金属焼付塗装と一言で言っても、使用される塗料(樹脂)の種類によって、その性能、特徴、そしてコストは大きく異なります 。製品の用途や使用環境、求める品質レベルに応じて、最適な塗料を選定することが、高品質な製品作りにおける最初の重要なステップとなります 。ここでは、代表的な焼付塗装用の塗料について、その特徴とメリット・デメリットを詳しく解説します。
メラミン樹脂焼付塗装
最も一般的で広く利用されているのがメラミン樹脂焼付塗装です 。比較的安価でありながら、塗膜が非常に硬く、優れた光沢を持つため、オフィス家具や家電製品、屋内で使用される建材などに多く採用されています 。耐油性や耐薬品性にも優れており、日常的な汚れに強いのも特徴です 。しかし、屋外での使用にはあまり向いていません。紫外線によって塗膜が劣化しやすく、チョーキング(白亜化)現象が起こりやすいため、耐候性が求められる用途には不向きです 。
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アクリル樹脂焼付塗装
アクリル樹脂焼付塗装は、メラミン樹脂よりも耐候性に優れているため、屋外で使用される製品にも適用可能です 。自動車のボディやガードレール、自動販売機など、厳しい環境下での使用が想定されるものに採用されています。耐食性や耐汚染性も高く、美しい外観を長期間維持することができます 。一方で、メラミン樹脂塗料と比較するとコストがやや高くなる傾向にあります 。また、塗膜を厚く塗ることが難しく、通常は15ミクロン程度の薄膜での仕上げとなります 。
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フッ素樹脂焼付塗装
数ある焼付塗装の中でも、最高レベルの耐候性を誇るのがフッ素樹脂焼付塗装です 。非常に強力なフッ素結合により、紫外線や酸性雨、塩害など、過酷な環境要因に対して卓越した耐久性を発揮します。そのため、高層ビルの外壁パネルや橋梁、沿岸部の建築物など、長期間にわたるメンテナンスが困難な場所でその真価を発揮します 。汚れが付着しにくいという特性も持っています。ただし、その高性能さゆえに、他の塗料に比べてコストが大幅に高くなる点が最大のデメリットと言えるでしょう 。
参考)https://www.coatboo.com/method/burning.html
【その他の塗料】
下記の参考リンクは、各塗料メーカーの製品情報です。より詳細な塗料のスペックや技術データシートを確認する際に役立ちます。
金属焼付塗装の最終的な品質は、単に塗料を塗るだけでなく、その前後の工程がいかに丁寧に行われるかに大きく左右されます 。特に下地処理は、塗膜の密着性や耐久性に直結する最も重要な工程です。ここでは、一般的な溶剤焼付塗装のプロセスを4つの主要な工程に分け、それぞれの目的と作業内容、品質を確保するためのポイントを解説します。
工程1:脱脂(だっし)
塗装を行う金属素材の表面には、加工時や保管時に付着した油分、鉄粉、ホコリなどの汚染物質が存在します 。これらが残ったままだと、塗料がしっかりと密着せず、塗装の剥がれや「ハジキ」と呼ばれる欠陥の原因となります。脱脂工程では、アルカリ性の洗浄液や溶剤を用いて、これらの汚染物質を徹底的に除去します 。製品を洗浄機に投入したり、手作業で丁寧に拭き上げたりします。洗浄後は、エアブローで水分や残留物を吹き飛ばし、清浄な状態にします 。
参考)金属部品の焼付塗装の工程
工程2:下地処理(化成処理)
脱脂後の清浄な金属表面に、塗料の密着性をさらに高め、防錆性能を向上させるための化学的な皮膜を形成させる工程です。リン酸塩皮膜処理が代表的で、特に鉄鋼材料にはリン酸鉄皮膜処理(アモルファスリン酸塩)が広く用いられます。これにより、素材表面に微細な凹凸が形成され、塗料が食い込むアンカー効果が生まれるとともに、錆の発生を抑制する不動態皮膜の役割も果たします 。ステンレスやアルミニウムの場合は、専用の化成処理剤が使用されます。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/machining/45408/
工程3:塗布(とふ)
下地処理が完了した製品に、いよいよ塗料を吹き付けます。塗布方法には、人の手で行う「スプレーガン塗装」と、産業用ロボットが行う「ロボット塗装」があります 。製品の形状や生産ロット数に応じて使い分けられます。スプレーガン塗装は、職人の技術力が品質を左右しますが、複雑な形状の製品にも柔軟に対応できます。一方、ロボット塗装は、ティーチングされたプログラムに基づき、均一でムラのない高品質な塗装を大量生産するのに適しています 。近年では、静電気を利用して塗料を効率的に付着させる「静電塗装」も広く採用されています。
