パーマロイ部品を一度でも乱暴に曲げると、実は新品よりシールド性能が3割以上落ちることがあります。
パーマロイの磁気シールド原理は、「磁束を止める」のではなく「磁束の通り道を変える」発想が基本です。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq)
具体的には、空気の数万倍クラスの高透磁率を持つことで、磁束が抵抗の小さいパーマロイ内部へ集中し、シールドしたい空間をバイパスさせます。 frasco(https://frasco.tech/permalloy/)
つまり外乱磁場はパーマロイの壁の中を通り抜け、内部空間にはほとんど入り込めない状態になります。
つまり磁束の迂回路を作るということですね。
このとき重要になるのが、透磁率と保磁力のバランスで、比透磁率が6万~18万、保磁力が0.8A/m程度の78%パーマロイは典型的な磁気シールド材です。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq.html)
パーマロイは軟磁性材料であり、外部磁界がゼロになるとほぼ残留磁化を持たずに元の状態へ戻るため、シールド材として繰り返し使っても磁気的な履歴が問題になりにくい特徴があります。 tech-journey(https://www.tech-journey.jp/column/230929-2/)
言い換えると、「よく磁化されるけれど、すぐに素の状態に戻る鉄の壁」を周囲に立てるイメージです。
この性質があるからこそ、電子顕微鏡室や精密計測室のシールドルームでは、壁一面にパーマロイ板を貼り込む構造が採用されています。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq)
東京ドーム1個分ほどの空間を覆う大型ルームでも、厚さ1〜2mmのパーマロイシートを何枚も重ねて使う例があります。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq)
結論は透磁率をいかに維持するかが勝負です。
また、低周波磁場に強いことも実務上のポイントです。
パーマロイが真価を発揮するのは、1Hz付近の極低周波から商用周波数200Hz程度までの磁場で、工場内の大電流配線やモーター、インバータから出る低周波磁界ノイズを抑えやすい領域です。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq.html)
一方で、MHz帯ではアルミなどの導体シールドでもある程度対応できるため、「なぜパーマロイ指定なのか?」は、対象周波数帯を確認すると理解しやすくなります。 daido.co(https://www.daido.co.jp/products/permalloy/what/index.html)
周波数帯を図面上で確認するだけでも設計意図がかなり見えてきます。
パーマロイは低周波用だという認識が基本です。
パーマロイの磁気シールド性能を決めるパラメータの中心は、比透磁率μと保磁力Hc、そして飽和磁束密度Bsです。 frasco(https://frasco.tech/permalloy/)
一般的な78%パーマロイPCでは、初透磁率が6万、最大透磁率が18万程度、最大磁束密度が0.72Tというデータが示されています。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq.html)
これを、一般的な構造用鋼の比透磁率が数百〜数千程度であることと比べると、桁違いに「磁束が通りやすい」ことがわかります。
つまり普通鋼とは別物の磁束配管材ということです。
保磁力が0.8A/mと小さいため、一度大きな磁場を受けても、磁界がゼロに戻ればほぼ残留磁化を持たないのも特徴です。 tech-journey(https://www.tech-journey.jp/column/230929-2/)
温度依存性も無視できません。
温度によって性能が微妙にズレるということですね。
もうひとつ重要なのが、内部応力と透磁率の関係です。
パーマロイは磁区が非常に動きやすい構造を持つ反面、加工による歪みや残留応力に敏感で、内部応力が高いと透磁率が大きく低下します。 cend(https://cend.jp/emc_primer/product/kyushutai.html)
薄板を曲げたり、切断時のバリ取りで局所的な塑性変形を与えたりすると、その部分だけ透磁率が落ちて「磁束が通りにくい首の絞れたパイプ」のような状態になります。 cend(https://cend.jp/emc_primer/product/kyushutai.html)
つまり局部応力が性能のボトルネックになるということです。
このため、最終的な磁性焼鈍で応力を抜くプロセスが、単なる仕上げではなく「性能の復元工程」として位置付けられています。 kk-comatsu(https://www.kk-comatsu.com/permalloy/)
金属加工の現場で最も見落とされがちなのは、「加工条件の違いが透磁率を二桁レベルで変えてしまう」という事実です。
パーマロイの優れた透磁率を最大限引き出すためには、磁性焼きなましと呼ばれる熱処理が不可欠であり、1000℃以上の高温水素雰囲気での焼鈍によって透磁率が100倍近く向上するとされています。 kk-comatsu(https://www.kk-comatsu.com/permalloy/)
