長さ60mmを超える切粉を使い続けると、あなたのマグネットコンベアは静かに詰まり続けます。

マグネットコンベアとは、永久磁石の磁力を利用して金属切粉や部品を吸着しながら搬送する装置です。工作機械の旋盤・マシニングセンター・フライス盤・歯切り盤などから発生する切削屑を、切削油(クーラント)の液中からも確実に回収・排出できるのが最大の特徴です。
一般的なベルトコンベアでは切粉が滑り落ちてしまう傾斜搬送や、スペース効率の悪い水平レイアウトが課題になりがちです。マグネットコンベアはこれを磁力で解決しています。ベルト式の場合、金属製のベルト下部に永久磁石列を配置し、搬送面に切粉を磁気吸着させた状態で移動させます。つまり傾斜角が急でも、液中であっても、切粉は落下しません。
主な構造は大きく2タイプです。
- ベルト式(マグネティックベルトコンベヤ):金属ベルトの裏側にマグネットを配置し、ベルト表面に切粉を吸着して搬送する。絡まったカール状・ダンゴ状の切粉への対応が得意。
- スパイラル式(スパイラルマグネットコンベア):密封されたステンレス鋼管内部でマグネットが回転し、切粉を螺旋状に上へ搬送する。垂直設置が可能で省スペース性が高い。
搬送対象は鉄系・鋳物系の磁性体切粉に限られます。これが重要な前提条件です。
工場の立体活用・切削油との自動分離・自動排出による省力化といった複合的なメリットから、金属加工ラインへの導入が進んでいます。
カネテック株式会社|マグネットチップコンベア MCO 製品仕様と機種選定ガイド(工作機械別の適合早見表あり)
「マグネットコンベアなら何でも吸える」と思っていると、現場で詰まりやトラブルが起きます。機種によって搬送可能な切粉の長さに明確な上限があるからです。
代表的な数値を確認しておきましょう。
| 種類 | 対応切粉サイズ目安 | 得意な切粉形状 |
|---|---|---|
| マグネットチップコンベア(カネテック MCO) | 長さ60mm以下 | リボン状・渦巻状・破砕切粉 |
| マグネット式チップコンベア(サンエス工業) | 〜50mm以下 | 鉄系・鋳物系全般 |
| マグネティックベルトコンベヤ(ブンリ MB) | ダンゴ状・カール状101mm以上にも対応 | 絡まった長い切粉 |
| スパイラルマグネットコンベア(マグテック) | 細かい切粉・液中の切粉 | 微粉・切削屑 |
カネテックのMCOシリーズの場合、切削屑の長さ60mm以下が適用範囲と明記されています。これを超える長い切屑を無理に搬送させると、詰まりや搬送停止が発生します。一方でブンリのMBシリーズは、絡まったカール状・ダンゴ状の長い切粉を前提に設計されており、コンベヤ底やベルト裏面まで残った切粉を複数のスクレーパーとメカニカルスクリューで強制排出する構造になっています。結論は「切粉の長さと形状で機種を選ぶ」が基本です。
また、切粉の材質も選定に直結します。アルミや銅、オーステナイト系ステンレス(SUS304など)といった非磁性体の切粉は磁力に反応しないため、マグネットコンベアでは搬送できません。非磁性体が混在する現場では、ヒンジ式チップコンベアやスクレーパー式との併用が必要になります。これは意外と見落としがちな点です。
さらに、研削盤のような機械では砥粒を含む微細な鉄粉(スラッジ)が発生します。この場合は濾過機能を持つマグネットセパレータや、100μmレベルのろ過精度を持つマグネティックベルトコンベヤ(ブンリMBは100μm・90%以上の濾過精度)が選択肢になります。
ブンリ(BUNRI)|マグネティックベルトコンベヤ MBシリーズ 機構・仕様詳細(濾過精度データあり)
国内でマグネットコンベアを製造・販売する主要メーカーを比較します。2026年2月のランキング(Metoree調べ)では1位:マルヤス機械、2位:ツカサ技研、3位:JPC・日本マグネティックスが並ぶ状況ですが、金属加工の現場に特化したメーカーとしては以下の5社を押さえておくべきです。
🏭 カネテック株式会社
マグネット応用機器の総合メーカーとして長年の実績を持つカネテックは、マグネットチップコンベアMCO・MCOLシリーズをラインアップしています。高性能の永久磁石による合理的な設計で磁力の減衰がほとんどなく、急傾斜での引き上げ搬送が可能な点が強みです。機構がシンプルなためトラブルが少なく、工作機械ごとの機種選定ガイドも整備されており、導入時の相談窓口として信頼性が高いメーカーです。
