外観がきれいに仕上がっても、曲げ試験で割れた瞬間に不合格になります。

溶接曲げ試験を語る上で必ず登場するのが「JIS Z3122」です。正式名称は「突合せ溶接継手の曲げ試験方法」といい、2013年に改正された規格です。2019年の法改正以降は「日本産業規格(JIS)」として読み替えられています。
この規格は、金属材料の突合せ溶接継手およびクラッドの突合せ溶接継手の曲げ試験方法を細かく規定しています。対象は幅広く、摩擦圧接・摩擦かくはん接合・拡散接合なども含む「あらゆる溶接で作られた突合せ継手を持つ全ての金属製品」に適用できます。つまり、鋼だけでなくアルミ、チタン、ステンレス鋼など様々な金属に対応しています。
JIS Z3122は、国際規格である「ISO 5173:2009」をベースに、技術的内容を一部変更して作成されています。試験温度については「特に規定がない限り10〜35℃の範囲」とされており、厳格な温度管理が必要な場合は「23±5℃」での試験が求められます。日常の工場内では室温での試験が基本です。
また、JIS Z3122はあくまで「試験方法」を定める規格であり、溶接技能者の合否判定基準については「JIS Z3801(手溶接技術検定)」「JIS Z3841(半自動溶接技術検定)」などの別規格がそれぞれ定めています。規格の使い分けを正確に理解することが重要です。
JIS Z3122が引用する主な規格には「JIS Z2248(金属材料曲げ試験方法)」「JIS G0202(鉄鋼用語・試験)」「JIS Z3001(溶接用語)」などがあります。曲げ試験機そのものの操作や一般的な金属材料の曲げ方法については、JIS Z2248を参照する形になっています。
なお、かつて存在した「JIS Z3123(突合せ溶接継手の自由曲げ試験方法)」はすでに廃止されており、現在はJIS Z2248で代用されています。過去の規格と混同しないよう注意が必要です。
JIS Z3122:2013 突合せ溶接継手の曲げ試験方法(kikakurui)— 規格の全文が確認できる参考リンクです。試験片の形状・寸法や試験方法の詳細が記載されています。
曲げ試験には大きく分けて「表曲げ(TFBB)」「裏曲げ(TRBB)」「側曲げ(SBB)」の3種類があります。それぞれ用途と目的が異なります。
表曲げ試験(TFBB)は、溶接の幅が広い側(溶接が最初に施工された側)を試験面として外側に向けて曲げる試験です。主に溶接表面の融合状態や、表側の欠陥の有無を確認する目的で実施されます。
裏曲げ試験(TRBB)は、表曲げとは逆に、溶接の裏側を試験面として外側に向けて曲げます。裏波溶接の品質、初層の溶け込みが確保されているかどうかを確認するのに最も有効な試験です。現場の統計では、不合格になる原因として「裏曲げにおける裏波の溶け込み不良」が最も多いとされています。
側曲げ試験(SBB)は、溶接継手の横断面を試験面として曲げる方法で、表曲げや裏曲げの試験機の能力を超えるような厚肉材(板厚が厚い場合)に使用されます。JIS Z3122では、継手の厚さが40mmを超えるとき、側曲げ試験片を分割することも許されています。
試験を行う際の選択基準として、板の場合は試験片の幅bを「b≧4ts(試験片厚さの4倍以上)」と規定されています。管の場合は外径Dに応じて異なり、外径D≦50mmなら「b≧t+0.1D(最小8mm)」、外径D>50mmなら「b≧t+0.05D(最小8mm、40mm以下が望ましい)」です。これは数値だけではわかりにくいですが、50mmというのはちょうど手のひらの横幅くらいのサイズ感です。
また、縦曲げ試験片(LFBB・LRBB)というものも規格上は存在します。溶接軸に平行に採取した試験片を使って曲げる方法で、通常の横方向曲げとは異なる評価が可能です。ただし、JIS溶接技能者の一般的な検定試験では縦曲げよりも横方向の表曲げ・裏曲げが主流です。
試験面の特定が難しい場合については、規格上「受渡当事者が定義する」とされており、発注者と製造者の間で取り決めることが認められています。
側曲げ試験の解説(タイショク鋼・耐熱鋼加工)— 側曲げ試験が必要になる厚肉材の条件や試験の特徴について説明されています。
