SUM24Lは削れやすいが、強度を求める部品に使うと製品クレームにつながります。
SUM24Lは「日本工業規格 JIS G 4804 硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材」に定められた13種類の鋼材のうちの一つです。名称の末尾にある「L」は、Pb(鉛)を含有していることを示すアルファベットで、このLの有無が加工性能や環境規制への対応において大きな意味を持ちます。
化学成分は、C(炭素):0.15%以下、Mn(マンガン):0.85〜1.15%、P(リン):0.04〜0.09%、S(硫黄):0.26〜0.35%、Pb(鉛):0.10〜0.35%という構成です。炭素量が低い点が目立ちます。低炭素であることで、強度は抑えられる代わりに加工しやすさが際立つ、という設計上の狙いが明確に反映されています。
硬度は約140HB(ブリネル硬さ)で、フェライト-パーライトというミクロ組織を持ちます。S45C(機械構造用炭素鋼)が焼入れ後に50〜58HRCに達するような高い硬度と比べると、SUM24Lははるかに柔らかく、その分だけ刃物への負担が少なく連続加工に向いています。引張強さに関しては、JIS G 4804のSUM22など硫黄系快削鋼では強度規格が定められていないという点も重要です。つまり引張強さの保証がない材料として設計・選定する必要があります。
規格上の位置づけとしては、SS材(SS400等、JIS G 3101)とは異なり、JIS G 3123「みがき棒鋼」に分類される材料です。SS材が熱間圧延で製造されるのに対し、SUM24Lは冷間引抜・研削・切削といった加工方法で製造されます。これが原因で、外観的に似た棒鋼でも、内部の材質・寸法精度・表面品質に明確な差が生まれます。
| 項目 | SUM24L | SS400(参考) |
|---|---|---|
| JIS規格 | JIS G 4804 | JIS G 3101 |
| 炭素量(C) | 0.15%以下 | 規定なし(自由) |
| 鉛(Pb) | 0.10〜0.35% | なし |
| 硬度 | 約140HB | (参考値)約120HB前後 |
| 強度規格 | なし | 引張強さ400〜510N/mm² |
| 製造方法 | 冷間引抜・研削など | 熱間圧延 |
つまり材質選定の時点で「強度の保証が要るか」が分岐点です。強度保証が求められる部品設計では、SUM24LをSS400の代替として使うことは適切ではありません。材料の規格上の違いを正確に把握することが、設計ミスの予防につながります。
参考:SUM24Lの規格・成分・硬度についての解説(砥石・材質情報サイト)
https://www.toishi.info/sozai/sum/sum24l.html
快削鋼の大きな魅力は、その名の通り「削りやすさ」にあります。この削りやすさを定量的に示す指標が「被削性指数」です。SUM22を基準値100とした場合、一般構造用鋼材のSS400は75〜80程度に留まります。これは「SUM材はSS材に比べて約1.25〜1.30倍の切削速度で加工できる」ことを意味しています。
切削速度が1.3倍になると、実際の現場では何が変わるのでしょうか?たとえばNC旋盤で1日8時間稼働する工場で、SS400を加工していた工程をSUM24Lに切り替えた場合、理論上は約1〜2時間分の加工時間が短縮できる計算になります。月産1万個の量産ラインなら、段取りや工具交換の削減も含めて、生産コストへの影響は無視できない水準です。これは使えそうです。
さらに、SUM24Lは切りくずが細かく砕けやすいという特性を持っています。切りくずの絡まりによる機械停止リスクが低いため、夜間の無人運転・自動化ラインとの相性が特に良い材料です。切粉が長くつながるとチャックや刃物に絡まり、主軸停止や刃物破損につながるトラブルが発生しやすくなりますが、SUM24Lではこうしたリスクを大幅に抑えることができます。
ただし、SUM24Lの被削性が高い理由は、硫化マンガン(MnS)と鉛(Pb)という介在物が鋼の中に「スイカの種」のような形で分散して存在しているからです。これらの介在物が刃先の摩耗を軽減し、切りくずを分断しやすくする役割を果たしています。工具寿命が基本です。切削油の選定や切削速度を最適化することで、工具寿命をさらに延ばすことが可能です。
参考:SS材とSUM材の被削性比較(秋山精鋼)
https://www.ask-akiyama.co.jp/lp/ss_fcs_machinability/
SUM24Lの主な用途は、強靭さをあまり必要としない精密機械部品の量産加工です。具体的には、各種OA機器部品(プリンター・コピー機の内部機構)、モーター軸、測定機器部品、ねじ・ボルト・ナット、シャフト、ローラー、文具のメカ部品、軸・ピンといった小型・精密部品が代表的です。炭素量が0.15%以下と低いため、削りやすく寸法精度を出しやすいという点が精密加工への適性につながっています。
向かない用途があることも覚えておいてください。鉛快削鋼であるSUM24Lは接触疲労強度が低いため、ギアやベアリングのように繰り返し荷重がかかる疲労負荷が大きい部品には適していません。設計段階でこの選定を誤ると、製品の早期摩耗や疲労破壊につながり、納品後のクレーム対応という深刻なリスクへ発展します。
また、SUM24Lは引張強さの規格が定められていない材料であることから、構造部材や荷重を支える用途での使用も避けるべきです。例えば機械フレームのボルト穴付近の補強部品や、大きなトルクが加わるカム部品などは、S45CやSCM435といった機械的性質が明確に保証された鋼種を選ぶのが原則です。結論は「精密・量産・非強度部品」が条件です。
