ウレタンの特徴と種類、ゴムとの違い比較的、用途を解説

ウレタンは、その優れた特性から金属加工の現場でも広く利用されています。本記事では、ウレタンの基本的な特徴から、種類ごとの違い、ゴムとの比較、そして具体的な用途までを徹底解説。あなたの知らないウレタンの可能性が見つかるかもしれませんよ?

ウレタンの様々な特徴

ウレタンの3大特徴
💪
秀でた耐摩耗性

他のゴム素材を圧倒する耐摩耗性を誇り、過酷な環境でも長期間にわたって性能を維持します 。

🔧
幅広い硬度調整

材料の配合次第で、消しゴムのように柔らかいものからエンジニアリングプラスチックのように硬いものまで、自由に硬さを調整できます 。

⚙️
高い機械的強度

高い弾性を持ちながら、引き裂きや衝撃に強い優れた機械的強度を両立しているのが大きな特徴です 。

ウレタンの基本的な特徴と優れた機械的強度

 

ウレタン、正式にはポリウレタンと呼ばれる素材は、プラスチックの一種でありながらゴムのような弾性を持つユニークな存在です 。その最大の特徴は、他の合成ゴムと比較して群を抜くほどの**優れた耐摩耗性**にあります 。この性質により、キャスターやローラー、コンベアベルトのスクレーパーなど、常に摩擦に晒される過酷な環境下でその真価を発揮します 。
ウレタンの分子構造は、柔軟性を与える「ソフトセグメント」と、硬さや強度を司る「ハードセグメント」の二つの部分から構成されています 。この二つのセグメントの比率や種類を調整することで、驚くほど幅広い物性を実現できるのです 。例えば、非常に柔らかいゲル状のものから、金属に匹敵するほどの硬度を持つ硬質プラスチックまで、用途に応じて自由にカスタマイズが可能です 。

 

参考)https://www.mdpi.com/2073-4360/12/5/1197/pdf

さらに、機械的強度の高さもウレタンの重要な特徴の一つです 。高い引裂き強度、衝撃吸収性を持ち、大きな荷重がかかる部品や、振動を吸収する振材としても広く利用されています 。また、耐油性にも優れており、油圧機械のパッキンやシール材など、油に触れる環境での使用にも適しています 。これらの特性から、ウレタンは金属加工の現場をはじめとする工業分野で不可欠な素材となっているのです 。

 

参考)ウレタン紹介 - ウレタンの特徴いろいろ

以下の参考リンクでは、大手化学メーカーである三井化学が、自社製品の用途例を交えながらウレタン樹脂の基本情報を分かりやすく解説しています。

 

https://jp.mitsuichemicals.com/jp/service/product/urethane.htm

ウレタンの種類別(エーテル系・エステル系)の特徴と違い

ウレタンゴムは、その化学構造の違いから大きく「エーテル系」と「エステル系」の2種類に大別されます 。これらの種類によって特性が異なるため、使用環境や目的に応じて適切なタイプを選ぶことが非常に重要です 。どちらのタイプにも、熱を加えると軟化し、冷やすと固まる「熱可塑性」と、一度熱で硬化させると再び軟化しない「熱硬化性」の製品が存在します 。

エーテル系ウレタンの特徴と用途

エーテル系ウレタンの最大の特徴は、**加水分解(かすいぶんかい)に強い**、つまり耐水性に優れている点です 。水分による化学的な分解が起こりにくいため、水中や高湿度の環境での使用に適しています 。

     

  • 🌊 **優れた耐水性**: 水中ポンプの部品や、港湾設備の緩衝材など、常に水に触れる場所で活躍します。
  •  

  • 🦠 **耐カビ性**: 湿気が多い場所でもカビが発生しにくく、衛生的に使用できます。
  •  

  • 低温特性: 低温環境下でも柔軟性を保ちやすいという長所もあります 。

一方で、機械的強度や耐摩耗性、耐熱性においてはエステル系に一歩譲る傾向があります。

 

エステル系ウレタンの特徴と用途

エステル系ウレタンは、エーテル系とは対照的に、**機械的強度の高さと優れた耐摩耗性、耐油性**が持ち味です 。

     

