金属焼付塗装の種類と工程、塗膜の耐久性を高める秘訣

金属焼付塗装は、製品の保護と美観向上に不可欠な技術です。この記事では、塗装の種類や具体的な工程、塗膜の性能を最大限に引き出すための専門的な知識を解説します。あなたの製品に最適な焼付塗装とは一体何でしょうか?

金属焼付塗装の全てを徹底解説

金属焼付塗装 完全ガイド
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塗料の種類と特徴

メラミン、アクリル、フッ素など、各塗料の特性と最適な用途を学びます。

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品質を決める塗装工程

脱脂から焼付まで、各工程の重要性と品質を左右するポイントを解説します。

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性能向上の秘訣

耐候性や耐食性を高め、製品寿命を延ばすための実践的なテクニックを紹介します。

金属焼付塗装の種類別特徴とメリット・デメリット

 

金属焼付塗装と一言で言っても、使用される塗料(樹脂)の種類によって、その性能、特徴、そしてコストは大きく異なります 。製品の用途や使用環境、求める品質レベルに応じて、最適な塗料を選定することが、高品質な製品作りにおける最初の重要なステップとなります 。ここでは、代表的な焼付塗装用の塗料について、その特徴とメリット・デメリットを詳しく解説します。
メラミン樹脂焼付塗装
最も一般的で広く利用されているのがメラミン樹脂焼付塗装です 。比較的安価でありながら、塗膜が非常に硬く、優れた光沢を持つため、オフィス家具や家電製品、屋内で使用される建材などに多く採用されています 。耐油性や耐薬品性にも優れており、日常的な汚れに強いのも特徴です 。しかし、屋外での使用にはあまり向いていません。紫外線によって塗膜が劣化しやすく、チョーキング(白亜化)現象が起こりやすいため、耐候性が求められる用途には不向きです 。

 

参考)ムラカワで扱う焼付塗装の種類とは?塗料それぞれの種類の特徴に…

アクリル樹脂焼付塗装
アクリル樹脂焼付塗装は、メラミン樹脂よりも耐候性に優れているため、屋外で使用される製品にも適用可能です 。自動車のボディやガードレール、自動販売機など、厳しい環境下での使用が想定されるものに採用されています。耐食性や耐汚染性も高く、美しい外観を長期間維持することができます 。一方で、メラミン樹脂塗料と比較するとコストがやや高くなる傾向にあります 。また、塗膜を厚く塗ることが難しく、通常は15ミクロン程度の薄膜での仕上げとなります 。

 

参考)焼付塗装とは?大阪で金属塗装の塗装工場をお探しなら、 オーク…

フッ素樹脂焼付塗装
数ある焼付塗装の中でも、最高レベルの耐候性を誇るのがフッ素樹脂焼付塗装です 。非常に強力なフッ素結合により、紫外線や酸性雨、塩害など、過酷な環境要因に対して卓越した耐久性を発揮します。そのため、高層ビルの外壁パネルや橋梁、沿岸部の建築物など、長期間にわたるメンテナンスが困難な場所でその真価を発揮します 。汚れが付着しにくいという特性も持っています。ただし、その高性能さゆえに、他の塗料に比べてコストが大幅に高くなる点が最大のデメリットと言えるでしょう 。

 

参考)https://www.coatboo.com/method/burning.html

【その他の塗料】

  • ウレタン樹脂焼付塗装: 塗膜の柔軟性に優れ、衝撃に強いという特徴があります。耐薬品性も良好です。
  • エポキシ樹脂焼付塗装: 密着性と錆能力が非常に高い塗料です 。主にプライマー(下塗り)として使用され、上塗り塗料の性能を最大限に引き出す役割を担います。ただし、耐候性は低いため、必ず上塗りが必要です。

下記の参考リンクは、各塗料メーカーの製品情報です。より詳細な塗料のスペックや技術データシートを確認する際に役立ちます。

 

