グリースを塗らずに動かし続けると、1,000km走行前にブッシュが焼き付き装置が止まります。
リニアブッシュは、リニアシャフトと組み合わせて使用する直動機構の部品です。内部に鋼球(ボール)を保持器で整列させており、その鋼球がシャフト外周を転がることで低摩擦かつ高精度な直線運動を実現しています。シャフトが続く限り無限直線運動が可能という点が大きな特長で、金属加工設備・半導体製造装置・食品包装機械・電子部品製造装置など幅広い自動化ラインに採用されています。
ミスミ以外のメーカーでは、THK・NB・IKO・NTNなどが同種製品を製造していますが、呼び名が微妙に異なります。THKは「リニアブッシュ」、NBは「スライドブッシュ」、IKOは「リニアブッシング」、オザック精工は「リニアベアリング」と呼ぶなど、名称が複数存在します。構造は本質的に同じです。
混同しやすい類似品として「無給油ブッシュ」があります。これはすべり案内方式のため給油不要で耐環境性に優れますが、ボールを持たないため摩擦係数が大きく、リニアブッシュほどの低摩擦・高精度は得られません。一方でリニアブッシュは転がり案内方式なので摩擦係数が小さく、同じ駆動アクチュエータでも軽快に動作できます。これは使えそうですね。
また、リニアガイドとの違いも重要です。リニアガイドはベース板に固定されたレール上をブロックが走行するため耐荷重性・精度に優れますが、価格はリニアブッシュより高くなります。リニアブッシュは両端支持構造のシャフト上を走行するため、大荷重では「シャフトのたわみ」が問題になることがあります。軽〜中荷重の直動案内にはリニアブッシュ、重荷重や高精度が求められる場面にはリニアガイドと使い分けるのが基本です。
| 種類 | 耐荷重 | 摩擦係数 | 案内精度 | 価格帯 | メンテナンス |
|---|---|---|---|---|---|
| リニアブッシュ | △(軽〜中) | ○(小さい) | △〜○ | 中価格 | グリース要 |
| リニアガイド | ○(重荷重も可) | ○(小さい) | ○(高精度) | 高価格 | グリース要 |
| 無給油ブッシュ | △(軽〜中) | ×(大きい) | △ | 低価格 | 不要 |
部品を選ぶ際に「とりあえずリニアブッシュ」にしてしまうと、大荷重用途でシャフトたわみが発生し精度不良の原因になることがあります。用途の荷重条件を確認してから選定するのが原則です。
参考:ミスミ公式 リニアブッシュと他の直動軸受との比較・選定指針
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md01/c1310.html
ミスミのリニアブッシュには、外形形状と軸受長さの組み合わせで多くのバリエーションがあります。まず外形形状では「ストレートタイプ」「フランジタイプ」「ハウジングユニットタイプ」「すきま調整(開放)タイプ」の4種類が主なラインアップです。
ストレートタイプは最もスタンダードな形状で、ハウジングに圧入して固定します。フランジタイプはブッシュ端面にフランジ(鍔)があり、ねじ止めでハウジングに取り付けられるため組付けが簡単です。ハウジングユニットタイプはアルミの外筒にリニアブッシュを内蔵した一体型製品で、部品点数・加工工数の削減が図れます。すきま調整タイプは外筒にすり割りがあり、ハウジングで締め付けてシャフトとのすきまを予圧状態に調整できます。
軸受長さはシングル・ダブル・ロングの3種類+「シングル2個使いの専用設計」を加えた合計4パターンです。軸受長さが長くなるほど、内蔵されるボール数が増えるため定格荷重が増大し、耐荷重性能と案内精度の両方が向上します。これが基本です。
モーメント荷重(偏荷重)が大きくかかる場合、シングルタイプ単体での使用は適していません。ダブルタイプか複数個使いが条件です。複数個使用する際は各リニアブッシュの取付間距離をできるだけ大きく取ることが精度向上のポイントです。
さらに表面処理にも選択肢があります。標準のSUJ2材(無処理)は錆が生じやすいため、湿潤・腐食環境では「低温黒色クロムめっき」や「無電解Ni-Pめっき」などを選ぶことが重要です。低温黒色クロムは耐摩耗性・耐食性に優れ、無電解Ni-Pはクリーンルーム用途や薬品が飛散する環境に向いています。
| 表面処理 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| なし(SUJ2素地) | 低コスト・標準的環境向け | 一般用途 |
