表面粗さRa 2.5μmを超えた面で測ると、50Nプローブでも数値が大きくズレます。
UCI式超音波硬さ計の名称にある「UCI」は、Ultrasonic Contact Impedance(超音波接触インピーダンス)の略です。名前だけ聞くと複雑に感じますが、基本の仕組みはシンプルです。
プローブロッドの先端には、対面角136°のピラミッド形ダイヤモンド圧子が取り付けられています。このロッドは常に約78kHzという非常に高い周波数で振動しています。78kHzというのは、人間の耳に聞こえる音域(20Hz〜20kHz)をはるかに超えた超音波領域です。
つまり超音波硬さ計が基本です。
このダイヤモンド圧子を金属表面に所定の荷重で押し付けると、圧痕(くぼみ)が形成されます。この圧痕が大きいほど、圧子は広い面積で金属に拘束されます。拘束面積が大きくなると共振周波数が上昇し、面積が小さければ周波数変化は小さくなります。
この周波数変化量をリアルタイムに電気信号として捉え、あらかじめ設定した換算式によってビッカース硬さ(HV)などの数値に変換します。それがUCI式の核心です。
従来のビッカース試験と決定的に違う点は、圧痕を顕微鏡で目視観察しないところにあります。UCI法では圧痕を電子的に評価するため、人による読み取りのばらつきが発生しません。これは使えそうです。
また、測定時間はプローブを当てて約0.5秒。試験室に持ち込む必要はなく、現場でその場で測れます。コベルコ科研のような機関でも、現地構造物や大型製品の現地測定に活用されているのはこのためです。
参考(コベルコ科研:超音波硬さ計の仕様・活用事例) - 現地測定から狭面部の硬さ測定まで、実際の使われ方がわかります。
UCI式硬さ計のプローブは、試験荷重の違いによって10N(1kgf)・50N(5kgf)・98N(10kgf)の3種類があります。この荷重の違いが、測定できる対象や必要な表面粗さに直結します。
荷重が低いほど圧痕が小さく・浅くなります。圧痕が小さいと、表面の凹凸(粗さ)が測定結果に与える影響が相対的に大きくなります。だから低荷重プローブほど、より滑らかな面が必要です。これが原則です。
| プローブ荷重 | 推奨表面粗さ(Ra) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 10N(1kgf) | ≦1.5Ra | イオン窒化部品・ベアリング・薄板・硬化層・大径ギア歯底 |
| 50N(5kgf) | ≦2.5Ra | 標準汎用。高周波焼入れ品・溶接HAZ・カムシャフト・タービン |
| 98N(10kgf) | ≦4.0Ra | 小型鍛造品・鋳造品・熱処理品(比較的大きな圧痕が残る) |
現場でよくある失敗が、切削加工後にそのまま50Nプローブで測定するケースです。旋盤やフライス加工直後の面は表面粗さが3Ra以上になることも多く、50Nプローブの推奨値Ra 2.5μmを超えます。こうした条件で測定すると、数値に誤差が生じます。測定前に表面粗さを確認するのが条件です。
また、98Nプローブは表面が粗くても使えますが、10kgf(約98N)という大きな力を手で安定して保持することが難しく、専門メーカーも「安定的な測定が難しいため推奨していない」と明示しています。粗い面・重い鋳物には、リバウンド(リーブ)硬さ計のGタイプを使う方が適しています。意外ですね。
参考(ダコタ・ジャパン:硬さ計よくある質問) - プローブ荷重の使い分けや鋳物測定の適否など、現場判断に役立つQ&Aです。
UCI式超音波硬さ計が金属加工の現場で重宝される理由の一つが、狭い範囲の硬さを局所的にとらえられる能力です。
溶接部の「熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)」は、溶接熱によって金属の組織が変質した領域で、溶接ビードのすぐ横に数mm〜数十mm幅で発生します。この領域は、場合によっては母材よりも硬くなり、割れや破損のリスクが高まります。ここが重要です。
