SUM23は「脆くなるように設計された鋼」なのに、強度が必要な部品に使うと不良品が出ます。
SUM23は、JIS G4804「硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材」に規定された低炭素系快削鋼です。分類上は「低C-S(硫黄)-P(リン)型」に属し、切削性を最優先に設計された鋼種です。
快削鋼全体の中でSUM23がどこに位置するかを整理すると、SUM11・SUM12(低C-S系)→SUM21・SUM22・**SUM23**(低C-S-P系)→SUM22L・SUM23L・SUM24L(低C-S-Pb-P系)という順になります。SUM23はPb(鉛)を含まないため、環境規制への適合性が高い点が特徴です。
JISの規格番号体系も把握しておくと便利です。「SUM」はSteel for Use in Machining(切削加工用鋼)の略とも言われており、続く数字で成分系統が変わります。SUM23の「23」は、同じ系統内のグレードを示す番号です。
規格の重要なポイントが1つあります。JIS G4804では、SUM23を含む低炭素系快削鋼に対して機械的性質(引張強さ・硬さ)の規格値が定められていません。つまり設計図で「SUM23指定」とあっても、引張強さの保証値は図面または注文時に個別に確認が必要です。この点を見落とすと、強度計算上の根拠が崩れる可能性があります。
参考として、冷間引抜加工後の参考値として硬さはHB約120〜160程度とされていますが、これはあくまで目安値です。強度規格が必要な部品にはSUM31以上の中炭素系快削鋼、またはS35C・S45C相当の材料を選定するほうが安全です。
SUM23の材質選定は「切削性が主、強度は副」が基本です。
JIS G4804:2008 硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材の規格全文(kikakurui.com)— SUM23を含む快削鋼の成分規定と規格の全体像が確認できます
SUM23の化学成分(JIS G4804)は以下の通りです。
| 元素 | 規定範囲 |
|------|---------|
| C(炭素) | 0.09% 以下 |
| Mn(マンガン) | 0.75〜1.05% |
| P(リン) | 0.04〜0.09% |
| S(硫黄) | 0.26〜0.35% |
| Pb(鉛) | 添加なし |
炭素量が0.09%以下と非常に低いことが最初のポイントです。炭素が少ないほど鋼は柔らかくなりますが、それだけでは切削性は上がりません。ここで硫黄とリンの役割が重要になります。
硫黄(S)はマンガンと結合してMnS(硫化マンガン)介在物を形成します。このMnSが切削中の応力集中点となり、切りくずを短く分断する働きをします。切りくずが短く切れると、工具への巻きつきが減り、刃先温度が下がり、仕上げ面粗さも改善します。これが快削鋼の基本原理です。
リン(P)は、通常の炭素鋼では「有害元素」として嫌われます。脆性を高め、溶接割れの原因になるからです。しかしSUM23ではその「脆くなる性質」を逆手に取り、あえて0.04〜0.09%添加することで被切削性をさらに高めています。つまり意図的に脆くしているということですね。
マンガン(Mn)は硫黄と反応してMnSを形成する役割を持ちます。硫黄だけでは鉄と結合して粒界偏析を起こしやすいため、Mnを一定量添加してMnSとして安定化させます。この微妙なバランスが切削性を左右する核心部分です。
SUM23の別称として「1215鋼」(AISI規格)と並列で記載されている場合があります。ただし厳密には成分範囲が微妙に異なるため、互換材として使う際には事前のミルシート確認が欠かせません。
SUM材の熱処理対応について(栗山熱処理株式会社)— 浸炭熱処理の可否と、低炭素系SUM材への浸炭窒化処理の適用についてQ&A形式で解説されています
SUM23は工具寿命延長・加工時間短縮・仕上げ面品質向上の3つを同時に実現できる材料です。量産加工・24時間無人運転にも最適な鋼種として、自動旋盤やNC旋盤の現場で広く採用されています。
切削速度については、通常の低炭素鋼(SS400など)と比べて30〜50%高い切削速度が設定できます。送り速度も上げやすく、例えばφ10mmの棒材を旋削する際、SS400なら送り0.1mm/revが標準のところ、SUM23では0.15〜0.2mm/rev程度まで対応できる場合があります。つまりサイクルタイムが大幅に短縮できます。
工具材種の選定にも注意が必要です。JFEスチールの技術資料によると、SUM23の低速切削(切削速度50m/min程度)ではサーメットやセラミックスを使うと表面粗さが著しく悪化する傾向があります。低速域では超硬工具が安定していて、高速域になるとサーメットの優位性が出てきます。切削速度帯に合わせた工具選定が肝心です。
切削油は水溶性・不水溶性どちらも使用できますが、硫黄含有量が多いため不水溶性切削油との相性がよく、MnS介在物との組み合わせで仕上げ面が安定しやすいとされています。
切削加工でSUM23を使う場合に現場でよくある失敗は、「切れが良すぎて工具送りを上げすぎること」です。送りを上げすぎると切りくずの形態が変化し、ロールチップ(带状切りくず)になることがあります。これは工具巻きつきの原因です。切りくず形態を観察しながら条件出しを行うことが原則です。
低炭素硫黄快削鋼の切削後表面粗さに及ぼす各種因子の影響(JFEスチール技術報告)— SUM23の工具材種・切削速度・送り速度が表面粗さに与える影響を実験データで解説
SUM23は「快削鋼」であり、熱処理・溶接・曲げ加工には明確な制約があります。これを知らずに設計に組み込むと、後工程でトラブルが起きます。
🔥 **熱処理について**
