しまりばめ公差の選定と圧入・焼きばめの基礎知識

しまりばめの公差はH7/p6やH7/s6など複数ある中、どれを選ぶべきか迷っていませんか?本記事では選定基準から圧入・焼きばめの実務ポイント、コストへの影響まで詳しく解説します。

しまりばめ公差の基礎から実務選定まで完全解説

「しまりばめを指定したのに、キーなしでは大トルクが伝えられません。」


この記事のポイント3選
🔩
しまりばめ公差の基本

軸が穴より大きい「しめしろ」状態を作ることで、キーや接着剤なしで強固固定を実現。代表はH7/p6・H7/s6など。

⚙️
圧入・焼きばめ・冷やしばめの使い分け

しまりばめの組付けには圧入・焼きばめ・冷やしばめの3方法があり、しめしろの大きさや材質によって選択が異なります。

💰
IT等級とコストの関係

IT等級を1段階厳しくするだけで加工コストは1.5〜2倍になる。必要十分な公差設定がコスト最適化の鍵です。


しまりばめ公差とは?すきまばめ・中間ばめとの違い

機械加工の現場で「はめあい」という言葉は日常的に使われますが、その種類ごとの原理をきちんと整理できているでしょうか。はめあいとは、軸と穴を組み合わせたときの寸法関係のことで、大きく「すきまばめ」「中間ばめ」「しまりばめ」の3種類に分類されます。


このうちしまりばめは、軸の寸法が穴の寸法よりも必ず大きく設計される方式です。つまり、穴の最大許容寸法よりも軸の最小許容寸法が大きい状態であり、組み付けると必ず「しめしろ」が生まれます。しめしろとは穴寸法に対して軸が食い込む量のことで、この干渉量が摩擦力を生み、強固な固定力の源となります。


対してすきまばめは穴>軸の関係で常にすきまが存在し、スライドや回転運動が必要な箇所に使います。中間ばめは軸と穴の公差域が重なる中間的な状態で、製造誤差によってすきまになったりしめしろになったりします。つまり3種の違いは「どの方向に寸法差を設けるか」という点に尽きます。


しまりばめの最大の特徴は、一度組み付けると原則として分解できないという点です。これはデメリットでもありますが、それだけ強い固定力を持つということでもあります。ギアとシャフトの結合、プーリーの取り付け、ベアリング内輪の固定など、高トルク・高振動が加わる箇所でこそ真価を発揮します。


| はめあい種類 | 寸法関係 | すきまの有無 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| すきまばめ | 穴 > 軸 | 常にすきまあり | 軸受け・スライド機構 |
| 中間ばめ | 穴 ≒ 軸 | どちらもあり得る | 位置決め・一般部品 |
| しまりばめ | 穴 < 軸 | 常にしめしろあり | ギア固定・圧入部 |


しまりばめが基本です。その原理を押さえてから、初めて公差記号の選定に進めます。


しまりばめの公差記号の読み方と代表的な組み合わせ(H7/p6・H7/s6など)

JIS B 0401に基づくはめあい公差では、大文字が穴側、小文字が軸側を表します。数字はIT基本公差等級(精度の大きさ)を示し、アルファベットは公差域の位置(基準寸法からのずれ方向)を示します。しまりばめでは軸側の記号がアルファベットのN以降(n、p、r、s、t、u…)に相当し、基準寸法よりも軸が大きくなる方向に公差域が設定されています。


現場でよく使われるしまりばめの組み合わせは以下の通りです。


公差組み合わせ しめしろの目安 組付け方法 主な用途
H7/n6 ごく軽い(中間ばめとの境界) 軽い圧入 回転しない軽荷重部品
H7/p6 軽〜中程度(例:φ50で0.017〜0.042mm) 圧入 ギア・プーリーの固定
H7/s6 中〜大(例:φ50で0.043〜0.059mm) 圧入・焼きばめ 高トルク伝達部品
H7/u6 大きめ 焼きばめ・冷やしばめ 重荷重・衝撃荷重部


たとえばφ50でH7/s6の組み合わせを使う場合、穴の許容寸法は50.000〜50.025mm(H7)、軸の許容寸法は50.043〜50.059mm(s6)となります。最小しめしろは50.043-50.025=0.018mm、最大しめしろは50.059-50.000=0.059mmです。0.059mmという数値は、0.059mmがどのくらいかというと、髪の毛1本の太さ(約0.07mm)よりもわずかに細い程度の干渉量です。これが高い固定力を生んでいるわけで、精密さがよくわかります。


穴側は一般的にH7で固定して、軸側のアルファベットを変えることで固定力を調整するのが穴基準方式の基本です。穴加工よりも軸加工のほうが寸法調整しやすいため、この方式が現場では圧倒的に多く採用されています。


参考:JIS B 0401の規格詳細については公式規格情報サイトで確認できます。
JISB0401-1:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-長さに関わるサイズの公差のためのISOコード方式(kikakurui.com)


しまりばめ公差の組付け方法:圧入・焼きばめ・冷やしばめの使い分け

しまりばめには必ずしめしろがあるため、通常の方法では部品を組み付けられません。組付けには大きく3つの方法があり、しめしろの大きさや部品の材質・形状によって使い分けます。


① 圧入(プレス圧入)
常温のまま油圧プレスや手プレスで外力をかけて挿入する方法です。H7/k6(軽圧入)〜H7/p6(中圧入)程度のしめしろに対応します。最もシンプルで設備コストも低いですが、圧入速度が速すぎたり潤滑が不足したりすると「かじり」や「焼付き」が発生します。モリブデングリスなどの潤滑剤の使用が現場での鉄則です。


