熱電対を使っている現場でも、誘導加熱中は電磁ノイズで測定値が数十℃以上ずれている場合があります。

光ファイバー温度計は、その名の通り「光」を信号として使って温度を測る機器です。従来の熱電対が「金属間の電位差」で温度を検出するのに対し、光ファイバー温度計はファイバー内を伝わる光の変化を読み取ることで温度に換算します。電気を使わずに信号を伝えられるため、電磁ノイズが飛び交う金属加工の現場でも安定した計測が可能です。
基本的な動作の流れはシンプルです。光源から出た光がファイバーを通って測定部(センシング部)まで届き、そこで温度に応じた変化を受けて戻ってきます。受光素子でその変化量を読み取り、最終的に数値として表示されます。つまり「光を送って・変化を感じて・戻す」が基本です。
金属加工の現場では、誘導加熱・アーク溶接・レーザー加工など強い電磁波が発生する工程が多くあります。こうした環境で熱電対を使うと、センサー線に電磁誘導が乗って測定値がノイズ分だけ誤差になることがあります。光ファイバーは電気を使わない構造なので、このノイズの影響をゼロにできます。
実験データとして、電磁ノイズ源(ACアダプター)に熱電対と光ファイバー温度計をそれぞれ近づけた比較試験では、熱電対は温度表示に明確なブレが確認された一方、光ファイバー温度計の表示はまったく変動しなかったという結果があります(ケイエルブイ社の比較実験より)。これは使えそうです。
光ファイバー温度計の信号は光学的に伝送されるため、長距離のケーブル引き回しでも減衰の影響を受けにくいという特性もあります。工場内の配線が複雑な環境でも、計測系を別室の安全な場所に置きながらセンサー先端だけを過酷な環境に設置することができます。光が信号の基本です。
光ファイバーセンサーの基本構成・原理と熱電対との比較実験結果(ケイエルブイ)
ラマン散乱式は、光ファイバー温度計の中でも「分布型温度計測(DTS:Distributed Temperature Sensor)」に使われる代表的な方式です。光ファイバー1本をそのままセンサーとして使えるため、ケーブルに沿って連続的に温度分布を取得できるのが最大の特徴です。
原理は次のとおりです。レーザーパルスを光ファイバーの端から入射すると、ガラス分子との相互作用で散乱光が発生します。この中に「ストークス光(長波長)」と「アンチストークス光(短波長)」と呼ばれる2種類のラマン散乱光が含まれます。ストークス光の強度は温度にほとんど依存しないのに対し、アンチストークス光の強度は温度が高いほど強くなる性質があります。この2つの強度比を計算することで温度が求まる仕組みです。
散乱光が入射端に返ってくるまでの「往復時間」を測定することで、どの位置で散乱が起きたかも特定できます。光の速度は約30万km/秒なので、ナノ秒(10億分の1秒)単位の時間を計測すれば、距離を数十センチ単位で識別することが可能です。つまり温度と距離を同時に測れるということですね。
ヨコガワの「DTSX3000」を例に挙げると、最大50kmの距離にわたって温度分布を測定でき、温度分解能は10km計測時で最高0.02℃(標準値)という高精度を実現しています。空間分解能は1m以下で、サンプリング間隔は0.5m単位まで細かく設定できます。長大な設備の温度監視が1台で完結します。
金属加工の現場では、大型の連続加熱炉や長距離の配管温度監視などに向いています。ポイント型の熱電対では「測定していない場所」が生じますが、ラマン散乱式であればケーブルを沿わせた区間のすべての温度を把握できます。ブランクエリアがない点が原則です。
蛍光式(フォトルミネッセンス式)は、センサー先端にある特殊な発光材料(蛍光体)を使って温度を測る方法です。GaAs(ガリウム砒素)を使う方式もこのカテゴリに含まれます。ポイント型の精密計測に向いており、現場でのスポット温度管理に活用しやすい方式です。
蛍光式の動作はシンプルです。コンバーターから青色のパルス光をファイバーに送ると、先端の蛍光体が励起されて赤色の光を放ちます。この励起光が時間とともに減衰していくのですが、その「減衰の速さ(蛍光寿命)」が温度によって変わります。この減衰波形をフォトダイオードで読み取り、温度に換算する仕組みです。
