あなたが普段SGPで代用している配管、実は10MPa超えの現場では使用不可で法令違反になります。
STPG370は、JIS G3454「圧力配管用炭素鋼鋼管」に規定された材料です。適用範囲は「350℃程度以下で使用する圧力配管」と明確に定められており、使用圧力は10MPa以下が目安となります。
「STPG」という名称は「Steel Tubing Piping General」の頭文字を省略したものです。末尾の数字「370」は、この材料の最小引張強さ(N/mm²)を示しています。
JIS G3454には2種類が規定されており、引張強さによってSTPG370とSTPG410に分類されます。現場では一般的な圧力配管にはSTPG370が、より高い強度を要する箇所にはSTPG410が選ばれます。つまり、用途に応じた使い分けが基本です。
製造方法は継目無鋼管(シームレス管:記号S)と電気抵抗溶接鋼管(電縫管:記号E)の2種類。仕上方法には熱間仕上げ(H)、冷間仕上げ(C)、電気抵抗溶接のまま(G)があります。表示はこれらを組み合わせる形になっており、たとえば熱間仕上継目無鋼管のSTPG370は「STPG370-S-H」と表記されます。覚えるのは記号の組み合わせだけでOKです。
また、亜鉛めっきの有無で黒管と白管に分かれます。図面や帳票上で白管を区別する必要がある場合は、種類の記号の後に「-ZN」を付記します(例:STPG370-ZN)。ただし、製品本体の表示には「-ZN」は適用されない点に注意が必要です。
呼び径は6A(外径10.5mm)から650A(外径660.4mm)まで幅広くラインアップされており、JIS規格の長さは4,000mm以上と定められています。定尺長さは一般的に5,500mmのものが流通しています。
参考:kikakurui.com|JIS G3454:2019 圧力配管用炭素鋼鋼管の全文(適用範囲・種類・製造方法・検査項目の詳細確認に有用)
化学成分はSTPG370の材料品質を左右する根幹です。JIS G3454では5元素(C・Si・Mn・P・S)の溶鋼分析値が厳密に規定されています。
STPG370の化学成分規定値は下表のとおりです。
| 元素 | 規定値(質量%) |
|---|---|
| C(炭素) | 0.25以下 |
| Si(ケイ素) | 0.35以下 |
| Mn(マンガン) | 0.30〜0.90 |
| P(リン) | 0.040以下 |
| S(硫黄) | 0.040以下 |
ここで押さえておきたいのがSTPG410との違いです。STPG410はCが0.30以下、Mnが0.30〜1.00と若干緩く設定されており、炭素量が上限に近づくほど溶接時の低温割れリスクが高まります。STPG370はC上限が0.25%なので溶接性に優れていることが多いですが、肉厚が増すほど注意が必要になります。
なお、SGP(配管用炭素鋼鋼管:JIS G3452)との大きな違いがここにあります。SGPは化学成分の規定が「鉄鋼五元素」として明示されていませんが、STPG370はC・Si・Mn・P・Sがすべて数値で規定されています。材料証明書(ミルシート)で各元素の値を確認できるのはそのためです。これは重要な差異です。
溶接施工要領書(WPS)を作成する際、STPG370のC含有量0.25%という数値は炭素当量の計算にも直結します。炭素当量が低いほど溶接時の予熱は省略しやすくなりますが、肉厚20mm以上など拘束度が高い条件では事前に溶接試験を実施し、WPSに反映することが推奨されています。
参考:日本溶接協会 溶接相談例|STPG370の溶接予熱に関するQ&A(肉厚増加時の予熱判断の根拠として参照可能)
機械的性質はSTPG370を選ぶ際の最重要データです。JIS G3454では引張試験が義務付けられており、引張強さ・降伏点(または耐力)・伸びの最小値が規定されています。
| 項目 | STPG370 | STPG410 |
|---|---|---|
| 引張強さ(N/mm²) | 370以上 | 410以上 |
| 降伏点または耐力(N/mm²) | 215以上 | 245以上 |
| 伸び(11号試験片・管軸方向) | 30%以上 | 25%以上 |
引張強さ370N/mm²というのは、断面積1mm²あたり37kgの力を加えても破断しない強度です。A4用紙1枚(約623cm²)の面積に換算すると、約23トンの荷重に相当するイメージになります。これはかなりの強度です。
一方、降伏点215N/mm²は「ここを超えると永久変形が始まる」限界値です。配管の設計ではこの降伏点をベースに安全率を考慮します。一般的に安全率は4とされるため、STPG370-S(継目無管)の場合、許容応力は215÷4≒53.75N/mm²となります。
伸びの規定値にも注意が必要です。呼び径25A以下の管については伸びの規定は適用されませんが、受渡当事者間の協定で値を規定してもよいとされています。また、厚さ8mm未満の管には別表(表4)の伸び規定が適用され、厚さが1mm減るごとに伸びの最小値から1.5%を差し引く計算になります。薄肉管の選定では見落としやすいポイントです。
機械的性質の数値を把握しておくと、スケジュール番号の計算にも直接役立ちます。結論として「強さの数字を先に確認する」習慣が大切です。
参考:hkpnote.com|STPG370・STPG410の配管サイズ・径・厚さ・重量(寸法表と機械的性質の横断確認に便利)
STPG370は「スケジュール管」とも呼ばれます。JIS G3454では呼び径ごとに肉厚のバリエーションとして、Sch10・Sch20・Sch30・Sch40・Sch60・Sch80の6種類が規定されています。
スケジュール番号(Sch)は以下の計算式で求めます。
