金属加工の現場にいるあなたでも、医療機器受注で材料証明書不備により案件を失うことがあります。
コアマテリアル株式会社は、沖縄県うるま市勝連南風原の工業地帯(沖縄国際物流拠点産業集積地域うるま地区)を拠点とする、医療用高分子プラスチック樹脂の製造・開発に特化したスタートアップ企業です。2019年に沖縄県那覇市で会社を設立し、2022年5月に工場を稼働させました。現在の敷地面積は5,253㎡で、建物面積は約1,500㎡。会社の規模感として言えば、テニスコート約9面分の広さを持つ本格的な製造拠点です。
金属加工業に長く携わっていると、「樹脂や高分子材料は別世界」と感じる方も少なくないでしょう。しかし、コアマテリアルが手がける製品は、カテーテルや注射針といった体内埋め込み型医療機器の原料となるTPUペレットです。これは、精密金属部品と組み合わせて最終製品に加工されることが多く、製造サプライチェーンにおいて金属加工業者と密接に関係します。
同社の大きな特徴は、2024年初頭にISO 10993(生体適合性試験)およびFDA(アメリカ食品医薬品局)の認証をクリアしたことです。国際標準規格で体内埋め込みに対する安全性が正式に認められた、これは日本国内の樹脂メーカーとしては非常に希少な実績です。
設立当初はコロナ禍の影響で海外エンジニアの入国制限が発生し、工場稼働が2年間延期になるという困難を乗り越えた経緯があります。現在は海外の研究員とも連携しながら、グローバル企業として着実に歩みを進めています。沖縄の地理的優位性(東アジアの中心に位置)や温暖で寒暖差が少ない気候(樹脂の温度管理製造に適している)も、拠点選定の根拠となっています。つまり、偶然ではなく戦略的な判断で沖縄に製造拠点が置かれているということです。
コアマテリアル株式会社 公式サイト(会社概要)|会社のミッションや製造方針の詳細を確認できます
コアマテリアルが製造・販売する医療用熱可塑性ポリウレタン(Medical-grade TPU)は、現時点で4シリーズが展開されています。それぞれの特性を理解することは、金属加工業者が医療機器部品の設計・受注を検討する際にも参考になります。
| シリーズ名 | 種類 | 硬度範囲 | 30日以上の生体安定性 | 柔軟性 |
|---|---|---|---|---|
| REシリーズ | 芳香族ポリエーテルTPU | 80A〜75D | やや低い | |
| LEシリーズ | 脂肪族ポリエーテルTPU | 70A〜70D | 良好 | 最高レベル |
| RCシリーズ | 芳香族ポリカーボネートTPU | 75A〜75D | 最高レベル | 良好 |
| LCシリーズ | 脂肪族ポリカーボネートTPU | 80A〜70D | 最高レベル | 良好 |
各シリーズに共通する特長として、硫酸バリウム(Barium Sulfate)によるX線不透過性(ラジオパシファイア)への対応、カスタムカラーへの対応、射出成形・押出成形の両方への対応が挙げられます。これは実用的です。
特に金属加工業者が注目すべきは、TPUの「硬度の幅の広さ」です。ショアA70A(ゴムに近い柔らかさ)からショアD75D(硬質プラスチック並みの硬さ)まで対応しています。例えば、ショアA80A程度はシリコーンゴムより少し硬い程度で、手で容易に曲げられます。一方ショアD75Dは、硬質塩ビ管のような硬さです。
この硬度の幅の広さが原則です。これにより、金属部品と組み合わせる際に、接続部分・シール部・チューブ部など、部位ごとに要求される硬度に合わせた素材選定が可能になります。
また、LEシリーズはヒドロゲルグレードやソリューショングレードにも対応しており、薬剤放出型デバイスや表面コーティング材料としての応用も視野に入ります。これは使えそうです。
加工ガイドはコアマテリアルの公式サイトから取得でき、乾燥条件(Drying Guide)や材料特性ブローシャーが各シリーズごとに用意されています。新規材料の採用検討段階で、まずこのガイドを確認することを推奨します。
材料特性|コアマテリアル株式会社|各シリーズの生体適合性・機械特性・化学耐性の詳細データが確認できます
金属加工業者が医療機器メーカーと取引を始めようとする際、最初の壁になるのが「認証・証明書の問題」です。材料証明書や生体適合性レポートの整備が不十分なサプライヤーは、どれほど加工精度が高くても取引候補から外されることがあります。これは厳しいところですね。
コアマテリアル株式会社はこの点を明確に意識した体制を持っています。同社が取得・維持している主要な認証体制は以下の通りです。
