スローアウェイチップ規格の読み方と種類・選び方

スローアウェイチップの規格はISO準拠の10桁型番で読み解けます。形状・逃げ角・精度・ノーズRなど選定の基本を解説。選び方を間違えると工具コストが跳ね上がることをご存知ですか?

スローアウェイチップの規格を正しく読んで選定ミスをゼロにする方法

同じ型番に見えても、メーカーが違うだけで工具寿命が半分以下になることがあります。


📋 この記事で分かること
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規格型番の読み方

ISO準拠の10桁型番を①形状~⑩補足まで順番に解説。見るべきポイントが明確になります。

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形状・精度・ノーズRの選び方

加工内容に合った形状記号・精度等級・ノーズRの選定基準を具体例付きで解説します。

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選定ミスで起きるコスト損失

ノーズRや精度等級の選定ミスが工具コストと加工品質に与える影響を数字で説明します。


スローアウェイチップの規格体系:ISOとJISの関係


スローアウェイチップ(インサートチップ)の型番は、国際規格ISO 1832をベースに定められています。日本のJIS B 4121もこのISO規格に準拠しており、基本的な読み方はほぼ共通です。つまり、京セラ・三菱マテリアル・タンガロイ・サンドビックといった主要メーカーが異なっても、型番の前半部分は同じルールで読み解けます。


ただし、重要な注意点があります。型番の後半、具体的にはチップブレーカー記号と材質記号については、各メーカーが独自に定めています。たとえば「MP」という記号でも、京セラとタンガロイでは全く別のブレーカー形状を指します。この点を見落として「型番が似ているから互換品として使える」と判断すると、切りくず処理の不具合や工具寿命の短縮につながるリスクがあります。


JISとISOの対比においても、クランプ構造の一種である「ウェッジロック方式(W)」はJISが独自に追加した規定です。ISO規格ではC・M・P・Sの4種類しか定められていないため、海外メーカーのホルダを選ぶ際にはこの差異に注意が必要です。


規格が共通な部分と独自な部分、両方を正確に把握することが選定の第一歩です。


参考:JIS B 4128とISO 6261の対比内容(スローアウェイチップ用ホルダ丸シャンクの呼び記号)
JIS B 4128:1998 スローアウェイチップ用ホルダ丸シャンクの呼び記号の付け方|kikakurui.com


スローアウェイチップの規格型番①〜⑦:基本7要素の読み方

型番の前半7桁は、ISO/JIS共通の情報が詰まっています。例として「TNMG160408」を読み解いてみましょう。


まず **①形状(T)** は、チップの平面形状を示します。Tは正三角形(60°)、Cは80°菱形、Dは55°菱形、Vは35°菱形、Sは正方形、Rは円形、Wは80°六角形です。切れ刃の鋭さはV>D>C>T>Sの順で、先端が鋭いほど仕上げ面は綺麗になりますが、刃先強度は低くなります。


次に **②逃げ角(N)** は、チップ側面の逃げ角を示します。N(0°)はネガティブチップで、両面使いが可能です。B(5°)やC(7°)はポジティブチップで切削抵抗が低く、特に薄肉ワークや非鉄加工に向いています。見た目では5°と7°の区別がつかないため、カタログ確認が必須です。


**③精度等級(M)** は寸法精度を示します。M級はプレス成形品でコストが低く、G級・E級は研磨仕上げ品です。精度の高い順はE>G>Mとなり、内接円直径公差でいえばE・G級が±0.025mm、M級は±0.05〜±0.13mmと約5倍の差があります。仕上げ加工で公差±0.05mm以下を求められる場合は、M級チップだと繰り返し精度が出ないことがあります。


