DXガスのリッチ型には一酸化炭素が約10%も含まれており、気づかず吸い込むと意識を失う危険があります。

発熱型変成ガスとは、プロパン(C₃H₈)やブタン(C₄H₁₀)などの炭化水素ガスに大量の空気を混合し、燃焼・変成させて生成した雰囲気ガスのことです。反応が自己発熱で進むことから「発熱型」と呼ばれており、現場では主に「DXガス」という呼称で知られています。
このガスの最大の特徴は、窒素(N₂)が主成分である点です。生成後の組成のほとんどを窒素が占め、残りを一酸化炭素(CO)・二酸化炭素(CO₂)・水素(H₂)などが構成します。つまり、「燃やした後のガスを熱処理に使う」というシンプルな発想がベースにあります。
プロパンの完全燃焼を例にとると、反応式は以下のようになります。
C₃H₈ + 5(O₂ + 3.76N₂) → 3CO₂ + 18.8N₂ + 4H₂O
この式からわかるように、空気中の窒素(N₂)がそのままガス成分として残るため、生成ガスは窒素リッチになります。生成後に水分(H₂O)を除去することで、金属の熱処理に使える雰囲気ガスが出来上がります。つまり発熱型変成ガスの主成分は窒素ということですね。
発熱型変成ガスの生成には、外部からの熱源が不要です。吸熱型変成ガス(RXガス)が1,000℃以上のニッケル触媒を必要とするのに対して、DXガスは燃焼熱だけで変成が進みます。この点がランニングコストの低減につながっており、特に大量のガスを必要とする圧延コイルの光輝焼鈍炉などで広く採用されている理由の一つです。
変成炉(DXガス発生装置)の基本的な構成要素は、原料ガスと空気を混合するミキサー、燃焼室、冷却器、そして水分除去装置です。生成されたガスは速やかに冷却され、炉内へ送気されます。冷却の速さが品質に直結するため、一部のメーカーでは2段階冷却方式を採用し、タイムロスなく安定したガスを供給できる工夫を行っています。
キーエンス:雰囲気熱処理と雰囲気ガスの基礎知識(発熱型変成ガスの反応式・組成表を掲載)
発熱型変成ガスはひとくくりに「DXガス」と呼ばれることが多いですが、実際には空気の混合比率(空燃比)によって3つのタイプに分類されます。それぞれ組成が異なり、適した用途も変わってくるため、現場での選定ミスが品質トラブルに直結することがあります。
DXガス(リーン型)/DX(L) は、空気を多めに混合して生成するタイプです。CO濃度は約1.5%と低く、CO₂が10.9〜12.8%と高い割合を占めます。露点は+5℃程度で、鋼のブルーイング加工や鋼・アルミの無酸化焼なましに使われます。浸炭性が低いため、炭素含有量の管理が重要な工程には向きません。
DXガス(リッチ型)/DX(R) は、空気の量を絞って生成するタイプです。CO濃度が約10.2%まで跳ね上がり、H₂も7.6〜10.8%含まれます。リーン型に比べて還元性が強く、低炭素鋼の光輝焼なましや電磁鋼板の焼なまし、ろう付けに適しています。CO濃度が高い点は後述の安全管理で重要なポイントになります。
窒素型変成ガス(NXガス) は、DXガスからさらにCO₂と水分を除去したものです。組成はN₂が大部分を占め、CO₂は0.05%以下まで低下、露点は−40℃以下になります。DXガスよりも清浄度が高く、光輝焼なましや無酸化焼入れ、焼結といった用途で使われます。
以下に3種類の組成をまとめます。
| 種類 | 通称 | CO(%) | CO₂(%) | H₂(%) | N₂ | 露点(℃) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 発熱型変成ガス(リーン) | DX(L) | 1.5 | 10.9〜12.8 | 0.8〜1.0 | 残 | +5 |
| 発熱型変成ガス(リッチ) | DX(R) | 10.2 | 5.3〜7.3 | 7.6〜10.8 | 残 | +5 |
| 窒素型変成ガス | NX | 1.8 | <0.05 | 0.9〜1.1 | 残 | −40 |
種類ごとに組成・露点・用途が明確に違う、ということが基本です。ここを混同すると、たとえば浸炭が必要ない工程でリッチ型を使ってしまい、製品表面の炭素量が変化するというトラブルにつながります。選定の際は必ずガス組成表と用途を照合する習慣をつけると安全です。