JIS溶接技術検定における曲げ試験の判定基準は、JIS Z3122を引用した形で明確に4つの項目が規定されています。これは要注意です。
| 項番 | 不合格の条件 |
|------|------------|
| ① | 3.0mmを超える割れがある場合 |
| ② | 3.0mm以下の割れの合計長さが7mmを超える場合 |
| ③ | ブローホールおよび割れの合計数が10個を超える場合 |
| ④ | アンダーカット・溶込み不良・スラグ巻き込み等が著しい場合 |
判定の対象となるのは「曲げられた試験片の裏面、側面およびりょうの丸み部(面取り)を除く外面」です。ただし、アンダーカット内部の割れは判定対象とするが、熱影響部(HAZ)の割れは対象外とされます。また、肉眼では観察しにくい0.3mm未満の不完全部についても判定対象外です。
さらに重要な点として、ブローホールと割れが連続している場合は「ブローホールを含めて連続した割れの長さ」としてみなします。つまり、ブローホールから割れが伸びている状態は、そのブローホール径も割れ長さに加算されます。これは意外と見落とされがちです。
不合格になる原因で最も多いのが「裏曲げにおける裏波の溶け込み不良」です。表面のビードが整っていても、初層の裏側で溶け込みが足りていないと曲げた瞬間に割れが生じます。その次に多いのが「アンダーカットからの割れへの進展」と「ブローホール・溶け込み不良の複合欠陥による割れ」です。
⚠️ 2018年のJIS改正では、判定対象の範囲が「外面」から「裏面・側面・りょうの丸み部を除く外面」へと変更されました。この改正前後で判定基準の解釈が変わっているため、古い情報で勉強している場合は注意が必要です。
JIS溶接試験 曲げ試験不合格になる溶接とは?実例写真付き(40挑戦者.com)— 割れの実例写真とともに、不合格パターンがわかりやすく解説されています。
試験片の採取位置は、曲げ試験の合否に直結する非常に重要な要素です。ここを誤解すると、実際の試験でどこを重点的に溶接すべきかの判断を間違えます。
JIS Z3122では、突合せ溶接の横方向曲げ試験において「試験片は溶接継手から溶接軸と直角方向に、かつ加工後に溶接軸が試験片の中央または試験に適した位置になるように採取する」と規定されています。検定試験では、試験材に受験番号の刻印が事前に打刻されており、その刻印が見える向きを基準にして表曲げ・裏曲げの採取位置が決まります。
薄板・中板の場合、クレータ側が「裏曲げ試験」となります。横向き溶接・縦向き溶接でも同様です。つまり溶接の終わり側(クレータ処理した側)が裏曲げ試験の採取位置になるわけです。
重要な実務的ポイントがあります。採取位置さえ正確に溶接できていれば、採取位置以外の部分に多少の不具合があっても曲げ試験の合否には影響しません。逆に言えば「表曲げの採取箇所は表面を、裏曲げの採取箇所は裏波を、それぞれ確実に仕上げること」が合格への近道です。
試験片の表面仕上げについては、余盛溶接金属は原則として全て削除する必要があります。ただし「押しジグの反対側の小口径管の内側の裏波ビードはそのまま残してもよい」という例外規定があります。また、仕上げの最終段階は機械加工(研削を含む)とし、試験面に横方向の引っかき傷や切欠きがあってはなりません。
試験片の厚さについては、試験材厚さtが10mm以下の場合は試験材の厚さをそのまま試験片厚さとします。10mmを超える場合は、試験面の反対側から機械加工により10±0.5mmまで減厚してもよいとされています。この10mmという厚さは、だいたい1円玉の直径(約20mm)の半分のイメージです。
なお、鋼の場合、板厚が8mmを超えると試験片採取時にシャーリングを使ってはならないとされています。熱切断を使う場合は、試験片から3mm以上離れた位置で切断することが求められます。
JIS溶接技術検定の改正ポイント解説(防熱・防音技術ガイド)— 余盛幅の上限値変更(50mm→38mm)や試験片採取位置の改正内容など、2018年改正の重要ポイントが詳しく記載されています。
曲げ試験で実際に合格率を上げるためには、判定基準の暗記だけでなく「なぜ割れるのか」を理解した施工が不可欠です。
