中間ばめ公差の種類と選定・決め方の基本

中間ばめの公差とは何か、H7/k6などの記号の意味から選定基準・コストへの影響まで金属加工従事者向けに解説。あなたの現場の公差選びは本当に正しいですか?

中間ばめの公差を正しく選定し品質と加工コストを最適化する方法

公差等級(IT等級)を1段階厳しくするだけで、加工コストが1.5〜2倍に跳ね上がることがあります。


この記事の3つのポイント
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中間ばめとは「すきまにも締まりにもなる」はめあい

H7/k6やJS7などの記号が示す中間ばめは、製造誤差によってすきまが出るか圧入になるか変わる微妙なはめあいです。ノックピンや位置決め部品に多用されます。

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JIS B 0401に基づく記号の読み方と数値の意味

大文字は穴・小文字は軸を示し、数字はIT等級を表します。Φ50H7なら穴径は50.000〜50.025mmの範囲。記号一つで許容差が決まります。

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IT等級を1段上げると加工コストが最大2倍になる

必要以上に厳しい公差設定は品質ではなくコスト増につながります。穴基準(H基準)で設計し、軸側の公差クラス選択で機能を調整するのが定石です。


中間ばめの公差とは何か:すきまばめ・しまりばめとの違い

はめあい公差とは、穴と軸の組み合わせにおいて「どの程度ゆるく、またはきつく結合させるか」を規定する公差システムです。JIS B 0401では、はめあいを「すきまばめ」「しまりばめ」「中間ばめ」の3種類に分類しています。


すきまばめは、穴が軸より必ず大きくなる組み合わせです。軸と穴の間に常にすきまが生まれるため、軸は穴の中で自由に動けます。一方、しまりばめは軸が穴より必ず大きくなる組み合わせで、圧入や加熱・冷却によって嵌合させる必要があります。


中間ばめはその両方の中間に位置します。


具体的には、穴の最小許容寸法より軸の最大許容寸法が大きく、かつ穴の最大許容寸法より軸の最小許容寸法が小さい、という「相反する条件が同時に成立する」組み合わせです。つまり実際に加工してみるまで、すきまが生まれるのか、わずかな圧入になるのかが確定しません。これが中間ばめです。


現場で言えば「はめてみたら手で入った」「別の日に同じ部品を作ったらハンマーで叩く必要があった」という経験がある方も多いのではないでしょうか。それが中間ばめの特性によるものです。意外ですね。


中間ばめが選ばれる主な用途は以下の通りです。


  • 🔩 ノックピン(位置決め用ピン)の固定穴:ガタなく位置を再現したいが、部品交換時に抜けることも求められる
  • 🔧 治具の位置決めブッシュ:高精度な基準点として機能しながら定期的な交換が必要な箇所
  • ⚙️ ギアや軸継手の一時固定:接着剤や締め付けと組み合わせて使う前の仮固定状態


すきまばめとしまりばめの違いは直感的に理解しやすいですが、中間ばめは「どちらになるかわからない」という独特の性格を持ちます。これが選定を難しくしている原因でもあります。設計図面上は中間ばめを指示しても、加工現場での公差管理が甘いと、意図せずすきまばめ寄りになってしまい、組み立て後のガタつきによるクレームに発展することもあります。つまり、設計と加工の両側での理解が条件です。


参考:はめあい公差の種類と用途について図解で詳しく解説している設計・加工情報サイト
【図表で解説】はめあい公差について | 精密金属加工VA/VE技術ナビ


中間ばめの公差記号の読み方:H7/k6・JS7・M6の意味と使い分け

中間ばめの公差は、JIS B 0401に基づくアルファベット+数字の記号で表されます。記号の読み方を正確に理解することが、現場での加工指示のミスをぐ第一歩です。


記号の基本ルールは次の通りです。


  • 📌 大文字(例:H)→ 穴側の公差域クラス
  • 📌 小文字(例:k)→ 軸側の公差域クラス
  • 📌 後続する数字(例:7、6)→ IT基本公差等級(精度レベル)


例えば「H7/k6」という記号は、穴がH7公差、軸がk6公差の組み合わせを意味します。穴と軸の公差域が一部重なるため、これが典型的な中間ばめの組み合わせです。


実際の数値で確認してみましょう。基本寸法Φ50の場合、穴H7の許容差は+0.025mm/0mmであり、穴径は50.000〜50.025mmの範囲に収まります。軸k6の許容差は+0.018mm/+0.002mmとなり、軸径は50.002〜50.018mmの範囲です。重なり部分(50.002〜50.018mm)に実寸法が入ると圧入に、穴が50.018〜50.025mmに収まり軸が50.002〜50.018mmの最小値側に来ればわずかなすきまになります。これが中間ばめということですね。


