金属加工のやり方と種類、切削から研削による高精度な仕上げ

金属加工のやり方には、材料から形を作り出す多様な方法があります。基本的な除去加工から、高精度な仕上がりを実現する研削加工や熱処理、製品の価値を高める表面処理まで、その工程は多岐にわたります。自動化技術や環境への配慮まで、プロが知るべき金属加工の世界を覗いてみませんか?

金属加工のやり方

この記事でわかること
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加工の全体像

金属の塊から製品が完成するまでの基本的な流れと、代表的な「除去加工」の種類を理解できます。

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精度向上の秘訣

製品の品質を決定づける「研削加工」と、金属の性質を変化させる「熱処理」の重要なコツがわかります。

付加価値を高める技

耐久性や美観を向上させる「表面処理」とめっきの役割、そして製品寿命に与える影響を学べます。

金属加工の基本的な流れと除去加工の種類

 

金属加工は、目的の形状や機能を持つ製品を生み出すために、金属材料に様々な変化を加える技術の総称です 。その方法は多岐にわたりますが、大きく分けて、不要な部分を取り除く「除去加工」、材料を曲げたり伸ばしたりして形を変える「成形加工」、そして材料を付け加える「付加加工」の3つに分類されます 。特に、部品製造の現場で中心的な役割を果たすのが除去加工です 。
除去加工の基本的な流れは以下のようになります。

 

     

  1. 設計: 製品の図面を作成し、寸法、形状、材質、必要な精度などを決定します。
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  3. 材料準備: 設計に基づいて、適切なサイズと種類の金属材料を用意します。
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  5. 粗加工: 完成形状に近い形まで、大まかに不要な部分を削り取ります。
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  7. 中仕上げ: 粗加工でできた凹凸を整え、より精密な寸法に近づけていきます。
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  9. 仕上げ加工: 最終的な寸法と、要求される表面の滑らかさ(表面粗さ)に仕上げます。
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  11. 検査: 完成した製品が、図面の指示通りにできているか、三次元測定機などを用いて精密に測定します。

この流れの中で行われる除去加工には、いくつかの代表的な種類があります。

 

     

  • 切削加工: バイトやエンドミルといった刃物(切削工具)を使い、金属を削り取る最も一般的な方法です 。旋盤加工フライス加工などがこれにあたります。加工速度が速く、多様な形状に対応できるのが特徴です。
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  • 研削加工: 砥石(といし)を高速で回転させ、工作物の表面をわずかずつ削り取る加工方法です 。切削加工よりも高い寸法精度や、滑らかな仕上げ面を得たい場合に行われます。
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  • 放電加工: 電極と工作物の間で火花放電を発生させ、その熱で金属を溶かして除去する方法です 。非常に硬い金属や、切削工具では加工が難しい複雑な形状の加工に適しています。

これらの除去加工は、それぞれ得意なことや特徴が異なります 。そのため、製品に求められる精度や形状、コストに応じて、最適な加工方法を単独で、あるいは組み合わせて選択することが、高品質なものづくりには不可欠です 。

金属加工の精度を左右する研削加工と熱処理のコツ

金属加工において、製品の性能を最終的に決定づけるのが「精度」です 。特に精密機械の部品などでは、ミクロン単位の寸法精度や、鏡のような滑らかな表面が求められます。この高精度な仕上げを実現するために欠かせないのが、研削加工と熱処理の工程です。
研削加工は、高速回転する砥石を使って、工作物の表面を少しずつ削り、形状や寸法を精密に整える技術です 。切削加工の後に行われることが多く、より高い寸法精度と優れた表面粗さを得ることができます。

 

参考)除去加工とは?その種類(分類)と概要を初心者向けに解説

研削加工で精度を高めるためのコツは以下の通りです。

 

     

