固有値解析だけ信じていると、共振で金属部品が疲労破壊してもあなたには原因がわかりません。

振動解析には大きく分けて「固有値解析(モーダル解析)」と「周波数応答解析」の2種類があります。どちらも振動を扱う解析ですが、目的も出力結果もまったく異なります。この違いを正確に理解しておかないと、解析結果を見ても「安全かどうか」の判断ができません。
固有値解析とは、構造物が持つ「固有振動数」と「固有モード(振動の形状)」を求める解析です。外力や減衰を考慮しない自由振動の状態で計算を行い、「この構造物はどの周波数で共振しやすいか」を明らかにします。つまり、共振の可能性がある周波数帯域を事前に特定するための診断ツールです。
一方、周波数応答解析は加振力(外部から加わる振動荷重)を明示的に与えて、構造物が特定の周波数で定常的にどう応答するかを求める解析です。変位・速度・加速度・応力といった応答値を「絶対値」として評価できます。これが固有値解析との最大の違いです。
| 項目 | 固有値解析(モーダル解析) | 周波数応答解析 |
|---|---|---|
| 外力(加振力) | 考慮しない | 考慮する |
| 減衰 | 基本的に考慮しない | 必ず考慮が必要 |
| 出力(変位) | 比率だけ意味あり(絶対値なし) | 物理的な絶対値として評価可能 |
| 出力(応力) | 参考値のみ | 実際の応力値として評価可能 |
| 主な用途 | 共振周波数の特定・リスク洗い出し | 共振応答・疲労強度の定量評価 |
固有値解析で出力される変位は、モード形状の「相対的な比率」にしか意味がありません。数値そのものは物理的な意味を持たないということです。対して周波数応答解析では、実際の加振条件を反映した応力値が得られるため、「疲労破壊が起きるかどうか」の判断材料になります。
つまり固有値解析は「警戒すべき周波数の地図」、周波数応答解析は「その地図の上でどこが実際に危険かを測る道具」と考えると整理しやすいです。
参考:固有値解析と周波数応答解析の解説(サイバネットシステム)
はじめての振動解析(2)周波数応答解析・モード重ね合わせ法の基礎 – サイバネットシステム株式会社
固有値解析を正しく活用するには、出力される「固有振動数」と「振動モード」の読み方を理解しておく必要があります。ここを誤解したまま解析を進めると、危険を見落とす原因になります。
固有振動数とは、外部からの強制振動がなくても構造物が自然に振動したがる周波数のことです。数値は Hz(ヘルツ)で表され、1次モード・2次モード・3次モード……と低い順に並べられます。重要なのは、1次モードの固有振動数が最も共振しやすい周波数だということです。
振動モードとは、その固有振動数で振動したときの「変形の形状パターン」を示したものです。例えば「中央が最も大きく変形する曲げ振動」や「端部がねじれる形状」などがモード形状として可視化されます。この変形形状を見ることで、どの部位に応力集中が生じやすいかの目安をつけることができます。
金属加工現場で使われる工作機械(マシニングセンタ・フライス盤・旋盤など)の場合、主軸やスピンドルの回転数に起因する加振周波数が存在します。例えば主軸が3,000rpm で回転する場合、加振周波数は 3,000÷60=50Hz です。固有値解析でこの 50Hz 付近に固有振動数が存在すると判明すれば、共振の危険があると判断できます。
設計初期段階でのチェックポイントをまとめると。
ただし、固有値解析の変位出力は比率でしかありません。「変位が大きく表示されている=実際に大きく変形する」とは限らないので注意が必要です。実際の変位や応力の大きさを知るためには、次に説明する周波数応答解析が必要になります。これが原則です。
参考:固有値解析の活用事例(CAE受託ドットコム)
【固有値解析】コスパ最強!固有振動数解析と共振回避の方法 – CAE受託ドットコム
固有値解析で「共振の可能性あり」とわかった次のステップが、周波数応答解析です。ここで初めて、「実際にどのくらいの応力が発生するのか」が数値で把握できます。
周波数応答解析では、以下の3つの要素を定義して計算を行います。
計算手法には「フル法(直接法)」と「モード重ね合わせ法」の2種類があります。フル法は方程式をそのまま解く方法で、精度が高い反面、計算コストが非常に高くなります。周波数を100点評価したい場合は、100回の逆行列計算が必要になるためです。
モード重ね合わせ法は、事前に固有値解析(モーダル解析)を行い、得られた固有モードを利用して計算を大幅に高速化する手法です。1万自由度のモデルでも、例えば500Hzまでの20次モードに絞ることで計算量を劇的に削減できます。
| 比較項目 | フル法(直接法) | モード重ね合わせ法 |
