バリ測定でOKと思っていたものが、実は77%の現場で「感覚頼り」という調査結果があります。

バリとは何か、まず正確に押さえておきましょう。JIS B 0051(製図−部品のエッジ−用語及び指示方法)では、バリを「かどのエッジにおける、幾何学的な形状の外側の残留物で、機械加工または成形工程における部品上の残留物」と定義しています。切削・プレス・鋳造など加工方法は違っても、意図せず発生した突起状の残留物はすべてバリです。
現場では「カエリ」と呼ぶケースも多く見られます。JISにカエリの定義は存在せず、バリのみが規定されています。「手に引っかかるほど大きければバリ、ほぼ感じない小さなものがカエリ」という現場感覚で使い分けられていることが多いですが、品質文書上はバリとして統一して扱うのが原則です。
バリのサイズを表す指標は2つあります。それが「バリの高さ(Burr Height)」と「根元厚み(Root Thickness)」です。バリの高さとは、製品の基準面からバリの先端までの距離のことを指します。一方、根元厚みはバリが基材と接する根元部分の幅を指します。
バリの取れやすさは根元厚みに強く依存します。これが見落とされがちな点です。たとえば高さが0.2mmあっても根元が0.01mmのような薄いバリであれば、軽いやすりがけで簡単に除去できます。しかし根元厚みが0.3mm以上あるバリは、高さが低くても硬く密着しており、専用工具が必要になります。つまり「高さだけ」を見ていると、取り直しリスクを見誤るということです。
バリ取り作業に入る前に必ず両方の数値を把握しておくのが条件です。根元厚みの把握が後工程の工数削減につながります。
参考情報:バリの定義やエッジ指示方法についての詳細はJIS規格本文を参照できます。
JISB0051:2004 製図−部品のエッジ−用語及び指示方法(kikakurui.com)
接触式の測定とは、計測器の触針や測定子をバリに直接当てて数値を取得する方法です。現場でよく使われる接触式測定器には以下のものがあります。
接触式のメリットは、比較的安価で導入しやすく、誰でも操作しやすい点です。ただし、決定的な弱点があります。触針がバリに接触する際の圧力でバリが変形・脱落し、正確な値が取れない場合があるのです。特に高さが0.05mm以下の微小なバリは、触針が当たった瞬間に寝てしまい、実際より低い値が出やすくなります。
輪郭形状測定機での測定には、別の課題もあります。ワークの水平出しや治具への固定作業に時間がかかる上、「バリの真上」に正確に触針を通すという操作が非常に難しいのです。測定ラインがわずかにずれるだけで、測定値に大きなバラつきが生じます。N数(サンプル数)を増やすことも現実的でなく、全数検査への適用はほぼ不可能です。
表面粗さ測定機を応用するケースも存在しますが、本来バリ測定用に設計された機器ではありません。バリのような急峻な突起に対してはX軸方向にも誤差が出るため、「おおよその確認用」に留めることが必要です。つまり接触式での高精度な定量測定には限界があります。
参考情報:ミツトヨの表面粗さ測定機を使ったバリ測定の活用事例について詳しく解説されています。
非接触式の測定では、バリに物理的に触れることなく形状データを取得します。これが最大の特長です。バリ測定を実施している企業のうち66%が非接触式を採用しているというデータ(ジーベックテクノロジー調査)があり、業界でも主流となりつつあります。
代表的な非接触式測定器には次のものがあります。
デジタルマイクロスコープの大きな強みは、測定結果をデジタル画像として保存できることです。画像データを記録・比較することで、バリの状態推移をトレースできます。ただし、モニター上で測定点を手動指定するため、作業者によって測定点のバラつきが生じやすいという弱点も存在します。
ワンショット3D形状測定機(キーエンスVRシリーズなど)は、面全体を一度にスキャンして3次元データを取得します。最速1秒という測定時間で、従来の輪郭測定機では困難だったN数の大幅増加が実現できます。たとえば1ロット50個の全数検査も、短時間で完了します。また治具への固定や水平出しが不要なため、作業者間の測定バラつきが大幅に解消されます。
非接触は正確さが際立ちますね。接触式では1µm程度、非接触式の一部機種では10µm程度の精度と言われる場合もありますが、面全体をスキャンするワンショット方式では0.1µmの分解能も実現可能になっています。使用目的と予算に合わせた機器選定が重要です。
参考情報:キーエンスによる金属カエリ(バリ)の非接触測定の課題と解決方法が詳しく解説されています。
カエリをすばやく正確に測定する方法|測定課題解決ライブラリ(キーエンス)
金属加工の図面を見ると、ほぼ必ずと言っていいほど「バリなきこと」または「バリカエリなきこと」という指示が書かれています。ところが、この指示には具体的な数値が記載されていないのが実情です。
ジーベックテクノロジーが金属加工従事者30,000人を対象に実施した調査(有効回答453件、2018年5月)によると、「バリなきこと」を判断する方法として最も多かったのは「触ってみて感じられるバリがなければOK」の61%でした。さらに「目視でバリが見えなければOK」が16%で、合わせて77%が定量測定を行っていないことが明らかになっています。