  • 砥石の選定: 工作物の材質や求める仕上げ面の状態によって、砥粒(削るための硬い粒)の種類、粒度(粒の大きさ)、結合度(砥粒を固めている強さ)が異なる最適な砥石を選ぶ必要があります。
  • - 適切な加工条件の設定: 砥石の回転速度、工作物を送る速度、一度に削る量(切り込み量)などの加工条件を最適化することが重要です 。これらのバランスが崩れると、精度が落ちるだけでなく、加工面に「焼け」と呼ばれる変質が起きてしまうこともあります。
    - 温度管理の徹底: 加工点では非常に高い熱が発生するため、クーラント(冷却潤滑油)を適切に使用して冷却し、熱による工作物の変形(熱変位)を防ぐことが不可欠です 。

一方、熱処理は、金属を加熱・冷却することで、その内部組織を変化させ、硬さや粘り強さといった機械的性質を改善する技術です 。どれだけ精密に加工しても、材料自体の強度が不足していては意味がありません。
熱処理が精度に与える影響と、そのコツは次の通りです。

 

     

  • 内部応力の除去: 金属材料は、圧延や切削などの加工を経ると、内部に「ひずみ(内部応力)」が蓄積します。このひずみが残ったままだと、加工後や経年変化によって変形する原因となります。そこで、加工前や中間の工程で「焼なましアニーリング)」と呼ばれる熱処理を行い、内部応力を取り除くことが重要です 。
  • - 硬度と靭性の両立: 部品には、硬さだけでなく、衝撃に耐えるしなやかさ(靭性)も求められます。硬度を上げる「焼入れ」だけでは、金属は硬くなる反面、脆くなってしまいます。そのため、焼入れ後に、少し低い温度で再度加熱する「焼戻し」を行い、硬度と靭性のバランスを最適に調整する必要があります 。
    - 精密な温度制御: 熱処理は温度管理が命です 。加熱温度や冷却速度がわずかに違うだけで、狙った通りの金属組織が得られず、品質にばらつきが生じてしまいます。

このように、形状を創り出す研削加工と、材質を最適化する熱処理は、車の両輪のような関係にあります。両方の工程で細心の注意を払い、ノウハウを蓄積していくことが、他には真似できない高精度な製品を生み出す鍵となるのです。

 

研削加工と熱処理の関係性について、より専門的な情報が掲載されています。

 

初心者もわかるシャフト研磨の基本と熱処理の関係解説 | 日興機械株式会社

金属加工における表面処理とめっきの重要性

金属製品は、形作られた後、そのままで使用されることは稀です。多くの場合、製品の寿命を延ばし、付加価値を高めるために、「表面処理」という最終工程が施されます 。表面処理は、金属の表面に新たな層(皮膜)を形成したり、表面そのものの性質を変化させたりする技術の総称です。その中でも代表的なものが「めっき」です。
表面処理の主な目的は以下の3つに大別されます。

 

     

  • 🛡️ 耐食性の向上(錆): 鉄などの金属は、空気中の酸素や水分と反応して錆びてしまいます。めっきや塗装によって表面を保護膜で覆うことで、錆の発生を防ぎ、製品の寿命を大幅に延ばすことができます 。これは、屋外で使用される部品や、湿度の高い環境に置かれる製品にとって不可欠な処理です。
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  • 💪 機能性の付与: 表面処理は、見た目だけでなく、様々な機能を付与するためにも行われます。例えば、硬質クロムめっきは表面の硬度を著しく向上させ、耐摩耗性を高めます 。また、金めっきは優れた電気伝導性を与えるため、電子部品の接点などに利用されます 。他にも、滑りやすさを改善する潤滑性皮膜や、熱を逃がしやすくする処理など、その種類は多岐にわたります。
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  • 装飾性の向上: 製品の見た目は、その価値を大きく左右します。クロムめっきによる鏡のような光沢や、金めっきの輝きは、自動車のエンブレムやアクセサリーなどに高級感を与えます 。また、アルマイト処理ではアルミニウムを様々な色に着色することができ、デザインの幅を広げます。