UCI式の圧痕サイズは、50Nプローブで硬さ250HVのとき深さ約29μm(0.029mm)、幅は数十〜百数十μm程度です。髪の毛の太さ(約80μm)と同じかそれ以下の圧痕で硬さを測れます。この極めて小さい圧痕サイズにより、HAZのように狭い領域をピンポイントで測定できます。
高周波焼入れや浸炭熱処理を施した部品の「硬化層」評価にも同様に有効です。表面の硬化層は1mm前後と薄い場合もあり、大きな圧痕では下地の軟らかい母材まで影響が出てしまいます。UCI式なら、荷重が小さく圧痕が浅いため、硬化層のみの硬さを正確に評価できます。
さらに、ギアの歯底や溝部など、他の硬さ計ではプローブが物理的に届かない形状部位でも、スリムなUCIプローブなら測定が可能です。これは使えそうです。
完成品・最終製品の全数検査に使えるのも大きなポイントです。リバウンド式のように目立つ圧痕が残ると、製品外観に影響します。UCI式の圧痕は肉眼ではほぼ確認できないレベルのため、鏡面仕上げ・研磨済み部品でも安心して検査できます。
参考(ダコタ・ジャパン:UCI硬さ試験の測定原理・特徴) - HAZや硬化層測定の特徴・プローブの詳細が確認できます。
UCI式超音波硬さ計の「デフォルト設定」は鋼(スチール)です。これは多くのメーカーが明示していますが、現場では意外と見落とされています。
鋼以外の材料(アルミ合金・チタン合金・銅合金など)を鋼のデフォルト設定のまま測定すると、表示される硬さ値は実際の値と一致しません。材料によって弾性率(ヤング率)が異なるため、同じ圧痕サイズでも共振周波数の変化量が違ってくるからです。校正が条件です。
校正の方法は、測定対象と同材料で硬さが既知の研磨済み基準片を用い、実測値を合わせ込む作業になります。この基準片は一般に別途入手が必要で、コストや準備時間が発生する点を事前に把握しておくことが重要です。
また、塗装が施された金属表面に対しては、たとえUCI式でも「塗装の上から金属の硬さのみを測定する」ことはできません。塗膜を剥がした上で測定する必要があります。これだけは例外です。
もう一点、UCI式は「粗粒材」には不向きな面があります。結晶粒が粗大な鋳鉄・鋳鋼は、組織が不均質であるため測定値のばらつきが大きくなります。こういった材料には、より大きな荷重で広い領域を評価できるリバウンド式(Gタイプインパクトデバイス)の方が適しています。
こういった条件の整理をしておくと、現場でのトラブルを防ぐことができます。UCI式の「使える場面」と「使えない場面」を把握することが、測定精度を守ることに直結します。
UCI式超音波硬さ計は非常に便利な測定器ですが、現場で使っていると「数値がばらつく」「毎回違う値が出る」と感じる場面があります。その多くは、機器の問題ではなく「測定操作と環境」の問題です。
UCI式の測定は、プローブを手で保持して押し付ける方法が基本です。プローブを測定面に垂直に当て、約0.5秒かけて穏やかに所定荷重まで押し込む必要があります。激しく押し付けるとダイヤモンド圧子が損傷し、正常な測定ができなくなります。痛いですね。
ばらつきを防ぐための基本操作のポイントは以下の通りです。
独自視点として注目したいのが「測定箇所の残留応力の影響」です。切削・研削・プレス加工後の金属表面には残留応力が存在することがあります。残留応力は材料の見かけの弾性的挙動を変えるため、理論上は共振周波数の変化にも微小な影響を与える可能性があります。
現場レベルでは通常この影響は誤差範囲内に収まりますが、高精度な硬化層評価や材料特性の研究目的で使う場合は、試料の前処理(電解研磨など)によって残留応力を除去した上で測定を行う手法も検討の価値があります。これは知る人ぞ知る応用です。
測定の再現性が求められる品質管理の現場では、まず「同一オペレーターが同一手順で行う」という運用ルールを決めることが、最もコストをかけずに精度を上げる方法です。UCI式は「誰でも同じ値が出やすい」リバウンド式に比べて熟練が必要な面があります。運用ルール化が基本です。
参考(NDTアドヴァンス:高精度UCI硬さ計TQ-4C) - 「初心者でもすぐに高精度な測定が可能」とされるモデルで、操作安定性を高める設計のUCI計を比較検討できます。

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