あなた、硬度重視で工具寿命3割損してますよ

TiNコーティングの硬度は一般的にHV1800〜2500程度です。これは焼入れ鋼(HV700前後)の約3倍の硬さに相当します。かなり硬いです。
ただし、この数値はあくまで理想条件での話で、実際の切削現場では温度や負荷によって大きく変化します。例えば切削温度が600℃を超えると、硬度は体感で2〜3割低下するケースもあります。つまり温度依存が強いです。
さらに重要なのは、硬度=耐久ではない点です。密着性が弱いと、HV2000でも剥離して即寿命になります。ここが盲点です。
結論は硬度単体では不十分です。
TiNコーティングの膜厚は一般的に2〜5μm程度です。これはコピー用紙の厚さ(約100μm)の50分の1以下です。かなり薄いです。
厚くすれば耐摩耗性が上がると思われがちですが、実は逆です。膜厚が5μmを超えると内部応力が増え、チッピング(欠け)のリスクが約20〜30%上昇します。これは工具破損に直結します。
一方で薄すぎる(1μm以下)と摩耗が早まり、工具交換頻度が増えます。時間ロスです。
つまり用途ごとに最適膜厚が必要です。
このリスク(過剰膜厚による欠け)を避けるには、再コーティング時に膜厚指定を確認するのが有効です。狙いは内部応力の最適化で、候補はコーティング業者の仕様書確認です。確認するだけでOKです。
TiNは硬い=摩耗しにくいと思われていますが、摩耗には種類があります。代表的なのは以下です。
TiNは特に凝着摩耗には強いですが、高温での拡散摩耗には弱い傾向があります。例えばステンレス切削では、TiNよりTiAlNの方が寿命が1.5倍以上伸びるケースもあります。用途差です。
つまり硬度だけでは評価できません。
どういうことでしょうか?硬度は「引っかき傷への強さ」であり、「化学反応」や「熱劣化」は別問題です。ここを混同すると選定ミスにつながります。
結論は摩耗種類の理解です。
TiNコーティングはPVD(物理蒸着)で形成されます。このとき下地処理が不十分だと密着強度が半分以下になることがあります。これは危険です。
例えば脱脂不足や酸化膜残りがあると、初期100ショット以内で剥離する事例もあります。現場では「初期不良」に見えますが、原因は前処理です。ここが本質です。
密着性が低いと、どれだけ硬度が高くても意味がありません。剥がれたらゼロです。
つまり前処理が最重要です。
このリスク(初期剥離)を防ぐには、再研磨後の洗浄工程をチェックするのが有効です。狙いは密着強度の確保で、候補は超音波洗浄の有無確認です。確認だけでOKです。
TiNコーティングは1本あたり数百円〜数千円ですが、選び方を間違えるとトータルコストが大きく変わります。
例えば、TiNで工具寿命1000個加工、TiAlNで1500個加工の場合、単価が1.5倍でも総コストは約25%削減されます。これは大きいです。
逆に安いTiNを選んで交換頻度が増えると、段取り時間や人件費が増加します。見えないコストです。
つまり単価ではなく総コストです。
それで大丈夫でしょうか?
このリスク(交換頻度増加による時間損失)を避けるには、加工1個あたりコストで比較するのが有効です。狙いは総コスト削減で、候補は加工数ログの記録です。記録するだけです。

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