逆に言えば、加工後に適切な磁性焼鈍を行わなければ、カタログ値の1/50〜1/100程度の透磁率しか出ていない可能性があるということです。
焼鈍条件が性能のスイッチということですね。
しかも、コストや設備制約から900℃程度までしか上げられないケースでは、本来の特性が得られないという指摘もあります。 global(https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/techReviewAssets/tech/review/2000/03/pdf/06.pdf)
加工そのものにもリスクがあります。
パーマロイは工具との親和性が高く、切削部が発熱すると切り屑や素材が工具と溶着しやすく、一般的な工具では摩耗や刃欠けが早期に発生します。 kk-comatsu(https://www.kk-comatsu.com/permalloy/)
その結果、切削抵抗が不安定になり、局所的な加工硬化や歪みが残りやすくなって透磁率低下の要因になります。 cend(https://cend.jp/emc_primer/product/kyushutai.html)
これは精度の問題だけでなく、シールド性能そのものに直結する点が厄介です。
つまり加工硬化は磁気特性にも悪影響ということです。
加えて、曲げや溶接も注意が必要です。
パーマロイは強度を持った金属なので構造材としても使えますが、曲げ・切断・溶接による内部応力には弱く、高温で組織が変化すると透磁率が低下してしまうとされています。 cend(https://cend.jp/emc_primer/product/kyushutai.html)
たとえば、シールドケースの角Rを現場判断で少しキツく曲げ直しただけでも、角部の透磁率が局所的に落ち、磁束の逃げ道が狭まってシールド性能が3割以上低下するようなケースが報告されています。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=RDJ-nCtN_q0)
どういうことでしょうか?
これは、指ではじく、落下させる、変形させるといった軽微なストレスでも、パーマロイの磁気シールド性能が変化することを示した実験結果とも整合しています。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=RDJ-nCtN_q0)
こうしたリスクを抑えるには、加工手順の後ろに「磁性焼鈍」を必ず入れる工程設計と、加工応力をできるだけ小さくし、曲げ回数を最小限に抑える治具設計が有効です。 kk-comatsu(https://www.kk-comatsu.com/permalloy/)
外注先に依頼する場合は、「最終磁性焼鈍の有無」「焼鈍温度・雰囲気」「曲げ加工の回数と最小R」を図面の技術条件として明記し、検査側でも磁気シールド性能のサンプル測定を行う体制を整えると、後戻りコストを大きく減らせます。
つまり工程表と図面で磁気特性を縛ることが条件です。
磁気シールドの原理を理解していても、「どの程度の厚み・層数でどれだけ減衰するのか」を体感している現場は多くありません。
パーマロイ箔材のデータでは、10kHz〜10MHzの帯域で、1MHzにおいてアルミには見られない高いシールド性を示し、弱磁界用グレードでは極低磁界でも高いシールド性を維持できることが示されています。 daido.co(https://www.daido.co.jp/products/permalloy/what/index.html)
また、別のグレードでは強磁界中でもシールド性を保つことができるため、周囲の磁束密度に応じて材質と板厚を選ぶ必要があります。 daido.co(https://www.daido.co.jp/products/permalloy/what/index.html)
材質と周波数帯のマッチングが基本です。
例えば、工場内のインバータモーター近傍で、5mT程度の磁界を20dB減衰させたい場合、単層板で足りるのか多層構造が必要なのかは、磁束密度・板厚・形状・隙間の組み合わせで決まります。 kitir.kanazawa-it.ac(http://kitir.kanazawa-it.ac.jp/infolib/cont/01/G0000002repository/000/000/000000310.pdf)
極低周波磁界に対する磁気シールドの研究では、試験片の透磁率や形状からシールド効果を予測し、模型実験で推定精度を検証する手法も提案されています。 kitir.kanazawa-it.ac(http://kitir.kanazawa-it.ac.jp/infolib/cont/01/G0000002repository/000/000/000000310.pdf)
これにより、どの透磁率レンジを改善すればシールド効果が大きく伸びるかが見極めやすくなり、材質選定や熱処理条件の最適化に役立ちます。 kitir.kanazawa-it.ac(http://kitir.kanazawa-it.ac.jp/infolib/cont/01/G0000002repository/000/000/000000310.pdf)
研究結果をうまく設計に取り込むことがポイントですね。
現場レベルでは、最終製品でいきなり評価するのではなく、50mm角程度のパーマロイ板で簡易的なシールドボックスを作り、外部コイルで1mT程度の磁界を与えたときの内部磁界強度をホール素子などで確認する簡易試験が有効です。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq)
