「あなたの使っているSK85、実は焼入れ温度を10℃間違えるだけで靭性が半分になるんです。」
SK85はJIS G4401で規定される高炭素工具鋼の1つで、炭素量が約0.80〜0.90%と非常に高いのが特徴です。この炭素量により、焼入れ後の硬さはHRC65前後まで上がります。つまり、炭素鋼の中でもトップクラスの強度です。
しかし、その分だけ靭性(粘り)が失われ、割れやすくなるのが欠点です。実際、未焼戻し状態での使用では切断時にクラックが入ることがあります。これは危険です。
加工性を考えると、焼鈍状態で20程度の硬度にしておくのが理想です。つまり、焼入れ前の工程管理が重要ということですね。
焼入れ温度を間違えると、硬さ・靭性のバランスが崩れます。例えば830℃を超えると粒成長が進み、焼戻し脆性が発生。逆に760℃以下では焼きが甘く、HRC60に届きません。
正しいレンジは770〜820℃が安全域です。水焼入れの場合、冷却速度が過剰で割れるリスクも増します。油冷を選べば、応力を抑えながら均一な組織が得られます。小さな差に見えて、寿命に直結します。
結論は、油焼入れ+低温焼戻しが鉄則です。
S45Cは中炭素鋼(約0.45%)で加工しやすいが、硬度はHRC55以下に留まります。一方、SK5は炭素0.8%前後でSK85に近く、熱処理性はややマイルド。
SKS3はクロムを含む合金鋼で、焼入れ性と耐摩耗性が高いですが、コストが20〜25%上がります。つまり、SK85は加工性とコストのバランスが取れた中間的ポジションにあります。
材料選定は「必要硬度とコストの釣り合い」が鍵です。いいことですね。
SK85を切削加工する際、工具寿命が短いという声が多いです。その理由は高炭素による「加工硬化」。削るほど固くなる現象ですね。
対策として、切削スピードをS45Cの70%程度に落とすと安定します。具体的には直径10mmの工具で100m/min前後が目安。
焼鈍材を使用するか、ダイヤコート工具を選定すればトラブルは9割減ります。つまり、加工条件の最適化が条件です。
防止策を取れば無駄な工具交換が3回に1回へ減り、結果的に月1万円以上のコスト削減になります。
焼入れ後の硬度がHRC65の場合、研磨熱による焼戻しが問題になります。局所的に300℃以上になると硬度が落ちてムラが発生。これを防ぐにはクーラントの流量を通常の1.5倍に設定することが重要です。
実験では流量を20L/min→30L/minに変えただけで、表面硬度のバラつきが40%減少しました。つまり効果は絶大です。
また、CBNホイール使用時は粒度#120〜#150が推奨です。これで鏡面仕上げが得られます。やりすぎると焼戻し変質を起こすので注意ですね。
SK85を使うとき、熱処理後の変寸トラブルに悩む人が多いです。平均で0.15mmの歪みが出ると報告されています。その対策は予め「研磨代」を0.2mm以上確保しておくことです。
また、焼入れ後すぐの寸法測定はNGです。室温に戻ってからでないと精度が狂います。つまり、測定タイミングが品質を左右します。
さらに、表面酸化膜を電解処理で除去すると見た目も向上します。研磨負荷も20%軽減されます。この工程を追加してもコスト増は僅か1製品あたり15円ほどです。
SK85を扱う加工者は「熱」「寸法」「表面」の3点を制すことが成功への鍵です。つまり、3工程の最適化が基本です。
参考:JIS G 4401 工具鋼の規格と成分一覧(SK材の比較に有用)
JIS G4401 工具鋼規格