外観が美しいアルミ押出材でも、金型成形だから寸法は±0.5mm以上ズレることがあります。
アルミニウム押出材(押出形材)とは、加熱したアルミニウム合金のビレット(円柱状の鋳塊)をダイスと呼ばれる金型の穴から高圧で押し出し、任意の断面形状を持つ長尺材を連続的に作る加工技術のことです。わかりやすく言えば、「工業用ところてん」です。ところてんを突き出す「天突き」の原理と同じメカニズムで、アルミニウムが金型の穴を通ることで形状が決まります。
一般的には約400〜500℃に加熱したビレットを押出機のコンテナ(シリンダー状の容器)に挿入し、後方から数百〜数千トンの圧力をかけてダイスから押し出します。これは「直接押出法(フォワード押出)」と呼ばれる最も一般的な方式で、断面形状がそのまま一定の長さの棒状製品として出てきます。つまり断面形状が原則です。
この製法の最大の特長は、1つのダイスを用意するだけで、L字・コの字・中空形状・リブ付き形状など複雑な断面を一工程で量産できる点にあります。切削加工でゼロから削り出すよりも材料ロスが少なく、製造コストを大幅に抑えられます。これは使えそうです。
押出後の素材は通常3〜6mに切断され、熱処理(時効処理)を経て最終的な強度が与えられます。設計の自由度と量産性の高さから、現代の金属加工においてアルミ押出材は欠かせない素材の一つです。
参考:アルミ押出材の製造プロセス(ところてん方式の解説)
アルミ押出材は「ところてん」 | アルミオーダー型材のユニテック
製造工程は大きく分けて「加熱→押出→冷却・矯正→切断→熱処理」の5段階です。それぞれを順に理解しておくと、材料の特性や公差への理解が深まります。
① ビレットの切断・加熱
出発点となるビレットは円柱形の鋳塊で、長尺のものは約5,800mmで1本あたり重さ500kgにもなります。これを必要な長さにカットし、押出機のヒーターで約480℃まで加熱します。アルミは鉄と異なり、加熱しても色が変わらないため、作業者は目視ではなく温度計測で管理します。
② 押出(ダイス成形)
加熱したビレットをコンテナに挿入し、大型のプレスラムで押し込みます。素材がダイスの穴を通過した瞬間から、形材が連続して押し出されてきます。押出比(元断面積÷製品断面積)はアルミニウムで30〜500程度とされており、この比率が大きいほど複雑な細部まで金型形状が再現されます。押出後の形材は、30〜50mの連続した棒状になります。
③ 冷却・矯正(ストレッチャー処理)
押し出された形材はファンで冷却されますが、断面形状の違いにより冷え方が不均一になるため、歪みや反りが生じます。これをストレッチャーという装置で両端を掴んで引っ張り、真直に矯正します。引っ張りが不足すると歪みが残り、過剰に引っ張ると形材が細くなるため、熟練した技術が要求される工程です。これが精度に影響します。
④ 切断・熱処理(時効処理)
矯正後は所定の長さに切断し、テンパー炉に入れて熱処理を行います。A6063ではT5処理(押出後に人工時効)を施すのが一般的で、200℃前後・2時間程度の加熱によって強度が向上します。この工程を経ることで、押出直後より大幅に硬く・強い材料になります。熱処理は必須です。
| 工程 | 主な作業 | ポイント |
|---|---|---|
| 加熱 | ビレットを約480℃に加熱 | 色変化がないため温度計測が必須 |
| 押出 | ダイスから高圧で押し出す | 押出比30〜500で複雑形状を一体成形 |
| 冷却・矯正 | ファン冷却+ストレッチャー引張 | 過不足で歪残り・細りが発生 |
| 切断 | 通常3〜6mに切断 | 歩留まりを考慮した長さ設定が重要 |
| 熱処理 | T5/T6処理(時効硬化) | 強度を最大240MPa近くまで向上 |
参考:アルミ押出材製造工程と品質管理の詳細(SUS株式会社 技術資料)
アルミ押出材の基本を再確認(PDF) | SUS FA MAGAZINE
アルミ押出材に使われる合金は種類が豊富ですが、押出加工との相性や用途目的によって最適な選択が変わります。主要な3つを理解しておくと材料選定の判断が速くなります。
A6063(Al-Mg-Si系):押出材の定番
押出用合金の代表格です。マグネシウム(Mg)とシリコン(Si)を主な添加元素とし、複雑な断面形状でも高い寸法精度で成形できます。T5処理後の引張強さは約185MPa、T6処理後は約240MPaに達します。耐食性・表面処理性(アルマイト処理との相性)にも優れており、建築用サッシ、家電筐体、FA機器フレームに広く使われています。強度よりも成形性・外観品質を重視する場面ではA6063が原則です。
