長瀬産業株式会社

 

 


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