レーザー溶接の基礎技術と応用事例から見る製造業の未来

レーザー溶接の基本原理から応用技術まで、金属加工の現場で活用できる知識を網羅的に解説。最新のハイブリッド技術や材料別の最適条件など、実務に役立つ情報が満載です。あなたの工場でも導入を検討してみませんか?

レーザー溶接の基礎と応用

レーザー溶接の基本
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高精度な加工

ピンポイントでエネルギーを照射し、精密な溶接が可能

低熱影響

熱影響部が小さく材料への変形やダメージを最小限に抑制

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高い生産性

高速溶接で生産効率向上、自動化との親和性が高い

レーザー溶接の原理とキーホール効果の解説

レーザー溶接は、高エネルギーのレーザービームを金属に照射して、局所的に溶かすことで接合する加工方法です。一般的な溶接方法と比較して、エネルギー密度が高く精密な溶接が可能なことが特徴です。

 

レーザー溶接の仕組みは、まず「発振部」でレーザー光を生成します。YAG結晶などを光源として、ミラーで光を繰り返し反射させて増幅することで、高エネルギーのレーザー光が作られます。この光は「光路」を通して「集光部」へと伝送され、レンズやミラーによって適切なスポット径に集光されて母材に照射されます。

 

レーザービームが金属材料に照射されると、まず材料の表面が融点を超えて溶け始めます。さらにエネルギーが加わると、溶融した金属が蒸発し、「キーホール」と呼ばれる細い穴が形成されます。このキーホールには金属蒸気が充満し、レーザーエネルギーをより効率的に吸収するため、より深い溶け込みが可能になります。

 

キーホール型溶接の流れは以下のとおりです。

  1. レーザーの照射により材料の温度が融点まで上昇
  2. 溶けた材料A、Bが溶融池を形成し混ざり合う
  3. キーホール(溶融金属に囲まれた穴)が形成される
  4. 熱源の移動に伴い溶融金属がキーホール周囲を流れる
  5. 溶融池の後部で金属が凝固し、連続した溶接部が形成される

溶融金属が大気中の酸素と接触すると、酸化反応により溶接継手強度の低下や変色の原因となります。これを防ぐため、レーザー溶接では加工点周囲に窒素やアルゴンなどのシールドガスを低圧で吹きかけて大気から保護します。このガス圧管理も重要で、高すぎると溶融金属を吹き飛ばしてしまう恐れがあります。

 

レーザー溶接の精度や品質を左右する主な要素としては、レーザーの種類と波長、出力、溶接速度、焦点外し距離などが挙げられます。これらのパラメータを材料や用途に応じて適切に設定することで、高品質な溶接結果を得ることができます。

 

レーザー溶接に適した金属材料と溶接条件

レーザー溶接は多くの金属材料に対応できますが、材料の特性によって溶接条件や難易度が異なります。ここでは、代表的な金属材料とその溶接特性、最適な条件設定について解説します。

 

【主な金属材料とレーザー溶接特性】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金属材料 特性 レーザー溶接の難易度 推奨条件
鋼(炭素鋼・ステンレス鋼) レーザー吸収率が高い 容易 ほとんどのレーザー種で対応可能
アルミニウム 反射率と熱伝導率が高い 難しい ファイバーレーザー、高出力条件が有効
チタン 適度な反射率と熱特性 比較的容易 シールドガスの使用が重要
高反射率・高熱伝導性 非常に難しい ブルーレーザーや波長制御技術が有効

材料の厚さによっても適切な溶接条件は変わります。薄い材料の場合は、溶け落ちや過剰な熱入力を防ぐために、レーザー出力を低く、溶接速度を高くする必要があります。一方、厚い材料では、十分な浸透と融合を確保するために、より高いレーザー出力とより遅い溶接速度が必要になります。

 

炭素含有量の高い炭素鋼や鋳鉄の溶接では、「溶接割れ」が発生しやすいという課題があります。これは溶融金属が焼き入れ硬化するためです。この問題に対処するためには、ワイヤを添加して炭素元素を希釈する方法が効果的です。レーザー溶接の深い溶け込み形状を活かしつつ、1パスで溶接することで、熱影響部の硬化を狭い範囲に抑えることができます。

 

A6000系のアルミニウム合金の場合も、割れ防止のためにワイヤ添加が有効です。また、アルミニウムの反射率の高さに対応するため、表面処理や特殊な波長のレーザーを使用することで吸収率を向上させる工夫も