| 低温黒色クロム | 耐摩耗性・耐食性が高い・薄膜均一 | 精密機器・光反射NG環境 |
| 無電解Ni-P | 耐薬品性・耐食性・非磁性 | クリーンルーム・食品機械 |
参考:ミスミ公式 シングル・ダブル・ロングの使い分けと表面処理の特徴
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md01/c1312.html
リニアブッシュを選定する上で、多くの現場担当者が見落としがちなのが「はめあい公差」の設定です。公差設計を誤ると、動作不良・ガタ・ブッシュの自転・早期損傷につながります。ここが重要なポイントです。
ミスミのリニアブッシュには「通常品」と「エコノミーシリーズ」で推奨公差が異なります。これを同じと思い込んで設計すると、意図しない動作不良が発生する原因になるので注意が必要です。
シャフトとブッシュ内径のはめあいについては、通常品はシャフト外径の推奨公差が「g6(普通すきま)」です。すきまを抑えたい場合は「h6(緊密すきま)」を選びます。ミスミ製リニアブッシュとミスミ製シャフト(SFJ:標準g6公差)をセットで使用すると、普通すきまばめになり最も安定した動作が得られます。
ブッシュ外径とハウジング内径のはめあいについては、ミスミ通常品はハウジング内径が「h7(すきまばめ)」を推奨します。すきまを抑えたい場合は「J7(中間ばめ)」です。
一方、エコノミーシリーズは内外径公差が緩和された中精度品のため、ハウジング内径の推奨公差が通常品と異なります。エコノミーシリーズを使う際は必ずミスミ製品ページで公差域を確認してから設計・加工することが必須です。
取付時のもう一つの注意点として「ハウジングへの圧入方法」があります。リニアブッシュを落下させたり、叩いて強引に挿入したりすると内部ボールや保持器が損傷します。専用の圧入治具を使用するか、プレスで均等に押し込む方法が推奨です。挿入時に変な音がしたら一度確認しましょう。
高温環境(80℃以上)では、保持器やサイドリングに使われている樹脂・ゴムが劣化し動作不良を起こすことがあります。一般的な使用温度の上限は80℃程度です。それを超える環境では耐熱仕様品を選ぶか、各メーカーに問い合わせることが必要です。
参考:ミスミ公式 リニアブッシュのはめあい公差・設計時の注意点
https://jp.misumi-ec.com/special/linearbushing/notes/assemble/
リニアブッシュを適切に選定するには、「定格寿命の計算」を理解しておくことが重要です。ミスミのリニアブッシュカタログでは、定格寿命(L)を次の式で算出しています。
$$L = \left(\frac{f_H \cdot f_T \cdot C}{f_C \cdot f_w \cdot P}\right)^3 \times 50 \text{(km)}$$
C は基本動定格荷重(N)、P は作用荷重(N)で、これに以下の補正係数を掛けて現実に即した寿命を算出します。
たとえば、衝撃振動があり速度60m/min超の環境でリニアブッシュを使う場合、荷重係数fwとして最大3.5を掛けることになります。つまり、静荷重計算だけで「問題なし」と判断すると、実際の寿命は計算値の約1/40以下になることもあります。意外ですね。
シャフト硬度についても見落としが多いポイントです。ミスミのリニアブッシュはSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)で作られており、シャフト側も十分な硬度が必要です。「手持ちの普通鋼シャフトで代用しよう」とHRC20〜30程度の焼入れなしシャフトを使うと、硬度係数が大きく下がり定格寿命が著しく短くなります。ミスミ製リニアシャフト(SFJ)はg6公差・表面硬度HRC60以上に仕上げられており、ブッシュとのセット使用が原則です。
また、シャフトのたわみについても考慮が必要です。大荷重を受ける場合、シャフトを太くするとたわみが「径の4乗」で小さくなります。シャフト径を2倍にすると、たわみは1/16に減少するため、設計段階からシャフト径の選定が精度に直結します。
参考:ミスミ公式 リニアシステムの寿命計算・各係数の詳細
https://jp.misumi-ec.com/special/linearbushing/support/calculation/
リニアブッシュの性能を長期間維持するために最も重要なのが「グリース管理」です。多くの現場で「最初に塗れば大丈夫」と思われがちですが、グリースは使用とともに減少・劣化し、定期的な補充が不可欠です。
