プラスチック樹脂の加工方法の種類と特徴、コストを解説

金属加工のプロも知っておきたい、プラスチック樹脂加工。その多様な方法と、金属との違い、コスト感について解説します。あなたの技術と知識をさらに広げる、樹脂加工の世界を覗いてみませんか?

プラスチック樹脂の加工

プラスチック樹脂加工の基本
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加工方法の多様性

金型を使った成形から精密な切削まで、製品の用途や数に応じて最適な方法が選ばれます 。

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材料の選定

熱で繰り返し変形できる熱可塑性樹脂と、一度固まると変形しない熱硬化性樹脂の特性を理解することが重要です 。

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コストと品質

初期投資や生産量に応じてコストは大きく変動し、設計段階からの工夫が品質とコストを左右します 。

プラスチック樹脂の加工方法、主な種類と特徴

 

プラスチック樹脂の加工は、金属加工と同様に多様な方法が存在し、製品の用途や生産数、形状の複雑さに応じて使い分けられます 。基本的なプロセスは、樹脂材料を加熱して溶かす「可塑化」、金型などに流し込む「成形」、そして冷却して固める「固化」の3ステップで構成されます 。これらのプロセスを応用した、代表的な加工方法には以下のようなものがあります 。

  • 射出成形: 最も一般的な加工方法で、溶かした樹脂を高圧で金型に射出し、冷却して固化させます 。複雑な形状の製品でも、一度金型を作れば高速で大量生産できるのが大きな特徴です 。自動車部品や家電製品、日用品など、あらゆる分野で活用されています 。
  • 押出成形: 溶かした樹脂をダイと呼ばれる口金から連続的に押し出して成形する方法です 。パイプやシート、フィルムなど、断面が一定の形状を持つ長い製品の生産に適しています 。
  • ブロー成形(中空成形): 射出成形や押出成形で作ったパリソン(試験管のような形状の予備成形品)を金型内で膨らませて、中空の製品を作る方法です 。ペットボトルや灯油タンクなどの容器類がこの方法で作られます 。
  • 切削加工: 金属加工と同様に、ドリルやエンドミルなどの刃物を使って樹脂のブロック材料から製品を削り出す方法です 。金型が不要なため、1個からの試作品製作や小ロット生産、高い寸法精度が求められる部品の加工に向いています 。
  • 3Dプリント: 3Dデータをもとに、樹脂材料を一層ずつ積み重ねて立体物を造形する技術です 。金型なしで非常に複雑な形状や内部構造を持つ製品を作ることができ、主に試作品やオーダーメイド品の製作で活用されます 。

これらの方法以外にも、真空成形、圧縮成形、曲げ加工など、さまざまな加工技術が存在し、それぞれに得意な形状や生産規模があります 。

プラスチック樹脂の加工における切削加工と成形加工のメリット・デメリット

プラスチック加工の主要な二つの方法、切削加工と成形加工は、それぞれに明確な長所と短所があり、生産目的によって使い分けることが重要です 。金属加工に携わる方であれば、その違いは直感的に理解しやすいかもしれません 。


項目 切削加工 成形加工(主に射出成形)
メリット
  • ✔️ 金型が不要で初期費用が安い
  • ✔️ 1個からの超小ロット生産に対応可能
  • ✔️ 設計変更に柔軟に対応できる
  • ✔️ 高い寸法精度を実現しやすい
  • ✔️ 大量生産時の単価が非常に安い
  • ✔️ 複雑な形状でも均一な品質で高速生産が可能
  • ✔️ 材料の歩留まりが良い
デメリット
  • ❌ 大量生産には向かず、生産数が増えるとコスト高になる
  • ❌ 複雑な形状は加工時間が長くなる
  • ❌ 材料の削り屑が多く発生する
  • ❌ 金型の製作に高額な初期費用(数十万~数百万円)が必要
  • ❌ 小ロット生産ではコストが合わない
  • ❌ 一度金型を作ると、設計変更が困難または不可能

このように、切削加工は試作品や治具、少量生産の精密部品に向いているのに対し、成形加工は初期投資を回収できるだけの大量生産品に最適です 。どちらの加工方法を選ぶかは、製品のライフサイクル全体を見据えたコスト、納期、品質のバランスを考慮して決定する必要があります 。

プラスチック樹脂の加工で知るべき熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の使い分け

プラスチックは、熱に対する性質の違いから「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」の2種類に大別されます 。この違いを理解することは、材料選定や加工方法の決定において極めて重要です 。


熱可塑性樹脂 (Thermoplastics)

熱を加えると軟化して液体状になり、冷やすと再び固まる性質を持つ樹脂です 。この性質により、射出成形などで容易に様々な形状に加工でき、リサイクルも可能です 。柔軟性や耐衝撃性に優れるものが多いのが特徴です 。


熱硬化性樹脂 (Thermosetting plastics)

最初の加熱で化学反応を起こして硬化し、その後は再加熱しても軟化しない性質を持つ樹脂です 。この不可逆的な結合により、優れた耐熱性、耐薬品性、機械的強度、寸法安定性を誇ります 。

