二色成形金型の構造・設計・コストを徹底解説

二色成形金型の仕組みや種類、材料の相性・剥離リスクから金型費用の実態まで詳しく解説。導入を検討している金属加工・樹脂成形の担当者が知らないと損する情報とは?

二色成形の金型で知っておくべき構造・設計・コストの基本

二色成形の金型費用は、単色成形より安くなる場合がある。


この記事でわかること
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金型の構造と2つの方式

回転方式とスライド方式の違い、インサート2色成形と回転2色成形の使い分けを解説します。

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材料の相性と剥離リスク

樹脂の組み合わせを間違えると成形後に剥離が発生します。結晶性・非結晶性の違いと注意すべき組み合わせを紹介します。

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金型費用の実態と費用対効果

単色成形金型の1.5〜2倍かかる初期費用。でも量産数次第で大幅なコストダウンにつながる理由を数字で説明します。


二色成形金型の基本構造と「回転方式・スライド方式」の違い

二色成形専用の金型は、通常の単色成形金型とは根本的に構造が異なります。可動側(コア)と固定側(キャビティ)がそれぞれ2個ずつ必要になる、いわゆる「2面1セット」の構成が基本です。1色目を成形した後、金型内部で成形品を位置移動させ、2色目の樹脂を正確に重ね合わせるため、コアとキャビティの位置合わせ精度が極めて重要になります。わずか0.05mm以下のズレでも外観不良や寸法不良に直結するため、金型加工の難易度は単色型よりもはるかに高くなります。


二色成形金型の代表的な方式として「回転方式」と「スライド方式」の2種類があります。


🔄 回転方式は、1色目の成形後にコア側(可動側)を回転盤で180度回転させ、2色目の射出位置に成形品を移動させる方法です。1次側と2次側を同時に成形するため1サイクルの生産効率が高く、量産品に非常に向いています。スイッチ類や家電部品など、数十万〜数百万ショット規模の大量生産で広く採用されています。成形品が金型から離型しないまま移動するため、変形が少なく、材料同士の密着性も高い点が強みです。


↔️ スライド方式は、成形サイクル中にコアやキャビティ自体をスライドさせて2色目の位置に合わせる方法です。製品形状やゲート位置に柔軟に対応できるため、段差を持つ部品や意匠面と機能面が分かれているような複雑形状の製品に適しています。ただし機構が増える分、メンテナンスの手間が増え、回転方式よりサイクルタイムが長くなる傾向があります。


まとめると、量産性・精度を優先するなら回転方式、複雑形状への対応を優先するならスライド方式が原則です。どちらを選ぶかは、製品の量産計画数と形状の複雑さによって判断します。




二色成形専用の射出成形機について解説しているページです。成形機の種類(回転型・Lポジション型・Vポジション型)と、それぞれの金型構造の違いが詳しく記載されています。
2色成形機の種類と特徴 – 大型2色成形.com


二色成形金型の設計で見落とされやすい「コア共通化」の落とし穴

回転2色成形では、2つの金型のコア(可動側)が共通形状でなければなりません。これは一見コスト削減につながるように思えますが、実際には設計上の大きな制約になります。コアが共通であるため、1次側で成形した形状にしか2次側は対応できず、コア面(内側)への樹脂の回り込みが原則できないのです。


インサート2色成形の場合は1次型で成形した成形品をいったん離型して2次型にセットするため、コアが異形状でも対応可能で、成形品の裏側にまで樹脂を回すことができます。つまり「コアの裏面まで2色化したい」という要件がある場合は、インサート2色成形を選ぶ必要があります。これは設計段階で見落とすと、金型を作り直すという大きなロスにつながります。金型費が無駄になるリスクがあります。


また、回転2色成形では金型のコア側を共用するために、「合わせ」(成形品と金型が接触する境界部分)の調整に高い技術が求められ、金型費が単色成形と比べて約2割増しになるケースがあります。一方で、成形機1台で成形できるため、インサート2色成形(2台使用)と比べると成形単価は約2割安くなるというデータもあります。


| 比較項目 | インサート2色成形 | 回転2色成形 |
|---|---|---|
| 使用成形機 | 2台(汎用機) | 1台(専用機) |
| コア形状 | 異形状OK | 共通形状が必須 |
| 精度 | ばらつきが出やすい | 高精度 |
| 金型費 | 比較的安い | 約2割高い |
| 成形単価 | 比較的高い | 約2割安い |
| サイクルタイム | 遅い(インサート工程+3〜5秒) | 速い |


「金型を安く作りたい」という視点だけで方式を選ぶと、成形単価や不良率で後から損するケースがあります。金型費と成形費を合わせたトータルコストで判断することが基本です。




インサート2色成形と回転2色成形の違い、それぞれの成形の流れと金型構造の違いを図解で解説しています。
射出成形における2色成形とは?種類や成形の流れ、特徴について解説 – MFG HACK


二色成形金型で失敗しない「樹脂材料の相性と融着性」の見極め方

二色成形の品質を決定づける最も重要な要素が「材料同士の相性(融着性)」です。この点を軽視すると、成形後に境界面で剥離が発生し、製品が使い物にならなくなります。材料選定の失敗はクレームに直結します。


まず押さえておくべき基本知識として、樹脂は「結晶性樹脂」と「非結晶性樹脂」に大別されます。


- 結晶性樹脂(例:PE・PA・POMなど)は分子構造が規則正しいため、異種材同士の融着が弱く、剥離しやすい傾向があります。特にポリエチレン(PE)やナイロン(PA)はこの傾向が顕著です。ただし、ポリプロピレン(PP)は例外で、他の結晶性樹脂よりも融着しやすい特性を持っています。
- 非結晶性樹脂(例:PMMA・PCなど)は分子構造がランダムなため、分子間の結合が強く融着しやすい特徴があります。アクリル(PMMA)やポリカーボネート(PC)はこれらの代表例です。


