超硬リーマを一流メーカーから選んでも、下穴の設定を誤ると精度は出ません。
超硬リーマとは、ドリルなどであらかじめ開けた下穴を、所定の寸法・精度・面粗度に仕上げるための切削工具です。リーマ単体で穴を開けることはできず、あくまでも「仕上げ専用」として使われます。これが基本です。
加工後に求められる精度はかなり厳格で、一般的に穴内径はH7〜H9等級(±0.01mm以下)、表面粗さはRz 3.2〜12.5μm、真円度は10μm以下が目安とされています。超硬ドリルだけで仕上げた穴と比較すると、穴径のバラつきが超硬ドリルで最大20μmであるのに対し、超硬リーマを使った場合はわずか2μm程度に抑えられます。数字で見るとその差は歴然ですね。
超硬(タングステンカーバイドを主成分とする焼結体)という素材は、硬度がHRA90〜94前後と非常に高く、ハイス工具(HRc 60〜68前後)と比べると格段に硬い反面、じん性(粘り強さ)は低い性質があります。そのため衝撃や断続切削に対して欠けやすいという側面を持っています。リーマは仕上げ工具なので、基本的に安定した連続切削で使用されますが、この性質を知っておくことは工具選択の根拠になります。
超硬リーマは、外周溝を浅くして「ウェブ厚」(工具中心から溝底までの寸法)を大きく確保する設計になっています。ウェブ厚が大きいほど工具剛性が高まり、精度の安定につながります。ドリルが多くの切りくずを一気に排出するために溝を大きくとるのとは逆の発想です。
また超硬リーマでは、リーマの回転方向やねじれ方向の設定も重要です。一般的には「右刃右ねじれ」か「右刃直刃」が標準的な構成で、「右刃左ねじれ」は穴の拡大代が小さい反面、切削性が下がります。仕上がり寸法が特に厳しい場合のみ「右刃左ねじれ」が選ばれる場合があります。
超硬リーマは構造上の違いから大きく6種類に分けられます。それぞれ適した用途があるため、加工条件に合った種類を把握することが、正しいメーカー選びの第一歩になります。
まず最も広く使われるのが**ストレートリーマ(マシンリーマ・チャッキングリーマ)**です。加工現場でのスタンダードな工具であり、多くのメーカーがラインナップを揃えています。食い付き角は一般的に45°で設定されており、スラスト抵抗・切削トルク・面粗さのバランスが最もよい角度として広く採用されています。
次に**スパイラルリーマ(ブローチリーマ・スキルリーマ)**があります。刃がねじれているため切削抵抗が低減され、切りくずが穴から排出されやすい特徴を持ちます。量産ラインでのびびり抑制に有効です。日研工作所のブローチリーマは、ドリルと同程度の切削速度(送り条件)でも使用可能な点が特徴のひとつです。
**不等分割リーマ**は刃の間隔をあえて不均等にした設計です。加工中のびびり振動を抑制し、特に高い真円度が求められる加工に適します。3枚刃リーマの場合、下穴管理が適切であれば真円度2μmの仕上げが可能というデータもあります。これは使えそうです。
**段付きリーマ**は複数径の下穴を1本の工具で一工程に仕上げられる工具です。段取り時間と工具費の両方を削減できるため、多品種量産に向いています。ただし一般的に特注設計になるため、試作段階よりも量産ラインでの活用が中心です。
**ロウ付けリーマ**は、φ20以上の大径加工で工具コストを抑えたい場面で使われます。母材(SCM440等)に切削に必要な刃部のみ超硬材料をろう付けしている構造で、全体を超硬にするよりも工具価格を大幅に抑えられます。
最後が**シェルリーマ**です。大径加工(φ70以上など)向けで、刃部とシャンクが別々になっています。岡崎精工製のφ70シェルリーマは市場価格で10万円前後になることもあり、なかなか値が張りますね。
| 種類 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| ストレートリーマ | 通し穴・汎用加工 | 最もスタンダード。食い付き角45°が標準 |
| スパイラルリーマ | 量産ライン・ステンレス加工 | 切削抵抗低減、びびり抑制効果 |
| 不等分割リーマ | 高真円度加工 | 振動抑制、真円度2μm達成も可能 |
| 段付きリーマ | 多段穴の量産 | 工程集約・工具費削減 |
| ロウ付けリーマ | φ20以上の大径加工 | コスト抑制、刃部のみ超硬材 |
| シェルリーマ | 大径(φ70以上)加工 | 刃部・シャンク分離構造 |
国内で超硬リーマを扱うメーカー(代理店・商社含む)は36社以上確認されています。切削工具ユーザー向けの独立系情報サイト「タクミセンパイ」が2020〜2024年に実施したアンケート(19名の切削工具ユーザーが回答)によると、リーマメーカーのユーザーランキングTOP5は以下のとおりです。
メーカーを選ぶ際に「有名な大手総合メーカーなら何でも揃う」と思いがちですが、リーマに限っては専業メーカーのエフ・ピー・ツールが総合ポイントで103ptと、2位の栄工舎(60pt)に約1.7倍の差をつけています。つまり、専業メーカーが強いということですね。
海外メーカーでは、サンドビック(スウェーデン)やグーリング(ドイツ)、マパール(ドイツ)なども国内で入手可能です。これらは難削材向けや超高精度加工向けのラインナップが充実しており、航空機・医療部品分野での採用が多い傾向があります。
リーマメーカー一覧として国内36社の全容を確認したい場合は、下記のページが参考になります。
タクミセンパイによるリーマメーカー36社一覧とユーザーランキングが掲載されたページです。
リーマメーカー36社一覧とランキング – タクミセンパイ
