冷やし嵌め締め代の計算と公差選定の基本知識

冷やし嵌めの締め代はどう計算すればいいのか、材料ごとの線膨張係数や公差クラスの選び方まで、金属加工の現場で即使える知識をまとめました。あなたの設計に抜けはありませんか?

冷やし嵌めの締め代:計算と公差の基本

締め代を「なんとなく経験値」で決めていると、組付け後に部品が0.1mm単位でずれて製品クレームになります。


🔩 冷やし嵌め・締め代 3つのポイント
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締め代は材料の線膨張係数で決まる

炭素鋼(S50C)の線膨張係数は約12×10⁻⁶/℃。直径100mmで温度差83℃なら約0.098mmの収縮量が得られます。

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液体窒素冷却で-196℃まで下げられる

恒温槽の限界を超える締め代が必要な場合、液体窒素(-196℃)を使うことで大きな収縮量を確保できます。

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公差クラスの選定が保持力を左右する

永久固定にはs6・u6、分解可能な圧入にはp6・r6が基本。公差クラスを1段間違えると必要な締め代が大きく変わります。


冷やし嵌めの締め代とは何か:しまりばめの基礎

冷やし嵌めとは、軸(シャフト)より穴の内径を小さく設計し、軸側または穴側を冷却・収縮させることで圧入する組付け工法です。 締め代(しめしろ)とは、この「常温では干渉している寸法の差」のことを指します。 seizogyo-channel(https://seizogyo-channel.com/news/hiyashibame/)


たとえば軸径が50.059mm、穴径が50.000mmなら、締め代は0.059mmです。 これはシャープペンシルの芯の直径(0.5mm)の約8分の1という微細な値ですが、この数値が組付け後の保持力を直接決定します。 engineer-education(https://engineer-education.com/machine-design-55_shrinkage-fit_cooling-fit/)


締め代が足りないと保持力不足で部品が脱落し、逆に大きすぎると部品が破損するリスクがあります。 つまり締め代の設計は「狭すぎず・広すぎず」の精密なバランスが命です。 nippa-kk.co(https://nippa-kk.co.jp/%E5%86%B7%E3%82%84%E3%81%97%E5%B5%8C%E3%82%81%E3%81%A8%E7%84%BC%E5%B5%8C%E3%82%81/)


冷やし嵌めの締め代を決める3つの条件

締め代を決定するには、以下の3つの条件をすべてクリアする必要があります。 d-monoweb(https://d-monoweb.com/blog/understanding-coefficient-linear-expansion/)


- 面圧が許容応力以下であること:最大締め代のときに発生するフープ応力(周方向応力)が、材料の降伏応力を超えないよう設計する
- 最小締め代でも必要な保持力(トルク・軸力)が確保できること:最小締め代は軸の最小径と穴の最大径の組み合わせで発生し、この条件でも必要トルクを伝達できる面圧が必要
- 冷却装置で対応できる温度範囲に収まること:恒温槽の最低温度(多くは-40~-80℃程度)で収縮量がまかなえるか確認する


結論は「3つの条件が同時に成立する締め代の範囲を見つける」ことです。


面圧の計算には以下の式が基本となります。 最大締め代 Δdmax 時の面圧 σ は材料の弾性係数 E と形状係数 K、直径 d を使って求めます。この計算を省略して経験値だけで締め代を決めると、大径部品(直径100mm超)では応力過多による割れが起きることがあります。 d-monoweb(https://d-monoweb.com/blog/understanding-coefficient-linear-expansion/)


割れが起きたら部品の作り直しです。材料費・加工費だけで数万円単位の損失になります。


冷やし嵌め締め代の計算式:具体的な数値例

計算の手順を直径100mm・材質S45C(炭素鋼)の例で示します。 d-monoweb(https://d-monoweb.com/blog/understanding-coefficient-linear-expansion/)