  • 代表例: フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、ポリウレタン(PU)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)
  • 主な用途: 電子部品の封止材、自動車のエンジン部品、航空機の構造部材、接着剤、塗料など

以下の表で、両者の特性を比較します。

 

特徴 熱可塑性樹脂 熱硬化性樹脂
再成形・リサイクル 可能 不可能
機械的強度 比較的柔軟で耐衝撃性に優れる 硬く、高い強度と剛性を持つが、脆い場合がある
耐熱性 低い(種類による) 高い
成形サイクル 比較的短い 化学反応を伴うため長い

どちらの樹脂を選ぶかは、製品に求められる耐熱性、強度、コスト、そしてリサイクルの必要性などを総合的に判断して決定します 。

プラスチック樹脂の加工を革新する表面処理と接着の最新技術

プラスチック、特にフッ素樹脂やスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)のように、優れた特性を持つがゆえに「難接着性」という課題を持つ材料があります 。しかし近年、この課題を克服する画期的な表面改質・接着技術が登場し、金属との複合化など、応用の可能性を大きく広げています。


🔬 フッ素樹脂の平滑度を保つ表面改質技術
従来、フッ素樹脂の接着には、表面を薬品やプラズマで荒らす手法が一般的でしたが、素材の平滑性が損なわれる欠点がありました 。最新の研究では、穏やかな試薬と紫外光を組み合わせてフッ素樹脂の表面を化学的に「改質」する技術が開発されています 。この方法では、表面の平滑度をほとんど損なうことなく、強力な接着力を実現できるため、精密な光学部品や医療機器への応用が期待されています 。


下記の参考リンクでは、この革新的なフッ素樹脂の接着技術について、その原理と効果が詳しく解説されています。

 

つるつるなフッ素樹脂にがっちり接着 - PR TIMES



🔧 スーパーエンプラ「PEEK樹脂」の革新的接着
航空宇宙分野などで利用される高性能なPEEK樹脂も、難接着材料として知られていました 。これに対し、PEEK樹脂の表面に特殊な化学処理(UVグラフト重合など)を施し、接着剤と化学的に強固な結合(共有結合)を形成させる新しい技術が開発されました 。これにより、接着剤を用いた異種材料(例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とPEEK)の接合が可能になり、構造部品の軽量化や低コスト化に貢献しています 。


下記の参考リンクは、三菱重工が発表したPEEK樹脂の接着技術に関する技報で、専門的な内容が含まれますが、そのメカニズムを深く理解できます。

 

スーパーエンプラ PEEK 樹脂の革新的接着技術の開発 - MHI



⚙️ 金属と樹脂を直接接合する「ALTIM」
金属表面にレーザーで微細な凹凸形状を作り、そこに溶かした樹脂を流し込んで加圧・冷却することで、アンカー効果を利用して物理的に強力に接合する技術も登場しています 。接着剤を使わないため、工程の簡略化や信頼性の向上が見込めます 。


これらの最新技術は、金属加工の知見を持つ技術者にとって、新しい製品開発のヒントとなる可能性を秘めています。

 

プラスチック樹脂の加工におけるコスト削減のポイントと注意点

プラスチック加工のコストは、材料費、加工費、そして金型費(成形加工の場合)の3つが主要な要素です 。特に大量生産の場合は、設計段階でのわずかな工夫が、最終的に大きなコスト削減につながることがあります 。

  • 💰 材料選定の見直し: 製品に求められる性能(耐熱性、強度、耐薬品性など)を正確に把握し、オーバースペックな高価な材料を選んでいないか確認することが重要です 。例えば、金属で設計していた部品を、要求仕様を満たすエンジニアリングプラスチックに代替することで、大幅な軽量化とコストダウンが可能な場合があります 。
  • ✏️ 設計の最適化(DFM): DFM(Design for Manufacturability)の観点から設計を見直します。

    • アンダーカットを避ける: 金型構造を複雑にする「アンダーカット」形状は、金型費を大幅に増加させる最大の要因の一つです 。スライド機構が不要になるよう、形状の工夫で回避できないか検討します。
    • 肉厚の均一化: 部品の肉厚をできるだけ均一にすることで、成形時のヒケやソリといった不良をぎ、冷却時間を短縮してサイクルタイムを向上させることができます 。
    • 抜き勾配の設定: 成形品を金型からスムーズに取り出すために、適切な抜き勾配(テーパー)をつけることが、生産性の向上と不良率の低下につながります 。
  • ⚙️ 加工方法の適切な選択: 生産ロット数に応じて、最適な加工方法を選ぶことがコスト削減の鍵となります 。数百個程度までであれば切削加工の方がコストメリットが高い場合が多く、数千個以上の量産であれば、高価な金型費をかけてでも射出成形を選ぶ方がトータルコストは安くなります 。
  • ✨ 表面仕上げの簡素化: シボ加工や鏡面仕上げなど、外観品質にこだわると金型の加工コストが上昇します 。製品の機能に影響しない部分では、仕上げグレードを落とすことも有効なコスト削減策です 。

これらのポイントは、金属加工におけるコスト意識と共通する部分も多くあります。プラスチックの特性を理解した上で設計・加工に臨むことが、高品質と低コストを両立させるための最短ルートと言えるでしょう。

 

 


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