  • 💪 **高い機械的強度**: 高い引張強度や引裂き強度を誇り、大きな力がかかる工業用ローラーやソリッドタイヤなどに使用されます 。
  •  

  • 🛡️ **優れた耐摩耗性**: 摩擦に非常に強く、長期間の使用でも摩耗が少ないため、コンベアベルトのスクレーパーや歯車などに最適です 。
  •  

  • ⛽ **良好な耐油性**: 鉱物油やグリースに対する耐性が高く、油圧シリンダーのパッキンやシール材として広く採用されています 。

ただし、エステル結合は水との反応で分解されやすいため、高温多湿の環境や水中での長期間の使用には注意が必要です 。
このように、同じウレタンでも種類によって得意なこと、不得意なことがあります。それぞれの特徴を正しく理解し、最適な材料選定を行うことが製品の性能と寿命を最大限に引き出す鍵となります。

 

ウレタンと他のゴム素材との比較、メリット・デメリット

ウレタン(U)は多くの優れた特性を持つ一方で、他のゴム素材と比較することで、そのメリットとデメリットがより明確になります 。ここでは、工業分野でよく使われる代表的なゴム素材であるニトリルゴム(NBR)やシリコンゴム(Si)、天然ゴム(NR)と比較してみましょう 。

ウレタンの最大のメリット:耐摩耗性と機械的強度

ウレタンの最大の強みは、他のゴム素材を圧倒する**機械的強度と耐摩耗性**です 。ゴムの中で最も摩耗に強いと言われ、鉱山用のスクリーンやフォークリフトのタイヤなど、非常に過酷な条件下で使用されます 。また、硬度の調整範囲が非常に広いのも特長で、柔らかいクッション材から硬い構造部品まで、一つの素材で対応できるのは大きなメリットです 。

ウレタンのデメリット:耐熱性と耐水性

一方で、ウレタンには弱点も存在します 。一般的なウレタン(特にエステル系)は、**耐熱性や耐水性(特に耐熱水性)に劣る**というデメリットがあります 。高温環境下では軟化しやすく、熱水や蒸気に長時間さらされると加水分解を起こして物性が著しく低下してしまいます 。そのため、スチーム配管のパッキンや高温になるエンジンの周辺部品などには不向きです。
以下の表は、各ゴム素材の特性を比較したものです。

 

特性 ウレタンゴム (U) ニトリルゴム (NBR) シリコンゴム (Si) 天然ゴム (NR)
機械的強度
耐摩耗性
耐油性 ×
耐熱性
耐水性 △ (エーテル系は○)
価格
(◎: 優, ○: 良, △: 可, ×: 不可)


このように、全ての要求を完璧に満たす万能な素材は存在しません 。ウレタンが持つ「高い機械的強度と耐摩耗性」というメリットと、「熱や水に弱い」というデメリットを正しく理解し、使用する環境や求める性能に応じて最適な素材を選定することが、コストパフォーマンスと安全性を両立させる上で極めて重要です。

 

参考)ウレタンとゴムの違いを徹底解説!特徴や用途の違いとは? - …

ウレタンの意外な弱点と加工時の注意点

ウレタンはその優れた物理的特性から多くの場面で活躍しますが、万能というわけではなく、いくつかの弱点が存在します 。これらの弱点を理解し、対策を講じることは、製品の寿命を延ばし、トラブルを未然に防ぐ上で欠かせません 。また、加工時にも特有の注意点があります。

意外な弱点①:紫外線による黄変

ウレタン、特に汎用的なタイプのものは、**紫外線に長時間さらされると黄色く変色しやすい**という性質を持っています(黄変) 。この変色は主に表面で起こり、物性への影響は軽微な場合が多いですが、外観が重視される製品にとっては大きなデメリットとなります 。屋外で使用する部品や、デザイン性が求められる製品に採用する際は、耐候性を高めた無黄変タイプのウレタンを選定するか、塗装やコーティングで表面を保護するなどの対策が必要です。

意外な弱点②:特定の薬品への耐性の低さ

ウレタンは耐油性に優れますが、全ての薬品に強いわけではありません。特に、**酸やアルカリ、そして特定の有機溶剤(ケトン、エステル、芳香族炭化水素など)に対しては耐性が低い**傾向にあります。これらの薬品に接触すると、膨潤(膨らむこと)や分解を引き起こし、本来の性能を著しく損なう可能性があります。使用環境でどのような薬品に接触するかを事前に確認し、必要であればメーカーが提供する耐薬品性データを確認することが重要です。