金属加工業者にとってこれが重要な理由は明確です。医療機器部品の加工を受注する場合、使用する材料(金属・樹脂いずれも)のトレーサビリティと認証書類の提出が必須になります。取引先メーカーから「使用原料の生体適合性レポートを提出してください」と求められた際、ISO 10993とISO 13485認証を持つコアマテリアルのTPU素材を使用していれば、即座に対応できます。
また、ISO 13485の認証は「海外取引や大手企業との取引では取得が事実上の必須条件」(日本マネジメント協会調べ)となっています。金属加工業者が医療機器分野の受注拡大を狙うなら、自社がISO 13485を取得するか、または認証取得済みの素材メーカーと連携して書類を揃えることが現実的な最短ルートです。
ISO 13485の取得費用は規模や審査機関によりますが、中小企業では認証取得までに150〜300万円程度のコストがかかるケースもあります。それに対してコアマテリアルのTPU素材を使うことで、材料側の認証負担はゼロです。コストの節約が条件です。
ISO13485(医療機器品質マネジメントシステム)とは|日本マネジメント協会品質保証センター|取引条件・海外展開における認証の重要性について解説されています
金属加工の現場では「プラスチックは弱い」「精密度が出ない」というイメージが根強く残っています。意外ですね。しかし、医療機器の世界では、ステンレスやチタンで作られていた部品の一部がTPUのような高機能高分子素材に置き換えられるケースが増えています。これを「樹脂化(金属代替)」と呼びます。
樹脂化が進む背景には、明確な数字があります。一般的な金属素材と比較したTPUの密度の違いを見ると、鉄(炭素鋼)が約7.8 g/cm³であるのに対し、TPUは約1.2〜1.3 g/cm³程度です。単純計算で重量は鉄の約1/6になります。これは、完成した医療機器の総重量を大きく削減できることを意味します。カテーテルや体内埋め込み型デバイスでは、軽量化は患者への負担軽減に直結するため、メーカー側の強い要求事項です。
金属加工業者がTPU素材を活用する際の実務的なポイントを整理します。
一方で、注意点も存在します。樹脂化はすべての金属部品に適用できるわけではありません。高温環境(100℃超)や高い機械的負荷がかかる部位は、依然として金属部品が優位です。金属と樹脂の役割分担を設計段階で正確に判断することが、医療機器部品の品質と安全性を守る上で不可欠です。
金属代替でコスト削減と軽量化!樹脂化のメリットと具体的事例を解説|射出成形の専門サイト|金属と樹脂の特性比較・コスト感の実例が豊富です
ここまでの情報をまとめると、コアマテリアル株式会社との連携が金属加工業者にとって「知っていると得をする」情報であることがわかります。では具体的に、どのようなアクションを取れば受注拡大につながるのかを整理します。
まず最初に確認すべきことは、自社が現在受注している、あるいは受注を狙っている製品の中に医療機器関連があるかどうかです。医療機器メーカーへの部品供給、研究機関向けの精密部品製造、薬品会社向けの機器部品など、直接的な関係がなくても間接的にサプライチェーンに入っているケースがあります。これが基本です。
次に取り組むべきは、素材知識の整備です。コアマテリアルの公式サイト(corematerials.co)には、日本語での材料特性ページや認証情報が公開されています。各シリーズのデータシートを読み込み、自社の加工技術と組み合わせて提案できるレベルの知識を持つことが、営業力の強化につながります。
なお、コアマテリアルは現在、自社の課題として「沖縄県内での化学薬品・原料の調達」を挙げています(うるまコンサルタート案件紹介シートより)。これは逆に言えば、原料調達や資材供給の面で連携できる企業(物流・商社・材料メーカー)にとってもビジネス機会が存在することを意味します。
金属加工の枠を越えた素材知識と認証理解を持つことが、これからの製造業に必要な競争力の一つです。コアマテリアル株式会社のような専門特化型メーカーを正しく理解し、サプライチェーンの中でポジションを確立することが、今後の受注安定につながります。
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ISO13485とは?ISO9001との違いや要求事項を解説|医療機器メーカーとの取引で求められる認証の概要と取得の流れが詳しくまとめられています