|---|---|---|
| 計算速度 | 遅い(周波数点数に比例して増加) | 速い(事前のモーダル解析が必要) |
| 精度 | 高い | 打ち切り誤差が発生することがある |
| 粘弾性材料への対応 | 可能 | 基本的には不可 |
| 推奨場面 | 高精度が必要な最終確認・特殊材料 | 設計検討・パラメータスタディ |
金属加工部品の場合、設計検討段階ではモード重ね合わせ法を使って素早く繰り返し検討を行い、最終確認ではフル法で精度を担保する、という2段階の運用が効率的です。これは使えそうです。
注意点として、周波数応答解析で得られた応力値は「減衰をどう設定したか」に大きく依存します。減衰比を適切に設定しないと、実物と数倍単位でずれた結果が出ることがあります。実物があればハンマリング試験でモード減衰比を実測することが推奨されます。
参考:周波数応答解析のフル法とモード重ね合わせ法の使い分け(CAEと強度計算の森)
周波数応答解析 – CAEと強度計算の森
金属加工従事者が見落としやすいポイントが「減衰」の扱いです。減衰とは、振動のエネルギーが時間とともに失われていく性質のことを指します。この概念が、固有値解析と周波数応答解析の最大の分岐点になっています。
固有値解析では、計算の仕組み上、原則として減衰を考慮しません。減衰があると固有値が複素数になり計算が複雑になるため、実際の設計現場で用いられる「実固有値解析」では外力項・減衰項をゼロとして方程式を立てます。(減衰を考慮する「複素固有値解析」は、ブレーキのスキール音解析など特殊なケースに限られます。)
つまり、固有値解析では「もし共振が起きたら理論上は変位が無限大になる」という状態を前提に計算しています。実際には減衰があるため無限大にはなりませんが、その「どの程度に収まるか」が固有値解析だけでは判断できないのです。
ここで減衰比の数値が重要になります。金属材料の減衰比の目安は以下のとおりです。
金属材料の減衰比1%の場合、共振点での応答倍率は理論上50倍になります。これは、静的に1mm変形するだけの力でも、共振状態が続けば50mmの変形が繰り返し発生することを意味します。鉛筆の太さ(約7mm)の6倍以上の変形が、毎サイクル繰り返されるイメージです。疲労破壊が起きるのは当然の結果です。
加振周波数と固有振動数を10%離しただけでも、応答倍率は約5倍まで下がります。15%離すと約3倍程度です。ただし、これはあくまで応答倍率の話であり、「安全」と断言できるかどうかは発生応力と疲労限度の比較が必要です。この比較ができるのが周波数応答解析です。減衰の設定が条件です。
参考:日本機械学会 計算力学技術者資格認定(振動分野)の出題範囲
日本機械学会 計算力学技術者資格認定事業
実際の金属加工現場では、どのような流れで固有値解析と周波数応答解析を使えばよいのでしょうか。設計の各フェーズに応じた2段階のアプローチが効果的です。
金属部品や加工機械のフレーム設計では、以下のような流れが実務的です。
【第1ステップ:固有値解析によるリスク洗い出し(設計初期】
固有値解析は計算コストが低く、設計変更に対して素早くフィードバックが得られます。具体的には次の手順で行います。
【第2ステップ:周波数応答解析による応力定量評価(設計最終確認)】
固有値解析で共振の懸念が解消できない場合、または疲労破壊リスクを定量的に確認したい場合に移行します。
ここで紹介したい独自の判定視点として、「周波数帯域の重複チェック」があります。加工機械では主軸回転数だけでなく、送りモーターの加振周波数・刃物の回転による高調波・クーラント ポンプの回転数など、複数の加振源が同時に存在します。固有値解析の結果に、これらすべての加振周波数をプロットして「危険な重複がないか」を一覧で確認する方法は、標準的な解析手順書にはあまり書かれていません。しかし、実際の加工機トラブルの多くは複数の加振源が重なったときに発生しています。これを事前に確認するだけで、設計品質が大幅に上がります。
CAEソフトのAnsysやSolidWorks Simulationなどには、振動解析の結果をモード図で可視化する機能があります。自社でCAEの環境がない場合は、受託解析サービスの利用を検討するのが現実的です。例えばWTI(Wave Technology)社のようなCAE受託解析会社では、振動解析の相談・受注に対応しています。費用感や対応範囲を確認し、設計段階で問い合わせてみることをおすすめします。
参考:実際の振動解析の受託解析サービス事例(WTI)
CAE解析(振動解析)の活用について – Wave Technology(WTI)

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