🏭 株式会社ブンリ(BUNRI)
研削・切削クーラントのスラッジ・切粉濾過装置専業メーカーとして、切粉とクーラントを分離する機能に強みを持ちます。MBシリーズはダンゴ状・カール状の絡まった切粉を確実に排出する複合構造(マグネットドラム+スクレーパー+メカニカルスクリュー)で、消耗品フィルター不要のランニングコスト低減にも対応しています。処理流量は100〜300L/min(水溶性)の3サイズ展開で、重量はMB-1で500kgとスペック重量級の仕様です。
🏭 マグテック株式会社
スパイラルマグネットコンベア(品番:MNMBシリーズ)を製造。密閉ステンレス管内で磁石が回転し、切粉を螺旋状に下から上へ搬送する構造で、垂直・横置き・斜め置きなど設置方向の自由度が高いのが特徴です。パイプ径φ76mmのコンパクト設計で、旋盤・エンドミル・フライス加工からの切屑搬出、液中からの搬送に対応しています。有効長は800〜2000mmの4サイズから選べます。
🏭 株式会社サンエス工業
マグネット装置専業メーカーとして独自開発した「回遊方式(特許取得)」を採用したマグネット式チップコンベアを展開。切粉回収効率の向上とトラブルフリーな安全構造(トルクリミター・近接センサ標準装備)を両立しており、切屑サイズ〜50mm、鉄系・鋳物系の磁性体に幅広く対応しています。
🏭 株式会社下西製作所
「マグネポータ」ブランドの垂直搬送型マグネットコンベアで知られるメーカーです。東大阪ブランド認定製品として、ネジ・ボルト・プレス抜きカスなどの小部品を垂直に搬送・供給する用途に強みがあります。ベルト不使用・外部回転機構なしのメンテナンスフリー設計で、打痕・傷の防止、異種混入防止、定量化供給といったニーズに対応しています。
これら5社は得意分野が異なります。切粉の搬出・処理目的ならカネテック・ブンリ・サンエス工業・マグテック、部品の搬送・供給目的なら下西製作所という分け方が現場では実用的です。
マグテック株式会社|スパイラルマグネットコンベア 仕様・寸法・品番一覧(垂直設置の詳細あり)
メーカーを比較する前に、現場の条件を整理しておかないと「導入したが使えない」という事態になります。これは実際に起きている問題です。
選定前に確認すべき項目を整理します。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 切粉の材質 | 磁性体(鉄・鋳物)か、非磁性体(アルミ・銅・SUS304)か |
| 切粉の形状・長さ | 短い破砕状か、長いカール状・ダンゴ状か、粉末状か |
| クーラントの種類 | 水溶性か、不水溶性(油性)か |
| 処理流量 | 単位時間あたりのクーラント量(L/min) |
| 設置スペース | 水平設置か、傾斜・垂直設置が必要か |
| 対象の工作機械 | 旋盤・マシニングセンター・研削盤・フライス盤など |
✅ 特に重要なのは「切粉の材質」と「切粉の長さ」の2点です。
磁性体かどうかを事前に確認せずに導入すると、スペックどおりの搬送ができないまま設備費用が無駄になります。鉄系・鋳物系ならほぼ問題ありませんが、ステンレスの場合は磁性の有無がグレードによって異なるため注意が必要です。フェライト系(SUS430など)は磁性を持ちますが、オーステナイト系(SUS304・SUS316)は非磁性であるため、マグネットコンベアでは吸着できません。
切粉の長さについても同様です。カネテックのMCOシリーズは60mm以下が適用条件で、サンエス工業のチップコンベアは50mm以下が仕様規定です。旋盤加工では長い螺旋状・筒状の切粉が出やすく、これを単純なマグネットチップコンベアに投入すると詰まりが発生します。長い切粉が多い場合は、ブンリのMBシリーズのように複数のスクレーパー機構を持つ製品か、ヒンジベルト型との組み合わせを検討することが必要です。
さらに、サンプルテストを積極的に依頼することが推奨されます。カネテックの公式資料でも、機種選定にあたってはサンプルテストが必要と明示されています。現物の切粉で実際の吸着・搬送動作を確認してから決定するのが、失敗を避ける最短ルートです。
サンエス工業株式会社|マグネット式チップコンベア 規格データと回遊方式の特徴(安全装置の詳細あり)