関西ペイント株式会社 製品検索

金属焼付塗装の品質を決定づける4つの主要工程

金属焼付塗装の最終的な品質は、単に塗料を塗るだけでなく、その前後の工程がいかに丁寧に行われるかに大きく左右されます 。特に下地処理は、塗膜の密着性や耐久性に直結する最も重要な工程です。ここでは、一般的な溶剤焼付塗装のプロセスを4つの主要な工程に分け、それぞれの目的と作業内容、品質を確保するためのポイントを解説します。
工程1:脱脂(だっし)
塗装を行う金属素材の表面には、加工時や保管時に付着した油分、鉄粉、ホコリなどの汚染物質が存在します 。これらが残ったままだと、塗料がしっかりと密着せず、塗装の剥がれや「ハジキ」と呼ばれる欠陥の原因となります。脱脂工程では、アルカリ性の洗浄液や溶剤を用いて、これらの汚染物質を徹底的に除去します 。製品を洗浄機に投入したり、手作業で丁寧に拭き上げたりします。洗浄後は、エアブローで水分や残留物を吹き飛ばし、清浄な状態にします 。

 

参考)金属部品の焼付塗装の工程

工程2:下地処理(化成処理)
脱脂後の清浄な金属表面に、塗料の密着性をさらに高め、防錆性能を向上させるための化学的な皮膜を形成させる工程です。リン酸塩皮膜処理が代表的で、特に鉄鋼材料にはリン酸鉄皮膜処理(アモルファスリン酸塩)が広く用いられます。これにより、素材表面に微細な凹凸が形成され、塗料が食い込むアンカー効果が生まれるとともに、錆の発生を抑制する不動態皮膜の役割も果たします 。ステンレスアルミニウムの場合は、専用の化成処理剤が使用されます。

 

参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/machining/45408/

工程3:塗布(とふ)
下地処理が完了した製品に、いよいよ塗料を吹き付けます。塗布方法には、人の手で行う「スプレーガン塗装」と、産業用ロボットが行う「ロボット塗装」があります 。製品の形状や生産ロット数に応じて使い分けられます。スプレーガン塗装は、職人の技術力が品質を左右しますが、複雑な形状の製品にも柔軟に対応できます。一方、ロボット塗装は、ティーチングされたプログラムに基づき、均一でムラのない高品質な塗装を大量生産するのに適しています 。近年では、静電気を利用して塗料を効率的に付着させる「静電塗装」も広く採用されています。

工程4:焼付乾燥(やきつけかんそう)
塗装が完了した製品を、高温の乾燥炉(ベーキング炉)に入れて加熱し、塗膜を硬化させます 。この工程が「焼付塗装」という名前の由来です。塗料の種類によって異なりますが、一般的に120℃から200℃の温度で、20分から30分程度加熱します 。この熱によって塗料中の樹脂が化学反応(熱重合反応)を起こし、強固で緻密な塗膜が形成されます 。温度や時間が不適切だと、硬化不良や塗膜の性能低下につながるため、厳密な管理が求められます。

 

参考)ココが違う!トコウの焼付塗装

金属焼付塗装の塗膜性能(耐候性・耐食性)を極限まで高める方法

金属焼付塗装の価値は、美しい外観だけでなく、その優れた保護性能にあります 。特に屋外で使用される製品にとっては、紫外線や雨風に耐える「耐候性」と、錆の発生を防ぐ「耐食性」が製品寿命を大きく左右します 。ここでは、塗膜の性能を最大限に引き出し、製品を長期間保護するための専門的なアプローチをいくつか紹介します。
☀️ 耐候性を高めるアプローチ

  1. 最適な塗料の選定: 屋外用途では、アクリル樹脂塗料や、さらに高性能なフッ素樹脂塗料の選定が基本となります 。メラミン樹脂塗料は耐候性が低いため、屋外使用は避けるべきです。
  2. UVカットクリアーの活用: カラー塗装の上に、紫外線吸収剤を配合した透明なクリアー塗料を上塗りすることで、色あせや光沢の低下を大幅に抑制できます。自動車の塗装などで一般的に用いられる手法です。
  3. 膜厚の最適化: 規定の膜厚を確保することも重要です。塗膜が薄すぎると、紫外線が下地まで到達しやすくなり、劣化を早める原因となります。ただし、厚すぎてもワレの原因になるため、塗料メーカーが推奨する範囲で管理する必要があります 。