 

加工時の注意点

ウレタンは弾性が高いため、切削や研磨といった後加工が難しい素材の一つです。

 

     

  • **切削加工**: 弾性が高いため刃物が食い込みにくく、バリが発生しやすいです。加工精度を出すためには、よく切れる刃物を使い、適切な回転数と送り速度を設定する必要があります。また、加工熱で溶融しないよう、冷却も重要です。
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  • **接着**: ウレタンは表面エネルギーが比較的低いため、接着が難しい素材です。接着を行う際は、接着面をサンディング(やすりがけ)して粗面化したり、専用のプライマー(下地処理剤)を使用したりすることで、接着強度を大幅に向上させることができます。
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  • **保管**: ウレタン材料、特にエステル系のものは湿気の影響を受けやすいため、保管時は湿度の低い冷暗所に置くことが推奨されます 。開封後はなるべく早く使い切るか、乾燥剤とともに密閉して保管しましょう。

これらの弱点と注意点を把握し、設計や製造の段階で対策を盛り込むことで、ウレタンという優れた素材の能力を最大限に引き出すことができます。

 

ウレタンの多岐にわたる用途と金属加工での活用法

ウレタンはその優れた特性とカスタマイズ性の高さから、私たちの身の回りにある日用品から最先端の工業製品まで、驚くほど幅広い分野で活躍しています 。特にその耐摩耗性、衝撃吸収性、弾性は、金属加工の現場においても多くのメリットをもたらします 。

日常生活から宇宙航空まで広がる用途

ウレタンがどのように使われているか、具体的な例を見てみましょう 。

     

  • 🚗 **自動車関連**: シートクッションやアームレストといった内装品から、衝撃を吸収するバンパー、振動を抑えるブッシュまで、数多くの部品で使用されています 。
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  • 🛋️ **家具・寝具**: ソファや椅子のクッション材、マットレスなどに使われる軟質ウレタンフォームは、快適な座り心地や寝心地を提供します 。
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  • 👟 **ファッション・スポーツ用品**: スニーカーのソール、衣料用のストレッチ繊維(スパンデックス)、サッカーボールの表皮など、柔軟性と耐久性が求められる分野で活躍しています。
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  • 🏗️ **建築・土木**: 建物の壁や屋根に吹き付けて使用される硬質ウレタンフォームは、優れた断熱性能で省エネルギーに貢献します 。また、防水塗料や床材としても利用されます。
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  • 🔌 **工業製品全般**: 高い耐摩耗性を活かした工業用ローラーやキャスター、ベルト類 。弾性を活かしたシール材やパッキン、防振ゴム 。その用途は枚挙にいとまがありません。

金属加工現場での具体的な活用法

金属加工のプロフェッショナルとして、現場でウレタンをどのように活用できるかを知ることは、作業効率の改善や製品品質の向上に繋がります。

 

     

  1. **治具・受け具として**: 高い硬度と弾性を持つウレタンは、加工対象の金属を傷つけることなく、しっかりと固定するための治具や受け具として最適です。金属同士が接触する場合に比べて、製品表面の傷や打痕を劇的に減らすことができます。
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  3. **プレス加工のダイクッション・ストリッパーとして**: プレスブレーキ(ベンダー)での曲げ加工時に、ダイ(下型)としてウレタンを使用すると、金属表面に傷がつくのを防ぎ、「R曲げ」と呼ばれる滑らかな曲げ加工が可能になります。また、抜き加工後の材料をダイから押し出すストリッパープレートとしても、その弾性が活用されます。
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  5. **防振材・緩衝材として**: 機械の振動が床や他の設備に伝わるのを防ぐための防振パッドや、搬送ラインでの製品同士の衝突を防ぐ緩衝材として、ウレタンの優れた衝撃吸収性が役立ちます 。
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  7. **スクレーパー・ワイパーとして**: コンベアベルト上に付着した切りくずや油を除去するスクレーパーとして、ウレタンの耐摩耗性と耐油性が活かされます 。

このように、ウレタンは単なる素材の一つではなく、金属加工における様々な課題を解決する力を持つ「道具」として捉えることができます。その特性を深く理解し、柔軟な発想で活用することで、あなたの仕事の可能性はさらに広がるはずです。

 

 


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