工程4:焼付乾燥(やきつけかんそう)
塗装が完了した製品を、高温の乾燥炉(ベーキング炉)に入れて加熱し、塗膜を硬化させます 。この工程が「焼付塗装」という名前の由来です。塗料の種類によって異なりますが、一般的に120℃から200℃の温度で、20分から30分程度加熱します 。この熱によって塗料中の樹脂が化学反応(熱重合反応)を起こし、強固で緻密な塗膜が形成されます 。温度や時間が不適切だと、硬化不良や塗膜の性能低下につながるため、厳密な管理が求められます。
参考)ココが違う!トコウの焼付塗装
金属焼付塗装の価値は、美しい外観だけでなく、その優れた保護性能にあります 。特に屋外で使用される製品にとっては、紫外線や雨風に耐える「耐候性」と、錆の発生を防ぐ「耐食性」が製品寿命を大きく左右します 。ここでは、塗膜の性能を最大限に引き出し、製品を長期間保護するための専門的なアプローチをいくつか紹介します。
☀️ 耐候性を高めるアプローチ
💧 耐食性を高めるアプローチ
意外な情報として、塗装の「エッジカバー性」も耐食性に大きく影響します。製品の角や端の部分は塗料が乗りにくく、塗膜が薄くなりがちです。この「エッジ部」から錆が発生することが非常に多いため、エッジ部にもしっかりと膜厚がつくように設計された塗料を選んだり、塗り方を工夫したりすることが、製品全体の寿命を延ばす上で極めて重要になります。
金属焼付塗装を発注する際、コストは避けて通れない重要な検討項目です。しかし、単に価格が安いという理由だけで業者を選んでしまうと、品質が伴わず、結果的に補修や再塗装で余計な費用がかかってしまうことも少なくありません。ここでは、焼付塗装のコストがどのように決まるのか、その内訳を理解し、費用対効果を最大化するためのポイントを解説します。
💰 金属焼付塗装のコストを構成する主な要因
💡 費用対効果を高めるための業者選定と発注のコツ
以下のリンクは、塗装業者の選び方について解説した参考記事です。業者選定の際にチェックすべきポイントが具体的にまとめられています。
【塗装業者監修】塗装工事の見積もり完全ガイド!チェック項目や注意点を解説
近年、世界的な環境意識の高まりを受け、塗装業界においても大きな変革の波が訪れています。特に、従来の溶剤系焼付塗装に含まれるVOC(揮発性有機化合物)は、大気汚染や健康被害の原因となるため、その排出量を削減することが急務となっています 。ここでは、環境規制に対応する新しい塗装技術と、金属焼付塗装の今後の展望について、独自視点を交えて解説します。
🌍 VOC規制と環境配慮型塗料へのシフト
従来の焼付塗装で広く使われてきた溶剤塗料は、シンナーなどの有機溶剤で樹脂を溶かしており、乾燥・焼付工程でVOCが大気中に放出されます 。これに対し、各国でVOC排出規制が強化されており、日本でも改正大気汚染防止法が施行されています。この流れに対応するため、塗料メーカーや塗装業者は、VOCの含有量が少ない、あるいは全く含まない環境配慮型塗料へのシフトを進めています。
参考)【溶剤、静電、焼付、粉体】さまざまな塗装の種類とメリットデメ…
その代表格が「粉体塗装(パウダーコーティング)」です 。
粉体塗装は、その名の通り、粉末状の樹脂塗料を使用する塗装方法です。
この方法では有機溶剤を一切使用しないため、VOCの排出はゼロです 。また、吹き付け時に付着しなかった塗料(オーバースプレー)を回収して再利用できるため、塗料のロスが少なく、非常に経済的です。塗膜が厚く、強度、耐食性、耐薬品性に優れた強靭な塗膜を一度の塗装で形成できる点も大きなメリットです。
🤔 焼付塗装の未来と技術革新の方向性
粉体塗装は環境性能と塗膜性能の両面で優れた技術ですが、色替えに時間がかかる、薄膜の形成が難しいといった課題もあり、全ての製品に適用できるわけではありません。そのため、従来の溶剤塗装においても、VOC排出量を削減する技術開発が進んでいます。
これからの金属焼付塗装は、単にモノを保護し、美しく見せるだけでなく、「いかに環境負荷を低減するか」という視点が不可欠になります。SDGsへの貢献は、企業の社会的責任として、また、新たなビジネスチャンスを創出する鍵として、ますますその重要性を増していくでしょう。自社の製品にとって、性能、コスト、そして環境性能のバランスが取れた最適な塗装仕様は何かを常に問い続ける姿勢が、これからのものづくりには求められています。

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