プラスチック加工の個人依頼と価格
この記事でわかること
💰
加工法別の価格相場
切削、射出成形、3Dプリントなど、加工法ごとの特徴と費用の目安がわかります。
💡
コスト削減のコツ
見積もりを安くするための具体的な方法や、金型費用を抑えるポイントを学べます。
🔩
金属との複合技術
金属加工従事者必見のインサート成形など、樹脂と金属を組み合わせる技術を紹介します。
プラスチック加工の種類とそれぞれの価格相場
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プラスチック加工を個人で依頼する際、まず理解しておきたいのが加工方法の種類と、それに伴う価格相場です。加工方法は製品の形状、数量、求める精度によって大きく異なり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。代表的な加工方法を見ていきましょう。
🔪 切削加工
切削加工は、プラスチックの塊(ブロック材)をドリルやエンドミルなどの刃物で削って形を作り出す方法です。金属加工における機械加工と同様のイメージで、1点からの試作品や小ロット生産に非常に向いています 。
- メリット: 金型が不要なため、初期費用を大幅に抑えられます。設計変更にも柔軟に対応しやすく、高精度な加工が可能です。様々な種類の樹脂材料に対応できる点も魅力です 。
- デメリット: 1個あたりの加工に時間がかかるため、量産には不向きです。複雑な形状や中空構造を持つ製品の加工は難しく、材料のロスが多くなる傾向があります 。
- 価格相場: 費用は「加工時間」に大きく依存します。簡単な形状の部品であれば数千円から、複雑なものであれば数万円以上になることもあります。例えば、POM(ポリアセタール)製の小さな部品(約Φ45mm x 13mm)を10個製作した場合、単価950円程度という参考価格例もあります 。
💉 射出成形
射出成形は、熱で溶かしたプラスチックを金型に流し込み、冷やし固めて製品を作る方法です。たい焼きをイメージすると分かりやすいでしょう。同じ形状の製品を大量生産するのに最も適した方法です 。
- メリット: 大量生産時の1個あたりの単価が非常に安いのが最大の特徴です。複雑な形状の製品も効率よく、安定した品質で生産できます 。
- デメリット: 金型の製作に高額な初期費用がかかります。簡易的なアルミ製の金型でも数十万円、高精度な鋼材の量産金型になると数百万円から数千万円に達することもあります 。そのため、個人での小ロット依頼にはハードルが高いと言えます。
- 価格相場: 金型費用が大部分を占めます。製品単価は材料費と成形費で構成され、ABS樹脂ペレットが1kgあたり1ドル~5ドル程度です 。例えば1,000個の量産で簡易金型を使う場合、製品単価は300円程度からが目安となります 。
🖨️ 3Dプリンティング
3Dプリンティングは、3Dデータをもとに材料を一層ずつ積み重ねて立体物を造形する技術です。近年、個人のDIYや試作品製作で急速に普及しています。
- メリット: 金型が不要で、1個からでも非常に安価に製作可能です。切削加工では難しい複雑な形状や、内部に空洞があるデザインも一体で造形できます。
- デメリット: 材料の種類が限られる場合があり、射出成形品に比べて強度や精度、表面の滑らかさが劣ることがあります。また、1個あたりの製作に時間がかかるため、中~大量生産には向きません。
- 価格相場: 材料費と造形時間によって決まります。個人向けの3Dプリントサービスでは、数千円から依頼できるケースが多く、最も手軽に始められる加工方法と言えるでしょう。
以下の参考リンクでは、様々な樹脂加工方法の参考価格が掲載されており、具体的なイメージを掴むのに役立ちます。
参考リンク:樹脂加工の参考価格例 - 株式会社キョクトーカセイ
プラスチック加工の個人依頼で見積もりを安くするコツ
「アイデアを形にしたいけれど、予算が限られている…」そんな時、見積もりを少しでも安く抑えるためのコツを知っているかどうかが、プロジェクトの実現を左右します。個人でプラスチック加工を依頼する際に、価格を抑えるための具体的なポイントをいくつかご紹介します。
📄 図面や要件をできるだけ明確にする
加工業者にとって、最も困るのは「どんなものを作りたいのか」が曖昧な依頼です 。依頼内容が不明確だと、業者はリスクを考慮して安全マージンを乗せた、高めの見積もりを提示せざるを得ません。逆に、要件が明確であればあるほど、業者は無駄のない工程を計算でき、結果として価格は安くなります 。