中間ばめに該当する主な軸側公差クラスは次の通りです(穴H7基準)。


  • ⚙️ js6(JS6):公差域が基準線に対して対称に配置され、すきまと締まりが同等の確率で生じる。最も「中間」らしい中間ばめ
  • ⚙️ k6:わずかに軸寄りで、軽圧入になりやすい。ノックピンや位置決めピンに頻繁に使われる
  • ⚙️ m6:k6より軸側に寄り、圧入傾向が高まる。軽い固定が必要なピンや短軸に使われる
  • ⚙️ n6:しまりばめ寄りの中間ばめ。取り外しはハンマーが必要なことが多い


現場で混乱しやすいのが、「H7/h6はすきまばめか中間ばめか」という点です。H7/h6はすきまばめに分類されます。穴H7の最小値(50.000mm)と軸h6の最大値(50.000mm)が一致するため、理論上はすきまがゼロから正方向にしか生まれないためです。h6ではなくk6やm6を軸側に使ったときに初めて中間ばめになります。これだけ覚えておけばOKです。


また、JIS規格では寸法区分によって同じ記号でも許容差の数値が変わります。例えばΦ10のH7とΦ50のH7では、上偏差の絶対値が異なります。必ずJIS B 0401-2の一覧表か、ミスミなどメーカーの公差表を参照する習慣をつけましょう。


参考:JIS B 0401に準拠したはめあい公差の詳細数値一覧表(PDFダウンロード可能)
はめあい公差一覧表(JIS B 0401 抜粋) | 三木プーリ


中間ばめの公差選定基準:加工コストとIT等級の関係を正しく理解する

中間ばめの公差を決めるとき、多くの加工担当者は「精度が高いほど良い」という感覚で等級を選びがちです。しかし、それが加工コストを無駄に押し上げる原因になっています。これは痛いですね。


IT基本公差等級とは、JIS(ISO)が定める公差幅の等級です。IT1〜IT18まであり、数字が小さいほど公差幅が狭く(高精度)、大きいほど公差幅が広く(低精度)なります。一般的なはめあいではIT6〜IT9が使われ、中間ばめでは主にIT6(等級6)またはIT7(等級7)が選ばれます。


重要なのは、IT等級が1段階厳しくなるごとに加工コストが約1.5〜2倍になるという事実です。


IT7からIT6へ1段上げるだけで、加工費が倍近くになる可能性があります。これは加工機械の能力限界に近づくほど、段取り時間・工具費・不良率・測定回数がすべて増加するためです。例えば、穴径Φ20のH7公差(許容差+0.021mm)をH6(+0.013mm)に変更するだけで、リーマ加工の後に追加研磨や精密検査が必要になり、工数が大きく増えます。


では、中間ばめに適したIT等級をどう選べばいいのでしょうか?


機能要件を正直に評価することが出発点です。「ガタなく位置を決めたい」という目的ならIT6〜7で十分なケースが大半です。「温度変化の激しい環境」や「繰り返し着脱が多い治具」では、少し余裕をもたせてIT7を選び、補助的な固定手段(接着剤・ボルト)と組み合わせる設計が実用的です。


































IT等級 公差幅の目安(Φ50基準) 典型的な中間ばめの用途 コスト感
IT5 ±0.008mm程度 精密工作機械の主軸・ゲージ類 非常に高い
IT6 ±0.013mm程度 ノックピン、精密位置決め治具 高い
IT7 ±0.021mm程度 一般機械の位置決め部品、軸継手 標準
IT8 ±0.033mm程度 低精度の位置決め、頻繁着脱部品 低い


中間ばめではH6やH7の穴基準を使い、軸側の公差クラス(k6、m6、js6など)で「すきま寄り」か「圧入寄り」かを調整するのが原則です。穴基準(H基準)が広く使われる理由は、穴の加工精度を上げるより、軸側の切削で精度調整する方がはるかにコストが安いためです。


なお、加工コストを抑えつつ中間ばめの品質を安定させるには、「公差計算ツール」や「はめあい公差計算アプリ」の活用が効果的です。MISUMI(ミスミ)などのプラットフォームでは、基本寸法を入力するだけで上下偏差の数値が自動計算できるため、設計段階での確認作業を大幅に省力化できます。


中間ばめの公差を使ったノックピン・ベアリング取り付けの実務ポイント

中間ばめが最もよく使われる実務場面の一つが、ノックピンによる位置決めです。位置決めピンは、2枚の部品間の相対位置を繰り返し再現するために使われますが、公差の指示を誤ると「ガタついて位置がズレる」「抜けなくなって分解できない」という真逆のトラブルが起きます。


ノックピンのはめあいには、「固定側:しまりばめ」「着脱側:中間ばめ〜すきまばめ」という考え方があります。


例えば、ベース部材への圧入穴はm6(しまりばめ相当)とし、上板の貫通穴はH7/h6(すきまばめ)または H7/k6(中間ばめ)にするのが一般的な設計パターンです。こうすることで、ピンはベース側にしっかり固定されつつ、上板の着脱が工具なしで可能になります。