設計段階でSUM24Lの使用可否を判断する際は、部品に要求される機械的性質(引張強さ・疲労限度・硬さ)を事前に確認する工程を設けることが、最もシンプルで確実なリスク対策です。社内の材料選定チェックシートや、加工メーカーとの事前の材質確認フローを整備しておくことで、誤選定による手戻りを防ぐことができます。
参考:快削鋼SUM材の用途・特徴(Metoree SUM24L解説ページ)
https://metoree.com/categories/8204/
SUM24Lの末尾「L」はLead(鉛)の頭文字で、Pb含有量は0.10〜0.35%です。この鉛成分が被削性向上の主役の一つである一方、欧州のRoHS指令(電気電子機器における特定有害物質の使用制限指令)における規制対象物質でもあります。厳しいところですね。
RoHS指令では原則として鉛含有量を0.1wt%以下に抑えることが求められていますが、「鋼合金中の鉛」については適用除外(Annex III)として、鉛含有量が0.35wt%以下の場合に期限付きで使用が認められてきました。この適用除外の期限は延長が繰り返されており、現時点(2027年6月30日まで延長)では流通するSUM24Lは多くがRoHS適合品として扱われています。しかし「期限付き除外」であることには変わりなく、今後の規制改正による対応が求められる可能性は否定できません。
対応が必要な場面は「電気・電子機器向け製品」です。欧州向け輸出品や、国内でもRoHS準拠のグリーン調達を求めるメーカーへの納品案件では、SUM24Lの使用について事前確認が必須です。発注仕様書に「RoHS適合」の文言がある場合、SUM24Lの使用が制限されるケースがあり、これを見落とすと納品後に全品回収・材料変更という事態につながりかねません。
代替材としては、鉛を含まない「鉛フリー快削鋼」が複数のメーカーから提供されています。代表的なものとして秋山精鋼のASK-2600R(SUM24L相当の被削性を鉛ゼロで実現)があり、RoHS対応が求められる現場での採用が進んでいます。SUM22(硫黄のみ、鉛なし)もRoHSⅡ対応の基本選択肢として広く使われています。RoHS規制に対応する材料への切り替えは、SUM22が基本です。
参考:鉛フリー快削鋼ASK-2600R(RoHS対応SUM24L代替材)
https://www.ask-akiyama.co.jp/product/original/ask-2600r/
「削りやすい材料だから表面処理も楽だろう」という思い込みが、SUM24Lのトラブルを招く最大の落とし穴です。快削鋼はめっきメーカーにとって「少し厄介な材料」として知られており、これを知らずに発注すると、納品後のサビ発生や密着不良クレームに直面することがあります。
SUM24Lの中には、被削性を高めるための介在物(硫化マンガンMnSと鉛Pb)が「スイカの種」のような形で分散して含まれています。問題はめっきの前処理工程にあります。前処理では酸洗い(酸エッチング)によって表面の酸化皮膜を除去しますが、このとき硫化マンガンが酸に溶けやすいため、表面に小さな「巣穴」が形成されます。この巣穴がめっき後のサビ発生の起点となり、腐食トラブルを引き起こすのです。痛いですね。
さらに、鉛成分は無電解ニッケルめっき工程に特有の悪影響を与えます。無電解ニッケルめっきは化学的な還元反応を利用しますが、鉛はこのめっき反応を阻害・停止させる効果があるため、部品の端面や鉛濃度が高い部分に「無めっき」(めっきが付かない領域)が発生するリスクがあります。
この問題への対策は、「素材の種類をめっきメーカーに正確に伝える」という一点に集約されます。発注書や仕様書に材質名を明記するだけでなく、「SUM24Lを使用しています」と口頭でも確認することで、前処理条件を素材に合わせて最適化してもらいやすくなります。素材の情報共有が条件です。
参考:快削材SUM24Lのめっき不良の原因と対策(サン工業株式会社)
https://www.sun-kk.co.jp/room/material/8606e42c5219266925f70428c815604a0fa300e6.php
参考:めっき皮膜の密着性改善方法(J-STAGE 表面技術学会)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/58/5/58_5_267/_pdf
SUM24Lと同等または類似した性能を持つ材料は国内外に複数存在しており、状況に応じて適切な相当品・代替材を選べることが、加工コスト削減とリスク管理の両面で重要です。
まず国際的な相当品として、アメリカのAISI 12L14(SAE 12L14)があります。日本のSUM24Lと化学成分上ほぼ同等で、海外仕様の図面にこの規格名が記載されている場合は、SUM24Lで対応可能なケースが多いです。ただし、規格上の厳密な成分範囲に差異がある場合もあるため、精密部品では事前の成分確認が必要です。
国内では、SUM24Lと同一のJIS G 4804規格内でもバリエーションがあります。
材料選定の判断基準は主に3つです。第一に「RoHS規制対応が必要かどうか」、第二に「被削性(加工速度)をどこまで求めるか」、第三に「強度保証が必要かどうか」という視点で整理すると選択がしやすくなります。
なお、SUM24LとSUM23の使い分けで現場がよく迷うのは、「鉛ありと鉛なしで工具寿命はどう変わるか」という点です。鉛入り(SUM24L)のほうが介在物の潤滑効果が高いため、工具摩耗の抑制効果は一般にSUM24L>SUM23となります。環境対応と加工効率のトレードオフを考慮した選択が原則です。コストと工具寿命の観点を総合的に判断し、社内の標準材料規定を見直す際の参考にしてください。
参考:SUM材の種類と規格の違い(JIS規格解説ページ・秋山精鋼)
https://www.ask-akiyama.co.jp/lp/ss_fcs/
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