| 判断方法 | 割合 |
|---|---|
| 触ってバリが感じられなければOK | 61% |
| 目視でバリが見えなければOK | 16% |
| 何らかの測定を行い規定値以下でOK | 16% |
| 機能的に有害性がなければOK | 2% |
| その他の方法 | 5% |
では「バリなきこと」を定量化するとどうなるのでしょうか? 同調査で「バリなきこと」が達成できる基準値の平均は「バリの高さ0.048mm」という数字が浮かび上がりました。さらに興味深いのは、バリの取り直し経験を経て基準を厳しく設定し直したグループ(1年以内に取り直しを経験したが再発なし)の基準値平均は「0.029mm」だったことです。取り直しを繰り返しているグループは「0.055mm」で、緩い基準のままだと取り直しリスクが下がらないことが読み取れます。
バリ取り直しの依頼を受けた際にも、具体的な規定値を指定される割合はわずか20%でした。残り80%は具体的な数値なしの「再指示」です。これが品質トラブルの温床になることは明らかです。バリ高さ0.03mm以下を社内基準として設定するのが望ましいといえます。
参考情報:ジーベックテクノロジーによる「バリなきこと」の定量調査レポートです。判断基準の設定に参考になります。
「バリなきこと」が達成できる値を調査してみた|ジーベックテクノロジー
ここからは、教科書には載っていない独自視点の話をします。バリ高さ測定で大きな誤差を生む原因の一つが「どこを測るか」という測定点選びの問題です。同じバリであっても、測定する位置によって数値は大きく変わります。
たとえばプレス加工品の切断面では、バリは均一に発生しているわけではありません。コーナー部(角)ではバリが集中して高くなる傾向があり、直線部では比較的低く抑えられるケースが多いです。輪郭形状測定機で「任意の1点」だけ測定して合否判定してしまうと、最も高い箇所が見逃されてしまうリスクがあります。1点の測定値だけで合格にしたら、実際にはコーナーに規格外のバリが残っているという事態が起こり得ます。
対策として有効なのが、面全体をスキャンして最大高さを自動抽出する方法です。ワンショット3D形状測定機ではスキャンエリア内の最大値・最小値を自動で算出できるため、測定漏れがなくなります。また複数の測定点をあらかじめ設定しておき、同じポイントを毎回測る「測定点の標準化」も、バラつきを抑えるために効果的です。
デジタルマイクロスコープを使う場合は、製品のエッジ沿いを複数箇所観察し、最大バリが発生しやすいコーナー付近を重点的に確認するという手順書を作成しておくことを推奨します。手順書があれば測定の属人化を防げます。
バリ測定の属人化は工程内不良の見逃しに直結するリスクがあります。測定点の標準化と手順書の作成を、測定機器の選定と同じく優先事項として取り組むことが大切です。これは使えそうです。測定精度を高めるための機器導入と並行して、運用ルールの整備も進めていきましょう。
バリ高さ測定の方法には接触式・非接触式それぞれ特徴があり、測定対象のバリサイズや要求精度、予算によって最適な選択は変わります。以下に測定器選定のポイントを整理します。
| 測定方法 | 主な機器 | 精度の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 接触式 | 輪郭形状測定機、粗さ計 | 約1µm程度 | バリ高さ0.1mm以上の比較的大きなバリの確認 |
| 非接触式(光学) | デジタルマイクロスコープ | 倍率依存 | 根元厚みの観察、0.05mm前後の微小バリ評価 |
| 非接触式(3D) | ワンショット3D形状測定機 | 0.1µm分解能 | 全数検査、バラつきゼロが求められる高付加価値部品 |
まず確認すべきは、自社の「バリなきこと」の判断基準が数値化されているかどうかです。基準が曖昧なままでは、どんな高精度な測定機を導入しても合否の判断ができません。社内で合格基準値(バリ高さ0.03mm以下を目安に)を設定することが、測定器選定より先に必要なステップです。
次に測定目的を明確にします。「品質の見える化」が目的であればデジタルマイクロスコープで十分な場合も多いです。「量産品の工程内検査」や「全数検査」が目的なら、ワンショット3D形状測定機が測定時間の大幅な短縮につながります。以下のステップで進めると実行しやすいです。
バリ高さ測定を「感覚」から「数値管理」に移行することは、品質クレームの防止だけでなく、不要なバリ取り直しの工数削減にも直結します。バリ測定の定量化が条件です。まずは自社基準値の数値化という最初の一歩から取り組んでみてください。
バリ測定に関する測定機選定の参考として、キーエンスの樹脂成形品バリの測定課題解決事例も役立ちます。
樹脂成形品のバリ高さを瞬時かつ正確に測定する方法|キーエンス 測定課題解決ライブラリ

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