**④溝・穴(G)** はチップブレーカーの有無・取付穴の形状を示します。「U」は穴ありで両面ブレーカー付き、「B」は穴なし・ブレーカーなし、「H」は穴ありでブレーカーなし、などがあります。


**⑤切れ刃長さ(16)** は、T型(三角形)の場合、刃長が16.5mmを意味します。形状によって数字と実寸法の対応が微妙に異なるため、カタログの換算表で確認する習慣が重要です。


**⑥チップ厚さ(04)** は、座面から刃先最高部までの高さで、4.76mm→記号04です。小数点以下は切り捨てです。


**⑦刃先ノーズR(08)** は、コーナー半径を示します。08はR0.8mmを意味し、最も汎用性が高い数値です。この7項目がISO規格で統一された共通情報になります。


参考:チップ型番の詳細な読み方と選定方法
【旋盤】スローアウェイチップとバイトの型番の読み方・選定方法|旋盤情報局


スローアウェイチップの規格型番⑧〜⑩:任意記号と独自記号に潜む落とし穴

型番の後半3要素は、前半7要素とは性質が大きく異なります。ここが選定ミスの温床になりやすい部分です。


**⑧切れ刃形状(主切刃ホーニング)** は任意記号です。F(シャープエッジ)、E(丸ホーニング)、T・W(面取りホーニング)などがあります。記載されていないチップも多く、記載がある場合のみカタログで確認します。


**⑨勝手** も任意記号で、R(右勝手)・L(左勝手)・N(勝手なし)があります。内径バイトでは、右勝手ホルダーに左勝手チップを組み合わせる「逆勝手」の使い方が標準です。この組み合わせルールを誤ると、干渉してチップが装着できない、もしくは切削方向が逆になるという致命的なミスにつながります。


**⑩補足** は、ハイフン以降に記載されるメーカー独自の情報です。チップブレーカーの形状コードがここに入るため、メーカー間でまったく互換性がありません。例えば「-MF」「-EX」「-GH」のような記号はカタログごとに意味が異なります。


このように、型番を10桁まるごとコピーしても、後半3要素が異なれば全く別の切削性能になります。特に仕上げ加工でブレーカーの違いが原因で加工面粗さがRa1.6→Ra6.3に悪化したという事例も報告されています。メーカーを変更する際は、前半7要素の一致だけでなく、後半の記号もカタログで照合する必要があります。


参考:インサート工具の呼び方と各記号の意味の解説
インサート工具の呼び方・複雑な記号の意味を解説|特殊超硬バイト開発ラボ


スローアウェイチップの規格から読む「形状」と「ノーズR」の正しい選定方法

型番の読み方を覚えたうえで、実際の加工内容に合わせた選定基準を整理します。


**形状の選び方**については、ランニングコストだけで考えるとS型(正方形)ネガチップが4コーナー使えて最も経済的です。しかし実際の加工では形状干渉の問題があります。たとえばアンダーカットや深い段差部を加工する場合、S型チップの側面が加工済み面に当たってしまい、傷が入ります。そのような場面ではV型(35°菱形)やD型(55°菱形)を選ぶ必要があります。コーナー角が小さいほど「すき間」が大きくなり干渉を避けられますが、刃先強度は下がります。


| チップ形状 | 使えるコーナー数 | 刃先強度 | 主な用途 |
|-----------|---------------|--------|--------|
| S型(正方形) | 4か所(ネガ両面で8か所) | ◎ 強い | フライス・汎用荒削り |
| C型(80°菱形) | 2か所 | ○ やや強い | 外径・端面の汎用加工 |
| T型(三角形) | 3か所 | ○ 中程度 | 外径・内径の汎用加工 |
| D型(55°菱形) | 2か所 | △ やや弱い | 干渉が多い形状の加工 |
| V型(35°菱形) | 2か所 | ✕ 弱い | 深い溝・アンダーカット |
| R型(円形) | 複数か所 | ◎ 最強 | 荒削り・R加工 |


**ノーズRの選び方**については、汎用的に使えるR0.8をベースに選定するのが基本です。仕上げ面粗さの理論値は送り量の2乗をノーズRの8倍で割った値で近似できます。つまりノーズRが大きくなるほど仕上げ面は滑らかになります。一方でノーズRが大きいと、切削力がワーク半径方向に分散してびびり振動が起きやすくなります。特に細長いシャフト加工(突き出しL/D>4以上)では、R0.4を選ぶほうが安定します。


| ノーズR | 特長 | 向いている加工 |
|--------|-----|-------------|
| R0.4 | びびりにくい・精密加工向き | 細物・薄肉・精密仕上げ |
| R0.8 | 汎用性◎ バランス良い | 一般的な外径・内径加工 |
| R1.2 | 面粗さ良好・びびり注意 | 表面仕上げ重視の加工 |
| R1.6 | 最も滑らか・剛性が必要 | 剛性十分な大径ワーク |


