「あなたの焼入れ温度、10℃違うだけで5万の部品が全損します。」
S55Cは機械構造用炭素鋼の中でも高炭素で、焼入れ後はHRC55〜60前後まで硬化します。一般的な850〜870℃焼入れ、180〜200℃の焼戻し条件でこの範囲に収まります。ただし炉の実温との差が10℃あるだけで、硬度がHRC4〜5も変動する事例があります。つまり温度精度が命ですね。
また、焼入れ油の交換時期が遅れると、酸化膜などにより冷却性が低下し硬度がHRC50以下に落ちることも報告されています。硬度が出ない原因は素材ではなく、油の管理不足ということです。ここは意外ですね。
温度制御と媒体の管理が法則です。つまり、数℃単位の調整が最後の品質を決めるということです。
実際のHRC測定では、測定方向や荷重の違いでも平均HRCが±2前後変化します。特に表面スケールを除去せずに測ると、誤差がHRC3以上になることも。結論は、下地処理の統一が条件です。
例えば同じ850℃処理でも、断面の中心部はHRC45前後に留まることがあります。焼入れ性の不均一による内部軟化です。切断・穴あけ加工を想定する場合、この内部の硬度分布が摩耗寿命を左右します。内部硬度を確認すれば大丈夫です。
ここを見落とすと、仕上げの刃物を数回で破損するケースも報告あり。痛いですね。
焼入れ時に「水冷のほうがしっかり硬くなる」と考えがちですが、これは半分誤りです。S55Cは冷却速度が速すぎると割れが発生します。特に穴径5mm以下の部品では、端部からクラックが走ることがあります。つまり冷却速度が速すぎるのです。
実験では油冷S55CでHRC57、水冷ではHRC58とほぼ同等結果もあります。むしろ油冷のほうが残留応力が小さいため、寸法精度の再現性が高いのです。結論は、精密形状なら油冷が基本です。
また、冷媒温度を20℃から30℃に上げるだけでひずみ率が15%下がったという報告もあります。冷却槽の管理にも注意すれば大丈夫です。
焼戻し温度200℃付近ではHRC58→HRC54程度に低下します。この過程で靭性が約20%増します。つまり壊れにくくなる分、やや柔らかくなるということです。
さらに300℃以上で焼戻すと硬度がHRC50を切り、切削性が格段に上がります。再加工部品や型修正にはこの領域が適しています。ただし過焼戻しすると炭化物が粗大化し、疲労強度が下がるので注意が必要です。温度が鍵です。
製品用途によって、目的硬度と靭性のバランス設定が基本です。つまり用途に応じた焼戻しが原則です。
焼入れ割れを回避するには、予熱を2段階に分けるのが効果的です。600℃→850℃と上げるだけで割れ率が半減した実験があります。短い部品なら問題ありません。
また、焼入れ炉の酸化雰囲気が強いと、表面脱炭層が0.2mm以上できる場合があります。この層を研削で落とさないと、測定硬度がHRC50台に見える偽結果になります。意外ですね。
これを防ぐには、ガス雰囲気炉や真空熱処理を採用するのが最適解です。コストは1kgあたり100円前後上がりますが、仕上がり安定度が得られます。つまり、品質保証のための投資ということです。
三菱マテリアル社の技術資料では、真空焼入れでS55CがHRC59を安定的に実現と報告されています。品質重視なら検討の価値ありです。