「SUS304を使えば間違いない」と考える人が多いですが、それで年間40万円損している現場もあります。
SUS302とSUS304の基本成分は似ていますが、決定的な違いがあります。302は炭素量が約0.15%、304は約0.08%。このわずかな差が機械的強度に直結します。炭素が多いほど硬度が高くなり、延性が下がるのでバネ材などに適しています。つまり、引っ張り負荷が高い加工では302が優位です。
302を誤って304の代替とすると、加工後の寸法変形や再焼鈍の手間が増えます。作業時間が平均で15%増えるという報告もあります。疲労割れが起こりにくいというメリットを優先するなら304が基本です。つまり用途で選定を変えることが原則です。
耐食性の比較では304が一般的に優れていますが、塩分環境や高温条件では302のほうが長寿命な例もあります。特に溶接後の熱影響部(HAZ)は304が腐食しやすく、海岸部では設置5年で錆が発生する事例もあります。これはクロム炭化物の析出が原因です。
腐食を防ぐには低炭素タイプのSUS304Lや酸洗処理を選ぶのが有効です。つまり環境に応じた材質選びが条件です。
参考リンク(耐食性比較のデータが詳しい)
日新製鋼 ステンレスの耐食性と応用例
加工性では304が優れています。理由は炭素量が少ないため加工硬化が緩やかで、プレス加工時に割れが発生しにくいからです。反対にSUS302は加工硬化が早く、曲げ半径を誤ると亀裂が入ることがあります。たとえば板厚1mmで曲げ半径1.5mm以下にすると、302では90度曲げで割れが出る例が多いです。
とはいえ、302を使うとバネ性が高まり、成形後も形状保持が良いというメリットもあります。つまり、曲げ重視か強度重視かで選定を変えるだけ覚えておけばOKです。
実コストで見ると、304が安く見えて加工後のトリートメント費がかかることがあります。硬度差により工具摩耗が違い、304では研磨工具の寿命が約30%短くなる例もあります。年間使用量1tなら、工具費が約12万円増加します。痛いですね。
加工の歩留まりを上げたいなら、用途ごとに母材を選定する管理表を導入するのがおすすめです。簡易ツールとして「ステンレス材質比較表」が有効です。つまり選定ミス防止が基本です。
参照リンク(加工コスト比較)
光もの製作所 SUS材質別加工データ
現場では「304を使えば錆びない」という誤解が原因でトラブルが多発しています。溶接後に塩素系洗浄剤を使った結果、腐食クレームが出た事例が半年で8件。これは304が塩素に弱いからです。つまり304なら塩素洗浄はNGです。
逆に302なら炭素によって表面がやや硬く、同条件下でも腐食が進みにくい傾向があります。ただし硬化で加工亀裂リスクが上がるので注意すれば大丈夫です。つまり清掃方法も材質で変えるのが基本です。
参考リンク(現場管理事例がある)
日本ステンレス協会 材質選定と腐食対策事例