切削速度を20%上げると工具寿命は約2分の1に短縮されるとされています。ノーズRを正しく選んで安定した切削条件を保つことが、工具コスト削減の直接的な手段です。


現場でよくある規格の誤読と、それによる加工トラブル実例【独自視点】

規格の読み方を「だいたい知っている」状態で発生しがちなトラブルをまとめます。実際の現場でよく報告されるケースです。


**よくある誤読① 精度記号「M」をそのまま使い続ける問題**


精度等級のM級は、内接円直径公差が最大±0.13mmあります。これはカードの厚さ(約0.1mm)よりも大きい誤差です。一般的な旋削加工では問題になりにくいですが、精密仕上げで寸法公差±0.05mmを要求されるワークにM級チップを使うと、チップ交換のたびに寸法がばらつきます。結果として補正作業が増え、段取り時間が1工程あたり5〜10分余計にかかることがあります。G級またはE級チップに切り替えるだけで、この問題は解消されます。


**よくある誤読② コーナーR指示の見落とし**


図面に「隅部R0.2以下」と記載がある場合に、ノーズR0.2のチップを使うと実際の隅部Rが指示値を超えることがあります。これはチップのコーナーRには製造公差がプラス方向にかかっているためです。この場合は「マイナス公差品」として各メーカーが用意している特殊仕様チップを選ぶ必要があります。一般カタログには掲載されていないことが多いため、メーカーへの問い合わせが必要です。指示値をオーバーしたまま納品すると不合格品になります。


**よくある誤読③ 内径バイトの勝手の逆転を知らない**


外径バイトでは、右勝手バイトに右勝手チップを装着するのが普通です。しかし内径バイトでは「右勝手ホルダー+左勝手チップ」という逆の組み合わせが標準です。この仕様変更を知らずに外径と同じ感覚でチップを選ぶと、チップがホルダーに正常にセットできなかったり、切削方向が逆になったりします。これは型番の⑨勝手記号を確認すればげるミスです。


**よくある誤読④ チップブレーカーの互換誤解**


前述のとおり、ブレーカー記号はメーカー独自です。「MP」や「EX」などの記号を他社製品に流用しようとしても、同じ名称でも全く異なる形状になっています。切りくずが長くつながったままになったり、切削抵抗が上がったりすることがあります。コスト削減目的での安易な代替品選定は、かえってチップ消費枚数を増やす結果につながることがあります。


三菱マテリアルではチップブレーカー対応表を公開しており、各メーカー間のブレーカー形状の比較ができます。メーカー変更時の参考資料として活用できます。


参考:チップブレーカー対応表(各メーカー間の比較)
チップブレーカー対応表|三菱マテリアル(PDF)


スローアウェイチップの規格を活かした被削材別・材質の選び方

型番の読み方と形状選定が理解できたら、次は材質選定です。材質はISO規格でP・M・K・N・S・Hの6種類に分類されており、それぞれ識別色が設けられています。


| ISO記号 | 識別色 | 対象被削材 | 代表例 |
|--------|------|----------|------|
| P | 🟦 青 | 鋼 | SS400、S45C、SCM435 |
| M | 🟨 黄 | ステンレス鋼 | SUS304、SUS316 |
| K | 🟥 赤 | 鋳鉄 | FC200、FCD450 |
| N | 🟩 緑 | 非鉄金属 | アルミ、銅、真鍮 |
| S | 🟫 茶 | 耐熱合金・チタン | インコネル、Ti-6Al-4V |
| H | 🔲 灰 | 焼入れ鋼 | HRC55以上の高硬度材 |


よく起きる選定ミスは「超硬チップなら全材料に使えるはず」という思い込みです。超硬合金(WC-Co系)はP材向けに最適化されたグレードが多く、ステンレスや耐熱合金にそのまま使うと構成刃先が発生して加工面が荒れます。SUS304の加工には切削抵抗を下げるために専用のM材グレード(コーティング付きポジチップ)が推奨されます。


材質グレードが正しくても、切削速度が合わなければ工具寿命は大幅に短縮されます。切削速度を50%上げると工具寿命は5分の1まで低下するというデータもあります。チップケースのラベルには被削材区分・推奨切削速度・送り量の範囲が記載されています。これが条件設定の第一根拠です。


コーティング種別については、汎用のTiN系から耐熱性の高いTiAlN系まで多数あります。一般鋼にはPVDコーティングのTiAlNが工具寿命と安定性のバランスが優れています。CVDコーティングは高速・高能率加工向けで、仕上げには向かないケースがあります。この判断もカタログの適用領域(F・M・R)を確認する習慣で対応できます。


参考:被削材のISO記号と超硬合金チップの使い分けの詳細
超硬合金チップの使い分け|切削工具の基礎講座|モノタロウ


十分な情報が集まりました。記事を作成します。





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