- 詳細な図面を用意する: CADデータが理想ですが、手書きのスケッチでも構いません。寸法、公差、材質、必要な個数を正確に伝えましょう 。自社で図面を作成することで、図面作成費用を削減できます 。
- 使用目的を伝える: 「何に使う部品なのか」を伝えることで、業者はオーバースペックな加工を避け、最適な材質や加工方法を提案してくれます 。
🤝複数の業者から相見積もりを取る
これは基本中の基本ですが、非常に重要です。複数の業者から見積もりを取ることで、その加工の適正な価格相場を把握できます 。最低でも3社以上から見積もりを取ることをお勧めします 。その際、単に価格の安さだけで選ぶのではなく、各社の得意な加工方法や技術レベル、担当者の対応なども比較検討することが、最終的な満足度につながります。
💡設計を見直して加工コストを削減する
見積もりが予算を超えてしまった場合、設計そのものを見直すことでコストダウンできる可能性があります。加工の難易度が価格に直結するため、少しの工夫で費用が大きく変わることがあります。
- 形状を単純化する: 複雑な曲面や細かい凹凸は加工時間を増やし、コストアップの要因になります。可能な限りシンプルな形状にできないか検討しましょう 。
- 精度(公差)を緩和する: 必要以上に厳しい寸法公差を求めると、加工の難易度が上がり、価格も跳ね上がります。機能的に問題のない範囲で、公差を緩めることができないか検討しましょう。
- 材質を見直す: より安価で加工しやすい材料に変更することで、材料費と加工費の両方を削減できる場合があります。業者に代替材料を提案してもらうのも良い方法です。
以下のリンクは、個人が加工を依頼する際の注意点をまとめたもので、業者とのスムーズなコミュニケーションに役立ちます。
参考リンク:大阪で個人がプラスチック加工を依頼できる工場 - 株式会社プロテグ
プラスチック加工で小ロット依頼する場合の注意点と費用
「まずは試作品を10個だけ作りたい」「オリジナルのカスタムパーツを数個だけ欲しい」といった小ロットでの依頼は、個人にとって最も現実的な選択肢です。しかし、小ロットならではの注意点と費用の考え方があります。
💰 小ロット生産に適した加工方法を選ぶ
前述の通り、加工方法によって得意な生産数量が異なります。小ロット(一般的に1個~100個程度)の場合、高額な金型費用がかかる射出成形は現実的ではありません 。
- 切削加工: 1個から数十個程度の製作に最も適しています。金型が不要なため、初期費用を抑えられます 。
- 真空注型: シリコン型を使う加工方法で、10個~100個程度の製作に向いています。射出成形品の試作によく用いられますが、1つの型で20個程度が寿命であり、寸法精度は金型に劣る場合があります 。
- 3Dプリンティング: 1個から数個の試作や形状確認に最適です。ただし、強度や材質の選択肢には注意が必要です。
💸 単価ではなく総額で考える
ホームセンターなどで売られている大量生産されたプラスチック製品の価格に慣れていると、小ロット生産の見積もり金額に驚くことがあります 。小ロット生産では、1個あたりの単価は高くなります。これは、製品1個あたりの価格に、段取りやプログラミング、試作などの固定費が大きく影響するためです。単価の安さだけを求めるのではなく、プロジェクト全体の総額で予算を考えることが重要です。
⚠️ 小ロット依頼時の具体的な注意点
- 業者選びは慎重に: 「小ロット歓迎」を掲げている業者や、個人の依頼に対応実績のある業者を選びましょう。いきなり工場を訪問するのではなく、まずは電話やメールで相談するのがマナーです 。
- 予算を正直に伝える: 事前に「予算は〇〇円くらいで考えている」と伝えることで、その範囲内で実現可能な方法を業者側も提案しやすくなります 。
- 強度要件を明確にする: 例えば、切削加工で部品を貼り合わせて製作する場合、接着面は強度が低くなる傾向があります 。使用用途を伝え、必要な強度を確保できるか確認することが不可欠です。
以下の資料では、小ロット生産のメリットや事例が紹介されており、どのような場合に小ロット生産が有効かを知ることができます。
参考リンク:小ロット生産がもたらすメリットとは?具体的な事例もご紹介! - 富士ゴム化成株式会社
プラスチック加工の金型費用を削減する意外な方法
射出成形による量産を視野に入れる場合、最大の壁となるのが「金型費用」です。数百万円にもなることがあるこのコストをいかに抑えるかは、プロジェクトの成否を分ける重要な要素です。ここでは、金型費用を削減するための、あまり知られていない意外な方法や考え方を紹介します。