② 焼きばめ(加熱嵌め)
穴のある部品をオーブンや誘導加熱装置で加熱し、熱膨張によって穴径を一時的に拡大してから軸を挿入する方法です。鉄鋼材料の線膨張係数は約11.8×10⁻⁶/Kであり、φ50の部品を100K(100℃)加熱すると直径は約0.059mm広がる計算になります。これはH7/s6の最大しめしろとほぼ一致するため、100〜200℃の加熱で多くのしまりばめ組付けが可能です。ただし、焼入れ鋼では焼戻し温度(一般的に150〜200℃)を超えると硬度が落ちるため、加熱温度の管理が非常に重要です。


③ 冷やしばめ(冷却嵌め)
軸を液体窒素(約−196℃)やドライアイス(約−78℃)で冷却・収縮させてから挿入する方法です。ドライアイスの場合は常温との温度差が約90Kが限界となります。熱による影響を避けたい精密部品や、部品サイズが大きくて加熱が困難な場合に有効です。デメリットとしては液体窒素などの冷却材の取り扱い設備とコストが必要な点、また結露による腐食リスクへの対策も求められる点があります。


これは使えそうです。圧入・焼きばめ・冷やしばめを選ぶ判断基準は次の表で整理できます。


| 方法 | 適したしめしろ | 設備 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 圧入 | 軽〜中程度 | プレス機 | かじり・割れに注意 |
| 焼きばめ | 中〜大 | 加熱炉・誘導加熱器 | 熱処理温度域への注意 |
| 冷やしばめ | 中〜大 | 液体窒素・ドライアイス | 結露・冷却材コスト |


参考:焼きばめの公差・しめしろ計算の詳細はこちら
焼きばめの原理、公差、しめしろの計算方法、注意点を解説(Mitsuri)


しまりばめ公差の選定手順と失敗しないための判断基準

実務でしまりばめ公差を選ぶ際は、「なんとなくH7/p6にする」という感覚的な選定では後で大きなトラブルにつながります。選定には以下の順序で考えることが重要です。


ステップ1:固定後の分解の必要性を確認する
しまりばめは原則分解不可です。メンテナンスで定期的に分解する部位には中間ばめかすきまばめを選ぶ必要があります。しまりばめを採用するのは「永続的な固定」が前提の箇所のみです。


ステップ2:伝達するトルクや軸方向荷重を試算する
しまりばめの保持力は「しめしろ×材料弾性力×接触面積」で決まります。H7/n6〜p6で一般的な機械部品の固定は対応できますが、高トルク伝達が求められる場合はH7/s6やH7/u6を選びます。H7/p6以上のしまりばめでも、ミスミの公差表では「大トルクの伝動にはキーなどが必要」と注記されているように、超高トルク条件では追加固定手段との併用も検討します。


ステップ3:材質の組み合わせを確認する
アルミや鋳鉄などの軟質材・脆性材への圧入は割れが発生しやすく、特に注意が必要です。鋼(S45C・SCM415など)は圧入に適していますが、アルミ部品は同じしめしろ量でも割れやすくなります。また、アルミと鋼を組み合わせた場合、温度変化によって熱膨張差が生じるため(アルミの線膨張係数は約23×10⁻⁶/K、鋼の約2倍)、常温時のしめしろ設定に余裕が必要です。


ステップ4:組付け方法と設備を確認する
設計したしめしろ量に対し、現場が保有する設備(プレス能力・加熱設備)で組付けが可能かどうかを確認します。しめしろが大きすぎてプレス能力を超えるケース、または加熱温度が焼戻し温度を超えてしまうケースが現場でよく起きます。設計段階で組付け方法まで規定しておくことが、現場トラブルの止につながります。


H7/p6が条件です。これがしまりばめ選定の基本スタート地点として最も多く使われる理由です。


参考:実務でのはめあい公差の決め方の詳細はこちら
はめあい公差の決め方とそのポイントを解説(MONOWEB)


しまりばめ公差とIT等級・加工コストの関係:現場で見落としがちな視点

しまりばめを設計するとき、多くの現場担当者が「精度は高い方が安全」と考えてIT等級を必要以上に厳しく設定しがちです。しかしこれが加工コストを大幅に押し上げる原因になっています。


一般的に、IT等級が1段階厳しくなると加工コストは1.5〜2倍になると言われています。たとえばIT7(H7/p6など)からIT6(H6/p5など)へ変更すると、同じ形状でも穴加工に要する工程・工具精度の要求が大きく上がります。φ20程度の穴を対象にした場合でも、リーマ加工や精密ボーリングが必要になり、加工単価は2倍近くなることが珍しくありません。


痛いですね。逆に言えば「必要十分な公差を選ぶ」だけで、同じ機能を維持しながら加工コストを半減できる可能性があります。


では現場ではどう判断するのでしょうか?ポイントは「機能上必要なしめしろ範囲」を最初に決め、その範囲を満足できる最もゆるい公差等級を選ぶことです。たとえばベアリング取り付け部のように高精度が必要な箇所はH7/k6(IT7)を使い、単純な固定ピン圧入ならH8/p7(IT8)でも機能を満たせる場合があります。


また、しまりばめの公差設計では表面粗さも見落とせません。しめしろ量が同じでも、加工面が粗いと実際のしめしろは小さくなります。これは圧入時に表面の山がつぶれる現象(表面粗さによる有効しめしろの減少)によるもので、精密な固定力が必要な場合は表面粗さをRa1.6以下に管理することが推奨されています。


つまり公差等級・しめしろ量・表面粗さの


Please continue. Now I have enough information to write the article.