ベアリングの取り付けにも中間ばめが登場します。内輪とシャフトの関係では、シャフト径をk6〜m6(穴H7基準)の中間ばめとするケースが多いです。内輪が適度に圧入されることでクリープ(内輪が回転方向にずれる現象)を防ぎます。一方、外輪とハウジングの関係ではH7/js6程度の中間ばめを使い、ベアリング交換時に無理なく取り外せるようにします。


現場でよく起こる失敗例を確認しておきましょう。


  • 🔴 H7/k6指定なのに「k6の軸が入らない」→ 軸の公差(k6)が上限に近い個体と穴が下限に近い個体が重なった典型的な中間ばめの「圧入側」への振れ。ハンマーで叩くか、軸を微研磨して対応
  • 🔴 抜いたノックピンを同じ穴に再挿入したらガタが出た → 圧入・抜き取りを繰り返すと穴が僅かに広がり、中間ばめがすきまばめに移行する
  • 🔴 位置決め精度を上げようとしてH6/k5にしたらコストが2倍以上になった → IT等級を両方上げると加工コストが複利的に増加する


これらは公差の範囲内で「想定外」が起きているのではなく、中間ばめが本来持つ「どちらになるかわからない」という性格が現れた結果です。この情報を得た上で設計するなら、重要な位置決め箇所では公差指示に加えて「軽圧入前提で接着剤を補助使用」と注記するか、着脱回数が多い箇所ではすきまばめ+ねじ固定の組み合わせを検討するとよいでしょう。


参考:ノックピンの選定・使い方と中間ばめ・しまりばめの使い分け詳細
ノックピン・段付きピン・スプリングピン選定のポイント | ミスミ技術情報


中間ばめの公差管理で発生しやすい加工不良と現場での対処法【独自視点】

多くの解説記事は「中間ばめの設計方法」に焦点を当てますが、実際の製造現場で問題が起きるのは「設計図面通りに中間ばめを安定加工できないケース」です。ここでは加工担当者の視点から見た、見落とされがちな管理ポイントを取り上げます。


まず知っておくべき事実があります。穴の内径測定は、外径測定に比べて圧倒的に難しいということです。マイクロメータで外径を測るのに比べ、内径はボアゲージや三点式内径マイクロメータが必要で、測定技術のばらつきが大きくなります。IT7(例:H7の±0.021mm)の穴公差を安定して守るには、測定ツールの精度と扱い手の熟練度が不可欠です。


中間ばめの穴加工で発生しやすい問題点は以下の通りです。


  • 🔍 リーマ加工後の穴径が「測定値では合格なのに組み立てで入らない」→ 真円度や円筒度の誤差が許容差を使い果たしている状態。IT6以上の中間ばめ穴では幾何公差の同時指示も検討すべき
  • 🔍 加工直後と常温に戻った後で穴径が変化する → 加工熱による一時的な熱膨張。特にアルミ材や銅系材料は熱膨張係数が大きく、完全冷却後の測定が必須
  • 🔍 同一ロット内でも「入るもの」「入らないもの」が混在する → 公差帯の幅がIT7(0.021mm)程度しかないため、ロット内の加工ばらつきがそのまま嵌合状態に現れる


対処の基本方針は「穴基準を守り、測定プロセスを標準化する」ことです。加工後は必ず常温(20℃±2℃が推奨)に戻してから測定し、内径測定器はロット開始前に標準ゲージで校正する習慣をつけましょう。測定が条件です。


また、「中間ばめの穴を何度も再加工する」というケースも現場では起こりがちですが、これはリスクが高い作業です。穴径が少し大きくなるだけで中間ばめがすきまばめに移行し、部品の位置決め機能を失います。再加工の際は必ずメーカーの設計担当や品質担当と協議し、公差範囲内への復旧か、公差変更か、部品の新規製作かを判断してください。


現場で中間ばめを安定管理するための実用チェックリストをまとめます。


  • ✅ 穴の加工後は常温(20℃付近)に冷ましてから測定する
  • ✅ 内径測定器は毎ロット校正ゲージで確認する
  • ✅ 重要な中間ばめ穴には真円度・円筒度の幾何公差も付加する
  • ✅ ノックピン穴は圧入・抜き取り回数の上限を設計段階で決める
  • ✅ 「入らなかったとき」の対処手順を作業標準書に明記する


これらの管理を怠ると、公差は図面上で正しくても現場で再現性のない品質が続き、最終的に組み立て工程でのクレームや手直しコストとして跳ね返ります。中間ばめは「設計で決まる公差」であると同時に、「加工と測定の現場力で品質が決まる公差」でもあります。これが中間ばめの本質です。


参考:はめあい公差の選定基準から図面記載・許容差の計算方法まで体系的に解説
はめあい公差記号の種類と使い分けを図解を用いて分かりやすく解説 | protrude.com


十分な情報が集まりました。記事を生成します。