なお「DXガス(リッチ)」は一酸化炭素を約10%含んでいます。これは一般的な職場の一酸化炭素の労働安全基準値(50ppm=0.005%)の実に2,000倍に相当する濃度です。リーン型しか使い慣れていない方がリッチ型を扱う場面では、特に注意が必要です。
サンファーネス:熱処理用雰囲気ガスの種類・組成・用途を詳しく解説(表付き)
現場では「DXガス」と「RXガス」が混在して使われることがあります。名前が似ているため混乱しやすいですが、この2つは発生原理から主成分まで根本的に異なります。それぞれの特性を正確に理解しておくことが、品質管理とコスト管理の両面で重要です。
発熱型変成ガス(DXガス)は、前述の通り原料ガスと空気を混合して燃焼させることで生成します。自己発熱で反応が進むため、外部からの加熱エネルギーが原則不要です。主成分は窒素(N₂)で、COやCO₂の含有量は比較的高め。特にリッチ型ではCO₂も5〜7%台に達します。
一方、吸熱型変成ガス(RXガス)は外部から熱を供給しなければ反応が起きません。プロパンなどの炭化水素ガスを1,000℃以上に加熱したニッケル触媒に通して変成させます。生成されるのはCO:20〜24%、H₂:30〜40%、残りN₂という組成で、DXガスに比べてCO濃度が圧倒的に高くなります。これが吸熱型変成ガスです。
以下に両者の主な違いを整理します。
RXガスはガス浸炭炉の雰囲気ガスの大部分を占めるほど広く使われていますが、CO濃度がDXリッチ型の2倍以上(約20%超)になることも多く、安全管理上の難易度が上がります。これは原則です。
発熱型変成ガスと吸熱型変成ガスの「どちらを選ぶか」は、目的とする熱処理の種類、ガス消費量、設備コスト、安全体制のバランスで判断します。
たとえば、大量のコイル材を光輝焼鈍する工程にはDXガスがコスト面で有利です。一方、精密な浸炭深さの管理が必要な自動車部品の表面処理ではRXガスが採用されるケースが多くなります。目的に合ったガスを選ぶことが前提です。
関東冶金工業:工業炉の雰囲気ガスの種類とDXガス・RXガスの特徴まとめ
DXガスが実際にどのような工程で使われているかを整理すると、現場での選定ミスを防ぐことができます。発熱型変成ガスの用途は、主に「酸化防止」を目的とした熱処理が中心です。浸炭など炭素量を積極的に変える工程には向かないことが、用途選定の大前提です。
光輝焼なまし(Bright Annealing) は、DXガスが最も広く使われる用途の一つです。金属を加熱しながら表面を酸化させず、光輝のある外観を保つ処理です。低炭素鋼のコイル材や電磁鋼板の焼なましでは、DX(R)やNXガスが使われます。たとえば家電製品に使われる薄板鋼板の多くは、この工程を経て加工されています。
ろう付け(Brazing) もDXガスの重要な用途です。金属部品同士を接合する際に、接合部を酸化させないための雰囲気として使われます。家庭用エアコンや自動車クーラーの熱交換器の製造現場では、アルミ部品の炉中ろう付けにDXガスが用いられることがあります。
鋼のブルーイング はDX(L)の用途として知られています。ブルーイングとは、鋼の表面に薄い酸化被膜(Fe₃O₄)を意図的に形成し、黒青色の外観と防錆効果を付与する処理です。リーン型のDXガスは酸化性がやや残っているため、この薄い被膜形成に利用されます。
アルミの光輝焼なまし にはDX(DRY)が適しています。アルミは比較的低温で酸化するため、露点を−40℃まで下げた乾燥タイプが使われます。
以下に用途ごとに使用されるDXガスの種類をまとめます。
| 用途 | 使用するガスの種類 |
|---|---|
| 鋼のブルーイング | DX(L)/リーン型 |
| 低炭素鋼の光輝焼なまし | DX(R)/リッチ型 |
| 電磁鋼板の焼なまし | DX(R)/リッチ型 |
| アルミの光輝焼なまし | DX(DRY)/乾燥型 |
| 光輝焼なまし・焼結・ろう付け(汎用) | NX(窒素型変成ガス) |
これは使えそうですね。用途とガス種類を対応させて覚えておくだけで、設備トラブルや品質不良のリスクを大幅に下げることができます。また、DXガスはRXガスのような高価な触媒を必要としないため、大量生産ラインでのコスト優位性があります。ガス発生装置を自社に導入する場合は、製造規模とガス消費量に見合った装置仕様を選ぶことが肝心です。