めっきは、これらの目的を達成するための非常に効果的な表面処理技術の一つです 。電気や化学的な方法を用いて、金属の表面に別の金属の薄い膜を析出させます。めっきには様々な種類があり、使用する金属によって得られる効果が異なります。

めっきの種類 主な目的・特徴 具体的な用途例
亜鉛めっき 防錆効果が非常に高い(犠牲防食作用) 建築用のボルト、ナット、自動車の足回り部品
ニッケルめっき 耐食性に優れ、硬さも得られる。装飾めっきの下地としても利用される。 水道蛇口、機械部品、装飾品
クロムめっき 非常に硬く、耐摩耗性に優れる。美しい光沢を持つ。 自動車のグリル、工具、ピストンリング
金めっき 電気伝導性が高く、化学的に安定している。 スマートフォンの電子回路、コネクタ端子


製品に求められる性能や使用環境、コストなどを総合的に考慮し、最適な表面処理方法を選択することが、製品の信頼性と価値を最大限に引き出す上で極めて重要です 。一見、地味な工程に見えるかもしれませんが、表面処理はものづくりの品質を支える、なくてはならない基幹技術なのです。

 

参考)製造業における表面処理の重要性と応用|ショットブラストの教科…

めっきの種類と目的について、図解で分かりやすく解説されています。

 

表面処理とは?金属加工の表面処理の種類と表面処理でできること | モノト

金属加工の自動化とNC・マシニングセンタの活用

今日の金属加工の現場では、生産性の向上、品質の安定化、そして技能者不足への対応として、自動化が急速に進んでいます。その中核を担っているのが、「NC(Numerical Control:数値制御)」技術と、それを発展させた「マシニングセンタ」です 。
NCとは、工具の移動距離や速度といった加工に関する情報を、数値化されたプログラム(NCプログラム)によって制御する仕組みです。かつては熟練技能者が手作業で行っていた複雑な加工も、NC工作機械を使えば、プログラムを入力するだけで、正確かつ迅速に再現することができます。

 

そして、このNC技術をさらに進化させ、自動化を推し進めたのがマシニングセンタです 。マシニングセンタには、以下のような画期的な機能が備わっています。

 

参考)NC工作機械の特徴や産業用ロボットとの違いを解説-マシロボ

     

  • 自動工具交換機能(ATC): ドリル、エンドミル、タップなど、工程ごとに異なる多数の工具を「ツールマガジン」に格納しておき、プログラムの指令に従って自動で交換します 。これにより、従来のように作業者が手で工具を交換する必要がなくなり、加工が中断されることなく連続運転が可能です。
  • - 多軸制御: 従来の上下・前後・左右の3軸(X, Y, Z軸)の動きに加えて、回転軸や傾斜軸が加わった「5軸制御マシニングセンタ」も普及しています。これにより、一度の段取り(工作物の固定)で、様々な角度から加工を行うことができ、航空機の部品のような複雑な曲面を持つ形状も効率的に削り出すことができます。

     

    - 複合加工: 旋盤加工(回転させて削る)とフライス加工(工具を回転させて削る)など、異なる種類の加工を1台の機械に集約した複合加工機も登場しています。これにより、複数の機械へ工作物を移動させる手間が省け、リードタイムの短縮と精度の向上が実現します。

     

マシニングセンタの活用は、金属加工の現場に革命をもたらしました。

 

     

  1. 生産性の飛躍的向上: 自動工具交換機能と連続運転により、24時間体制での無人運転も可能になり、生産量が大幅に増加します 。
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  3. 品質の安定化と高精度化: プログラムによって制御されるため、作業者の熟練度による品質のばらつきがありません。常に均一で高精度な加工を実現できます。
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  5. 複雑形状への対応力: 多軸制御により、従来は加工が困難だったり、多くの工程を必要としたりした複雑な形状の部品も、効率的に生産できるようになります。
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  7. 技能者不足の解消: 熟練技能者の減少が課題となる中、NCプログラムの作成や段取りといった、より高度な業務に人材を集中させることができます。