A6061(Al-Mg-Si系、Cu添加):高強度が必要な構造材
A6063より銅(Cu)の添加量を増やし、強度を引き上げた合金です。T6処理後の引張強さは約310MPaに達し、A6063より約30%高い水準になります。構造部品・自動車ボディ部材・工業機械のフレームなど、強度が優先される場面で採用されます。ただし押出加工性はA6063より劣り、複雑な中空断面の成形は難しくなります。
A7075(Al-Zn-Mg-Cu系):最高強度合金
「超々ジュラルミン」として知られ、日本で開発されたアルミ合金のなかで最も高い強度を持ちます。T6処理後の引張強さは500MPaを超えることがあり、航空機・スポーツ用品(自転車フレーム、ゴルフシャフトなど)に使用されます。ただし耐食性はA6063に比べて大幅に劣り、厳しい腐食環境では防食処理が必要です。また押出加工性はさらに低いため、得意な形状に制約があります。
参考:A6063・A6061の特性比較と選び方(ミスミ技術解説)
A6063アルミ合金を基礎から学び直す | meviy ミスミ
多くの金属加工担当者が「金型で成形しているから寸法精度は高い」と思い込みがちですが、実はアルミ押出材の寸法公差はそれほど厳しくありません。これが設計トラブルの温床になることがあります。意外ですね。
JIS H4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)によると、断面寸法の許容差は一般に±0.1mm〜±0.5mmの範囲で、外接円サイズや断面形状によって変わります。さらに厄介なのが「曲がり・平らさ・ねじれ」の許容差で、外接円38mm超300mm以下の特殊級では、曲がりの許容差は「1×L/1000以下」と規定されています。つまり全長2000mmの形材なら最大2mm(はがきの短辺の約1/7)の曲がりが許容範囲内です。
実際には大半の製品が0.5mm以内には収まっていますが、数%レベルでこれを超えるものが存在します。設計で両面をぴったり突き当てる設計にしてしまうと、「入らない」「ガタが大きい」というトラブルが現場で起きます。
設計時のポイントは「公差を逃がす設計」にすることです。具体的には、片側面を基準として突き当て、反対面は調整式にする方法が効果的です。また、要求精度が0.5mm以上の場合は、定盤とすきまゲージを使った簡易検査・選別が、機械加工と比べて格段にコスト安となります。公差の逃がし方が条件です。
高精度が必要な場合は、アルミ押出材メーカーや加工業者と設計初期段階から公差要求を共有しておくと、後工程でのコスト増大や手戻りを防げます。
参考:アルミフレームの寸法公差とJIS H4100の読み方(alfaframe 技術解説)
【まめ知識 第39回】アルミフレームの精度を理解した設計 | alfaframe
アルミ押出材の活躍するフィールドは非常に広く、建築・輸送・電子機器・産業機器まで多岐にわたります。さらにあまり語られないのが、そのリサイクル性がもたらすコスト上の優位性です。これも重要なポイントです。
用途分野の広がり
建築分野では窓枠・カーテンウォール・手すり・扉枠などに大量使用されています。自動車・鉄道分野では、車体骨格材・バンパービーム・ドアビームなどの構造部材として、鋼材からの置き換えが進んでいます。アルミ押出材はスチール製に比べて最大70%の軽量化が実現でき、燃費改善・電費改善に直結します。電子機器ではヒートシンクや筐体フレームとして、放熱性と軽量性を同時に活かした設計が可能です。
リサイクルによる経済的・環境的メリット
アルミニウムのリサイクルに必要なエネルギーは、ボーキサイトから一次地金を精錬する場合のわずか約3%です。この数字は驚異的です。つまり、スクラップや切粉を再生地金として活用すれば、新地金調達コストを大幅に削減できる余地があります。品質面でも再生地金は新地金とほぼ同等の特性を維持できます。
日本国内でもアルミのリサイクル取り組みは加速しており、押出形材メーカーのなかにはリサイクル材の配合比率を2012年の3%から2024年に59%まで引き上げた事例もあります。サプライチェーン全体でのCO₂削減要求が高まる現在、素材段階からリサイクル材を選択することは、コスト削減と環境対応の両立につながります。
参考:アルミリサイクルのエネルギー効率とコスト優位性(LIXIL脱炭素記事)
「無駄にしない精神」が生んだ再生アルミニウム | LIXIL
参考:アルミ押出材の用途分野と合金選定(UACJ自動車向け技術解説)
自動車用アルミ合金押出製品(形材) | UACJ技術専門サイト

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