白色干渉計の原理とZYGOで学ぶ表面測定の全知識

白色干渉計の原理からZYGOの最新機種まで、金属加工の現場で役立つ測定技術を徹底解説。触針式との違いや0.1nmの分解能の仕組みも紹介。あなたの測定精度は本当に正しく評価できていますか?

白色干渉計の原理とZYGOで変わる表面測定の世界

表面が「なし地状態」だと、白色干渉計では正確な測定値が出ず、NG判定が連発します。


🔬 この記事でわかる3つのポイント
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白色干渉計の基本原理

光の干渉現象を利用して0.1nmという超高精度の表面測定を実現する仕組みを、やさしく解説します。

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ZYGOの技術的強み

ZYGOが特許を持つFDA(周波数領域解析)がなぜ業界標準になったのか、その理由と実際の仕様をわかりやすく紹介します。

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金属加工現場での活用と注意点

触針式粗さ計との違い、振動環境での設置ミス、測定できない表面の条件など、現場で起きやすい失敗を事前に防ぐ知識を解説します。


白色干渉計の原理:光の干渉で高さを読み取る仕組み


白色干渉計の核心にあるのは、「光の干渉」という物理現象です。光路長(光が進む距離)に差が生じると、2つの光の波が重なり合い、明暗のパターン=干渉縞が生まれます。この現象を測定に使う点が、接触式の触針式粗さ計との根本的な違いです。


具体的な仕組みはこうです。白色光源から出た光は、干渉対物レンズ内部でビームスプリッターによって2本に分割されます。一方は測定対象の表面に、もう一方は装置内部の参照ミラーに照射されます。それぞれから反射されて戻ってきた2つの光が再び合流し、CCDカメラ(検出器)上に干渉縞を形成します。


対物レンズをZ方向(垂直方向)に少しずつ走査していくと、各CCD画素ごとに干渉縞の強度が最大になる瞬間があります。その位置こそが「測定対象の表面高さ」です。これが走査型白色干渉法(CSI:Coherence Scanning Interferometry)の基本原理です。


測定方式 測定原理 主な用途 垂直分解能
白色干渉計(CSI) 白色光干渉・低コヒーレンス 粗さ・うねり・段差 1nm程度
位相シフト干渉法(PSI) 単色光干渉・位相差解析 超精密鏡面の平面度 0.1nm以下
触針式粗さ計 機械的触針走査 ライン粗さ(Ra・Rz) 数nm〜数十nm


つまり、光の「コヒーレンス長の短さ」を逆手に取るのが白色干渉の妙技です。白色光はレーザーと違い、干渉が起きる光路差の範囲がわずか数μm程度しかありません。この「干渉しにくさ」が精度を生むということですね。


白色光をあえて使うことで、測定位置を極めて正確に特定できます。レーザーのような単色光では光路差が1波長(約550nm)の整数倍のたびに干渉が起き、どのピークが正解か判別できないアンビギュイティ問題が生じます。白色光ではそれが起きません。これだけ覚えておけばOKです。


参考として、走査型白色干渉法の詳細な解説(日本レーザー株式会社)はこちらです。


レーザー顕微鏡と白色干渉計の原理比較|日本レーザー株式会社


白色干渉計の原理を支えるZYGOのFDA技術と0.1nmの分解能

ZYGO社が世界トップシェアを持つ理由の一つが、特許技術「FDA(Frequency Domain Analysis:周波数領域解析)」です。この技術があるからこそ、ZYGOのNewViewシリーズは業界標準として多くの金属加工・精密機械の現場で採用されてきました。


FDAとはどういうものでしょうか? ZスキャンしたときにCCDが受光した光強度データについて、単純にピーク位置を探すのではなく、「位相」と「空間周波数」を数学的に算出するアルゴリズムです(ZYGO特許)。通常、CSI方式の垂直分解能は1〜3nm程度が限界ですが、FDAを使うことで0.1nm以下へと大幅に向上します。


0.1nmという精度をイメージしやすく言うと、人の髪の毛の直径(約70µm)を70万分の1にした長さです。原子数個分のサイズ違いを検出できることになります。


  • 🔬 垂直分解能:0.1nm以下(全対物レンズ共通)
  • 📐 垂直測定範囲:1nm〜20,000µm(NewView7300の場合)
  • 測定速度:数秒で200万点(NewView 9000の場合)
  • 📊 段差測定再現性:0.1%以下(1σ)
  • 🔲 最大測定領域:Stitching機能で150mm×150mmまで対応


重要なのは、「対物レンズの倍率に関わらず、垂直方向の分解能は一定」という点です。触針式では対象部品が小さくなれば別の機器が必要になることもありますが、白色干渉計では5倍対物レンズでも100倍でも0.1nmの分解能を維持します。これは測定エリアを広くとりながら高精度を保てるという大きなメリットです。