二色成形でよく使われる組み合わせとして「硬質×軟質」があります。代表的なのはPP(ポリプロピレン)とオレフィン系TPE(熱可塑性エラストマー)の組み合わせで、融着性が良好なため多くの製品に採用されています。電動ドライバーのグリップや掃除機のタイヤなど、硬い本体と柔らかい握り部分の一体成形がその代表例です。


一方、TPE(熱可塑性エラストマー)とナイロンのような結晶性樹脂を組み合わせると、剥離リスクが大幅に高まります。異材質を組み合わせる場合は、事前に「デザインプレート」と呼ばれる試作金型で100mm×100mmサイズの試作を行い、融着度を確認することが業界での標準的なアプローチになっています。本型を起こす前に確認するのが原則です。


また、あえて融着しない材料を組み合わせる逆転の発想もあります。材料の収縮率の差を利用し、組立工数だけを削減するという設計提案が実際に現場で行われています。意外ですね。


成形条件の最適化も剥離止には欠かせません。特に2色目射出時の温度管理は1色目との融着性を大きく左右し、数℃の違いが品質に影響することもあります。




二色成形における樹脂材料の組み合わせと融着性の相性を、化学的性質・材料硬度の両面から詳しく解説しているページです。
2色成形の材料組み合わせと相性 – 大型2色成形.com


二色成形金型の費用相場と「初期投資を回収できる」量産数の目安

二色成形の導入を検討する際、多くの担当者が最初にぶつかるのが「金型費が高い」という壁です。具体的な数字を見てみましょう。


三光ライト工業が公開しているデータによると、二色成形金型(DCタイプ)のコストは以下の水準になります。


| 形状 | 1個取り(DCタイプ) | 1個取り(アーブルグタイプ) |
|---|---|---|
| 形状A(比較的単純) | 200万円 | 170万円 |
| 形状B(スライドあり) | 220万円 | 190万円 |


単色成形金型と比較すると、キャビ・コアとも2個ずつ必要になるためほぼ材料費が2倍になり、加工工数も単色金型の約2個分かかります。トータルの製造コストは試作検証費用を含めて「単色成形金型の1.5〜2倍」が目安です。数字で見ると重い投資です。


ただし、この初期費用をランニングコストで回収できるかどうかが判断の鍵になります。コスト削減効果の主な内訳は下記の通りです。


- 🏭 部品点数の削減:2部品を1部品に統合することで、部品管理・物流コストが減少します。
- 👷 組立工数の削減:手作業での組立工程が丸ごとなくなります。
- ⏱️ リードタイムの短縮:在庫管理・生産管理コストが下がり、省人化も進みます。


たとえば、年間10万個の量産品で、1個あたりの組立工数が10秒削減できるとすると、年間換算で280時間分の人件費が浮く計算になります。月25日・1日8時間の作業に換算すると約1.5カ月分です。少量生産では二色成形のメリットは少ないですが、量産数が多くなるほど1個あたりのイニシャルコストが薄まり、大きなコストダウンを生み出せます。


また、簡易金型(試作用)を活用すれば費用は20万〜80万円程度に抑えることができ、本型前の検証に有効です。




二色成形金型の価格事例(形状別・取り数別)と、単色金型との費用比較を具体的に解説しているページです。
2色成形 金型の価格・費用について – 三光ライト工業株式会社


二色成形金型が活躍する製品分野と「同材料2重成形」という盲点の活用法

二色成形と聞くと「2色のデザイン製品を作る技術」というイメージが強いですが、実際には機能向上を目的とした用途が多数存在します。活用分野は思った以上に広いです。


📱 家電・電子機器分野では、リモコンのボタン(透明樹脂+有色樹脂の組み合わせ)、キーボードのキートップ(透過部分と不透過部分の一体化)、スマートフォンケースなどが代表例です。印刷では経年劣化で文字がかすれてしまいますが、二色成形ではそれが起こりません。耐久性が格段に上がります。


🚗 自動車内装部品では、シフトノブ、ダッシュボードの操作ノブ、室内照明スイッチなど、「見た目と触り心地」の両方が求められる部品に採用されています。硬質樹脂で骨格を作り、軟質エラストマーで表面のグリップ感を出す設計が多く見られます。


🏥 医療機器分野でも需要が高まっています。継ぎ目のない一体構造は衛生面で優れており、グリップ部・操作部での軟質材採用は使用感の向上につながります。防水壁をシリコーンパッキン(Oリング)の代わりにエラストマーで一体成形する設計は、部品点数削減と防水性能向上を同時に実現する方法として注目されています。


最も見落とされやすいのが「同一材料での2重成形」という活用法です。あえて全く同じ材料を2度に分けて成形することで、厚肉成形品の「ひけ(表面の凹み)」を防止し、寸法精度を高める技術があります。収縮率の大きい材料では特に有効で、単純に色を変えるだけではない応用が二色成形の奥深さを示しています。これは使えそうです。


さらに、「部分メッキ」を実現する使い方もあります。メッキがつく樹脂とメッキがつかない樹脂を組み合わせて一体成形することで、部分的にメッキを施した意匠部品を作ることが可能です。後工程でのマスキング作業が不要になるため、製造コストと工数の両面で大きなメリットがあります。




二色成形の機能付加事例(防水壁・部分メッキ・透光性文字・ひけ防止など)を具体的な製品写真付きで紹介しているページです。
2色成形のメリットとデメリット – 三光ライト工業株式会社


十分な情報が集まりました。記事を作成します。