評価の際に意外と効いてくるのが、「隙間」と「接合部」です。
磁気シールドの原理上、磁束は透磁率の高い経路を通ろうとする一方で、板同士の隙間やボルト穴など透磁率の低い箇所には磁束が集中しやすく、いわば磁束リークのホットスポットになります。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq.html)
板厚を1mmから2mmに増やすよりも、隙間を0.5mmから0.1mmに減らしたり、重ね代を増やして返し構造にしたりした方が、シールド性能が大きく向上することもあります。 ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq)
つまり隙間対策のほうが効くケースも多いということです。
これらの事情から、設計時には以下のような対策が現実的です。
・板厚をむやみに増やす前に、継ぎ目やボルト周りの構造を見直す
・磁気シールド方向と直交する接合部は重ね構造にし、磁束の逃げ道を増やす
・必要であれば、パーマロイの外側に軟鋼板を追加し、磁束分担をさせる多層構造を検討する ohtama.co(https://www.ohtama.co.jp/faq.html)
・熱処理後の歪みを想定し、穴位置や曲げ位置に余裕を持たせる
こうした設計の工夫が、加工の手戻りや現場調整の時間ロスを減らすことにつながります。
磁気シールドは設計・加工・評価を一体で考えるのが基本です。
金属加工の現場で実際に起きやすいのは、「図面どおりの寸法は出ているのに、装置側から『磁気ノイズが取れていない』とクレームが来る」というパターンです。
このとき、原因として真っ先に疑われるのは「材質違い」や「板厚不足」ですが、実際には、加工時の内部応力や不十分な磁性焼鈍が原因で、透磁率がカタログの数分の一まで落ちているケースも少なくありません。 cend(https://cend.jp/emc_primer/product/kyushutai.html)
さらにやっかいなのは、見た目はきれいに仕上がっているのに、角部の再曲げや梱包中の落下で局所的な性能劣化が起きているパターンです。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=RDJ-nCtN_q0)
痛いですね。
こうしたトラブルは、外注先も装置メーカー側も「どこで性能が落ちたのか」が分からず、責任の押し付け合いになりやすい点が大きなリスクです。
対策として有効なのは、「図面の技術条件」と「検査記録」のセット運用です。
図面側では、材質記号だけでなく、「磁性焼鈍済み」「焼鈍温度と雰囲気の指定」「加工後再磁性焼鈍の有無」といった条件を明文化し、寸法公差と同じレベルの必須条件として扱います。 global(https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/techReviewAssets/tech/review/2000/03/pdf/06.pdf)
さらに、外注先には簡易的な磁気シールド評価の実施を依頼し、少なくともロットごとに代表サンプルの透磁率またはシールド減衰量を測定してもらうと、問題の早期発見につながります。 kitir.kanazawa-it.ac(http://kitir.kanazawa-it.ac.jp/infolib/cont/01/G0000002repository/000/000/000000310.pdf)
磁気性能にも検査証明書を付ける運用が基本です。
現場での取り扱いルールを決めておくことも重要です。
・パーマロイ部品の保管時は、落下や変形が起きない専用トレーに入れる
・出荷前検査後は再曲げ・再締結をしない運用にする
・強い磁石を近づけて遊ぶといった行為を禁止し、教育資料に理由を明記する youtube(https://www.youtube.com/watch?v=RDJ-nCtN_q0)
といったシンプルなルールだけでも、思わぬ性能劣化を防げます。
つまり人の「つい」を抑えるルール作りが大事です。
最後に、装置メーカーとの情報共有も欠かせません。
磁気シールドは、装置側の配置や配線、筐体の接地方法などとも強く絡み合うため、「パーマロイの箱を作れば終わり」ではなく、完成装置側での磁場分布測定や、必要に応じたシールド構造の追加・補強が必要になります。 tdk(https://www.tdk.com/ja/tech-mag/ninja/082)
初期段階から、ターゲット周波数帯、想定磁束密度、許容残留磁界レベル(例えば1μT以下など)を共有しておくと、後工程での手戻りコストを大きく下げることができます。 kitir.kanazawa-it.ac(http://kitir.kanazawa-it.ac.jp/infolib/cont/01/G0000002repository/000/000/000000310.pdf)
どういう場合にどのレベルのシールドが必要かを一緒に決める姿勢が有効です。
結果として、パーマロイの加工・熱処理・取り扱いを適切に管理できる現場は、磁気ノイズに敏感な装置開発プロジェクトで選ばれやすくなり、受注の安定にもつながります。
パーマロイの基礎特性と磁気シールド原理の詳細説明(透磁率データやシールド効果の模式図がわかりやすいです)。
株式会社オータマ「よくあるご質問|パーマロイ・磁気シールド・磁界測定・熱処理」