まず開先部の溶け込みが浅いと、曲げたときに融合境界面から割れが発生します。特に初層(1パス目)の溶接電流が低すぎると、溶け込みが不十分なまま固まってしまいます。裏当て金がある試験種目(A・SA系)では200A以上を目安に1パス目を施工することが推奨されます。
スラグ巻き込みも割れの原因になります。被覆アーク溶接では、各パスのスラグを丁寧に除去してから次のパスを置くことが基本です。スラグが残ったまま重ね溶接すると、融合不良やスラグ巻き込みが生じ、曲げ試験で欠陥として現れます。
アーク長は短く保つことが重要です。アーク長が長くなると溶接部へのシールドが不十分になり、ブローホール発生のリスクが高まります。ブローホールの直径が3mm以下でも、10個を超えれば不合格です。これは思っているより厳しい基準です。
プールをアークより先行させないことも、裏波溶接において特に大切です。プールがアークより前に進んでしまうと、溶け込みが確保できず裏曲げで割れの原因になります。溶接速度とアークの位置関係を常に意識してください。
溶接再開時のビード継ぎも注意が必要です。アークスタート部分はブローホールや気孔欠陥が発生しやすい箇所です。特に、補修溶接を行う場合は曲げ試験採取範囲内にアークスタート部やクレータ部が残らないよう注意します。
🔧 合格するための施工チェックリスト
- ✅ 開先部(特に1パス目)の溶け込みを十分に確保する
- ✅ 溶接電流は裏当て金ありの1パス目で200A以上を目安にする
- ✅ 各パスのスラグを完全除去してから次のパスを置く
- ✅ アーク長を短く保ち、ブローホールの発生を防ぐ
- ✅ 裏波溶接ではプールをアークより先行させない
- ✅ 試験片採取範囲内にビード継ぎ部を置かない
- ✅ アンダーカットは最小化する(割れの起点になる)
外観がきれいに見えても、内部の溶け込みが条件です。「外観合格=曲げ試験合格」ではない点を、実務で常に意識することが大切です。
日本溶接協会 溶接技能者資格制度の概要(JWES公式)— JIS・WES各規格に基づく資格の種類、評価試験の内容、サーベイランスや再評価の手続きが網羅されています。
JIS溶接技能者の資格を取得した後も、曲げ試験との関わりは続きます。資格を維持するためには、定期的な更新手続きが必要です。
取得後の「適格性証明書」の有効期間は1年間です。この証明書を継続するには、有効期間が終了する前の3か月以内に「サーベイランス」の申請を行う必要があります。サーベイランスとは「引き続き当該溶接業務に従事していること」を確認する審査です。この申請は2回行います。
3年が経過し(サーベイランスを2回完了)、資格をさらに更新しようとする場合は「再評価試験(実技試験)」を受験しなければなりません。受験期間は有効期間満了の8か月前から2か月前までの間です。つまり、3年ごとに曲げ試験を含む実技試験で再び技量を証明することが求められます。資格は一度取れば終わりではないのです。
再評価試験に不合格になっても、有効期限の8か月前から受験できるため、期間中に再受験して合格すれば資格を継続できます。期間内に合格できれば現在の有効期間に連続して資格が認証される仕組みです。
JIS溶接技能者資格は「民間資格」ですが、鉄骨工事や圧力容器・配管などの製作にあたり、法規や発注仕様書などで取得・維持が要求されるケースが多くあります。例えば、土木工事の共通仕様書や建設関係の設計図書では「JIS Z3801の検定試験に合格した者」が現場溶接の要件として明記されていることが珍しくありません。資格の失効は受注機会の損失に直結します。
毎年の更新手続きを忘れないためにも、申請期限をスマートフォンのカレンダーやリマインダーに登録しておくと安心です。日本溶接協会のオンライン申請システム「e-Weld」を活用すれば、WEB上でサーベイランス申請が完結します。
日本溶接協会 サーベイランス・再認証審査(JWES公式)— サーベイランスの申請方法、有効期間の仕組み、再評価試験の受験期間などが解説されています。

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