GaAs式はやや異なります。GaAs(ガリウム砒素)という半導体は、温度が上がるとエネルギーバンドギャップが狭まり、光の吸収が起きる波長(吸収端)が長波長側にシフトします。白色光をGaAs素子に当てて、この吸収シフトの位置を測定することで温度を割り出します。GaAs素子の応答は物性に基づくため、校正が基本的に不要という特性があります。
金属加工の観点では、電磁波・マイクロ波環境や医療MRIなどでの採用事例があります。特に高周波誘導加熱装置の内部や、強磁場が発生する設備では、通常の電気式センサーが使用できないケースが多く、蛍光式の光ファイバー温度計が代替手段として有効です。
精度面では、ケイエルブイ社が取り扱うOSENSAシリーズの蛍光式センサーは最大38kV(三相)の電気設備内でも安全に使用できると確認されています。電気系の設備温度管理に光ファイバーが使える理由です。また、MRI環境下の温度計測での実績もあり、非電磁適用範囲の広さが際立ちます。意外ですね。
GaAs素子を使った光ファイバー温度計の動作原理(オメガエンジニアリング)
FBG(Fiber Bragg Grating:ファイバー・ブラッグ・グレーティング)式は、光ファイバーのコア内に書き込まれた「回折格子(グレーティング)」を利用して温度やひずみを検出する方式です。1本のファイバーに複数のグレーティングを書き込むことで、多点同時計測ができるという大きな強みがあります。
原理を整理します。FBGとは、光ファイバーのコア部分に一定間隔で屈折率が変調されたエリアのことで、ちょうど光の「ふるい」のような役割を果たします。グレーティングの間隔に対応した特定波長の光だけを反射し、残りの光を透過します。温度やひずみが加わるとグレーティングの間隔が変化するため、反射する光の波長がずれます。この波長シフトを「インテロゲータ」という機器で読み取ることで、温度やひずみを算出します。
最大の実用メリットは「1本のファイバーで多点測定が可能」な点です。各グレーティングの間隔を少しずつ変えておくと、それぞれが反射する波長が異なります。インテロゲータ側でどの波長が変化したかを解析すれば、どの場所で何度変化したかが同時に把握できます。複数のセンサーを独立して配線する必要がなく、1点あたりのコストが大幅に下がります。
東京都立産業技術研究センターの研究によると、FBG温度計のさらなる高感度化に向けた取り組みが進んでおり、ファイバーへの加工精度向上によって検出感度が改善できることが示されています。金属加工の現場では、工具刃先温度・プレス金型の内部温度・溶接時の熱履歴など、狭いスペースに複数のポイントを設けたい用途にFBG式が特に向いています。これは使えそうです。
なお、FBG式は温度だけでなくひずみも同時に計測できるため、熱変形が問題になる精密加工ラインでは温度とひずみの両方をモニタリングするシステムとして構築することもできます。
FBGセンサーの原理・構成・アプリケーション一覧(ケイエルブイ)
金属加工の現場で最もよく使われてきた温度センサーは熱電対です。安価で使いやすく、広い温度レンジをカバーできる信頼性の高いセンサーである点は確かです。一方で、光ファイバー温度計が優れる場面も明確にあります。正しく使い分けることが、測定精度と品質管理コストを左右します。
まず応答速度について比較します。熱電対の応答速度はシース(保護管)の有無や径によって異なりますが、シース付きでは秒単位の遅れが生じることがあります。JFEテクノリサーチが開発した浸漬型光ファイバー温度計(FIMTHERM-H)は、標準タイプで10msec(0.01秒)ピッチ、高速タイプでは0.1msec(0.0001秒)ピッチという応答速度を実現しています。溶接やレーザー加工のような急速な温度変化を追跡するには、この差が重要です。応答速度が条件です。
| 比較項目 | 熱電対 | 光ファイバー温度計 |
|---|---|---|
| 電磁ノイズ耐性 | ❌ 影響を受ける | ✅ 影響なし |
| 応答速度 | △ シース付きで遅い | ✅ 最速0.1msec |
| 溶融金属への適用 | ❌ 接点が溶断する | ✅ 先端が溶けても継続測定可 |
| 多点同時計測 | △ 配線が増える | ✅ FBG式なら1本で多点 |
| 初期コスト | ✅ 安価 | △ やや高め |
| ランニングコスト | ❌ 消耗・交換が発生 | ✅ メンテナンスフリー |