線膨張係数 α = 11.8×10⁻⁶/℃、締め代 Δd = 0.098mm(98μm)で必要な温度差 Δt は。


Δt = Δd ÷(α × d)= 0.098 ÷(11.8×10⁻⁶ × 99.902)≒ 83℃


室温が20℃なら、103℃以上に加熱(または-63℃以下に冷却)すれば嵌合できます。 d-monoweb(https://d-monoweb.com/blog/understanding-coefficient-linear-expansion/)


冷やし嵌めの場合は「軸を冷却して収縮させる」か「穴側部品を加熱する」かを選択しますが、軸側を冷却するケースでは、ドライアイス(-78℃)で対応できるか液体窒素(-196℃)まで必要かがこの計算で判明します。 恒温槽の能力を事前に確認しておくことが必須です。 kbkeng.co(https://www.kbkeng.co.jp/4277/)


数字で確認してから作業するのが原則です。



参考:締め代・焼き嵌め計算の詳細な解説(オイレス工業・ハメアイ計算支援)

https://www.oiles.co.jp/products/bearing/design-support/fitting/


冷やし嵌めの公差クラス選定:s6・u6・p6の使い分け

公差クラスの選定は締め代の範囲に直結します。 代表的な選択基準は次のとおりです。 nichidai(https://www.nichidai.jp/column/blog/column_029/)


| 公差クラス | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| s6 | 永久固定(分解不可) | 焼き嵌め・冷やし嵌め・強圧入が必要 |
| u6 | 超強固定(大荷重伝達) | s6より大きな締め代、焼き嵌め必須 |
| r6 | 中程度固定(大寸法部品) | 大径では焼き嵌め・冷やし嵌め区分に入る |
| p6 | 軽圧入(分解可能) | 大きな力での組立・分解が可能 |


穴基準はめあい方式では穴側をH7固定とし、軸の公差クラスで締め代を制御するのが標準的です。 nichidai(https://www.nichidai.jp/column/blog/column_029/)


s6とp6では最小締め代が大きく異なります。たとえば基準寸法50mmでは、s6の最小締め代は約18μm、u6になると40μm以上になります。 用途を誤ってp6を指定すると、使用中の振動で部品が緩む重大不具合に直結します。これは設計段階のミスです。 engineer-education(https://engineer-education.com/machine-design-55_shrinkage-fit_cooling-fit/)


公差クラスの選定が条件です。 nichidai(https://www.nichidai.jp/column/blog/column_029/)



参考:はめあい公差クラスと寸法許容差の数値表(ミスミ技術資料)

https://jp.misumi-ec.com/pdf/fa/2014/p1_2287.pdf



現場が見落としがちな締め代の「材料差」と管理方法


ここは検索上位にはあまり出てこない視点ですが、実務上の失敗事例として非常に重要です。

材質が変わると線膨張係数が変わり、同じ図面寸法でも冷却後の収縮量が異なります。 具体的には: kbkeng.co(https://www.kbkeng.co.jp/4277/)


- 炭素鋼(S45C・S50C):約11.8~12.0×10⁻⁶/℃
- ステンレス鋼(SUS304):約17.3×10⁻⁶/℃(炭素鋼の約1.4倍)
- アルミ合金(A5052等):約23.5×10⁻⁶/℃(炭素鋼の約2倍)


S45Cで設計した締め代の計算値を、材料変更でSUS304に差し替えた場合、必要な温度差は約30%小さくなります。意外ですね。


つまり「材料を変えたら締め代の再計算が必要」ということです。同じ図面を流用すると、嵌合力が計算値より大幅にずれます。


現場の管理策としては、作業指示書に「材質・線膨張係数・必要冷却温度」をセットで記載する運用が効果的です。 作業者が毎回計算するのではなく、設計段階で「この部品にはドライアイス(-78℃)で可」「この部品は液体窒素(-196℃)必須」と明示しておくことで、現場の作業ミスを止できます。 seizogyo-channel(https://seizogyo-channel.com/news/hiyashibame/)


材質の違いだけ覚えておけばOKです。



参考:線膨張係数から焼き嵌め代を決める方法の解説(MONO塾)

https://d-monoweb.com/blog/understanding-coefficient-linear-expansion/