s20c材質の特徴と加工・熱処理の選び方完全ガイド

s20c材質はJIS規格の低炭素鋼で、加工性・溶接性に優れる反面、硬度が低いという特徴があります。浸炭焼入れや他鋼材との違いなど、現場で知っておくべきポイントをまとめました。s20cを正しく使いこなせていますか?

s20c材質の基礎知識と現場での使い方

SS400で代用できると思っていませんか? 実はS20Cの代用にSS400を使うと、品質保証ができず加工不良につながる危険があります。


s20c材質 3つのポイント
🔩
低炭素・高加工性

炭素含有量は約0.18〜0.23%。切削・溶接・穴あけ加工がしやすく、工具寿命も長く保てます。

🔥
浸炭焼入れで表面硬化が可能

生材のまま使うのが基本ですが、浸炭焼入れによって表面硬度をHV650〜800程度まで高められます。

⚠️
SS400との代用に注意

S20CはSS400の代用に使えますが、逆(SS400でS20Cを代用)は成分保証がなく品質リスクがあります。


s20c材質の化学成分とJIS規格の概要

S20CはJIS G 4051で規定された機械構造用炭素鋼で、炭素(C)の含有量が0.18〜0.23%に管理された低炭素鋼です。 同じく低炭素系のSS400と外見は似ていますが、S20CはPやSなどの不純物元素がSS400よりも厳格に規定されており、SS400のP・S上限が0.05%以下なのに対し、S20CはP・Sともに0.035%以下と品質が高く設計されています。 tec-note(https://tec-note.com/444)


キルド鋼である点も重要な特徴です。 キルド鋼とは溶製時に脱酸処理を十分に行った鋼で、ガス気泡が少なく均質な組織を持ちます。 note(https://note.com/sando_met162/n/n04960aea1c81)


成分 S20C SS400
炭素(C) 0.18〜0.23% 規定なし
マンガン(Mn) 0.30〜0.60% 規定なし
リン(P) 0.030%以下 0.050%以下
硫黄(S) 0.035%以下 0.050%以下
成分保証 あり(ミルシート確認可) 強度保証のみ


成分が明確に管理されているからこそ、信頼性の高い部品製造に使えます。 成分保証が原則です。 askk.co(https://www.askk.co.jp/contents/course/s20c.html)


参考:S20Cの化学成分・機械的性質の詳細一覧は以下で確認できます。


S20C(機械構造用炭素鋼)の機械的性質や成分の一覧 | 研削砥石の情報サイト


s20c材質の機械的性質と硬度・引張強さの目安

S20Cの機械的性質は、焼きならし処理後で降伏点245N/mm²以上・引張強さ400N/mm²以上・伸び28%以上というのが基本スペックです。 引張強さ400N/mm²というのは、断面1mm²あたり約40kgfの力で引っ張ってもちぎれない強さを意味します。 toishi(https://www.toishi.info/sozai/sxxc/s20c.html)


硬度はHBW(ブリネル硬さ)116〜174が標準です。 これは「柔らかすぎず、切削しやすい」絶妙な範囲に収まっています。 toishi(https://www.toishi.info/sozai/sxxc/s20c.html)


ヤング率(縦弾性係数)は205〜206GPaと、一般的な炭素鋼と同水準です。 比重は7.84〜7.86g/cm³で、一般鋼材とほぼ同じ重さになります。この数値は設計計算で部品重量を見積もる際に必須です。 tec-note(https://tec-note.com/444)


機械的性質 S20C(焼きならし)
降伏点 245N/mm²以上
引張強さ 400N/mm²以上
伸び 28%以上
硬度(HBW) 116〜174
密度 7.84〜7.86 g/cm³


つまり強度は低めですが、靭性と延性に優れるということです。 強度だけでなく「粘り強さ」が必要な部品に向いています。 askk.co(https://www.askk.co.jp/contents/course/s20c.html)


s20c材質の浸炭焼入れによる表面硬化と注意点

S20Cは生材(熱処理なし)のまま使うのが基本ですが、摩耗が激しい部品では浸炭焼入れを施すことで性能を大幅に引き上げられます。 浸炭焼入れとは、低炭素鋼の表面に炭素を拡散・浸透させてから焼入れする処理で、「外側は硬く・内側は粘り強い」という二層構造を実現します。 note(https://note.com/sando_met162/n/n04960aea1c81)