SUM23は低炭素鋼(C:0.09%以下)であるため、通常の浸炭焼入れ(浸炭熱処理)は適用しにくい材料です。理由は炭素量が少なすぎて、焼入れによる硬化層が十分に得られないからです。この場合は「浸炭窒化熱処理(浸炭窒化焼入焼戻し)」で対応します。浸炭窒化は窒素も同時に浸透させることで、低炭素でも表面硬化層が形成されます。
実務での浸炭窒化のポイントとして、硬化層深さ0.3mm狙いであれば標準的な処理が適用できますが、0.5mm以上を狙う場合は処理条件の個別調整が必要です。表面硬度はHV600〜700程度が目安です。
⚠️ **溶接について**
SUM23の溶接はリン(P)と硫黄(S)の含有量が高いため、溶接部が割れやすい性質があります。快削鋼全般としても「基本的に溶接は想定外の用途」です。溶接を必要とする部品設計にはSUM23を選ばないことが原則です。どうしても溶接が必要な場合は、予熱・入熱管理・溶接後熱処理を組み合わせた設計が求められ、専門業者への相談が必須となります。
🔧 **曲げ加工・塑性加工について**
SUM23はカシメ加工には条件次第で対応できます。ただし曲げ加工は、リンによる脆性の影響で割れが発生しやすく、基本的には不向きです。プレスでの穴加工やシェービングは可能ですが、大きな塑性変形を伴う加工は材料の脆性破壊リスクがあります。
まとめると、SUM23は「切る加工(旋削・穴あけ・フライス)」に特化した材料と理解するのが現場の基本です。
SUM23が現在の金属加工業界で再び注目されている理由の一つが、鉛(Pb)を含まない鉛フリー快削鋼であることです。これは環境規制の厳格化と直結しています。
欧州RoHS指令では電気・電子機器に使用される部品について鉛の含有量を重量比0.1%以下に制限しています。同様にELV指令(廃自動車指令)では自動車部品の鉛使用が制限されており、年々適用除外の範囲が縮小されています。SUM24L(鉛入り快削鋼)を長年使用してきた現場では、RoHS対応のためにSUM23やSUM22への切り替えが進んでいます。
鉛フリー材への切り替えで注意すべき点が3つあります。
- **加工性の低下**:SUM24LからSUM23に切り替えると、切削性が若干低下します。刃具の耐久性が落ち、サイクルタイムが延びる可能性があります。試作加工で条件出しを行い、量産前に検証することが重要です。
- **コスト変化**:鉛レス材は一般に材料費がやや高く、加工コストも変化します。コストアップになる場合が多いと考えて見積もり段階から織り込むことが必要です。
- **設備の切り替え**:鉛入り材と鉛フリー材を同一設備で加工すると、切粉が混入しRoHS規制違反になるリスクがあります。専用機化・専用ラインの整備が必要なケースもあり、納期や稼働計画への影響も事前に確認が必要です。
材料変更は4M変更(Man・Machine・Material・Method)に該当するため、顧客承認・RoHS適合宣言書の提出・QC工程表の更新といった書類手続きも発生します。切り替えを焦ると承認手続きが漏れてトラブルになります。計画的な対応が条件です。
インサートナットの鉛レス化対応ステップ(Prostech)— RoHS・ELV指令への対応実務ステップを6段階で解説。SUM23が鉛フリー代替材として紹介されています
「SUM23と類似材質との違いを現場で即判断できること」が選材ミスを防ぐ最短ルートです。以下に主要鋼種を整理します。
| 鋼種 | C(炭素) | S(硫黄) | P(リン) | Pb(鉛) | 特徴 |
|------|----------|----------|----------|---------|------|
| SUM21 | 0.13%以下 | 0.16〜0.23% | 0.07〜0.12% | なし | 最もシンプルなS-P系。切削性は標準的 |
| SUM22 | 0.24〜0.33% | 0.24〜0.33% | 0.07〜0.12% | なし | 中程度の炭素量。鉛フリーのバランス材 |
| **SUM23** | **0.09%以下** | **0.26〜0.35%** | **0.04〜0.09%** | **なし** | **低C・高S・中P。鉛フリーで最も切削性重視** |
| SUM24L | 0.15%以下 | 0.26〜0.35%(同等) | ― | 0.10〜0.35% | 鉛入り。最高の切削性だがRoHS規制対象 |
SUM23とSUM24Lは硫黄量の範囲がほぼ同じです。違いは鉛の有無だけです。鉛がある分SUM24Lのほうが切削性は高いとされていますが、RoHS対応製品には使用できません。RoHS対応が必要な現場では、SUM23が実質的なSUM24Lの代替材になります。
SUM22との違いは炭素量です。SUM22(C:0.24〜0.33%)はSUM23(C:0.09%以下)より炭素が多いため、強度は高めです。切削性はやや落ちますが、強度と切削性のバランスを求める部品にはSUM22が向きます。
下村特殊精工の資料によると、SUM23に高S・微量元素を添加した改良材は「SUM24L相当の切削加工性」を実現しているとされています。鉛ゼロで鉛入り快削鋼と同等の切削性が得られる可能性があり、これは使えそうです。
選材の原則は「強度要件がなく切削性最優先 → SUM23(鉛フリー)」「強度も必要 → SUM31・SUM41以上の中炭素系」「最高切削性でRoHS不要 → SUM24L」の3択で判断するとシンプルです。
快削鋼および合金鋼 材質一覧(下村特殊精工株式会社)— SUM23の高S改良材(SUM24L相当品)の情報を含む、快削鋼各種の対照表が参照できます
十分な情報が収集できました。記事を生成します。

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