ミスミ推奨のグリースはリチウム系石けん基グリース(例:昭和シェル石油 アルバニアグリースS2)です。推奨給油間隔は通常6ヶ月ごと、走行距離が長い場合は3ヶ月ごと、期間内に1,000kmを超える場合は1,000kmごととされています。月間の稼働距離を把握しておかないと、気づかないうちにグリース不足で焼き付きが起きます。
グリース給油が足りているかどうかの簡易確認方法として「振ってみてシャカシャカ音がしないか」を確認する方法があります。内部のボールがグリースで満たされていれば音は出ません。シャカシャカと音がする場合はグリース不足のサインです。これは使えそうです。
グリース封入済みの「グリースユニットMX付きリニアブッシュ」という製品もあり、こちらは通常品と比較して基本定格荷重の50%荷重条件での耐久試験において2.5倍の耐久性能を示すというデータがあります。グリース補充の手間を省きたい現場や、アクセスが困難な場所に取り付けたブッシュには有効な選択肢です。
防塵対策も忘れてはなりません。金属切粉・粉塵・切削油などが飛散する環境では、異物がブッシュ内部に入り込むと異常摩耗や早期寿命の原因になります。対策として以下の2つが有効です。
クリーンルームや精密加工設備で使用する場合は、SUSなど錆びにくい材質のブッシュを選び、低発塵グリースを使用することが求められます。また静音性が重要な環境では、保持器材質に金属ではなく樹脂製(ジュラコンなど)を選ぶことで駆動音を抑えられます。
参考:ミスミ公式 リニアブッシュのメンテナンス・防塵・グリース管理
https://jp.misumi-ec.com/special/linearbushing/notes/maintenance/
参考:機械組立現場向け グリース給油の判断方法と実作業のポイント
https://kikaikumitate.com/post-1334/
ミスミは自社製リニアブッシュの低価格帯として「エコノミーシリーズ」を展開しています。RoHS10対応済みで、精度・製造方法・生産ロットを見直すことにより、ミスミ通常品の類似品比で平均45%OFFを実現した製品群です。
エコノミーシリーズは「内径・外径・L寸など外形公差を緩和した中精度品」と位置付けられています。つまり精密な位置決め精度が求められない用途や、頻繁に交換が必要な消耗品的な使い方をする場面では、コストを大幅に削減できます。まとめ買いによるさらなる値引きも可能です。
しかし注意すべき点が一つあります。エコノミーシリーズは通常品と推奨ハウジング公差が異なります。通常品と同じつもりでハウジング加工をしてしまうと、ブッシュのガタや自転が生じて動作不良につながります。エコノミーシリーズを採用する際は、必ず製品ページの公差域を確認し、ハウジング径を再設計することが条件です。
コスト最適化の視点で見ると、装置全体で「精度が必要な軸」と「精度が不要な補助的な軸」を区別することが重要です。精度軸にはミスミ通常品や精密品、補助軸にはエコノミーシリーズを採用するという使い分けが、トータルコストを下げながら必要な品質を維持する現実的な戦略です。
なお、複数台の同一機械を設計・量産する場合、エコノミーシリーズのまとめ買い割引を積極的に活用すると、年間の部品調達コストが数万円〜数十万円単位で変わることもあります。1台あたり数百円の差でも、100台ラインなら年間数万円の削減につながります。痛いですね(逆を言えば、知っていると得です)。
さらに「リニアシャフトとリニアブッシュをミスミで統一する」ことには別のメリットもあります。ミスミのリニアブッシュはミスミのリニアシャフト(g6公差)との組み合わせを前提に設計・検証されているため、他社シャフトとの組み合わせで生じる公差不一致のリスクを排除できます。部品調達窓口の一本化による発注工数削減も含めると、実質的なコストメリットはさらに大きくなります。
参考:ミスミ エコノミーシリーズ リニアブッシュ 製品ページ
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110302580750/
参考:ミスミ エコノミーシリーズ 全体紹介ページ
https://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/mech/pr/newproduct/economy/

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