DXガスを含む変成雰囲気ガスの安全管理は、金属加工の現場で最も見落とされやすいリスクの一つです。「いつも通りの作業だから」という慣れが、重大な労災につながる可能性があります。
厚生労働省の労働災害事例データベースには、DXガスのフィルター交換作業中に一酸化炭素中毒が発生した事例が記録されています。作業者がフィルター格納容器を開けた際、容器内に滞留していたDXガスを吸い込んで意識を失い、救急搬送されました。この事例の原因として、①格納容器内のDXガスを除去する設備がなかったこと、②危険な作業の手順が定められていなかったこと、③監督者が作業の危険性を確認していなかったこと、の3点が挙げられています。
DXガスのリッチ型(DX(R))に含まれるCOの濃度は約10.2%です。一酸化炭素は無色・無臭であるため、見た目ではまったく察知できません。COが空気中に0.32%(3,200ppm)存在するだけで、わずか5〜10分以内に頭痛・めまいが起こり、30分以内に致死的な状態になりえます。DXリッチ型のCO濃度はその約32倍の濃度です。痛いですね。
現場での安全管理として最低限おさえておくべき点は以下の通りです。
また、DXガス発生装置の運転中は炉内圧力を正圧に保つことが基本です。負圧になると空気がリークして爆発性混合ガスが形成される危険があります。これが条件です。
安全管理の観点では、COガスの警報設定値を50ppm(労働安全衛生法の管理濃度)ではなく、その半分以下の20〜25ppm程度に設定する工場も増えています。設定値を下げることで、早期に異常を検知し、作業者が余裕を持って退避できる時間を確保することができます。COガス検知器の購入・設置にかかる費用は機種によりますが、固定式で数万円〜数十万円程度が一般的です。万一の労災や生産停止のコストと比較すれば、導入を検討する価値は十分にあります。
厚生労働省・職場のあんぜんサイト:DXガスフィルター交換中の一酸化炭素中毒事例(労災事例データベース)
DXガス発生装置の導入を検討する際、多くの現場では「ガスのコストが下がるか」という点にフォーカスしがちです。しかし実際の現場では、ガスの冷却速度・露点管理・メンテナンス性の3点がコスト以上に運用品質を左右することが、導入後に初めてわかるケースが少なくありません。
まず冷却速度について説明します。発熱型変成ガスは生成直後に高温状態にあります。炉内への安定供給のためには迅速に冷却する必要があります。一般的な水冷式では冷却に時間がかかり、生産サイクルにロスが生じることがあります。2段階冷却方式を採用したDXガス発生装置では、通常より速くガスを冷却でき、タイムロスを削減した事例も報告されています。
次に露点管理です。発熱型変成ガスの露点は、DX(L)・DX(R)が+5℃、NXが−40℃以下です。DXガスの露点が高いと、炉内に水分が持ち込まれ、製品の酸化や品質低下を招くことがあります。特に湿度の高い夏場は、原料ガスや配管内の水分量が上昇するため、露点計を使ったリアルタイム監視が推奨されます。
そしてメンテナンス性です。DXガス発生装置は構造が比較的シンプルでRXガス変成炉のようなニッケル触媒の交換が不要ですが、燃焼バーナーの劣化・フィルターの目詰まり・冷却水系統の腐食といった消耗は避けられません。定期点検のインターバルや、部品の入手しやすさを事前にメーカーに確認しておくことが重要です。
また、見落とされがちな視点として「排ガスの二次利用」があります。DXガス発生装置で生じる燃焼排熱を回収して工場の温水や予熱に使う工夫で、エネルギー効率を高めている工場も存在します。環境負荷低減とコスト削減を同時に達成できる点は、これから設備投資を検討する工場にとって大きなメリットです。
ガス発生装置の仕様や導入事例については、サンファーネス株式会社などの専門メーカーに資料請求することで、自社の設備規模に合った情報を入手できます。製作可能スペックはメーカーによりますが、DXガス発生装置では80〜400㎥/hの処理能力に対応したモデルが確認されています。これが選定の目安です。
サンファーネス:発熱型変成ガス発生装置(DXガス)の仕様と導入事例

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