特に注目すべきは「溶融金属への適用」です。熱電対はシースなしでアーク溶接部に近づけると接点が溶断しやすく、測定が途切れます。一方、浸漬型光ファイバー温度計は先端が溶融しても新しい断面から放射光を取り込む仕組みのため、測定が途切れません。YAGレーザー溶接への適用試験でも、急速加熱・急速冷却の温度変化がきれいなプロファイルとして記録できることが確認されています。
ランニングコストについても、現場では見落としがちです。熱電対は消耗品として定期的に交換が発生します。白金系の熱電対を日常的に使う場合は特にコストがかかります。光ファイバー温度計は初期投資が必要ですが、メンテナンスフリーで寿命が長いため、長期運用ではコスト逆転が起きやすいです。光ファイバーの場合、GaAs素子の応答は物性由来なので校正も不要というメリットまで加わります。長期視点が基本です。
浸漬型光ファイバー温度計の特徴と溶接部測定への応用事例(JFEテクノリサーチ)
光ファイバー温度計の原理と種類を理解したうえで、実際の金属加工工程にどう当てはめればよいかを整理します。工程ごとに最適な方式が異なるため、目的と環境に合わせて選ぶことが重要です。
誘導加熱・高周波焼入れには光ファイバー温度計が圧倒的に有利です。強いRF(高周波)磁界の中に熱電対を置くと、センサー線に電磁誘導が生じて測定値がずれます。光ファイバーはRF磁界の影響をまったく受けないため、誘導加熱中のリアルタイム温度モニタリングが正確に行えます。オメガエンジニアリングの事例では、鉄鋼ロッドやクランクシャフトの誘導加熱制御に光ファイバー赤外線プローブが使用されており、ON/OFF制御や比例制御との連携が可能とされています。
アーク溶接・レーザー溶接には浸漬型の光ファイバー温度計が向いています。前述のとおり、先端が溶損しても測定継続できる設計が大きな強みです。応答速度が最速0.1msecの高速タイプも選択できるため、溶接時の入熱管理やパス間温度制限のチェックにも使えます。厳しいですね、これが熱電対の限界です。
ダイキャスト・金型温度管理では、光ファイバーを金型フレームに通して金型内部温度を直接測定する事例があります。金型温度を最適に保つことで、過熱による廃棄物発生を大幅に削減できます。加工サイクルも温度ベースで自動制御できるため、コールドスタートや中断後の復帰時間も短縮されます。
広範囲の温度分布監視にはラマン散乱式(DTS方式)が最適です。大型の連続焼鈍炉や熱処理炉では、炉内の温度分布が均一でないことが問題になります。ラマン散乱式なら炉に沿ってファイバーを引けば、どの位置が何度かを連続的に把握できます。サンプリング間隔0.5m単位での測定も可能なので、局所的なホットスポットの早期発見にも対応します。
工程別の選定ポイントをまとめると以下になります。
- 誘導加熱・高周波焼入れ → 赤外線プローブ型(電磁ノイズ耐性)
- アーク・レーザー溶接 → 浸漬型(溶損しても継続測定)
- 狭い金型・複数スポット → FBG式(1本で多点計測)
- 炉全体・ライン全体の分布 → ラマン散乱式DTS(連続分布計測)
- 精密なポイント計測 → 蛍光式・GaAs式(校正不要・高精度)
導入前に確認すべき点は、測定したい温度レンジです。赤外線型の光ファイバー温度計は一般的に100℃以上が前提となります。低温域(室温付近)での精密計測には向かない場合があるため、蛍光式やFBG式と使い分けが必要です。温度レンジが条件です。また、FBG式はひずみと温度の両方に反応するため、加工中の機械的応力がある環境では補正ロジックを設計に組み込む必要があります。これは導入時に見落としやすいポイントです。
光ファイバー温度計の選定で迷う場合は、まずJFEテクノリサーチやケイエルブイ、オメガエンジニアリングなどのメーカーに現場環境の詳細(温度レンジ・電磁環境・設置スペース・測定点数)を伝えて問い合わせるのが確実です。試用貸し出しやデモ測定を行っているメーカーもあります。
誘導加熱・連続鋳造・レーザー加工など金属加工向けの光ファイバー活用事例(オメガエンジニアリング)

【Amazon.co.jp限定】ケルヒャー(Karcher) コードレス高圧洗浄機 OC Handy Compact CB USB-C充電式(10W以上推奨) 水道接続不要/丈夫なホース 高性能4in1ノズル バッテリー一体型 ペットボトル使用可能 簡単セットアップ/ハンディ モバイル コンパクト 軽量/洗車 ベランダ 玄関 1.328-125.0