リーマの精度は工具そのものの品質だけでは決まりません。「下穴の取り代設定」と「コーティング選択」の2点が精度に直結します。
**取り代(切削しろ)の設定**について、一般的な目安は径で0.05〜0.3mmです。タンガロイの技術資料では「特に指定がない場合はφ0.2を推奨」としています。この範囲が鉄則です。
取り代が少なすぎると(下穴が大きすぎると)、リーマの切れ刃が穴の内面に十分当たらず精度不良を起こします。逆に取り代が多すぎると切削抵抗が増大し、熱損傷や切りくずの噛み込みによって仕上げ面が荒れてしまいます。0.3mmを超える取り代は原則避けるのが原則です。
切削速度についても注意が必要で、三菱マテリアルの技術資料によると「切削速度を20%上げると工具寿命は約1/2、50%上げると約1/5まで低下する」というデータがあります。超硬リーマを使うからといって無闇に切削速度を上げると、思わぬコスト増につながります。痛いですね。
**コーティングの選び方**については、主に以下の4種類を用途で使い分けます。
コーティングの選択ミスは工具の早期摩耗につながるため、まず被削材を確認し、次に切削速度条件を把握してからコーティング種類を選ぶ流れで判断してください。
OSGのリーマに関する技術情報(PDF)では、被削材ごとの推奨コーティングと切削条件が掲載されており、選定の参考になります。
OSG リーマ 技術資料(PDF)
超硬リーマのメーカーを比較するとき、多くの現場では「精度」「ラインナップ」「価格」の3点で判断します。しかし、見落とされがちな重要な要素が「再研磨への対応」です。これは意外ですね。
超硬リーマはハイスリーマと比べて工具本体の購入単価が高めです。φ10程度の超硬ストレートリーマで1本あたり数千円〜1万円前後になる場合もあります。一方でハイスリーマは比較的安価ですが、耐摩耗性の差から工具寿命では超硬が大きく上回ります。
ただし超硬リーマはそのまま廃棄するとコスト面で不利になりやすいため、再研磨に対応しているかどうかを購入前に確認しておくことが重要です。
再研磨を行う場合にはひとつ注意点があります。リーマにはバックテーパー(先端から根元に向かってごくわずかに径が小さくなる設計)が施されているため、先端を研磨すると仕上がり径がわずかに小さくなります。これを知らずに再研磨後のリーマをそのまま使うと、径の狂いによる不良が発生する可能性があります。再研磨後は必ず径を測定してから使用する、が条件です。
エフ・ピー・ツールのようなリーマ専業メーカーでは、再研磨サービスを提供しているケースがあります。ハイスリーマとは異なり、超硬リーマの再研磨は砥石の種類や研磨角度の管理が難しく、専業メーカーや再研磨専門業者への依頼が安心です。
また、リーマ専業でないメーカー(総合切削工具メーカーや汎用工具商社)から購入した場合、再研磨の対応範囲が限られることがあります。量産ラインで同一径のリーマを複数本ローテーションしながら使う場合は、再研磨まで含めたランニングコストをメーカー選定時に確認しておくことが現実的です。
再研磨に特化したサービスを提供している専門業者の技術情報や考え方は、下記ページが参考になります。
リーマ加工の流れと穴径精度を上げる方法 – 再研磨.com
工具メーカーを決めた後も、現場での加工条件設定を誤ると品質問題が発生します。よくあるトラブルと対策を具体的に確認しておきましょう。
**穴径の拡大(オーバーサイズ)**は最も多いトラブルです。原因として多いのは、①取り代が多すぎる、②工具の振れが大きい、③切削速度が高すぎる、の3点です。工具取り付け時の振れは円周振れで5μm以下に抑えることが一般的な推奨値です。振れが大きいと仕上がり径が広がるだけでなく、工具の偏摩耗も進みやすくなります。
**穴径の縮小(アンダーサイズ)**も起きることがあります。主な原因は、①取り代が少なすぎる(下穴が大きすぎる)、②工具の摩耗進行、③右刃左ねじれ工具を使用している、などです。特に右刃左ねじれのリーマは構造上拡大代が小さいため、ギリギリの公差を狙う加工では注意が必要です。
**面粗度の悪化**は切削液の供給不足や切りくずの噛み込みが原因であることが多いです。特に止まり穴加工では切りくずの逃げ場が少なく、切りくずが穴壁面を傷つけるトラブルが起きがちです。止まり穴の場合は下穴を2mm程度深めに設定して切りくずの逃げ場を作る、あるいは内部給油型のリーマを選定することが対策になります。
**びびり(振動)**は工具剛性の不足や加工条件の問題で発生します。不等分割リーマに切り替えると刃の間隔が不均等になり、固有振動数を分散させてびびりを抑制できます。また、ホルダー側の剛性も影響するため、コレットチャックの状態確認も重要です。
切削条件の判断に迷ったとき、リーマ加工全般の原因と対策をまとめたページとして、下記が参考になります。
【徹底解説】リーマ加工とは?リーマの特徴とトラブル対策を紹介 – monoto
加工トラブルが続く場合は、工具そのものよりも「下穴の精度と取り代設定」「ホルダーの振れ」「切削液の供給状態」の順に見直すのが効率的です。問題の8割はここで解決することが多いです。超硬リーマは精密工具のため、機械・治具・条件が揃って初めてポテンシャルを発揮します。工具だけ変えても改善しない、という失敗は現場でよく起きますので、この順番を覚えておけばOKです。
十分な情報が収集できました。記事を作成します。

エフ・ピー・ツール F.P.TOOL(エフ・ピー・ツール) 超硬リーマ μ(ミュー)リーマ 超精密加工用 CM 1.51mm CM1.510