S20Cに浸炭焼入れを行うと、表面の炭素量が0.7〜0.9%程度になり、低温焼戻し(180〜200℃)後の表面硬さはHV650〜800程度まで上昇します。 ちなみに浸炭専用鋼のS20CKと比べてもS20Cで問題なく浸炭焼入れが可能です。 tec-note(https://tec-note.com/601)


ただし注意点もあります。生地(内部)が柔らかすぎると、強い面圧がかかったときに表面硬化層が割れやすくなります。 生地の硬さという視点で見ると「S10C < S20C < SCM415H < SCM420H」の順に内部強度が高くなります。 tec-note(https://tec-note.com/601)


重荷重がかかるギアや軸に使う場合は、S20Cで生地強度が足りなければSCM415やSCM420の採用を検討するのが一般的です。 部品の用途が条件です。 tec-note(https://tec-note.com/601)


参考:浸炭焼入れの仕組みや材質別の選び方については以下が参考になります。


浸炭焼入とは?設計者のための材料や硬度とひずみの考え方 | tec-note


s20c材質とSS400・S45Cとの違いと選び方

まずSS400との比較です。S20CはSS400より成分が厳格に管理されており、信頼性の要求される部品ではSS400をS20Cの代用に使うべきではありません。 一方で「S20CをSS400の代用として使う」ことは、成分がより高品質なので問題ありません。これは意外ですね。 ameblo(https://ameblo.jp/itoakirasangyo/entry-12526101181.html)


S45Cとの比較では、炭素含有量がS45Cは約0.45%と高く、焼入れ処理で高硬度化が可能な中炭素鋼です。 S20Cは加工性重視・低荷重部品向け、S45Cは強度重視・中高荷重部品向けという使い分けが基本です。 askk.co(https://www.askk.co.jp/contents/course/s20c.html)


項目 SS400 S20C S45C
炭素量 規定なし 0.18〜0.23% 0.42〜0.48%
成分保証 なし(強度のみ) あり あり
加工性
焼入れ硬化 △(困難) △(浸炭なら可)
コスト 中〜高
溶接性 △(予熱必要)


参考:SS400・S45C・S20Cの材料特性と使い分けについてさらに詳しく知りたい場合はこちら。


s20c材質が現場で選ばれ続ける理由:コストと加工性の実際

S20Cが工場現場で長く使われてきた最大の理由は、「加工コストを抑えながら十分な品質を確保できる」コストパフォーマンスの高さにあります。 炭素量が低いため切削抵抗が小さく、旋削・フライス加工・穴あけなど多くの機械加工に対応できます。 askk.co(https://www.askk.co.jp/contents/course/s20c.html)


工具摩耗が少ない点も見逃せません。 硬度の高い材料を加工すると超硬チップの交換頻度が上がり、1本あたり数千円〜数万円のコストが積み重なります。S20Cのように適度に柔らかい材料では工具寿命が延び、トータルの製造コスト削減につながります。 askk.co(https://www.askk.co.jp/contents/course/s20c.html)


炭素当量が0.24〜0.39%と低いため、溶接熱影響部の硬化が小さく、割れのリスクが少ない点も溶接加工を行う現場には大きなメリットです。 一般的に炭素当量が0.44%以上になると溶接割れのリスクが急上昇しますが、S20Cはその範囲を大きく下回っています。 tec-note(https://tec-note.com/444)


具体的な用途としては、小型軸・ピン・ボルト・ナット・カム・キー・カラーなどの小部品全般に幅広く採用されています。 コストと信頼性のバランスが条件です。 tec-note(https://tec-note.com/444)


また、S20CはミルシートでC・Mn・P・Sなどの成分値を確認できるため、ISO品質管理や顧客への材質証明が求められる受注加工でも対応しやすいというメリットがあります。 品質記録の管理という観点でも、SS400より有利です。 tokushuko.or(https://www.tokushuko.or.jp/publication/magazine/pdf/2024/magazine2409.pdf)


参考:S20Cの用途・特性をさらに詳しく解説している技術サイトはこちら。


S20Cとは【強度・硬度・比重・熱処理など】使い方と注意事項 | tec-note
S20Cの基本特性とその活用領域 | アスク