「永久磁石だから、放っておいても大丈夫」という認識は半分正解で、半分は落とし穴です。
永久磁石の経年減磁率は、フェライト磁石・ネオジム磁石ともに年間0.1〜0.3%程度とされています。100年経過しても体感できるほど弱くなることは稀で、磁力自体は実質的に半永久的と考えて問題ありません。この点は正しい常識です。
問題になるのは、温度・衝撃・反発負荷による減磁です。ネオジム磁石の場合、使用温度範囲(一般的に−40℃〜+80℃程度)を超えると熱減磁が発生します。工場の夏場の高温環境や、溶接作業が近くで行われる場所では磁力低下のリスクが高まります。経年減磁より「温度・反発による減磁の方がはるかに大きい」という点は見落とされやすい事実です。
一方、現場でよくあるメンテナンスの見落としが、切粉の目詰まりによる磁力効率の低下です。マグネットコンベアはマグネット面(またはベルト・パイプ面)に切粉が蓄積すると、吸着力が落ちて搬送効率が低下します。マグネット本体の磁力が下がっていなくても、表面の堆積切粉が磁力の到達距離を縮めてしまうためです。定期的な清掃・点検が必要な理由はここにあります。
サンエス工業のチップコンベアは、過負荷時の自動保護としてトルクリミター・プロテクトリレー・駆動モータ回転検出センサを標準装備しています。詰まりが発生した際に装置本体を保護する仕組みが組み込まれており、修理コストの抑制につながります。これは使えそうです。
また、スパイラルマグネットコンベア(マグテック)のような密閉シリンダー構造は、外部に可動部が露出しないため粉の目詰まりや接触障害が少なく、メンテナンス頻度を抑えられる設計です。垂直設置が可能で、工場の床面積を食わないという点でも長期運用コストの観点から評価されています。
定期的な磁力測定を実施しているメーカーも存在します。コスト面ではメンテナンスフリーに近い装置を選んでも、少なくとも半年〜1年に1回の清掃点検が適切な運用と考えておくとよいでしょう。
ネオマグ|ネオジム磁石の寿命と年間減磁率(0.1〜0.3%)の解説(磁力低下の原因別の詳細あり)
複数の金属素材を同じ工作機械・同じラインで加工している現場では、切粉の中に磁性体と非磁性体が混在することがあります。この「混在切粉問題」は、マグネットコンベア選定の際に見落とされやすいポイントです。
例えば、ステンレス(SUS304)と鉄を同じマシニングセンターで加工している工場では、マグネットコンベアが鉄の切粉だけを吸着してSUS304の切粉を取り残すことになります。SUS304の切粉がクーラントタンクに残留すると、ポンプの損傷やフィルター目詰まりの原因になります。放置すれば、設備の修理費用が数十万円規模に膨らむ可能性もあります。
この問題への対処として、現場では以下の組み合わせが取られることがあります。
- マグネットコンベア+ドラムフィルター(パンチングフィルター)の組み合わせ:磁性体はマグネットで、非磁性体はパンチングフィルターで捕捉する方式。ブンリの総合カタログでもこの組み合わせ設計が示されています。
- 加工素材ごとにコンベアラインを分ける:混在を設備レベルで防ぐ方法。改修コストはかかりますが、長期的な安定稼動につながります。
「マグネットコンベアだけで全て解決する」ではなく、「磁性体の切粉をマグネットコンベアが担い、残りを別の機構でフォローする」という複合設計の視点が、効率の高いクーラント管理につながります。
加えて、マグネットコンベアは切粉の脱油・油切り機能も兼ねています。搬送中に切粉が自然滴下によって脱油されるため、切粉の廃棄時の油分を下げ、産廃コストの削減にも貢献します。マグテックのスパイラルコンベアでも、搬送途中の自然滴下による脱油・脱水が仕様として明記されています。切粉処理の作業工数削減と廃棄コスト削減の両方で、金属加工現場の利益改善に直接貢献する設備投資として評価できます。
まず「切粉の種類・材質」の棚卸しをするのが、最初の一歩として適切です。その上でサンプルテストを依頼し、機種・メーカーを絞り込む流れが現場でのリスクを最小化します。
下西製作所|マグネポータ(マグネットコンベア)製品詳細(省スペース・垂直搬送・メンテナンスフリーの詳細あり)

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