$$\text{Sch} = 10 \times \frac{P}{S}$$
ここでPは最高使用圧力(MPa)、Sは使用状態における管の許容応力(MPa)です。
実際の計算例を挙げます。STPG370-S(継目無管)を用いて、常温50℃・圧力6MPaの配管を設計する場合、許容応力S=92N/mm²(≒92MPa)とすると:
$$\text{Sch} = 10 \times \frac{6}{92} \approx 65$$
この場合、計算値より大きい次のスケジュール番号であるSch80を選定することになります。厳しいですね。
現場でよく使われるのはSch40とSch80です。Sch40は「スケ4(ヨン)」、Sch80は「スケ8(ハチ)」と呼ばれることも多く、実用上はこの2種類を基本として把握しておけば大半の場面に対応できます。
水圧試験の観点からも確認が必要です。JIS G3454に規定されている水圧試験下限圧力は、Sch10が2.0MPa、Sch40が6.0MPa、Sch80が12MPaとなっており、スケジュール番号に応じて試験圧力が変わります。水圧試験か非破壊試験(超音波探傷・渦電流探傷)かは、注文者が指定するか、指定がなければ製造業者が選択できます。どちらが適用されたかは受け取るミルシートで確認が必要です。
誤ったスケジュール番号を使ってしまうと、配管内圧力に耐えられず破損・漏洩のリスクがあります。計算式を使った確認を習慣にすることが大切です。
参考:機械設計者のメモ|スケジュール番号の計算方法(STPG370の具体的な計算例あり、選定時の検算に活用可能)
規格の数値をそのまま信頼して加工や組み付けを進めると、実は許容差の範囲内でもかなりのばらつきが存在します。これが予期せぬ組み付け不良につながることがあります。
STPG370の寸法許容差は、製造方法(継目無か電縫か)と仕上方法(熱間か冷間か)によって異なります。以下に整理します。
🔸 **熱間仕上継目無管の外径許容差**
- 40A以下:±0.5mm
- 50A〜125A:±1%
- 150A:±1.6mm
- 200A以上:±0.8%
🔸 **熱間仕上継目無管の肉厚許容差**
- 肉厚4mm未満:+0.6mm / −0.5mm
- 肉厚4mm以上:+15% / −12.5%
🔸 **冷間仕上継目無管・電縫管の外径許容差**
- 25A以下:±0.3mm
- 32A以上:±0.8%
🔸 **冷間仕上・電縫管の肉厚許容差**
- 肉厚3mm未満:±0.3mm
- 肉厚3mm以上:±10%
ここで見落とされがちなのが、熱間仕上継目無管の肉厚プラス公差が最大+15%に達する点です。たとえばSch40の100A(公称肉厚6.0mm)では、肉厚の上限は6.0×1.15=6.9mmになります。重量計算や流路計算で公称値だけを使うと、実際の製品との差が積み上がることがあります。これは使えそうな知識です。
また、電縫管の溶接ビード部については、外面と内面のビードは管の形状に滑らかに沿うように除去されます。ただし内面ビードは除去が困難な場合は溶接のまま残しても良いとJIS規格は認めています。内径の寸法精度が重要な場面では、この点を事前に確認しておくことをおすすめします。
外径の測定において、周長を用いて判定する場合はπ×D(D=外径)の換算式を使います。許容差±0.5%が適用されるため、350A以上の大口径では周長測定が認められています。外径を直接計測しにくい大径管では、巻き尺で周長を測定し換算する方法が現場でも使われます。
参考:モノタロウ|圧力配管用炭素鋼鋼管解説(スケジュール番号・使用温度範囲・SGPとの違いの比較に有用)
多くの金属加工従事者がSGPとSTPG370を似たようなものとして扱ってしまいがちですが、使用圧力の上限が大きく異なります。これが大きな落とし穴です。
SGP(JIS G3452:配管用炭素鋼鋼管)は、比較的低い圧力(1.0MPa以下程度)の水・空気・蒸気・油・ガスの輸送に使われます。一方、STPG370は10MPa以下での高圧配管に対応しており、使用可能な圧力範囲がおよそ10倍も違います。
用途面で整理すると、STPG370が主に使われる場面は地域冷暖房(DHC)配管・高温水配管・高圧蒸気管です。使用温度は−15℃〜350℃の範囲で対応しています。SGPよりも同一呼び径で肉厚が厚いため、単位質量(kg/m)もSGPに比べて重くなります。
化学成分の規定にも決定的な差があります。SGPはJIS G3452において化学成分が数値で明記されていませんが、STPG370はC・Si・Mn・P・Sがすべて数値で規定されています。ミルシートで化学成分が詳細に記載されているのはSTPG370の特徴であり、品質トレーサビリティが求められる現場では大きなメリットになります。
| 項目 | SGP(JIS G3452) | STPG370(JIS G3454) |
|---|---|---|
| 使用圧力目安 | 1.0MPa以下程度 | 10MPa以下 |
| 使用温度 | 概ね常温 | −15℃〜350℃ |
| 化学成分規定 | 明記なし | 5元素すべて数値規定 |
| 肉厚 | 比較的薄い | Schで管理・同径でSGP比厚い |
| 主な用途 | 一般配管 | 高圧・高温配管 |
「流体を運べれば同じ」という感覚で代用すると、圧力保持性能が不足して配管事故につながるリスクがあります。設計条件を必ず確認してから材料選定を行うことが原則です。なお、材料の選定に迷う場合は、JIS G3454の規格値と設備の最高使用圧力・設計温度を照合した上で製造業者や専門家に相談するのが確実です。
参考:TLV|配管の種類一覧(SGP・STPG・STS・STPTなどの使用温度・圧力範囲の横断比較に最適)
十分な情報が収集できました。記事を作成します。