砂型は完成後に壊す前提で設計するため、木型を製品寸法より意図的に大きく作らなければなりません。
砂型鋳造の出発点となるのが、製品形状を再現した「木型(模型)」の製作です。木型は後工程で砂型の空洞形状を決定づけるため、この段階での精度が最終製品の寸法品質に直結します。
木型制作において多くの現場が見落としがちな点が「収縮代(しゅくみしろ)」の織り込みです。溶かした金属を型に流し込んで冷却すると、金属は必ず収縮します。鉄鋳物の収縮率は0.8〜1%、アルミ鋳物は1〜1.2%とされており、この分だけ木型を製品寸法より大きく設計しなければなりません。
この補正を行う際に使用するのが「鋳物尺(いものじゃく)」という専用の物差しです。鋳物尺には「伸びなし・1と8/1,000・1と10/1,000・1と12/1,000」の種類があり、素材の収縮率に合わせて選択します。つまり原則です。例えば、伸び10(10/1,000)の鋳物尺で長さ100mmの製品を作りたい場合、木型は100.1mmで設計されます。毎回計算する手間が省け、正確な補正が実現します。
木型の材料は主に木材ですが、生産頻度や耐久性要件によって人工木材やアルミ素材が選ばれることもあります。木製の木型はコストが低く短納期で製作できる一方、砂型から抜く際の摩擦で削れていくため寿命が比較的短く、少量生産向きです。仮にダイカストで6〜7万ショット使用できる型でも、砂型鋳造用の木型は1,000ショットが更新目安とされます。量産規模が大きくなる場合は、アルミ型への変更を検討することがコスト削減につながります。
抜き勾配の設計も忘れてはならない要素です。砂型から木型をきれいに取り出すためには、側面に適切な抜き勾配を設ける必要があります。この勾配が不足していると、型抜きの際に砂が崩れてしまいます。これは使えそうです。
有限会社佐藤木型製作所:鋳造用木型と収縮代の解説(鋳物尺の種類・使い方)
木型が完成したら、いよいよ砂型の造型(ぞうけい)工程に入ります。砂型は上型と下型の2分割構造が基本で、それぞれの砂型に鋳物砂を詰めて製作します。上型には溶湯を流し込む「湯口(ゆぐち)」と「湯道(ゆみち)」を設けるため、円筒状の木材をセットしてから砂を詰めていきます。
砂の種類は大きく分けると「生砂(なまずな)」と「自硬性砂(じこうせいずな)」の2種類があります。生砂は珪砂・粘土・水を混合したもので、型の製作スピードが速く水分だけで固まるのが特長です。一方で型としての強度は比較的低く、木型を取り出す際に職人の繊細な技術が求められます。自硬性砂はフラン樹脂と硬化剤を加えたもので、硬化後の強度が高く大型・複雑形状に向いています。ただし硬化には一定の時間を要し、失敗事例として硬化時間が8分未満の場合に表面層の強度不足から鋳巣発生率が15%以上に達したケースも報告されています。硬化時間は10分以上が条件です。
空洞のある製品(中空形状)を鋳造する場合は、砂型の組み付け時に「中子(なかご)」をセットします。中子とは、鋳物の内部空洞を形成するための砂の塊です。中子のセットで注意すべき点は「ガス抜き経路の確保」です。注湯時に高温の溶湯が中子を加熱すると、砂中の有機物や水分が分解・蒸発してガスが発生します。このガスが逃げ場を失うとブローホール(気泡)として鋳物内部に取り込まれ、強度不足の原因になります。中子の大きさに応じてガス通路を穴あけや通気紐で確保し、幅木(はばき)を通じて外部へ速やかに逃がす構造設計が欠かせません。
砂型の乾燥状態の管理も重要です。砂中の水分が多すぎると、注湯時に水蒸気爆発のリスクが高まります。意外ですね。CB値(Compactability値)を定期的に測定し、砂の水分・締まり度合いを安定させておくことが品質安定化の基本になります。
株式会社ナカヤマ:ブローホール発生の原因と中子ガス抜きの実践的対策
砂型造型が完了したら、次は金属の溶解と注湯(ちゅうとう)の工程です。この工程は砂型鋳造全体の中でも品質に直結する最重要ステップであり、温度管理・注湯速度・脱ガス処理の3点が品質を左右します。
まず溶解工程では、アルミ合金であれば約700〜780℃で加熱して溶湯を準備します。溶湯の表面には「湯かす(酸化膜)」が形成されるため、注湯前に丁寧に取り除く必要があります。また、溶湯中に水素が溶け込むとガス欠陥の原因になるため、不活性ガスによる攪拌(脱ガス処理)やフラックス処理で水素を除去します。脱ガスは必須です。
注湯工程のキーワードは「静かに、速く」です。溶湯が砂型の湯口から湯道を流れる際、速度が速すぎると乱流が発生し空気を巻き込んでしまいます。逆に遅すぎると溶湯が途中で冷え固まり、型の隅まで充填されない「湯回り不良」が起きます。適正な注湯速度は製品形状や肉厚に依存しますが、湯道の断面形状を工夫して乱流を層流に変換する「堰(せき)」の設計が有効です。