💧 耐食性を高めるアプローチ

  1. 下地処理の徹底: 耐食性の確保において最も重要なのは、やはり下地処理です 。リン酸塩皮膜処理などの化成処理を適切に行うことで、素材と塗膜の界面で発生する錆を強力に防ぎます。
  2. 防錆顔料入りプライマーの使用: ジンクリッチプライマー(高濃度亜鉛末塗料)のように、犠牲防食作用を持つプライマーを下塗りに使用することで、万が一塗膜に傷がついても、素材が錆びるのを防ぐことができます。
  3. 電着塗装との組み合わせ: 自動車のボディのように、極めて高い防錆性能が求められる場合は、焼付塗装の前に「電着塗装(カチオン電着塗装)」を施すのが一般的です 。製品を塗料のプールに浸漬させ、電気を流すことで、複雑な形状の製品でも隅々まで均一な防錆塗膜を形成できます 。

意外な情報として、塗装の「エッジカバー性」も耐食性に大きく影響します。製品の角や端の部分は塗料が乗りにくく、塗膜が薄くなりがちです。この「エッジ部」から錆が発生することが非常に多いため、エッジ部にもしっかりと膜厚がつくように設計された塗料を選んだり、塗り方を工夫したりすることが、製品全体の寿命を延ばす上で極めて重要になります。

 

金属焼付塗装のコスト構造と費用対効果を高めるポイント

金属焼付塗装を発注する際、コストは避けて通れない重要な検討項目です。しかし、単に価格が安いという理由だけで業者を選んでしまうと、品質が伴わず、結果的に補修や再塗装で余計な費用がかかってしまうことも少なくありません。ここでは、焼付塗装のコストがどのように決まるのか、その内訳を理解し、費用対効果を最大化するためのポイントを解説します。

 

💰 金属焼付塗装のコストを構成する主な要因

  • 塗料の種類: コストに最も大きく影響するのが塗料のグレードです 。一般的に、メラミン < アクリル < ウレタン < フッ素 の順に高価になります。求める耐候性や機能に応じて、オーバースペックにならないよう適切な塗料を選ぶことが重要です。
  • 塗装面積と形状: 当然ながら、塗装する面積が広ければ広いほど、使用する塗料の量が増え、工数もかかるためコストは上がります。また、単純な平面よりも、凹凸の多い複雑な形状の製品は、塗装に手間がかかるため割高になる傾向があります。
  • 製品のサイズと重量: 塗装ラインや乾燥炉の大きさを超える大型の製品や、取り扱いにクレーンなどが必要な重量物は、特別な設備や段取りが必要となるため、追加費用が発生します。
  • ロット数(生産数量): 一度に発注する数量が多ければ多いほど、一つあたりの単価は下がるのが一般的です。これは、色替えの手間や段取りの工数が削減され、生産効率が上がるためです。
  • 要求される品質レベル: 外観の美しさを特に重視する場合や、膜厚管理の精度を厳しく求める場合など、高い品質基準をクリアするためには、検査工程の強化や熟練した作業者のアサインが必要となり、コストに反映されます。

💡 費用対効果を高めるための業者選定と発注のコツ

  1. 複数社から相見積もりを取る: 同じ仕様でも、業者によって得意な分野や設備が異なるため、価格には差が出ます。必ず2~3社から見積もりを取り、価格と提案内容を比較検討しましょう。
  2. 仕様を明確に伝える: 製品の材質、使用環境、求める耐用年数、希望する色や艶などを具体的に伝えることで、業者側も最適な塗料と工程を提案しやすくなり、精度の高い見積もりが得られます。
  3. 実績と設備を確認する: 過去に自社製品と類似した製品の塗装実績があるか、ISO9001などの品質マネジメントシステム認証を取得しているか、充実した検査設備を保有しているかなどを確認することも、信頼できる業者を見極める上で重要です。