🛠️ 既存の金型を改造・流用する
全く新しい金型をゼロから製作するのではなく、既存の金型を再利用するという考え方です。これは、特に設計変更やバリエーション展開の際に非常に有効な方法です 。
- 金型の改造(改修): 既存の金型の一部に材料を溶接で盛り、再度機械加工を施すことで、形状を部分的に変更できます。新規で製作するよりもはるかに安価で、納期も短縮できます 。
- 共通金型の活用: 他の製品と共通の金型パーツ(モールドベースや入れ子など)を流用することで、製作する部品点数が減り、コストを大幅に削減できます。標準化されたモールドベースの活用で、数十万円以上のコスト削減につながるケースもあります 。
🏭 材質や構造を工夫する
金型の材質や構造そのものを工夫することでも、コストは大きく変わります。
- 簡易金型やアルミ型を選択する: 本格的な量産(数万ショット以上)が不要な場合、鋼材よりも安価なアルミ製の金型や、構造を簡略化した「簡易金型」を使用することで、コストを大幅に削減できます 。特に試作や数千個程度の小~中ロット生産には非常に有効です。アルミ型は2,000ドルから5,000ドル程度で製作できる場合もあります 。
- ホットランナーの採用は慎重に: ホットランナーシステムは、材料のロス(ランナー)をなくし、成形サイクルを短縮できるため、ランニングコストを削減します。しかし、金型自体の構造が複雑になり、初期の金型費用は増加する傾向にあります 。生産量や製品単価とのバランスを考慮して、採用を検討する必要があります。
金型費用を抑えることは、プラスチック製品の価格競争力を高める上で不可欠です。下記のリンクでは、金型費用を抑えるための様々なポイントが解説されており、設計者や開発担当者にとって非常に有益な情報源となります。
参考リンク:プラスチック成形の金型を安く作るには - 株式会社シロクマ
独自視点: プラスチック加工におけるインサート成形とアウトサート成形の可能性
金属加工に従事されている方であれば特に興味深いのが、プラスチックと金属など、異なる素材を一体化させる技術です。その代表格が「インサート成形」と「アウトサート成形」であり、これらの技術を理解することで、製品設計の幅は大きく広がります。
🔩 インサート成形:金属部品を樹脂で包み込む技術
インサート成形とは、あらかじめ金型の中に金属製のネジやシャフト、端子などの部品(インサート品)を配置しておき、そこへ溶融した樹脂を流し込んで一体化させる成形方法です 。
- メリット:
- 強度の向上: 金属の強度と樹脂の形状自由度を両立できます。例えば、樹脂製の歯車やノブの軸受け部分に金属部品をインサートすることで、摩耗や破損を防ぎます。
- 工程の削減: 本来であれば後工程で圧入や接着が必要な部品を、成形と同時に一体化できるため、組み立てコストを削減し、生産性が向上します。
- 高い接合強度: 後から接着するのに比べ、溶融した樹脂がインサート品の凹凸にしっかりと食い込むため、非常に強固に接合されます 。
- デメリット: 専用の成形機や金型が必要になる場合があり、生産サイクルが長くなる傾向があります。また、異材を組み合わせるため、リサイクル性が課題となることもあります。
⚙️ アウトサート成形:金属部品に樹脂の機能を付加する技術
アウトサート成形は、インサート成形とは逆に、金属のプレス部品や板金が製品の主体となり、その一部に樹脂で機能(リブやボスなど)を付加する技術です 。スマートフォンの筐体や自動車の電子部品基板などで利用されています。
- メリット:
- 軽量化と高機能化: 製品の骨格を金属で作り強度を確保しつつ、必要な部分のみを樹脂に置き換えることで、軽量化と複雑な形状の付与を両立できます。
- 設計自由度の高さ: インサート成形よりも使用する樹脂量が少ないため、設計の自由度が高まります 。
- 仕組み: 一般的に、立型の射出成形機を使用し、金型内で金属プレートに別の部品を配置して一体成形します 。
これらの技術は、金属の持つ強度・導電性・耐熱性と、プラスチックの持つ軽量性・絶縁性・形状自由度を組み合わせることで、単一素材では実現不可能な高機能部品を生み出します。金属加工の知識を持つ方であれば、この異材結合技術を応用することで、新たな製品開発のヒントを得られるかもしれません。以下のリンクでは、両技術の違いが分かりやすく解説されています。
参考リンク:インサート成形とアウトサート成型の違いは?:初心者にも分かりやすく解説 - NCネットワーク
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