また、ZYGO社の最新機種であるNewView 9000には、SmartSetup™テクノロジーが搭載されており、測定準備から照度設定・スキャン長の設定・測定実行まで1分以内に完了します。オペレーターによる設定ばらつきが生産現場での大きな課題でしたが、この自動化により解決されました。


参考として、ZYGOの公式製品ページはこちらです。


ZYGO NewView™ 9000 製品ページ|ZYGO Japan


白色干渉計の原理から理解するCSIとPSIの使い分け

ZYGOを含む高性能白色干渉計には、大きく2種類の測定モードが搭載されています。CSI(Coherence Scanning Interferometry)とPSI(Phase Shift Interferometry)です。この2つを適切に使い分けることが、金属加工現場での測定精度向上につながります。


CSIモードは前述の走査型白色干渉法です。白色光(または低コヒーレンス光)を使用し、粗い面・段差がある面・傾斜面などにも対応できます。垂直分解能は1nm程度(FDAを使えば0.1nm以下)で、広い測定範囲と高い汎用性を持ちます。金属加工後の表面粗さ(Ra・Sa)、DLCコートの膜状態、クランクシャフトの摺動面評価などに向いています。


PSIモードは単色光を使い、「位相差」から高さを算出します。0.1nm以下、場合によっては0.01nm以下という驚異的な分解能を実現できます。ただし、測定対象面が滑らかで連続的でないと正確な測定ができません。隣接ピクセル間の段差が使用波長の1/4(約130nm)を超えると計算が破綻します。光学部品の研磨面評価や超精密鏡面の平面度評価に限定した使用がよいでしょう。


比較項目 CSIモード PSIモード
使用光源 白色光(低コヒーレンス) 単色光
垂直分解能 0.1nm以下(FDA使用時) 0.01nm以下
測定対象 粗面・段差面・傾斜面 超精密鏡面のみ
適合用途 表面粗さ・うねり・加工面評価 光学部品・高精度平面評価
傾斜面の対応 △〜〇 ✕(原理上不可)


金属加工の現場で扱う被削材の表面は基本的にCSIモードが主役です。PSIモードが必要になる場面は限られています。CSIが原則です。


なお、群馬県立産業技術センターが保有するZYGO社製Nexviewは、CSIとPSIの双方に対応しており、最大垂直走査範囲がピエゾスキャンで150µm、モータースキャンで20mmと非常に広い対応範囲を持ちます。このような公設試験機関の設備を利用することで、初期投資なしに測定評価を試すことも可能です。


参考として、群馬県立産業技術センターの白色干渉計設備情報はこちらです。


広域大段差対応白色干渉計(ZYGO Nexview)の紹介|群馬県立産業技術センター


白色干渉計の原理が持つ限界:測定できない表面と失敗しやすいケース

白色干渉計は非常に高精度な測定機ですが、「何でも測れる」わけではありません。この点を現場で正しく理解していないと、測定データが信頼できないにもかかわらず、そのまま品質判定に使われてしまうリスクがあります。


最大の制約は「反射率」です。白色干渉計の測定原理上、測定対象からの反射光が干渉縞を形成する必要があります。一般に「反射率1%以上」の表面であれば測定可能とされています。鏡面研磨された金属面や、DLCコート・メッキ処理後の表面は問題ありません。


問題になるのは以下のケースです。


  • なし地状(梨地)・サンドブラスト後の表面:散乱が大きすぎて干渉縞が得られない
  • 黒色酸化膜(黒染め処理後):反射率が著しく低く測定困難
  • 透明材料や半透明コーティング:表面・内部反射が混在し誤データになる場合がある
  • ⚠️ 急傾斜面(角度が大きい部分):反射光がカメラに届かずデータ欠落が起きる
  • ⚠️ 段差が大きすぎる面(粗さが激しい面):CSIでも測定限界を超える場合がある


また、振動への弱さも重要な注意点です。白色干渉計は光の波長(数百nm)の精度で変位を検出しているため、わずかな振動でも干渉縞が乱れます。設置場所の選定が測定品質に直結します。


ただし、ZYGOのNewView 9000やZeGageシリーズに搭載された「SureScan™テクノロジー」は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで振動の影響を大幅に低減し、除振テーブルなしでも製造現場に近い環境での測定を可能にしています。これは使えそうです。


さらに、ゴニオステージを使った傾斜調整(ティルト調整)は、適切な干渉縞を得るために欠かせない設定作業です。傾斜が正しく設定されていないと、測定結果に大きなエラーが混入します。この設定を省略しがちな現場では注意が必要です。