以下のリンクは、塗装業者の選び方について解説した参考記事です。業者選定の際にチェックすべきポイントが具体的にまとめられています。

 

【塗装業者監修】塗装工事の見積もり完全ガイド!チェック項目や注意点を解説

【業界の未来】環境規制と金属焼付塗装の技術革新

近年、世界的な環境意識の高まりを受け、塗装業界においても大きな変革の波が訪れています。特に、従来の溶剤系焼付塗装に含まれるVOC(揮発性有機化合物)は、大気汚染や健康被害の原因となるため、その排出量を削減することが急務となっています 。ここでは、環境規制に対応する新しい塗装技術と、金属焼付塗装の今後の展望について、独自視点を交えて解説します。
🌍 VOC規制と環境配慮型塗料へのシフト
従来の焼付塗装で広く使われてきた溶剤塗料は、シンナーなどの有機溶剤で樹脂を溶かしており、乾燥・焼付工程でVOCが大気中に放出されます 。これに対し、各国でVOC排出規制が強化されており、日本でも改正大気汚染防止法が施行されています。この流れに対応するため、塗料メーカーや塗装業者は、VOCの含有量が少ない、あるいは全く含まない環境配慮型塗料へのシフトを進めています。

 

参考)【溶剤、静電、焼付、粉体】さまざまな塗装の種類とメリットデメ…

その代表格が「粉体塗装(パウダーコーティング)」です 。

粉体塗装は、その名の通り、粉末状の樹脂塗料を使用する塗装方法です。

 

  1. 静電気を帯びた粉体塗料を、アースされた被塗物(製品)に吹き付ける。
  2. 粉体塗料が静電気の力で製品に付着する 。
  3. そのまま加熱炉で加熱すると、粉体が溶けて均一な塗膜となり、さらに反応・硬化する。

この方法では有機溶剤を一切使用しないため、VOCの排出はゼロです 。また、吹き付け時に付着しなかった塗料(オーバースプレー)を回収して再利用できるため、塗料のロスが少なく、非常に経済的です。塗膜が厚く、強度、耐食性、耐薬品性に優れた強靭な塗膜を一度の塗装で形成できる点も大きなメリットです。
🤔 焼付塗装の未来と技術革新の方向性
粉体塗装は環境性能と塗膜性能の両面で優れた技術ですが、色替えに時間がかかる、薄膜の形成が難しいといった課題もあり、全ての製品に適用できるわけではありません。そのため、従来の溶剤塗装においても、VOC排出量を削減する技術開発が進んでいます。

 

  • ハイソリッド塗料: 塗料に含まれる固形成分(樹脂や顔料)の割合を高め、溶剤の含有量を減らした塗料です。
  • 水性塗料: 有機溶剤の代わりに水で樹脂を溶解または分散させた塗料です。性能面で溶剤系に劣る部分もありましたが、近年の技術開発により、その差は着実に縮まっています。
  • 低温焼付・UV硬化塗料: 焼付温度を下げることで、エネルギー消費量とCO2排出量を削減する低温硬化型塗料や、熱ではなく紫外線を照射して瞬時に塗膜を硬化させるUV硬化塗料も、特に熱に弱い素材への応用が期待されています。

これからの金属焼付塗装は、単にモノを保護し、美しく見せるだけでなく、「いかに環境負荷を低減するか」という視点が不可欠になります。SDGsへの貢献は、企業の社会的責任として、また、新たなビジネスチャンスを創出する鍵として、ますますその重要性を増していくでしょう。自社の製品にとって、性能、コスト、そして環境性能のバランスが取れた最適な塗装仕様は何かを常に問い続ける姿勢が、これからのものづくりには求められています。

 

 


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