もちろん、マシニングセンタを最大限に活用するためには、適切なNCプログラムを作成する知識、最適な切削工具や加工条件を選定するノウハウが不可欠です。しかし、この強力なツールを使いこなすことが、現代の製造業における競争力の源泉となっていることは間違いありません。

 

マシニングセンタの基本的な仕組みが動画で分かりやすく解説されています。

 

マシニングセンタ | 切削加工 | なるほど!機械加工入門 | キーエンス

意外と知らない?金属加工におけるクーラントの役割と環境負荷

金属加工の現場、特に切削加工や研削加工において、機械から勢いよく吹き付けられている液体を見たことがあるでしょうか。あれは「クーラント」または「切削油剤」と呼ばれるもので、実は高精度・高効率な加工を実現するために、そして工具や機械を守るために、非常に重要な役割を担っています 。多くの人が単なる「冷却水」と思いがちですが、その機能は多岐にわたります。
クーラントが持つ、意外と知られていない4つの重要な役割を見ていきましょう。

 

     

  • 💧 冷却作用: これが最も基本的な役割です。金属を高速で削る際、加工点では数百度から千度以上もの高温が発生します。この熱を放置すると、工具の刃先がすぐに摩耗してしまったり(工具寿命の低下)、工作物が熱で膨張して寸法精度が悪化したりします 。クーラントは、この強烈な熱を素早く奪い去り、加工精度を安定させます。
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  • 潤滑作用: クーラントは、工具の刃先と工作物の間に潤滑膜を形成し、摩擦を劇的に低減させます 。摩擦が減ることで、切削抵抗(削る力)が小さくなり、よりスムーズな加工が可能になります。これにより、加工面の仕上がりが美しくなる(むしれやバリが減る)だけでなく、工具の摩耗も抑えることができます。
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  • 🧼 洗浄作用: 加工中には、切り屑(スラッジ)が大量に発生します。この切り屑が加工点に噛み込んでしまうと、製品の表面に傷をつけたり、工具の切れ味を悪化させたりします。クーラントは、その勢いのある流れで、これらの切り屑を素早く洗い流し、クリーンな加工状態を保ちます 。
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  • 🛡️ 防錆作用: 加工されたばかりの金属表面は非常に活性で、錆びやすい状態です。また、工作機械自体も鉄でできているため、水がかかれば錆びてしまいます。クーラントには防錆剤が添加されており、加工中の工作物や機械全体を錆から守る役割も果たしています 。

このように、クーラントは金属加工の品質と効率を支える「縁の下の力持ち」です。しかしその一方で、環境への影響という側面も無視できません。クーラントは使用するうちに劣化し、バクテリアが繁殖して腐敗することもあります。劣化したクーラント(廃液)は、産業廃棄物として適切に処理する必要があり、そのコストや環境負荷が課題となっています。

 

近年では、この環境問題に対応するため、様々な取り組みが進んでいます。

 

     

  • 長寿命クーラントの開発: 腐敗しにくく、長期間性能を維持できるクーラントが開発され、廃液の量を削減する努力がなされています。
  • - 精密なろ過装置の導入: 高性能なフィルターでクーラント中の不純物を常に取り除くことで、液の寿命を延ばし、ランニングコストと環境負荷を同時に低減できます 。
    - MQL(Minimum Quantity Lubrication): 必要最小限の油剤を霧状にして加工点に供給する技術です。クーラントの使用量を劇的に削減できるため、環境に優しい加工方法として注目されています。

     

単なる液体と侮るなかれ。クーラントを適切に管理し、環境に配慮した技術を取り入れていくことも、これからの金属加工従事者に求められる重要な視点と言えるでしょう。

 

 


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