参考として、白色干渉計のデメリットと運用上の注意点についてまとめた記事はこちらです。


白色干渉計の強みとデメリット・運用上の注意点|Mipox株式会社


白色干渉計と触針式粗さ計の違い:金属加工現場での正しい選択軸

金属加工の品質管理現場では、依然として触針式粗さ計(接触式)が多く使われています。しかし、近年は白色干渉計(非接触式)への移行が進んでいます。この2つは「どちらが優れているか」ではなく、「どちらが適しているか」という観点で選ぶことが重要です。


触針式の最大の強みは現場実績の豊富さとコストの低さです。JIS B 0651規格に準拠した測定器が数万円台から入手でき、Ra・Rzなどの粗さパラメータが直接出力されます。一方で、触針が接触するため軟質材料(ゴムや樹脂)の表面には跡が残ります。また、1本のラインデータしか取得できないため、面全体の表面性状は評価できません。スタイラスの摩耗も起き、定期交換コストが発生します。


白色干渉計の強みをまとめると、下表のとおりです。


比較項目 白色干渉計(非接触式) 触針式粗さ計(接触式)
測定データ形式 面(3Dマップ) 線(プロファイル)
試料へのダメージ なし(非接触) スタイラス跡が残る場合あり
消耗品 なし(LEDは半永久) スタイラスの定期交換が必要
測定速度 数秒〜(エリア一括取得) 数十秒〜(ライン走査)
垂直分解能 0.1nm以下 数nm〜数十nm
透明・半透明材料 誤測定のリスクあり 問題なし
粗い梨地面 測定困難な場合あり 測定可能


白色干渉計では「面の粗さ(Sa)」が取得できるのに対し、触針式では「線の粗さ(Ra)」しか得られません。軸受の超仕上げ面評価や摺動面のベアリングレシオ(負荷曲線)解析、DLCコートのドロップレット分布評価など、面での表面性状評価が必要な場面では白色干渉計が圧倒的に有利です。


厚いです。Ra管理だけで十分だと思っている現場も多いですが、フリクション特性など方向依存性がある表面は3次元で捉えないと本質が見えません。意外ですね。


参考として、走査型白色干渉計の金属加工応用事例が詳しく紹介された専門記事はこちらです。


光学式表面性状測定機 Zygo NewView7300の計測技術と応用事例|ジュンツウネット21


金属加工の品質向上につながる白色干渉計の独自活用法:工程内測定フィードバック

白色干渉計は品質検査のためだけに使う測定機ではありません。加工プロセスを改善するためのフィードバックツールとして使うことで、不良品率の削減やコスト削減につながります。この視点が、多くの金属加工の現場ではまだ浸透していない独自の活用法です。


具体的な例を挙げます。精密研削後の表面をZYGOで面測定(Sa評価)すると、砥石の目つまりや研削焼けの前兆を、触針式では検出できない微細なパターンとして捉えられます。「うねり(Wa)成分の増加=砥石の目つまりサイン」と経験則で管理している現場は多いですが、白色干渉計の3Dデータがあれば定量的な根拠として残せます。


超仕上げ後の内外輪・鋼球の表面粗さも数nmレベルで管理できます。たとえばISOおよびJIS規格の最高水準に近い精密玉軸受では、平均粗さSaが数nmという極めて厳しい規格に対応しています。触針式では数回測定しても結果にばらつきが出やすい場面でも、白色干渉計であれば1回の面測定で安定したデータが得られます。


また、試作品の加工条件検討段階においても威力を発揮します。同じ面の複数箇所を自動測定(ステッチング機能で最大150mm×150mmの広域対応)することで、加工ムラの分布を見える化できます。問題個所を早期に特定できるため、コスト削減が期待できます。


  • 🛠️ 研削・ラッピング・超仕上げ後の工程内粗さ管理:砥石状態の早期把握に有効
  • 🔩 クランクシャフト・カムの摺動面評価:方向依存フリクション特性の3D可視化
  • ⚙️ DLCコート・メッキ後の表面評価:ドロップレット分布や膜の均一性を定量化
  • 🏗️ 金型・金型コーティング後の面性状確認:Nexview 650では最大650mm×650mmの大型金型に対応


公設試験研究機関(産業技術センターなど)には、ZYGO社製の白色干渉計が多く導入されています。まずは保有機関に受託測定を依頼してコストをかけずに評価を試みることが、現実的な第一歩です。東京都立産業技術研究センター(都産技研)もZYGO NewView 600sを保有しており、垂直分解能0.1nmの測定サービスを提供しています。


参考として、都産技研の保有する白色干渉測定機の仕様情報はこちらです。


白色干渉測定機(ZYGO NewView 600s)の仕様と測定事例|東京都立産業技術研究センター(PDF)




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