注湯温度の管理偏差も軽視できません。目標温度から30℃低い状態(例:700℃未満)で注湯すると凝固挙動が乱れ、鋳巣が多発します。実際の失敗事例では、注湯温度の管理不備と砂型の硬化不足が重なり、初期ロットで鋳巣発生率15%超・出荷遅延が5営業日に及んだケースが報告されています。溶解炉から注湯点までの温度低下をリアルタイムで計測するセンサー管理を導入することで、2週間後には鋳巣発生率1.4%まで低減できた事例もあります。痛い教訓ですね。
また、流し込む溶湯の量は最終製品重量より多めに準備する必要があります。これは2つの理由から来ています。1つは金属の凝固収縮で体積が減少するため、もう1つは「押湯(おしゆ)」として余分な溶湯で圧力をかけ、凝固収縮時に発生しやすい引け巣を補填するためです。押湯の設計が甘いと中心部に大きな空洞が残り、製品強度が著しく低下します。
太陽パーツ(鋳物のイロハ):砂型鋳造における鋳巣の発生原因と対策(引け巣・ガス巣の違いも解説)
溶湯が冷えて凝固したら、砂型を解体して鋳造品を取り出す「バラシ」の工程に移ります。砂型は毎回使い捨てになるため、型ごと崩して製品を露出させます。中子がある製品では、内側の中子砂も粉砕して取り除く必要があります。これが基本です。
バラシ後の鋳造品には、湯口・湯道・堰などの不要な金属部分が残っています。これらは電動ノコギリやグラインダーで切断・除去します。生砂型の場合、バラシで使用した砂は再利用できますが、自硬性砂は硬化剤の影響で再利用が難しく廃棄となります。コスト面で生砂型が有利な理由の1つがここにあります。
バラシ後の表面には砂粒が付着しており、これを除去するために「ショットブラスト」または「サンドブラスト」が用いられます。ショットブラストは小さな鋼球(ショット)を高速で投射して砂を除去する方式で、表面の酸化膜を除去しながら均一な仕上げ面を得られるという利点もあります。サンドブラストより処理効率が高く、工業用鋳物の後処理では広く採用されています。これは使えそうです。
バリ取りとショットブラストが終わったら、歪み矯正や寸法検査を実施します。砂型鋳造は金型鋳造に比べて寸法精度が低く、一般的な300mm角製品では±1.0mm程度の誤差が標準的です。精度が求められる部位については、CNC機械加工による追加工(二次加工)を施すことで公差を±0.2mm以下に収めることも可能です。
最終的に、製品用途に応じた熱処理が施されます。アルミ鋳物の場合、T5(人工時効処理)やT6(溶体化処理+人工時効処理)が代表的で、強度・硬度・耐摩耗性が向上します。熱処理の温度と保持時間が規定から外れると、狙いの機械的特性が得られないため、専用の熱処理炉での正確な管理が重要です。全工程を経た後、X線検査や超音波探傷による内部欠陥チェックと外観検査を実施し、合格品のみが出荷されます。
ヘキサゴンテックビー:砂型鋳造の特徴・手順・後処理工程の解説記事
砂型鋳造の品質を安定させるうえで、「鋳造方案(ちゅうぞうほうあん)」の設計は非常に重要ですが、現場では形状設計が優先されてしまい後回しになりがちです。鋳造方案とは、湯口・湯道・堰・押湯の配置や寸法を決める設計作業のことで、溶湯がどのように流れ、どの順番で凝固するかをコントロールするものです。
方案設計の基本原則は「指向性凝固の確保」です。製品の末端部から押湯に向かって段階的に凝固が進む(=指向性凝固)ように方案を組まないと、凝固途中に収縮した部分を補う溶湯が届かず、製品中心部に引け巣が残ります。肉厚が急変する箇所はとくに凝固が局所的に遅れやすいため、設計段階でできるだけ均一な肉厚に近づけることがポイントです。
近年では「鋳造シミュレーション(CAEによる湯回り・凝固解析)」が普及し、注湯前にPC上で溶湯の流動挙動や凝固パターンを可視化できるようになっています。意外ですね。シミュレーションを事前に実施することで、試作コストを大幅に削減し初品合格率を高められます。実際、ある自動車用ハウジング部品では、CAEで湯温を740±5℃・注湯速度を40〜60cm/秒に最適化した結果、初回試作から初品合格率100%を達成した事例があります。
一方、シミュレーション結果を鵜呑みにするのは禁物です。実際の注湯作業では作業者の速度・角度・熟練度といった人的変動が加わるため、現場データとのすり合わせが不可欠です。シミュレーションと現場のギャップを把握してフィードバックするサイクルを確立することが、製造安定化の核心といえます。つまり現場知見との統合が原則です。
品質KPIとして「内部欠陥率(X線検査での鋳巣比率)3%未満」「出荷不良率1,000個あたり5個未満」「寸法精度達成率95%以上」といった数値目標を設定し、製造・品質・設計の各部門が共通の指標で情報を共有することが、継続的な品質改善につながります。砂型鋳造は「溶かして流すだけ」の単純な工法ではなく、木型設計から後処理まで各工程が相互に影響し合う精緻なプロセスです。各工程の役割と品質への影響を正確に理解することが、安定した鋳物製作への確実な一歩になります。
札幌興業:鋳造方案の考え方・湯口・湯道・堰の設計ポイントと品質への影響
十分な情報が集まりました。記事を作成します。